Preparation of Papers for AIAA Technical Conferences

中島研究室研究紹介
A. 小型イオンエンジン
超小型衛星は、低コスト、短開発期間等の利点を持つため、様々な研
究・開発が進められている。しかしながら、そのサイズの制約ゆえに推進機
は搭載できておらず、現状では大型衛星を脅かす存在とはなっていない。今
後の超小型衛星の開発において、日本がイニシアティブを発揮し、他国に対
して強力な競争力を有し続けるためには、超小型衛星に搭載可能な高性能の
次世代エンジンが求められている。 そこで50kgの超小型衛星に搭載可
能なイオンエンジンを開発してきた。その性能は、投入電力35 W におい
て推力 1 mN、電気から推進力へのエネルギー変換効率は 50%と、このサイ
ズのエンジンとして NASA の Jet Propulsion Laboratory が開発した小型イオン
エンジンに比肩し、世界最高の効率を達成した。現在さらなる性能の向上な
小型イオンエンジン外観
らびに長寿命化に取り組んでいる。
B. Laser fusion rocket
核融合反応では、他の化学反応や核分裂反応に比較して、単位質量あたりに発
生するエネルギーが非常に大きいため高温・高速のプラズマが容易に得られる。こ
こで発生した高エネルギーのプラズマを、磁気スラストチャンバにおいて磁場との
相互作用を利用し(固体壁との相互作用無く)運動方向を変えて推力を得ることを
可能となる。利点として他の宇宙推進システムと比較して、高い排出速度(即ち高
い比推力)と大きな比出力を同時に達成可能であり、核融合プラズマを利用した宇
宙推進システム(ロケット)は、高速推進システムとして非常に有望である。核融合
の完成はまだ時間がかかるため、レーザー生成プラズマで高エネルギープラズマを
模擬し、磁気ノズルでの推進メカニズムの解明および性能向上に取り組んでいる。
実験は大阪大学の激光Ⅻ号(最大エネルギー3.6 kJ)を用いて行っている。
C. RF スラスタ
小型人工衛星用の軌道変更用の推力密度が大きいエンジンが必要であ
り、推力が比較的小さいイオンエンジンには不向きである。そこで推力が
比較的大きい高周波放電エンジンの開発を行っている。小型衛星に搭載す
る上で最大の障壁はサイズの制約である。この解決策として、われわれは、
推進剤にアルゴン等の希ガスではなく、常温で液体である水を用いた。水
は、安価で安全であり、また、他の推進剤は常温気体であるが水は液体で
あるために、最大の容積を占める貯蔵タンクの小容量化が図れ、システム
全体の小型化が可能となる。これらの利点に着目し、水を推進剤とした高
周波放電スラスタの研究、開発を行ってき、性能として、投入電力 100 W
において推力 3.6 mN が得られたが、推進効率が 5%にとどまっている。現
在レーザー計測を用いた内部診断を行い、さらなる性能の向上に取り組んでいる。
D. Hall thruster
ホール電流を利用した静電加速方式のホールスラスタ(右図)は 50%以上と
いう高いエネルギー変換効率(推進効率)と高比推力を発生し、イオン加速領域
において準中性が保たれているため空間電荷制限則を受けないので、高密度プラ
ズマイオンを排出することが可能である。このためイオンエンジンと比較して一
桁以上の推力密度が得られ小型軽量のため小型衛星にも適したものと言え、様々
な研究期間で研究開発が進められている。本研究室では現在、コロラド州立大学
と共同研究で長寿命に関する研究や三菱電機と共同で、安定性に関する研究、ま
た小型衛星用の小型ホールスラスタの開発と 3 つの課題の解決に取り組んでいる。