消化性潰瘍・逆流性食道炎(解答)

消化性潰瘍・逆流性食道炎(解答)
テストは難しめに作成しています。テキストや講義、解答と照らし合わせて復習していただけれ
ばと思います。なお、採点を目的としていないので点数は設定していません。
また、記述式の解答は答えが一つとは限りません。私の答案よりも良い解答があることは十分に
考えられますので、参考解答として認識していただければと思います。
第一章.胃の構造
第一問:次の(
)に当てはまる部位について、下枠から選んで記載してください。
胃底部
噴門
○胃体部
○幽門部
胃体部
○噴門
○胃底部
幽門部
第二問:胃の構造と役割について各(
)に当てはまる言葉を記入してください。
粘液
胃酸(塩酸)
ペプシン
胃酸(塩酸)
ペプシン
1
第三問:次の基礎知識について正しいものには○を、間違っているものには×を(
)内に記
入してください。
①(
○
)胃液は胃酸(塩酸)を含んでいるため、強い酸性を示す
②(
×
)ペプシンは胃粘膜を保護する働きがある
ペプシンは攻撃因子の一つです
③(
×
)十二指腸は胃の上にある長さ 25cm 程度の消化管である
下にあります
④(
○
)胃酸は食物を分解するだけでなく、病原菌を殺菌する作用をもつ
第二章.胃・十二指腸潰瘍(消化性潰瘍)とは
第四問:消化性潰瘍が進行して重症となると、下図のようにしょう膜まで侵害されてしまいます。
これよりさらに症状が進行すると「どのような対処が必要となるか」を通常の潰瘍治療と比較して
記載してください。
○ 解答例)
潰瘍の症状が進行してしょう膜まで障害されると、胃に穴が開く前単階となる。この状態を放
っておくと胃に穴が開いてしまう、穿孔と呼ばれる状況に陥ってしまう。
胃や十二指腸に穴が開いてしまうと手術が必要になる。手術を行わないと食物や胃液が漏れ出
して腹膜炎などを起こし、生命にも関わる。通常の潰瘍治療であると、手術ではなく薬による治
療が基本となるが、このような重症例であると手術を行うなど早めの治療が必要となる。
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第五問:胃潰瘍と十二指腸潰瘍の違いについて、次の(
)に当てはまる言葉を記入してく
ださい。
症状
胃潰瘍
症状の発生するタイミング
(
発症要因
十二指腸潰瘍
食事中・食後
(
防御因子
少ない
食生活
和食中心
(
広い
(
空腹時
)の低下
胃酸の分泌
ピロリ菌の胃内分布
)
)
攻撃因子の増加
(
(
)
多い
欧米食
)
)中心
狭い
潰瘍のできやすい場所
胃の下部 1/3(胃角部)
潰瘍のできやすい年齢
40~50 歳代
(
幽門部
)近く
20~30 歳代
第六問:消化性潰瘍の発生メカニズムとして、「攻撃因子」と「防御因子」の関係が重要となり
ます。
「攻撃因子」と「防御因子」のそれぞれの用語を用いて、消化性潰瘍がなぜ起こるかについて
そのメカニズムを簡潔に二つ記載してください。
1)
胃酸などの攻撃因子が増加し、胃の細胞が傷害されるため
2)
粘液などの防御因子が低下し、胃酸からの胃粘膜保護作用が十分でなくなるため
第七問:消化性潰瘍を考える上で重要となる因子について、どのような因子があるかを下の表に
記載してください。
攻撃因子
(
胃酸(塩酸)
ペプシン
防御因子
)
(
粘液
粘膜の血流
その他の因子
)
(ヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌))
(
鎮痛剤(NSAIDs)
)
ストレス・アルコール
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第八問:次のピロリ菌に関する基礎知識について正しいものには○を、間違っているものには×
を(
①(
)内に記入してください。
×
)ピロリ菌は胃酸にも耐えることができる
②(
○
胃酸に耐えることができないため、胃粘膜の中に住み着き、アンモニアによって
胃酸(塩酸)を中和しています
)消化性潰瘍の再発にピロリ菌が関係している
③(
○
)アンモニアやサイトトキシンなどの毒素をピロリ菌が産生し、これが細胞粘膜を傷害
して炎症を引き起こす
④(
○
)ピロリ菌はウレアーゼという酵素によって尿素からアンモニアを産生するが、このよ
うなピロリ菌の性質を「ウレアーゼ活性を持つ」と表現する
⑤(
×
)ピロリ菌はただ胃粘膜に住み着いているだけであり、何も悪さをしない
ピロリ菌は消化性潰瘍を再発させる原因の一つです
⑥(
×
⑦(
×
)ピロリ菌に感染すると、多くの人が消化性潰瘍を発症してしまう
ピロリ菌に感染しても、消化性潰瘍を発症するのは全体の約 2~3%です
⑧(
×
)大人になってからも、ピロリ菌に感染してしまう人はたくさんいる
大人での感染はまれであり、多くは免疫が確立していない幼児期に感染する
⑨(
○
)ピロリ菌は胃粘膜に炎症を起こし、消化性潰瘍を発症しやすい下地を作る
⑩(
○
)ピロリ菌は成長の遅い細菌であり、この菌の発見には偶然が大きく関わっている
)接触感染によって、ピロリ菌に感染する
ピロリ菌は口を介する経口感染によって感染します
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第三章.消化性潰瘍の治療
第九問:消化性潰瘍の治療を行う上で、「攻撃因子」と「防御因子」を考えることが重要となり
ます。
「攻撃因子」と「防御因子」のそれぞれの用語を用いて、どのようにして消化性潰瘍を治療す
るかを簡潔に二つ記載してください。
1)
胃酸などの攻撃因子を抑制する
2)
粘液や粘膜血流の改善など、防御因子を増強する
第十問:消化性潰瘍には「No acid, No ulcer.」という考えがあるが、これはどのような意味である
かを簡潔に記載してください。
○ 解答例)
直訳すれば「酸がなければ、潰瘍はない」となり、胃酸が存在しなければ、潰瘍もないという
意味である。
第十一問:消化性潰瘍の治療には攻撃因子抑制薬が使用されます。現在、主に使用される攻撃因
子抑制薬の種類を二つ記載してください。
H2 ブロッカー
プロトンポンプ阻害薬
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第十二問:第十一問で記載した攻撃因子抑制薬に関して、両者の胃酸分泌抑制作用の強さには違
いがあります。なぜこのような強さの違いが起こるのかを、下の図を参考にして記載してください。
○ 解答例)
胃酸が分泌されるまでのメカニズムとして、まず初めにアセチルコリンやヒスタミン、ガスト
リンなどの情報を伝達する物質がそれぞれの受容体に作用する。受容体に作用することでシグナ
ルがプロトンポンプに伝わり、胃酸が分泌される。このとき、ヒスタミンが作用する「H2 受容体」
と胃酸分泌に関わる「プロトンポンプ」が特に重要となる。
潰瘍の状態であるとアセチルコリン、ヒスタミン、ガストリン全てのシグナルがプロトンポン
プに伝わって大量の胃酸が分泌される。ここに H2 ブロッカーを投与すると H2 受容体が阻害され、
ヒスタミンが受容体に作用できなくなる。これによって、胃酸の分泌を大幅に抑制することがで
きる。
ただし、この状態であるとアセチルコリンやガストリンからの胃酸分泌を抑えることができな
い。そこで、プロトンポンプを阻害すれば全ての胃酸分泌を完全に抑制することができる。その
ため、
「プロトンポンプ阻害薬は H2 ブロッカーよりも、胃酸分泌抑制作用が強い」とされている。
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第十三問:次の防御因子に関する基礎知識について正しいものには○を、間違っているものには
×を(
①(
)内に記入してください。
○
)胃酸が胃の中に存在していたとしても、胃酸が胃粘膜を傷つけないように保護するこ
とができれば胃潰瘍になることはない
②(
○
)防御因子を増強する薬は作用があまり強くないため、通常は攻撃因子を抑える薬と一
緒に服用する
③(
×
)粘液分泌促進薬は潰瘍が起きている部分に保護層を形成し、胃酸から胃粘膜を守る
粘膜保護薬の説明です
④(
×
)粘膜保護薬は粘液分泌を促し、胃酸による攻撃を防ぐ
粘液分泌促進薬の説明です
⑤(
×
)胃粘膜微小循環改善薬は胃粘膜の血流を止めることで、胃酸への防御機能を高める
血流を改善することで
⑥(
○
)鎮痛剤(NSAIDs)の副作用による潰瘍に対し、プラスタグランジン(PG)製剤が使
用されることがある
⑦(
○
)粘膜保護薬であるプロマックが味覚障害の治療に使用されるように、一つの医薬品が
全く別の病気を治療することもある
第十四問:鎮痛剤(NSAIDs)による副作用として胃腸障害が知られていますが、下枠に「鎮痛剤
(NSAIDs)によって潰瘍が発生するメカニズム」を記載してください。
○ 解答例)
体の中に備わっている生体分子として、胃粘膜を増強したり粘膜修復を促進したりする物質が
存在する。このような働きをする物質にプラスタグランジンがあり、これを補えば「粘膜保護」
や「組織修復」などの作用を期待することができる。
鎮痛剤の一種である NSAIDs は、このプロスタグランジンの産生を阻害する。つまり、鎮痛剤
の服用によって防御因子が極端に少なくなってしまう。
これによって攻撃因子が有意となり、消化性潰瘍が発生してしまう。
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第十五問:ピロリ菌の除菌は以下のようなステップをたどります。それぞれのステップに対して、
三ヶ所の(
)に当てはまる言葉を記入してください。
潰
瘍
の
治
療
ピ
ロ
リ
菌
の
検
査
再び除菌
第十六問:ピロリ菌の一次除菌に使用される薬の種類や名前を下枠に三つ記入してください。
1)
プロトンポンプ阻害薬
2)
アモキシシリン
3)
クラリスロマイシン
第十七問:ピロリ菌の除菌にプロトンポンプ阻害薬が使用される理由について、下枠に記載して
ください。
○ 解答例)
ピロリ菌の除菌でのプロトンポンプ阻害薬は「潰瘍を治療する」という目的以外にも「抗生物
質の殺菌力を増大させる」という意味がある。胃酸はその強い酸によって食物を分解したり細菌
を殺したりするが、化学物質である医薬品の効果を下げてしまうことがある。抗生物質も例外で
なく、胃酸は抗生物質の殺菌力を抑えてしまう。
プロトンポンプ阻害薬によって胃酸分泌を止めると、胃の中は胃酸がなくなるため pH が上昇
して中性の状態に近づいていく。これによって、抗生物質の殺菌力が上昇する。
実際、クラリスロマイシンはプロトンポンプ阻害薬によって pH を中性付近にまでにすると、
胃酸が存在する状態と比べてその殺菌力は百倍以上にも上昇すると言われている。H2 ブロッカ
ーでは殺菌力を増大させるまでの胃酸分泌抑制作用が不十分であるため、プロトンポンプ阻害薬
が使用される。
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第十八問:次の基礎知識について正しいものには○を、間違っているものには×を(
)内に
記入してください。
①(
○
)ピロリ菌の除菌により、潰瘍の再発を大幅に減らすことができる
②(
×
)ピロリ菌の一次除菌に失敗したら、もう一度同じ薬を使って二次除菌を行う
薬を変えて二次除菌を行います
③(
○
)一次除菌では、約 80%の患者さんでピロリ菌を除菌可能である
④(
○
)食物が胃の中で停滞すると、潰瘍を悪化させてしまうことがある
⑤(
○
)消化管運動を改善すると、潰瘍などの消化器症状を改善することができる
第四章.逆流性食道炎
第十九問:逆流性食道炎の病態について、
(
)の中に入る言葉を下枠に記入してください。
健康な状態であると胃は粘膜によって守られているため、たとえ(
ア
)のような強力な酸が
存在していたとしても胃粘膜が傷つけられることはない。
これに対して、胃のすぐ上にある(
イ
)は胃のように粘膜によって守られていない。そのた
め、胃酸に何回もかかることで食道粘膜が侵され、
(
疾患を(
(
エ
エ
ウ
)が引き起こされてしまう。このような
)という。
)は再発を繰り返すことも多い病気であり、生活習慣の改善や薬によって適切に病気を
管理していく必要がある。
また、逆流性食道炎の主な症状としては(
オ
)がある。その他にも、ゲップや呑酸、胸の痛
みなどがある。
単なる(
オ
)だからという理由で片付けずに、このような患者さんは一度は(
カ
)を受
けてみることが大切となる。
ア)胃酸(塩酸)
イ)食道
オ)胸焼け
カ)検査
ウ)炎症
エ)逆流性食道炎
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第二十問:次の基礎知識について正しいものには○を、間違っているものには×を(
)内に
記入してください。
①(
○
)通常は食道に逆流が起こらないように筋肉で閉じられており、この筋肉を下部食道括
約筋という
②(
×
)食道は胃と同じように粘液で守られているため、胃酸に触れても問題ない
粘液で守られていないため、胃酸に触れることで炎症が起こります
③(
×
)逆流性食道炎の患者さんであっても、食物の逆流防止機能は正常に働いている
食物の逆流防止機能が働きにくくなっています
④(
○
)健康な人であっても食道への逆流は起こっている
⑤(
○
)逆流性食道炎の患者さんでは健康な人に比べて逆流の回数が多かったり、逆流してい
る時間が長かったりする
⑥(
×
)逆流性食道炎の治療では主に H2 ブロッカーが使用され、患者さんによってはプロトン
ポンプ阻害薬が使用されることもある 主にプロトンポンプ阻害薬が使用され、患者さんに
よっては H2 ブロッカーが使用されます
⑦(
×
)逆流性食道炎を治療することができれば、再発することはほとんどない
多くの人で再発するため、維持療法が必要となります
第二十一問:胸焼けなどの症状はあるけれども、内視鏡検査などを行っても炎症などの症状が認
められない患者さんもいます。このような患者さんと逆流性食道炎を全て含めて、何と言う病名が
付けられているか下枠に記入してください。
胃食道逆流症(GERD)
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第二十二問:逆流性食道炎が起こる要因として「食べすぎ」、「脂肪の多い食事」、「肥満体質」な
どがあるが、なぜこれらの要因によって逆流性食道炎が引き起こされやすくなるかを、下図を参考
にして枠内に記載してください。
○ 解答例)
図内の緑の丸で囲った枠の中に「食べすぎや脂肪の多い食事、ストレス」という言葉が並べら
れているが、食べ過ぎるとその分だけ胃の内容物の体積が多くなる。これによって、必然的に食
物が食道付近に近づく機会が増えてしまう。
さらに、脂肪の多い食事や香辛料などの刺激の強いもの、そしてストレスを感じている時は胃
酸分泌が過剰となってしまう。消化性潰瘍が起こる場合と同じように、攻撃因子である胃酸が多
いほど、粘膜に対するダメージが大きくなる。そのため、これら食べすぎや脂肪の多い食事、そ
してストレスなどは逆流時の粘膜傷害性を上げるために逆流性食道炎の原因となる。
また、お腹が圧迫されていることで、その圧力が胃まで影響してしまう。胃が圧迫されるので、
その分だけ胃の内容物が食道に近づいてしまい、何かの拍子で胃酸が食道に触れてしまう。
このような腹圧が大きい状況としましては、太りすぎや妊婦、そしてベルトをきつく締めてい
る状態、前かがみの姿勢などがある。このような要因が重なってしまうことで、食物が食道まで
逆流してしまう。これによって食道に炎症が起こり、逆流性食道炎を発症してしまう。
このように考えると、「胃酸が多量に分泌されている食後に横になること」や「胃の機能低下
を招く喫煙や加齢」など同じように、逆流性食道炎を誘発することが理解できる。
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第二十三問:下にある表について、(
)の中に入る言葉を記入して表を完成させてくださ
い。
○ 消化性潰瘍・逆流性食道炎の主な治療薬
種類
分類
攻
撃
(
H2 ブロッカー
)
因
一般名
商品名
シメチジン
タガメット
ラニチジン
ザンタック
ファモチジン
(
ガスター
)
子
(
の
プロトンポンプ阻害薬
抑
(PPI)
制
ラベプラゾール
)
パリエット
ランソプラゾール
(
タケプロン
)
エソメプラゾール
(
ネキシウム
)
アルジオキサ
イサロン
粘膜保護薬
防
ポラプレジンク
御
レバミピド
ムコスタ
子
テプレノン
セルベックス
の
スルピリド
因
増
(
粘液分泌促進薬
)
(
ドグマチール
)
胃粘膜微小循環改善薬
プロスタグランジン製剤
(PG 製剤)
セロトニン受容体作動薬
イルソグラジン
ガスロンN
ミソプロストール
サイトテック
モサプリド
(
ガスモチン
イトプリド
ガナトン
ドンペリドン
ナウゼリン
)
ドパミン受容体拮抗薬
プロトンポンプ阻害薬
ランソプラゾール
ロ
ペニシリン系抗生物質
アモキシシリン
リ
マクロライド系抗生物質
クラリスロマイシン
の
プロトンポンプ阻害薬
ランソプラゾール
除
ペニシリン系抗生物質
アモキシシリン
抗原虫薬
メトロニダゾール
ピ
プロマック
)
強
消
改 化
善 管
薬 運
動
(
(
ランサップ
)
(
ランピオン
)
菌
菌
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