第 45 号 編集 発行 編集人:子安 伸幸 〒105-0001 港区虎ノ門3-7-10 ランディック虎ノ門ビル5F TEL : 03-6809-2581 FAX : 03-6809-2582 URL : http://www.universe-corp.jp/ 2015.8.3 発行 廃棄物処理法の抱える課題は? 2015年、廃棄物処理法改正の論点 今年、見直しがスタートする! 廃棄物処理法は、建設工事における排出事業者の定義を定める内容などを含めた平成22年(平成23年度から施行)の大きな改正から5年を経過 したことで、今年見直しを行うことになっている。前回の改正内容がどのような効果をもたらしたかを含めて、検討がスタートする。 現時点では、改正がされることが確定しているわけではなく、改正までのスケジュールも決定していない。今回のClubごみュニティでは、廃棄 物処理の実務の中で起きている課題や、考えられる改正方針などについて整理したい。 ■考えられる廃棄物処理法改正の論点 項目 現状と課題 1 廃棄物の定義 2 廃棄物の区分 (事業系一般廃棄物) 考えられる改正の例 改正への課題 [現状] ・ごみ、粗大ごみ、燃え殻、汚泥、ふん 尿、廃油、廃酸、廃アルカリ、動物の死 体その他の汚物又は不要物であつて、 固形状又は液状のもの(放射性物質及 ・廃棄物の定義を明確に ・法令の全体に関わる重要な項で びこれによつて汚染された物を除く。) ・不要物すべてを法令の対象に あるため、容易に見直しできない ※総合的に判断する [課題] ・廃棄物処理法の対象範囲があいまい ・廃棄物でないものは法の対象外 [課題] ・一廃と産廃の区分があいまい ・一廃と産廃の処理方法・費用に差 ・事業活動から排出したすべて の廃棄物は産業廃棄物とする ・既存の処理システムに影響 (事業が成立しない場合も) 3 [現状] ・欠格要件に該当した場合許可を取り 産廃処理業許可の取消 消さなければならない ・義務的取消を行わない (欠格要件の義務的取消) [課題] ・欠格となる要件が厳しい(不適正処理 を行う可能性と無関係の条件も) 4 優良認定制度 [現状] ・情報公開などの基準を満たせば、必 ず優良認定を受けられる [課題] ・真の意味で優良性を保証しない ・行政指導のレベルまで基準に ・どのようなルールを決めても「優 ・優良の判断を行政に委ねる 良性」の評価はできない 5 排出事業者による 処理委託先確認 [現状] ・施設確認の実施は義務されていない ・確認を行うことが努力義務 ・条例で施設確認を義務化する例も ・実質的に施設確認をすべての 排出事業者が行うことは困難 ※現状(契約・マニフェスト)以上の 排出事業者管理が必要かが論点 ・施設確認の義務化 ・従前の制度による取消事例との 不平等が発生する ■(1・2)廃棄物の定義と区分の課題 ■(3・4)処理業者の市場形成のために ■(5)排出事業者責任はどこまで必要か 廃棄物の定義と区分について曖昧さがある 現状では、制度と実態が異なる場合も発生す る。一般廃棄物に区分され、市町村が処理す る責任があるが、市町村では受入されない廃 棄物も存在する。一方で法令は、一般廃棄物 を産業廃棄物として処理することは認めては いないという矛盾した状況も発生している。 法令を順守しなければならないという意識 が高まっている以上、法令に違反した状況で しか適正処理のルートが存在しない状況を改 善する法改正は必要だろう。 また、廃棄物かどうか、一廃か産廃かの判 断に不明確な点が多すぎることについて、す べて解消することは法改正ではできないが、 全国的に統一される判断基準は示されるべき だと考えられる。 処理業許可の許可が必ず取り消される欠格 要件について、例えば法人の役員個人の(廃 棄物処理法と無関係の)刑罰や、廃棄物処理 法以外の環境法令での罰金刑も含まれる。処 理事業そのものを健全に行っていたとしても 許可取消の事態を避けられない可能性はある ことから、不適正処理業者の排除を行うこと ができる仕組みではありながら、処理業界を 他の産業と同様に拡大するための足かせとな っていることも指摘されている。 また、優良な処理業者の認定制度について も、22年改正から制度化されたが、一定の条 件を満たせば必ず認められる仕組みであるこ とからも、「優良」という名称を用いるには 不十分な制度となっている。あくまでも処理 業者の情報公開を推進する仕組みである。 過去の法改正を振り返ると、排出事業者責 任として、処理委託先の管理(契約・マニフ ェスト)を追加する内容が中心だったともい える。排出事業者が委託先をさらに管理しよ うとすると、処理先を実際に排出事業者自ら が直接訪問することが想定されるが、排出事 業者がすべての事業者であるといってもよい ほど多数ある状況で、施設確認を法令で義務 化することは現実的ではない。 廃棄物処理法がどのように改正がされるの か、注目度は高い。どのような改正も、不適 正な処理を引き起こさない循環型社会を目的 とすることには違いないが、現状の課題を解 決しながら、処理委託の当事者に混乱を引き 起こさないような改正でなければならない。 (廃棄物から環境問題を考える) ユニバースクラブ会員専用 「Clubごみュニティ」 第45号 2015.8.3
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