第 46 号 編集 発行 編集人:子安 伸幸 〒105-0001 港区虎ノ門3-7-10 ランディック虎ノ門ビル5F TEL : 03-6809-2581 FAX : 03-6809-2582 URL : http://www.universe-corp.jp/ 2015.9.1 発行 排出事業者が行うべき管理を他社に任せられる? 産業廃棄物、管理業務の代行 排出事業者として何も関知していない状況では、責任を果たしたとは言えない! 産業廃棄物を排出すると、適正な処理と法令への対応についての責任が発生する。処理業者を選定し、条件を交渉、委託契約書を締結し、マニ フェストを交付、返送された伝票を照合し保存し、請求・入金の管理、さらには年度ごとの報告書作成をする。というように、法令で定められる 規定を中心に、排出事業者が行うべき産業廃棄物に関わる業務は多岐にわたる。この業務は排出事業者の責任で行う事が定められているが、排出 事業者ではない他社が代行している場合もあるだろう。考えられる事例から、望ましくない状況と、注意しなければならない点を紹介する。 ■処理を委託した場合の排出事業者責任 ①法令では「事業者は・・・」 廃棄物処理法における「事業者」とは、排出 事業者を指す。委託契約に関しても、マニフ ェストの交付に関しても、すべて「事業者は ・・・しなければならない」と記され、その 責任が排出事業者にあることを示している。 委託契約書の締結 (委託可能との判断) 排出事業者 処理委託 処理業者 マニフェストの 交付・返送・保存 処理業者に産業廃棄物の処理を委託した場合でも ・最終処分まで適正処理を行う責任 ・処理委託した場合に見届ける責任(契約を締結し、マニフェストを交付し返送を受ける等) は、すべて排出事業者にある 【実際に起こり得る管理業務の代行】 ①委託関係にある処理業者によるサービス ①-1 ~契約書を作成してもらう~ 処理業者を選定し委託を開始しようとする 場合には、処理委託契約書を締結しなければ ならない。その契約書を処理業者が作成し、 排出事業者は押印だけするという状況に問題 はない。ただし、契約を行う義務は排出事業 者にあることから、記載事項などの法律で定 められる内容に不備が無いのかを確認してお く責任は、あくまでも排出事業者にある。 ①-2~紙マニフェストを全て揃えて送付~ 紙マニフェストはすべて処理業者が記載し て用意してもらっているという状況も、契約 書作成の場合と同様に問題はない。ただし、 交付の義務は排出事業者にあることから、そ の記載内容に不備が無いかを確認する責任は 排出事業者にある。 しかし、マニフェスト伝票を全て処理業者 が所有し、処理完了の報告伝票(B2・D・ Eの各票)と合わせてA票も返送されるとい う状況は望ましくないといえる。マニフェス トの本来の目的は、引き渡した廃棄物に対す る処理完了報告を、運搬終了・処分終了・最 終処分終了の段階ごとに受け取り、引渡し時 に控えとして保有するA票と照合確認するこ とで処理の完了を排出事業者が把握すること にある。 ①-3~電マニの加入者情報を伝える~ 電子マニフェストの場合には、排出事業者 がJWNETに廃棄物の引き渡し情報を登録 することからマニフェストの運用がスタート する。情報の登録の為にはIDとパスワード を用いて専用のサイトにログインをしなけれ ばならないが、IDとパスワードを、処理業 者を含む第三者に伝えてしまえば、誰でも電 子マニフェストの登録を行えることになる。 これも、マニフェスト制度の主旨には反する 管理体制になる。 マニフェストそのものが、あくまでも伝票 としての管理であり、実際の廃棄物の処理を 完了した証拠となるほどの能力までは持って いない。また、電子マニフェストの場合、廃 棄物そのものと共に移動する紙マニフェスト とは異なり、登録から報告まですべて処理の 事後記録となることから、適正処理の確認を 行うという本来の目的は形骸化してしまう可 能性がある。しかし、排出事業者が委託した 処理業者の業務を確認するという位置づけで ある以上、当事者である処理業者にマニフェ ストの運用のすべてを任せてしまっては、本 来の目的は全く果たされないのだ。 ①-2の状況と同じく、最終的に必要な伝 票が揃っていれば、問題が無いようには見え るが、マニフェスト制度の本来の主旨とは異 なる管理体制になってしまう。 ②第三者が行う事を禁止する定めはない 「事業者は・・・しなければならない」と記 される法令において、第三者が行うことを禁 止する定めはない。排出事業者が行わなけれ ばならない義務について、第三者が行うこと ができるという根拠は、法令で第三者が行う ことを禁止する定めがないことによる。 ③処理に関する再委託は禁止されている。 廃棄物処理法では、処理業者が委託を受けた 処理を自らが行わずに、他人に委託すること を原則として禁止している。収集運搬の委託 を受けたが、実際に運搬する者は下請業者で あるという状況は認められない。 ②処理業者の紹介 「廃棄物の事は専門的で良く分からないか ら、業者を紹介してもらった」というような 状況は無いだろうか。処理業者を紹介すると いうこと自体に問題は全くない。しかし、紹 介する業者にすべての処理を任せていること は、原則として禁止されている再委託と同じ 状況であると言える。処理委託契約において は、処理業者と直接契約することで、排出事 業者自身で適した処理業者であるかどうかを 判断し、選択する必要がある。 ■全てを任せる状況は法の趣旨に反する 産業廃棄物を処理する責任は排出事業者に あり、委託した場合の見届けの義務も排出事 業者にある。一方で、法律において第三者が 行う事を禁止する定めはないことから、処理 業者の選定、委託契約書の作成、マニフェス トを交付し返送された伝票を照合し保存する など、あらゆる産業廃棄物に関する管理業務 を第三者が行うことは違法とは言えない。た だし、委託する処理業者にすべてを任せるよ うな状況は、禁止する定めがないとはいえ、 適正処理の確認の対象に権限を委ねることに なり、法令の考える趣旨には反する。 排出事業者が行うべき業務について、誰か に任せているから自身では把握できていない という状況は望ましくないといえる。 (廃棄物から環境問題を考える) ユニバースクラブ会員専用 「Clubごみュニティ」 第46号 2015.9.1
© Copyright 2025 ExpyDoc