心身免疫学特殊講義 - 人間総合科学大学

心身免疫学特殊講義
単位数:2
選択
担当教員名:庄子和夫
開講時期:1・2 年次 後期
(修士受講可)
●テーマ
ヒトのこころと身体の相関について免疫の働きを通して理解し、ストレス社会における真の健康づくりを
考究する。
①一般目標
生体防御と言う観点から免疫に関与する細胞群の相互作用を理解
し、さらに神経系・内分泌系・免疫系のネットワークについても理解
する。また第二の脳とも言われる腸管の働きと心因的な影響につい
て知る。
達成目標
②行動目標
①ストレスが免疫系に及ぼす影響について具体的な事例を列挙し、
将来にわたる問題点を予測する。
②感情的変化が免疫系に及ぼす影響について具体的な事例を
列挙し、免疫系を向上させるような方策を考え、実施する。
③「こころ」と「からだ」とを結ぶ情報伝達のネットワークを
理解し、両者を有機的に結ぶ具体的な考えを提案する。
人体には様々な組織や器官があり、各々生命の維持に重要な役割を果たしてい
る。しかし、それらの各組織や器官が連帯し、協調して働かなければ生命の維
持はままならない。免疫系は生命を守るという生体防御に関わる重要な機構で
あるが、もちろん免疫系細胞単独の働きではその効力を十分に発揮することが
できない。生体の防御や自然治癒力などの生命維持に直結する機構が十分に活
動するためには、免疫系を中心とした個体全体の働きを統治する生体調節系の
細胞群の協調した作用が必要である。つまり、神経系、内分泌系、免疫系の3
つの細胞群の協調作用である。これらの細胞群は全体としてネットワークを形
成しているが、現代社会はこれらの密接な連鎖を断ち切る方向に私たちを誘導
している。社会が複雑化し、ストレス社会になった今こそ、「こころ」と「か
概要
らだ」との関連を免疫学を通じて解明することが必要とされる時期になってき
たのである。
神経系、内分泌系、免疫系のそれぞれの生体調節系の細胞は、神経伝達物質、
内分泌系のホルモン、免疫系のサイトカインなどのそれぞれの情報伝達物質を
放出しているが、実はこれらの物質群は広範に重複し、共有されている。従っ
て、これらの系は明確な役割分担を独立して果たしているのではなく、お互い
に密接に関連しながら、全体としてネットワークを形成していることが明らか
になってきた。
現在、精神的ストレスが原因で起こる疾患が増えてきている。この種のストレ
スは免疫力を低下させ、大脳辺縁系の活動を逆に亢進して、エンドルフィンや
エンケファリンといった脳内ホルモンのレベルを上昇させ、数々の新しい疾病
の発生を促している。また、「脳・腸相関」といわれるように、脳は免疫系の
影響が大きい腸と密接に関連をもっている。
このように、全身の組織や器官の調和的な作用に神経系、内分泌系、免疫系の
ネットワークが重要な役割を果たしているが、今後「こころ」と「からだ」の
関連を理解するとき、この点を明確にすることが重要になると考えられる。
本講義では具体的な例としてストレス、笑うこと、楽しむこと、イメージトレ
ーニングなどを取り上げ、それがどのようにして免疫のバランスを保ち、免疫
力を増加させてゆくかについて、実験データを示しながら、実際の社会生活の
現場と照合し、「こころ」と「からだ」の相互関係を解析してゆく。つまり、
本講義は、神経・内分泌・免疫ネットワークにおける情報伝達の基礎と各系の
関係を、特に現代社会が問題としている事項との関連において、解明すること
を目的としている。
従って、受講生には次のような課題を解決するような視点をもって履修して欲
しい。
① 生体防御に与る細胞群の相互影響
② 免疫反応に与る細胞群の有機的連絡
③ 神経系、内分泌系、免疫系細胞群のネットワーク
④ 第2の脳といわれる腸管の働きと心因的な影響
⑤ ストレスの免疫系に及ぼす影響
⑥ 感情的変化が免疫系に及ぼす影響
⑦ 「こころ」と「からだ」とを結ぶ情報伝達のネットワーク
⑧ 自然治癒力と共生
キーワード
免疫、生体防御、自然治癒力、細胞群のネットワーク、神経系細胞、内分泌系
細胞、情報伝達物質、脳・腸相関、ストレス、生命維持、心身免疫
①教科書
・久住真理監修:心身健康科学概論.人間総合科学大学,
2012.
・藤田紘一郎:こころの免疫学.新潮選書,2011.
②参考図書
・藤田紘一郎:免疫力をアップする科学.サイエンス・アイ新
書,2011.
・藤田紘一郎:腸内革命.海竜社,2011.
・藤田紘一郎:原始人健康学.新潮選書,2004.
・鈴木はる江:自律神経生理学.人間総合科学大学,2003.
・新井康允:脳科学.人間総合科学大学,2001.
使用教材
・佐藤昭夫・佐藤優子:人間科学概論.人間総合科学大学,
2000.
・藤田紘一郎:腸内細菌と共に生きる.技術評論社,2015.
・萩原清文:好きになる免疫学.講談社サイエンティフィク,
2014.
③関連学会
誌等
・J.Immunology
・Immunology
・J.Neuroimmunology
授業方法
インターネットによる在宅学修
計 2 回のレポート、他学生のレポートに対する意見書き込み、科目修了試験結
成績評価
備考
果等の総合評価