外来手術として施行する穿頭術の工夫

2015 年国病学会原稿
臨床研修医 木下 奈津
【外来手術として施行する穿頭術の工夫】
慢性硬膜下血腫などで穿頭術が必要となる患者様の中には、精神科的疾患やご家族の都合
により入院管理が困難な症例が存在します。遠方から来院される患者様も多く、通院が困
難となる事もあります。慢性硬膜下血腫は一般的に血腫除去後すみやかに症状改善が認め
られることが多く、そのような入院が困難な患者様のために入院期間の短縮が必要と考え
ました。私達は鎮静剤や縫合時の手技を工夫することで、外来手術として穿頭術を施行し
てきましたが、今回、手術手技に関しても検討したので報告します。
まず外来穿頭術の流れです。まず、外来処置室で採血とルートキープを行い、鎮静を開始
します。散髪を行い、切開部位のマーキングを行います。採決結果などを確認し、鎮静が
得られたら、ポジショニングと頭部固定を行います。その後、穿頭術を施行し、CT で血腫
除去を確認してからドレーンを抜去します。抜去後、鎮静を終了し、2 時間程モニター監視
下に、外来処置室で観察し、覚醒が得られ、バイタルが安定していることを確認して、帰
宅・帰院となります。
術前、術中の鎮静剤としてプレセデックスをベースに使用します。プレセデックスの大き
なメリットとしては、呼吸抑制・せん妄が少ない点があり、術中、自発呼吸を温存した術
中管理で使用しやすいです。しかし、欠点としては低血圧、徐脈などの副作用があります。
鎮静下でも刺激で覚醒することがあるので、必要に応じてジアゼパム、ペンタゾシンを追
加投与しています。
ドレーン位置の工夫としては穿頭と同一創部からドレーンチューブを出すことで、別の孔を設
けた場合と比べて、チューブ抜去時の追加縫合が不要になります。
縫合時の工夫としては、まず創の大きさを 3.5 ㎝程度にしています。それに加えて創の止血
を確実に行い、皮下縫合を密に行うことで、創の離開がありません。ドレーンを抜去した
後、皮膚表面接着剤のダーマボンドを使用します。
ダーマボンドは医療用接着剤であり、塗布することで縫合の代用になり柔軟性のあるフィ
ルムで接着部位を保護することが可能となります。ダーマボンドを使用する利点としては、
抜糸が不要でガーゼドレッシング剤が不要になる点です。透明のため創部の観察が容易と
なります。防水作用があり、早期のシャワーが可能になります。
今回は手術器具についても検討し、穿頭時に小児用ドリルを使用することで、皮膚切開が
約 2 ㎝まで縮小可能になりました。皮膚切開創が最小限になることで、創感染、創離開の
リスクは更に減少できると考えます。
【考察】
慢性硬膜下血腫は典型例では頭部外傷を契機に、
受傷後 3 週間から 2.3 か月後に発症します。
多くは頭痛、麻痺、意識障害を主訴とし、治療後は速やかに症状が改善します。
外来手術の利点としては、治療が 1 日で終わるため、付き添いが手術日だけでよい点があ
ります。抜糸が不要となります。欠点としては経過観察ができないため、創癒合が不十分
となる可能性があり、急変時の対応が遅れる可能性があります。入院手術は逆に経過を毎
日観察できますが、治療期間が約 1 週間かかり、長期の付き添いが必要となることもあり、
せん妄が出現する可能性があります。
【結語】
入院が困難な慢性硬膜下血腫の症例に対する穿頭術の工夫について報告しました。鎮静剤
の選択や、縫合やドレナージチューブ留置時の手技を検討することで、術後管理を自宅近
くの医療機関などで行うことが可能となりました。今回は更に手術手技に関しても検討を
加え、小児用の穿頭ドリルを用いることで、皮膚切開創を極力小さくすることが可能とな
りました。以上です。
外来手術
施行
工夫
穿頭術
独立行政法人国立病院機構浜田医療
臨床研修部1 脳神経外科2 救命救急
3
木下奈津1 吉金努2 木村麗新2 加川隆登2
3
演題発表 関連
開示
COI関係
企業
慢性硬膜下血腫
穿頭術 必要
中
精神科的疾患 家族 都合
院
入院管理 困難 症例 存在
鎮静剤 縫合時 処置 工夫
療 困難 症例 対
外来手術
施行
今回 更 手術器具 関
報告
患者
当
入院治
穿頭術
検討 加
外来穿頭術 流
①外来処置室 採血
始
②散髪 行
切開部位
③鎮静 得
④穿頭術 施行
⑤
抜去後 鎮静終了
⑥2時間程度
監視下
⑦覚醒 得
Vital 安定
帰宅 帰院
後
鎮静開
施行
頭部固定
外来処置室 観察
確認
鎮静剤 工夫
(
必要
鎮痛
®)
使用
鎮静
追加
投与方法(組成 4μg/ml
初期負荷投与 6μg/kg/時
維持量 0.2 0.7μg/kg/時
1A(2ml) + 生食 48ml)
90ml/時/60kg
3 10.5ml/時/60kg
位置 工夫
穿頭 同一創部
別 孔 設
場合 比
加縫合 不要
出
抜去時
追
縫合時 工夫
創
止血 確実 行
皮下縫合 密 行
(皮膚表面接着剤) 使用
留置時
塗布時
術後約1週間
TM
2-octyl cyanoacrylate
縫合 代用
柔軟性
接着部位 保護
利点
抜糸
欠点
不要
剤
不要
創 観察 容易
防水作用
早期
可能
頚椎椎弓形成術手術創 対
塗布後 約5分間
必要
皮膚 高 張力
使用困難
縫合糸 比較
使用経験
増田寛 黒木浩史 濵中秀昭 猪俣尚規 樋口誠二 川野啓介 李徳哲 帖佐悦男
硬化時間
部位
高
手術器具 工夫
小児用穿頭
burr hole cap 用
事 皮
膚切開創 最小限
創部 縮小(3.5cm 2cm)
創感染 創
離開
更 減少
burr hole cap
2
2
考察①
慢性硬膜下血腫(chronic subdural hematoma
CSH)
慢性硬膜下血腫
頭部外傷 契機
受傷機転
抗凝固薬 使用
脳 硬膜
膜 間 生
血腫
軽微
受傷後3週 2, 3 月後 発症
典型的
相当数
高齢化
抗血小板剤
患者数 増加 伴
発症数 増加傾向
臨床症状
頭痛
感
傾眠 思考 一貫性 消失 出現
) 昏迷 昏睡 至
始
続
一般的 治療後
症状
95.5%
報告
良好 考
症例 対
手術加療 推奨
改善
血腫 増大
大脳巣症状(不全片麻痺
予後 社会復帰率
症状 出現
森山忠良 寺本成美 近藤達也 泉二郎 松森邦昭 遠藤昌孝 今川健司 石倉彰 石光宏 山元国光 高齢者
歳以上 慢性硬膜下血腫 IRYO Vol.45 14-21 1991
今村徹 慢性硬膜下血腫
認知機能障害
考察②
外来手術
利点
治療 1日 終
付 添
手術日
抜糸 不要
入院手術
経過 毎日観察
皮膚縫合 行
急変時 対応 出来
欠点
経過観察 十分 出来
創癒合 不十分
可能
性
急変時 対応 遅
可能
性
治療期間 1週間
長期 付 添
必要
妄
出現
可能性
結語
入院 困難 慢性硬膜下血腫
頭術 工夫
報告
鎮静剤 選択
縫合
時 手技 検討
医療機関
行
今回 更 手術器具 関
用 穿頭
用
小
可能
症例 対
穿
留置
術後管理 自宅近
可能
検討 加
小児
皮膚切開創 極力