別紙 研究成果発表の概要 研究成果発表テーマ 概要 発表者 ① グリーン IT によるCO2 削減に貢献する大型・高精細有機 EL ディスプレ 表面処理チーム イ製造技術イノベーションのための低熱膨張メタルマスク製造に関する 永山研究副主幹 基盤技術の開発 産技研の固有技術である「低熱膨張鉄-ニッケル合金めっき技術」を用いて,ディスプレイへ の発光素子の成膜時に加熱されても伸びない低熱膨張のメタルマスク(細かい穴が開いた薄い 板)の製造技術を確立し,大型(40インチ以上) ・高精細有機ELディスプレイの量産を実現 する。 平成26年度には,熱膨張が極めて低いインバー(鉄-ニッケル合金)電鋳(電気めっき鋳造) 製品の量産技術を世界で初めて確立した(共同研究先企業において,同技術により製造した低熱 膨張・大型・高精細メタルマスクが,平成27年度に販売される予定)。 ② 伝統的な西陣織製織技術を駆使し,独創的で意匠性の高い新しい織物組 製織システムチーム 織の製織を可能とする技術の開発と実用化 本田次席研究員 織物におけるたて糸とよこ糸の交錯状態を指す織物組織には様々なものがあり,その数は無 限であるが,実際に織物に適用するには様々な制約が存在するので実現できる織物組織は限ら れる。しかしながら織物製造における設計項目のうち,この織物組織は生地の物性や外観に大 きく影響を及ぼす重要な項目であることから,新しい織物組織の具現化は新製品開発へとつな がりやすい。 西陣の伝統的な製織技術を駆使して新しい織物組織を実現し,従来に無い特徴を備えた織物 を活用して事業者において製品化された例を2点紹介する。 ③ 熱硬化性樹脂新規微細発泡体の研究開発 高分子系チーム 伊藤次席研究員 プラスチックはその性質上,熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂の2種類に分けられる。熱硬化性樹 脂は,原料を加熱・加圧することで製品の形状となり,再度溶融して使用することはできないが, 高温にしても溶融しないため,その加工品は耐熱性部品として使用されている。 この熱硬化性樹脂の一つであるエポキシ樹脂は,その接着性,機械的強度,絶縁性の高さから 接着剤,電子基板等に利用され,その発泡体であるエポキシ樹脂発泡体は鋼板補強材や,ガラス 研磨パッドとして実用化されている。これらの用途において,発泡体の機械的特性の向上や微細 化する砥粒(とりゅう)への対応には気泡の微細化が有効であると考えられるが,微細な気泡を 有するエポキシ樹脂発泡体の作製はその硬化特性に起因して困難とされている。 そこで,本研究では,エポキシ樹脂に異種の熱可塑性樹脂をブレンドし,両者の相分離構造を 利用することで微細な気泡を得ることを目的としている。 平成26年度は,従来より微細な気泡を有するエポキシ樹脂発泡体の試作に成功し,エポキシ 樹脂発泡体の気泡の連通性や気泡壁表面の構造を制御できることが明らかになった。 ④ 水素吸蔵合金を利用した水素標準化基盤技術の開発 金属系チーム -4族元素および5族元素の水素侵入挙動について- 丸岡次席研究員 水素燃料電池自動車の販売が開始され「水素」というワードをよく見かける。水素の貯蔵手段 には,高圧ガスボンベ,液化水素および水素吸蔵合金が挙げられる。 水素吸蔵合金の性能向上や水素脆性の防止のためにも金属への水素侵入挙動を知ることが重 要である。本研究では検討例の少ない表面から深さ方向への水素分布の観点から4A族元素(T i,Zr,及びHf)および5A族元素(V,Nb及びTa)への水素侵入挙動に関する基礎的 検討を行った。試料に少量の水素を吸蔵させ,表面からの深さ方向への水素分布をGD-OES により測定することで,水素侵入挙動について検討した。 ⑤ 先進分析技術を活用した新しい京焼・清水焼用無鉛上絵具の創成 窯業系チーム 稲田次席研究員 環境にやさしい鉛を含まない上絵具や公害問題から製造が中止された鉄を主成分とした赤絵 具,耐食洗機特性を有する上絵具の開発など,産技研が有する先進分析技術とこれまでに蓄積し てきた上絵具を含む陶磁器釉薬の研究実績を融合し,新しい京焼・清水焼用の無鉛上絵具の製品 化を図る。 当研究成果発表会では,産学公で取り組んだ新ベンガラの量産プロセスと鉛を含まないフリッ ト(ガラス)を用いた無鉛赤絵技術について紹介する。また,研究のベースとなった窯業系チー ムの得意技術についても簡単に紹介する。 ⑥ 清酒酵母性能評価システムの開発 バイオ系チーム ~呑み方提案型酵母の開発~ 廣岡研究副主幹 産技研の得意技術である分析技術と清酒製造技術が一体となった酵母評価システムを構築し, 構築したシステムを用いて開発した新規酵母を,清酒製造者が一定の根拠をもっておススメの呑 み方(冷酒,燗酒など)が提案でき,若者をはじめとした清酒をよく知らない人にもおいしく味 わっていただける「呑み方提案型酵母」として供給し,清酒の需要喚起に繋げていく。 平成26度は,この研究開発の過程で開発した,冷やして呑む呑み方に適した清酒の製造用の 新酵母「京の咲(さく)」を使用した新酒が,平成27年3月21日から販売開始された。なお, 燗酒向け酵母の実用化を,平成27年度内に市内酒造業界にて予定している。 ⑦ 高齢者のQOL向上のための,京都の伝統工芸による美的感性価値の高 デザインチーム い機能性介護食器の開発 竹浪次席研究員 高齢・障害による,嚥下(飲み込みにくい)障害者向けの調整食は滑らかさを重視する物性的 な特徴があるため,この調整食を食する高齢者及び障害者では,通常の食器の使用が難しく,身 体機能に応じた介護食器を利用することが多い。しかし,既存の介護食器は機能性が重視される あまり,食事の魅力を十分に引き立たせる感性的価値に大きな問題があった。 そこで,京都の伝統産業が持つ感性的な効果に着目し,健常者用の食器と比較しても違和感の 少ない機能的なフォルムと京都の伝統工芸が持つ高い意匠性を融合させることで,使いやすく豊 かな食文化を提案できる食器をデザインした。 ⑧ 特定芳香族アミンをはじめとする繊維製品に含まれる物質の法規制への 色染化学チーム 対応 上坂次席研究員 特定芳香族アミン(※)を生成する一部のアゾ染料が,平成28年4月から使用規制されるこ とから,繊維製品に含まれる当該物質の分析技術を確立するとともに,代替染料の検討など規制 対象物質が含まれない製品開発についての技術支援を行う。 平成26年度は,特定芳香族アミンの分析技術の確立として,染色物および販売されている染 料からの特定芳香族アミンの定性,定量分析を行い,技術支援の際に必要となるデータを蓄積し た。また,市内繊維業界へのヒアリング調査を行った結果,法規制に対する認識が不十分であり, また業界内で統一されていないことが分かった。 ※ 特定芳香族アミンとは 染料の一種であるアゾ染料が皮膚表面や腸内細菌及び肝臓などで還元的に分解され,生 成される芳香族アミンのうち,発がん性を有する若しくは疑われる24種類の物質
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