モデル検査器NuSMVを用いたオントロジーの検証

平成 23 年東北地区高等専門学校専攻科研究発表交流会
講演番号 T11-C03
モデル検査器 NuSMV を用いたオントロジーの検証
○阿部 雄貴
小林 秀幸
高橋 薫
仙台高等専門学校
1.はじめに
オントロジーの記述は人手で行うこ
とが大半であり,その中には構文的矛盾や意味的な間
違い,一貫性が保たれていない記述が含まれている可
能性がある.そのため,記述したオントロジーの内容
を検証する必要がある.文献[1]ではオントロジーを形
式化したグラフで表現し,素である関係と補集合の関
係に着目し,構文に関する検証を行っている.しかし
意味的矛盾に関する検証は難しい.
本稿では,ソフトウェアや組み込みシステムの検証
において有効なモデル検査の手法をオントロジーの検
証に応用し,構文的な矛盾や意味的矛盾を含んだオン
トロジーの検証を行う.モデル検査ツールとしては
NuSMV[2]を用いる.
検証内容:男が誰かの姉(妹)として記述されている
この検証式を満たさない場合,反例(図2)が出力
され,この反例を解析することにより,修正を行うこ
とができる.
4.おわりに
本稿ではモデル検査器 NuSMV を用
いてオントロジーの検証を行うための変換や検証方法
について述べた.モデル検査器を用いたことにより,
出力された反例を矛盾の手掛かりとすることができた.
今後はオントロジーを NuSMV へ入力し,検証をサポ
ートする検証ツールを実装する予定である.
オントロジ-
rdfs:subClassOf
Human
Woman
rdf:type
Alice
rdfs:subClassOf
Man
hasBrother, hasSister
rdf:type
hasSister
Bob
状態遷移モデル
owl:Thing, empty,
hasSubClass, S, -, -, -
Human, empty,
hasSubClass, O, -, -, Man, empty,
hasSubClass, O, -, -, -
Human, empty,
hasSubClass, S, -, -, -
Woman, empty,
hasSubClass, O, -, -, -
・・・
3.検証例
本節では意味的矛盾を含んだオントロ
ジーを例に検証を行う.図1に矛盾を含んだオントロ
ジーと,前節で述べた規則に従い,変換した状態遷移
モデルを示す.この例では,Man クラスのインスタン
スが「姉(妹)である」と記述されているため,矛盾
が生じている.次に,この状態遷移モデルと以下の検
証内容を表現した検証式を NuSMV へ入力し,検証を
行う.検証式は CTL 時相論理式を用いて表現する.
EX (so=o & c=Man & p=hasSister))
・・・
2.オントロジーの状態遷移モデル
本節では,オ
ントロジーを NuSMV で扱うための検証用のモデル,
状態遷移モデルについて述べる.NuSMV で扱うモデ
ルはラベル無し状態遷移系であり,単純な対応付けで
は元のオントロジーが持つ関連性を損なうことが考え
られる.また検証内容に対する反例の出力を用いるこ
とでオントロジーの誤りに対する修正の手掛かりを得
ることができるため,これらを考慮し状態遷移モデル
へと変換を行う必要がある.
状態遷移モデルでは,オントロジーのトリプルを主
語と目的語を表す 2 つの状態に分け表現する.クラス
とインスタンスを別々の変数で表すことにより,それ
ぞれの関係性に対し検証を行うことができる.また,
オントロジーではクラス演算や値に関する制約を記述
することができるため,クラス演算等を表現するため
にクラス演算子に関する変数や制約条件を表す変数な
どを加え,状態遷移モデルへ変換を行う.
検証式: AG !(so=s & i !=empty &
図 1 矛盾を含んだオントロジーと状態遷移モデル
図 2 反例の出力
【参考文献】
[1] S. C. Lam, D. Sleeman and W. Vasconcelos, “Graph-Based
Ontology Checking”, Proceedings KCAP05 Workshop on Ontology
Management: Searching, Selection, Ranking and Segmentation,
pp. 33-40, 2005.
[2] A. Cimatti, et. al., “NuSMV: A New Symbolic Model Verifier ”,
LNCS, Vol.1633, pp.495–499,1999.