産業廃棄物、管理業務の代行

第
46 号
編集 発行
編集人:子安 伸幸
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2015.9.1 発行
排出事業者が行うべき管理を他社に任せられる?
産業廃棄物、管理業務の代行
排出事業者として何も関知していない状況では、責任を果たしたとは言えない!
産業廃棄物を排出すると、適正な処理と法令への対応についての責任が発生する。処理業者を選定し、条件を交渉、委託契約書を締結し、マニ
フェストを交付、返送された伝票を照合し保存し、請求・入金の管理、さらには年度ごとの報告書作成をする。というように、法令で定められる
規定を中心に、排出事業者が行うべき産業廃棄物に関わる業務は多岐にわたる。この業務は排出事業者の責任で行う事が定められているが、排出
事業者ではない他社が代行している場合もあるだろう。考えられる事例から、望ましくない状況と、注意しなければならない点を紹介する。
■処理を委託した場合の排出事業者責任
①法令では「事業者は・・・」
廃棄物処理法における「事業者」とは、排出
事業者を指す。委託契約に関しても、マニフ
ェストの交付に関しても、すべて「事業者は
・・・しなければならない」と記され、その
責任が排出事業者にあることを示している。
委託契約書の締結
(委託可能との判断)
排出事業者
処理委託
処理業者
マニフェストの
交付・返送・保存
処理業者に産業廃棄物の処理を委託した場合でも
・最終処分まで適正処理を行う責任
・処理委託した場合に見届ける責任(契約を締結し、マニフェストを交付し返送を受ける等)
は、すべて排出事業者にある
【実際に起こり得る管理業務の代行】
①委託関係にある処理業者によるサービス
①-1 ~契約書を作成してもらう~
処理業者を選定し委託を開始しようとする
場合には、処理委託契約書を締結しなければ
ならない。その契約書を処理業者が作成し、
排出事業者は押印だけするという状況に問題
はない。ただし、契約を行う義務は排出事業
者にあることから、記載事項などの法律で定
められる内容に不備が無いのかを確認してお
く責任は、あくまでも排出事業者にある。
①-2~紙マニフェストを全て揃えて送付~
紙マニフェストはすべて処理業者が記載し
て用意してもらっているという状況も、契約
書作成の場合と同様に問題はない。ただし、
交付の義務は排出事業者にあることから、そ
の記載内容に不備が無いかを確認する責任は
排出事業者にある。
しかし、マニフェスト伝票を全て処理業者
が所有し、処理完了の報告伝票(B2・D・
Eの各票)と合わせてA票も返送されるとい
う状況は望ましくないといえる。マニフェス
トの本来の目的は、引き渡した廃棄物に対す
る処理完了報告を、運搬終了・処分終了・最
終処分終了の段階ごとに受け取り、引渡し時
に控えとして保有するA票と照合確認するこ
とで処理の完了を排出事業者が把握すること
にある。
①-3~電マニの加入者情報を伝える~
電子マニフェストの場合には、排出事業者
がJWNETに廃棄物の引き渡し情報を登録
することからマニフェストの運用がスタート
する。情報の登録の為にはIDとパスワード
を用いて専用のサイトにログインをしなけれ
ばならないが、IDとパスワードを、処理業
者を含む第三者に伝えてしまえば、誰でも電
子マニフェストの登録を行えることになる。
これも、マニフェスト制度の主旨には反する
管理体制になる。
マニフェストそのものが、あくまでも伝票
としての管理であり、実際の廃棄物の処理を
完了した証拠となるほどの能力までは持って
いない。また、電子マニフェストの場合、廃
棄物そのものと共に移動する紙マニフェスト
とは異なり、登録から報告まですべて処理の
事後記録となることから、適正処理の確認を
行うという本来の目的は形骸化してしまう可
能性がある。しかし、排出事業者が委託した
処理業者の業務を確認するという位置づけで
ある以上、当事者である処理業者にマニフェ
ストの運用のすべてを任せてしまっては、本
来の目的は全く果たされないのだ。
①-2の状況と同じく、最終的に必要な伝
票が揃っていれば、問題が無いようには見え
るが、マニフェスト制度の本来の主旨とは異
なる管理体制になってしまう。
②第三者が行う事を禁止する定めはない
「事業者は・・・しなければならない」と記
される法令において、第三者が行うことを禁
止する定めはない。排出事業者が行わなけれ
ばならない義務について、第三者が行うこと
ができるという根拠は、法令で第三者が行う
ことを禁止する定めがないことによる。
③処理に関する再委託は禁止されている。
廃棄物処理法では、処理業者が委託を受けた
処理を自らが行わずに、他人に委託すること
を原則として禁止している。収集運搬の委託
を受けたが、実際に運搬する者は下請業者で
あるという状況は認められない。
②処理業者の紹介
「廃棄物の事は専門的で良く分からないか
ら、業者を紹介してもらった」というような
状況は無いだろうか。処理業者を紹介すると
いうこと自体に問題は全くない。しかし、紹
介する業者にすべての処理を任せていること
は、原則として禁止されている再委託と同じ
状況であると言える。処理委託契約において
は、処理業者と直接契約することで、排出事
業者自身で適した処理業者であるかどうかを
判断し、選択する必要がある。
■全てを任せる状況は法の趣旨に反する
産業廃棄物を処理する責任は排出事業者に
あり、委託した場合の見届けの義務も排出事
業者にある。一方で、法律において第三者が
行う事を禁止する定めはないことから、処理
業者の選定、委託契約書の作成、マニフェス
トを交付し返送された伝票を照合し保存する
など、あらゆる産業廃棄物に関する管理業務
を第三者が行うことは違法とは言えない。た
だし、委託する処理業者にすべてを任せるよ
うな状況は、禁止する定めがないとはいえ、
適正処理の確認の対象に権限を委ねることに
なり、法令の考える趣旨には反する。
排出事業者が行うべき業務について、誰か
に任せているから自身では把握できていない
という状況は望ましくないといえる。
(廃棄物から環境問題を考える) ユニバースクラブ会員専用 「Clubごみュニティ」 第46号 2015.9.1