補剤の免疫調節作用における骨髄由来免疫抑制細胞 (MDSC)の役割

補剤の免疫調節作用における骨髄由来免疫抑制細胞
(MDSC)の役割
堀江 一郎
礒濱洋一郎
済木 育夫
申 請 代 表 者
所外共同研究者
所内共同研究者
東京理科大学薬学部応用薬理学研究室
東京理科大学薬学部応用薬理学研究室
病態生化学分野
助教
教授
教授
【報告セミナー要旨】
【背景および目的】
補剤には免疫機能調節作用があり,がんや炎症性疾患などの様々な免疫異常を伴う疾患での有効性
が示されている.しかし,その詳細な作用機序については不明な点が多く,例えば十全大補湯と補中
益気湯の薬理作用特性に基づく使い分けも明確ではない.一方,近年になって,免疫システムを構築
する新たな細胞集団として,骨髄由来免疫抑制細胞 (MDSC) の存在が明らかになり,免疫抑制系の
中心的役割を果たしていることが分かってきた.本研究では,補剤による免疫調節作用の一部がこの
MDSC 機能調節によるのではないかとの仮説のもと,骨髄細胞からの MDSC 分化誘導に対する十全
大補湯および補中益気湯の作用を調べた.
【方法】
雄性 C57BL/6 マウス (8-10 週齢 ) から骨髄細胞を単離し,IL-6 (40 ng/ml) および GM-CSF (40 ng/
ml) 存在下に 4 日間培養して MDSC へ分化誘導した.この培養液中に代表的補剤である十全大補湯ま
たは補中益気湯を処理し,MDSC マーカーである CD11b および Gr-1 が両陽性となる細胞をフローサ
イトメーターで検出,骨髄細胞から MDSC への分化への影響を調べた.
【結果および考察】
十全大補湯は処理濃度 (0.1-1 mg/ml) および処理時間 (1-4 日間 ) 依存的に MDSC 数を減少させ,1
mg/ml の濃度ではコントロールの約 60% まで減少させた.一方,補中益気湯の処理では MDSC 数
は増加傾向を示し,十全大補湯と補中益気湯が本細胞に対して全く異なる作用を示すことが分かっ
た.MDSC は表面抗原の Ly-6G 陽性 ( 顆粒球型 MDSC) と Ly-6C 陽性の ( 単球型 MDSC) の 2 種類の
分化型が存在する.この分化型についても調べると,十全大補湯は Ly-6G 陽性 MDSC 数には影響せ
ず,Ly-6C 陽性すなわち単球型 MDSC 数を選択的に減少させることが分かった.一般に,MDSC は
一酸化窒素,IL-10 および TGF-b の産生を介して免疫抑制能を示す.そこでさらに,MDSC の主た
る NO 合成酵素 iNOS の mRNA 発現に対する作用を調べると,十全大補湯は MDSC 数の減少とよく
一致して,iNOS mRNA の発現を減少させた.本研究の成績は,十全大補湯の免疫調節作用の一部
に MDSC の分化および機能抑制という新たな機序が関わる可能性を示すものである.また,本作用
の有無が十全大補湯と補中益気湯との作用特性の違いとも関連する可能性があり興味深い.
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■背景および目的
十全大補湯や補中益気湯などの「補剤」は免疫系に作用し,がん,感染症および炎症性疾患などの
様々な病態に対して一定の薬効を示すことが明らかにされつつある.特に,がんについては,十全大
補湯や補中益気湯が腫瘍免疫を活性化することによる劇的な転移,増殖の抑制作用が報告されている.
これら補剤の作用機序として,十全大補湯ではマクロファージおよび T 細胞の活性化,補中益気湯で
は NK 細胞の活性化が示唆されてはいるが,これらの細胞が薬物の直接の作用点であるか否かは不明
である.
一方,最近になって,免疫系の抑制系として,制御性 T 細胞 (Treg)に加えて骨髄由来免疫抑制細
胞(MDSC)が注目を集めている.MDSC は未成熟な骨髄由来の細胞であり,単球,顆粒球,樹状細
胞などに特徴的な表面抗原を発現するヘテロな細胞集団である.MDSC は様々な病態や刺激に応じ
て誘導されるが,特にがん病態時に過剰に増加・活性化し,腫瘍組織に集積する.この MDSC は IL10,
アルギナーゼ(Arg-1)
,
一酸化窒素(NO)や活性酸素種(ROS)を分泌することで,
T 細胞の増殖・
活性化の抑制,NK 細胞やマクロファージの活性化を抑制するだけでなく,これまで免疫抑制におい
て中心的な役割を果たしていると考えられてきた Treg を誘導するといった一面も有し,がん悪性化
の原因の一つであると考えられている.すなわち,MDSC はがんの免疫療法を考える上で重要な標
的細胞であることに間違いない.しかし,MDSC 機能の薬理学的調節については未だ確立しておらず,
これまでの研究は表面抗原である Gr-1 に対する中和抗体を用いてその活性を抑制するのが一般的で
ある.しかし,これまでに明らかにされた補剤の作用を考えると,これら補剤が免疫反応系の上流に
存在する MDSC 機能を阻害することで,担癌状態での免疫抑制を解除し,その結果として免疫賦活
作用を示している可能性が想定できる.
そこで本研究では,補剤による免疫調節作用に MDSC が関与しているという仮説のもと,MDSC
の機能に対する十全大補湯および補中益気湯の作用およびその作用機序の解明を目的とした.
■方法
MDSC の分化誘導方法および薬物処理
C57BL/6J 系雄性マウス(8-10 週齢)の大腿骨および脛骨から骨髄細胞を単離し,40 ng/ml IL-6
(PEPROTECH)および 40 ng/ml GM-CSF(PEPROTECH)を含む RPMI-1640(10% FBS)にて 4
日間培養することで MDSC へと分化・誘導した.十全大補湯または補中益気湯(ツムラより供与)は
DMSO にて溶解し,MDSC 分化誘導培地中にて処理した.
フローサイトメトリー法
分化誘導した MDSC(1.0 x 106 cells)を Rat Anti-Mouse CD16/CD32(BD Pharmingen ™)に
て Fc blocking し,Rat Anti-Mouse CD11b-FITC(M1/70,BD Pharmingen ™ ) お よ び Rat AntiMouse Gr-1-PE(RB6-8C5,BD Pharmingen ™)で染色し,BD FACSAria(BD Bioscience)にて
CD11b,Gr-1 両陽性細胞を MDSC 数として測定した.
定量的 RT-PCR 法
分化誘導した MDSC から抽出した total RNA を鋳型とし,逆転写反応を行った.Real-time PCR
反応には,SYBR® Premix EX Taq ™(TaKaRa)を用い,CFK connect(Bio-Rad)にて反応させた.
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Western blotting 法
分化誘導した MDSC から抽出した whole-cell lysates(20 µg)を 10% polyacrylamide gel で SDSPAGE で 分 離 後,PVDF 膜 に 転 写 し た. 転 写 し た PVDF 膜 は 5% skim milk で ブ ロ ッ キ ン グ し,
Phospho-Stat3(Tyr705)
(D3A7)XP® Rabbit mAb(Cell Signaling)または Stat3(124H6)Mouse
mAb(Cell Signaling)にて 1 次抗体反応を行った(4ºC,8 時間).その後,2 次抗体反応を行い,
SuperSignal West Femto Maxmum Sensitivity Substrate(Pierce)により抗体反応を検出した.
■結果および考察
MDSC に対する補剤の作用を検討するため,まず IL-6 および GM-CSF による骨髄細胞から MDSC
への分化・増殖に対する十全大補湯の作用を検討した.その結果,十全大補湯は著明かつ濃度依存的
(0.1-1 mg/ml)に MDSC 数を減少させることがわかった(Fig. 1).また,十全大補湯の処理日数(1-4
日間)依存的に MDSC 数が減少させ,従って,十全大補湯は in vitro で分化・誘導した MDSC を減少
させることが明らかになった.MDSC には表面抗原の Ly-6G 陽性(顆粒球型 MDSC)と Ly-6C 陽性
(単球型 MDSC)の 2 種類の分化型が存在する.この分化型についても調べたところ,十全大補湯は
Ly-6G 陽性 MDSC 数には影響しなかったが,Ly-6C 陽性の MDSC 数を処理濃度依存的に減少させた
(Fig. 2).すなわち,十全大補湯は単球型 MDSC サブセットに対して選択的に作用している可能性が
示唆された.MDSC に発現する重要な免疫抑制因子である NO 合成酵素 iNOS および Arg-1 に対する
十全大補湯の作用を調べたところ,MDSC 数の結果と一致して,十全大補湯は Arg-1 mRNA 発現を
減少させ(Fig. 3)
,十全大補湯が MDSC の数だけでなく機能も抑制することが考えられた.
さらに,十全大補湯の作用機序を解明するため,MDSC の分化に重要な JAK-STAT シグナルに対
する作用も検討したところ,IL-6 および GM-CSF により生じた STAT3 のリン酸化は十全大補湯によ
り濃度依存的に抑制された(Fig. 4).すなわち,十全大補湯の MDSC 抑制作用の一部に JAK-STAT
シグナルの阻害が寄与していると考えられた.
これらの成績から,十全大補湯にはこれまで全く知られていなかった MDSC 抑制作用が存在する
ことが明らかになった.
- 58 -
様式1-4
様式1-4
十全大補湯 (mg/ml)
十全大補湯 (mg/ml)
0.1 mg/ml
0.1 mg/ml
37.67%
0.3 mg/ml
0.3 mg/ml
31.06%
1 mg/ml
1 mg/ml
23.18%
44.52%
37.67%
31.06%
23.18%
Gr-1Gr-1
Control
Control
44.52%
CD11b
+, Gr-1
+, Gr-1
+ Cells
+ Cells
CD11b
CD11b
Population
Population
(%)(%)
CD11b 45
MDSC
MDSC
45
40
40
35
35
30
*
*
30
25
25
20
20
15
0
0
0.1
0.3
1
0.1
0.3
1
十全大補湯 (mg/ml)
十全大補湯 (mg/ml)
Fig. 1. 十全大補湯は濃度依存的に MDSC を減少させる
Fig. 1. 十全大補湯は濃度依存的にMDSCを減少させる
IL-6
GM-CSF により MDSC を分化誘導中に十全大補湯
(0.1-1mg/ml) を共処理し,MDSC 数
IL-6およびGM-CSFによりMDSCを分化誘導中に十全大補湯
(0.1-1mg/ml) を共処 し,MDSC数をフローサイトメトリー法により
Fig.
1.および
十全大補湯は濃度依存的にMDSCを減少させる
解析した.Mean
± S.E. (n=3), *; p < 0.05 vs. 0 mg/ml.
± S.E.
(n=3),
*; p < 0.05 vs. 0 mg/ml.
IL-6およびGM-CSFによりMDSCを分化誘導中に十全大補湯
(0.1-1mg/ml)
を共処
し,MDSC数をフローサイトメトリー法により
をフローサイトメトリー法により解析した.Mean
15
理 理
解析した.Mean ± S.E. (n=3), *; p < 0.05 vs. 0 mg/ml.
B)
B)
Gr-1Gr-1
+, Ly-6G
+, Ly-6G
+ cells
+ cells
CD11b
CD11b
population
population
(%)(%)
55
55
50
50
45
CD11b
40
35
35
30
30
25
Ly-6G
Ly-6G
球球
Ly-6C High
=
単 型
Ly-6C
High
=単 型
Ly-6C
0
0
0.1
0.3
1
1
0.1
0.3
十全大補湯
(mg/ml)
十全大補湯 (mg/ml)
40
単
単
型MDSC
型MDSC
球球
型
型
球球
Ly-6G High = 顆粒
Ly-6G High = 顆粒
C)
C)
+, Ly-6C
+, Ly-6C
+ cells
+ cells
CD11b
CD11b
population
population
(%)(%)
Gating
Gating
型MDSC
型MDSC
45
40
25
CD11b
顆粒
顆粒
球球
A)
A)
40
35
35
30
*
*
30
25
25
20
20
15
Ly-6C
15
0
0
0.1
0.3
0.1
0.3
十全大補湯 (mg/ml)
1
1
十全大補湯 (mg/ml)
球球
Fig. 2. 十全大補湯は単 型MDSCを減少させる
Fig.
MDSC を減少させる いて染色し,Ly-6GおよびLy-6C発
十全大補湯は単球型型MDSCを減少させる
A)
分化誘導後のMDSCをCD11b,Gr-1,Ly-6GおよびLy-6C抗体を
Fig.
2.2.十全大補湯は単
球 球
球 球
球 球
現 現
球 球
理 理
用 用
をもとに顆粒 型と単
型にGatingした.B,
C) MDSCを分化誘導中に十全大補湯
(0.1-1mg/ml)
を共処
し,顆粒
型 (B) または単
型 (C) MDSC数をフ
A) A)
分化誘導後のMDSCをCD11b,Gr-1,Ly-6GおよびLy-6C抗体を
いて染色し,Ly-6GおよびLy-6C発
をもとに顆粒
型と単
MDSC を CD11b,Gr-1,Ly-6G
Ly-6C
分化誘導後の
および
抗体を用いて染色し,Ly-6G
および
ローサイトメトリー法により解析した.Mean
± S.E. (n=3), (0.1-1mg/ml)
*; p < 0.05 vs.を共処
0 mg/ml. し,顆粒 型 (B) または単 型 (C) MDSC数をフ
型にGatingした.B, C) MDSCを分化誘導中に十全大補湯
Ly-6C
Gating
C)
MDSC
(0.1発現をもとに顆粒球型と単球型に
した.B,
を分化誘導中に十全大補湯
ローサイトメトリー法により解析した.Mean ± S.E. (n=3), *; p < 0.05 vs. 0 mg/ml.
1mg/ml) を共処理し,顆粒球型 (B) または単球型 (C) MDSC 数をフローサイトメトリー法により解
析した.Mean ± S.E. (n=3), *; p < 0.05 vs. 0 mg/ml.
- 59 -
様式1-4
様式1-4
B)
B)
1.4
1.4
1.2
1.2
1
1
0.8
0.8
0.6
0.6
0.4
0.4
0.2
0.2
0
0
0
0
0.1 0.3
0.1 0.3
1
1
Arg-1
Arg-1
mRNA
mRNA
level
level
(fold
(fold
of of
control)
control)
iNOS
iNOS
mRNA
mRNA
level
level
(fold
(fold
of of
control)
control)
A)
A)
1.2
1.2
1
1
0.8
0.8
0.6
0.6
0.4
0.4
0.2
0.2
0
0
0
0
0.1 0.3
0.1 0.3
1
1
現 現
理 理
現現
十全大補湯 (mg/ml)
十全大補湯 (mg/ml)
十全大補湯 (mg/ml)
十全大補湯 (mg/ml)
Fig. 3. 十全大補湯は MDSC における Arg-1 発現を減少させる
Fig.
3. 十全大補湯はMDSCにおけるArg-1発 を減少させる
IL-6 および GM-CSF により MDSC を分化誘導中に十全大補湯
(0.1-1mg/ml) を共処理し,total
RNA
IL-6およびGM-CSFによりMDSCを分化誘導中に十全大補湯
(0.1-1mg/ml)
を共処 し,total RNAを抽出した.iNOS
(A) およびArg-1
Fig.
3. 十全大補湯はMDSCにおけるArg-1発
を減少させる
(B)を抽出した.iNOS
mRNA発 量は定量的RT-PCR法により測定した.Mean
±(0.1-1mg/ml)
S.E.
(n=3). を共処 し,total
(A) および Arg-1 (B) mRNA
RT-PCR
±
発現量は定量的
法により測定した.Mean
IL-6およびGM-CSFによりMDSCを分化誘導中に十全大補湯
RNAを抽出した.iNOS
(A) およびArg-1
(B)S.E.
mRNA発
(n=3).量は定量的RT-PCR法により測定した.Mean ± S.E. (n=3).
十全大補湯 (mg/ml)
(mg/ml)
0 十全大補湯
0.1
0.3
0
0.1
0.3
1
1
P-STAT3
P-STAT3
STAT3
STAT3
Relative
Relative
phosphorylated
phosphorylated
STAT3
STAT3
level
level
(fold(fold
of 0ofmg/ml)
0 mg/ml)
1.2
STAT3 phosphorylation
STAT3 phosphorylation
1.2
1
1
0.8
0.8
0.6
0.6
0.4
0.4
0.2
0.2
0
0
0
0
0.1
0.1
十全大補湯
十全大補湯
0.3
0.3
(mg/ml)
(mg/ml)
Fig.
Fig.4.
4. 十全大補湯はSTAT3リン酸化を抑制する
十全大補湯は STAT3 リン酸化を抑制する
IL-6およびGM-CSFによりMDSCを分化誘導中に十全大補湯
(0.1-1mg/ml)
Fig. 4. 十全大補湯はSTAT3リン酸化を抑制する
1
1
Mean ± S.E. (n=3).
理 理
現 現
を共処 し,whole-cell lysatesを抽出した.リン酸化
IL-6 および GM-CSF
(0.1-1mg/ml)lysatesを抽出した.リン酸化
により MDSC を分化誘導中に十全大補湯
を共処理し,whole量はimmunoblottingにより測定した.Mean
± S.E. (n=3).
STAT3およびSTAT3発
IL-6およびGM-CSFによりMDSCを分化誘導中に十全大補湯
(0.1-1mg/ml)
を共処 し,whole-cell
量はimmunoblottingにより測定した.Mean
±
S.E.
(n=3).
STAT3およびSTAT3発
cell lysates を抽出した.リン酸化 STAT3 および STAT3 発現量は immunoblotting により測定した.
一方,補中益気湯についても同様の実験を行ったところ,十全大補湯とは異なり,補中益
一方,補中益気湯についても同様の実験を行ったところ,十全大補湯とは異なり,補中益
気湯の処理により,MDSC 数は濃度依存的に増加する傾向を示した (Fig. 5).従って,同じ
一方,補中益気湯についても同様の実験を行ったところ,十全大補湯とは異なり,補中益気湯の処
気湯の処理により,MDSC
数は濃度依存的に増加する傾向を示した (Fig. 5).従って,同じ
補剤でありながら十全大補湯と補中益気湯の 2 つの補剤の免疫調節機序が明確に異なるこ
理により,MDSC
数は濃度依存的に増加する傾向を示した
(Fig. 5).従って,同じ補剤でありなが
補剤でありながら十全大補湯と補中益気湯の 2 つの補剤の免疫調節機序が明確に異なるこ
とが明らかになった.この結果と一致して,補中益気湯は STAT3 のリン酸化レベルにほと
ら十全大補湯と補中益気湯の 2 つの補剤の免疫調節機序が明確に異なることが明らかになった.この
とが明らかになった.この結果と一致して,補中益気湯は
STAT3 のリン酸化レベルにほと
んど影響しなかった (Fig. 6).今後はこの 2 つの補剤の作用プロファイルの違いについて,
結果と一致して,補中益気湯は
STAT3
のリン酸化レベルにほとんど影響しなかった
(Fig. 6).今後
んど影響しなかった (Fig. 6).今後はこの 2 つの補剤の作用プロファイルの違いについて,
作用機序および構成生薬の違いを中心に追求していく予定である.
はこの 2 つの補剤の作用プロファイルの違いについて,作用機序および構成生薬の違いを中心に追求
作用機序および構成生薬の違いを中心に追求していく予定である.
していく予定である.
- 60 -
様式1-4
様式1-4
A)
B)
80
A)
50
B)
***
50
80
***
CD11b+, Gr-1+ cells
population (%)
CD11b+, Gr-1+ cells
population (%)
CD11b+, Gr-1+ cells
population (%)
CD11b+, Gr-1+ cells
population (%)
70
70
60
45
*
45
60
50
*
40
40
50
40
***
40
30
35
35
***
30
20
30
30
20
10
10
25
Control 十全大補湯
(1 mg/ml)
Control 十全大補湯
(1 mg/ml)
DEX
0
(100 nM)
25
DEX
0.1
0.3
1
補中益気湯
0.1
0.3 (mg/ml)
1
0
(100 nM)
補中益気湯 (mg/ml)
理
Fig. 5. 補中益気湯は濃度依存的に MDSC を増加させる
Fig. 5. 補中益気湯は濃度依存的にMDSCを増加させる
IL-6
DEX (100(1 nM),十全大補湯
(1 (0.1-1mg/ml)
mg/ml) または補
および GM-CSF により MDSC を分化誘導中に
IL-6およびGM-CSFによりMDSCを分化誘導中にDEX
(100 nM),十全大補湯
mg/ml) または補中益気湯
を共処 し,
Fig. 5.
補中益気湯は濃度依存的にMDSCを増加させる
MDSC数をフローサイトメトリー法により解析した.Mean
± S.E. (n=3), *; p < 0.05 vs. 0 mg/ml.
(0.1-1mg/ml)
±
中益気湯
を共処理し,MDSC
数をフローサイトメトリー法により解析した.Mean
IL-6およびGM-CSFによりMDSCを分化誘導中にDEX (100 nM),十全大補湯 (1 mg/ml) または補中益気湯 (0.1-1mg/ml) を共処 し,
MDSC数をフローサイトメトリー法により解析した.Mean
± S.E. (n=3), *; p < 0.05 vs. 0 mg/ml.
S.E. (n=3), *; p < 0.05 vs. 0 mg/ml.
理
補中益気湯 (mg/ml)
0
0.1
補中益気湯
(mg/ml)
0
0.1
0.3
0.3
P-STAT3
P-STAT3
STAT3
STAT3
Fig. 6. 補中益気湯はSTAT3リン酸化に影響しない
理
IL-6およびGM-CSFによりMDSCを分化誘導中に補中益気湯 (0.1-0.3mg/ml) を共処 し,whole-cell lysatesを抽出した.リン酸化
現
Fig. 6.
補中益気湯はSTAT3リン酸化に影響しない
量はimmunoblottingにより測定した.
STAT3およびSTAT3発
理
Fig. 6. 補中益気湯は STAT3 リン酸化に影響しない
IL-6およびGM-CSFによりMDSCを分化誘導中に補中益気湯
(0.1-0.3mg/ml) を共処 し,whole-cell lysatesを抽出した.リン酸化
量はimmunoblottingにより測定した.
STAT3およびSTAT3発
IL-6 および GM-CSF
により MDSC を分化誘導中に補中益気湯 (0.1-0.3mg/ml) を共処理し,whole■結論cell lysates を抽出した.リン酸化 STAT3 および STAT3 発現量は immunoblotting により測定した.
現
■結論これまで十全大補湯や補中益気湯などの補剤が腫瘍免疫を活性化し,抗腫瘍作用を示すこ
これまで十全大補湯や補中益気湯などの補剤が腫瘍免疫を活性化し,
抗腫瘍作用を示すこ
とが示されてきた.しかしながら,免疫調節に関わる決定的な作用機序は不明のままであっ
■結論
とが示されてきた.
しかしながら,免疫調節に関わる決定的な作用機序は不明のままであっ
た.
今回,十全大補湯に免疫抑制系の中心的細胞である
MDSC を抑制する作用を見出した.
これまで十全大補湯や補中益気湯などの補剤が腫瘍免疫を活性化し,抗腫瘍作用を示すことが示さ
た.今回,
十全大補湯に免疫抑制系の中心的細胞である
MDSC を抑制する作用を見出した.
この作用は単球型
MDSC サブセットに選択的であり,MDSC
分化を調節している可能性が
れてきた.しかしながら,免疫調節に関わる決定的な作用機序は不明のままであった.今回,十全大
この作用は単球型
MDSC サブセットに選択的であり,MDSC MDSC
分化を調節している可能性が
示唆された.一方,補中益気湯は,十全大補湯とは逆に
を増加させる作用があり,
補湯に免疫抑制系の中心的細胞である MDSC を抑制する作用を見出した.この作用は単球型
MDSC
示唆された.一方,補中益気湯は,十全大補湯とは逆に
MDSC を増加させる作用があり,
この作用の違いが十全大補湯と補中益気湯の抗腫瘍作用プロファイルに影響しているもの
サブセットに選択的であり,MDSC 分化を調節している可能性が示唆された.一方,補中益気湯は,
この作用の違いが十全大補湯と補中益気湯の抗腫瘍作用プロファイルに影響しているもの
と想定している.これらの成績は,十全大補湯と補中益気湯の
MDSC 調節作用が抗腫瘍作
十全大補湯とは逆に MDSC を増加させる作用があり,この作用の違いが十全大補湯と補中益気湯の
と想定している.これらの成績は,十全大補湯と補中益気湯の
MDSC 調節作用が抗腫瘍作
用に関わることを明らかにするとともに,これら補剤が慢性炎症や自己免疫疾患などの
抗腫瘍作用プロファイルに影響しているものと想定している.これらの成績は,十全大補湯と補中益
用に関わることを明らかにするとともに,これら補剤が慢性炎症や自己免疫疾患などの
MDSC
が関わる異常免疫病態に対する新たなアプリケーションとなることを示す興味深い
気湯の
MDSC 調節作用が抗腫瘍作用に関わることを明らかにするとともに,これら補剤が慢性炎症
MDSC
が関わる異常免疫病態に対する新たなアプリケーションとなることを示す興味深い
知見である.
や自己免疫疾患などの MDSC が関わる異常免疫病態に対する新たなアプリケーションとなることを
知見である.
示す興味深い知見である.
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