グリッドシステム天井の耐震性に関する実験的研究 (その1)

日本建築学会大会学術講演梗概集 (関東) 2015 年 9 月 20437
グリッドシステム天井の耐震性に関する実験的研究
(その 1)天井ユニット試験
正会員
○野曽原瑞樹*1
キーワード:グリッドシステム天井、束補強、水平載荷
正会員
荒井智一*3
小林俊夫*2
正会員
1. はじめに
グリッドシステム天井はオフィス等の天井に多く採用されて
束補強上部金具
ブレース上部金具
いる工法である。グリッドシステム天井を耐震化補強する場合
吊りボルト
天井フトコロ
一般的な工法として斜め補強材(ブレース)を設置するものが
挙げられる。このブレースは天井裏設備等を回避するために
逆ハの字型に配置されることが多いが、その場合ブレース設
束補強材
ブレース
ハンガー
ブレース下部金具
Tバー
置部の吊りボルトに圧縮力が作用しブレース 1 対の耐力が低く
変位計
加力方向
なることによりブレース設置組数が増えてしまう問題がある。
本研究では逆ハの字に配置したブレースの吊りボルトに圧
図3
試験体断面図
束補強材上部金具
束上部金具(AS-25用)
縮補強(束補強)を設置することによりブレース 1 対の耐力を向
上させ、設置組数の減少を目的とした。
束補強材上部金具
束上部金具(C40用)
吊りボルト
2. 試験方法および試験体概要
試験体は図 1~5 に示すよう 2600mm×4000mm 程度の実物
部分天井とし、加力用に天井面に加力治具を取り付けた。油
た。試験体一覧を表 1 に、試験詳細を写真 1~6 に示す。
640
640
640
640
640
束補強材
C-40×20×1.6
束補強材
C-25×19×5×1.0
(AS-25)
圧ジャッキにより一方向に加力し、荷重レベルと変位を計測し
図 4a No.1、2
640
図 4b No.3、4
図4
束補強上部詳細
1,280
2,560(Tバー芯)
変位計
束補強材
C-25×19×5×1.0
(AS-25)
クロ ス
束補強材
C-40×20×1.6
ビス 2本 固定
ビス2本固定
ブ レース下部金具
ブ レース 取付金具 下
ブレース下部金具
高耐力ブレース取付金具下
変位計
メイン
1,280
メ インク ロス
ブレース
C-60×30×10×1.6
ブレース
C-25×19×5×1.0
(AS-25)
2,390
変位計
1,750
ジョ イント 位置
加力方向
150
1,280
1,280
1,280
150
図 5a No.1、2
図5
4,140
△加 力治 具固定 位置(目安 )
図1
試験体平面図(メイン方向)
640
640
640
640
640
表 1:試験体一覧
640
試験体名
グリッド寸法 天井フトコロ
1,280
2,560(Tバー芯)
変位計
メイン
No.1
640
1200
No.2
640
1200
No.3
640
1200
No.4
640
1200
No.1’
640
1200
ブレース
変位計
クロス
1,280
メインクロス
△
加力方向
図 5b No.3、4
ブレース下部詳細
△
1,280
△
1,280
△
変位計
1,280
3,840
加力方向
材料仕様
・Tバー:見付幅15mm スリットタイプ
・ハンガー:直吊りハンガー
メイン
・ブレース上部金具:ブレース金具
・ブレース下部金具:ブレース取付金具下
・ブレース材:C-25×19×5×1.0(AS-25)
・束補強材:AS-25
メインクロス ・束補強材上部金具:束上部金具(AS-25用)
・Tバージョイント部:補強なし
・Tバー:見付幅15mm スリットタイプ
・ハンガー:直吊りハンガー
・ブレース上部金具:高耐力ブレース金具
・ブレース下部金具:高耐力ブレース取付金具下
・ブレース材:C-60×30×10×1.6
・束補強材:C-40×20×1.6
メインクロス ・束補強材上部金具:束上部金具(C40用)
・Tバージョイント部:かしめ補強
メイン
メイン
No.1と同様で束補強材なし
△加力治具固定位置(目安)
図 2 試験体平面図(メインクロス方向)
Experimental Study on seismic Performance of Grid System Ceiling.
(Part1) Lateral Loading Test for Grid System Ceiling Unit.
― 873 ―
NOSOHARA Mizuki, KOBAYASHI Toshio,
ARAI Tomokazu
9
8
メイン方向(No.1)
7
メインクロス方向(No.2)
メイン方向_束補強なし(No.1')
荷重(kN)
6
5
4
3
写真 1
No.1 試験体
写真 2
No.1 束補強上部
2
1
0
0
5
10
図6
写真 3
No.1 ブレース下部
写真 4
15
20
25
変位(mm)
30
35
40
45
50
No.1、2 荷重レベルおよび変位
No.3 試験体
写真 7 試験 No.1 試験終了時状況
9
No.3 束補強上部
写真 6
No.3 ブレース下部
図 6、7 に荷重レベルと変位を、写真 7、8 に試験終了時状
メイン方向(No.3)
7
メインクロス方向(No.4)
6
荷重(kN)
写真 5
3. 試験結果
8
5
4
3
況を示す。また、図 6 には試験 No.1 と同様の条件で束補強な
2
し(No.1’)の試験結果との比較を示す。
1
試験 No.1
0
0
3700N 付近で引張側ブレース下部取付金具が倒れ始める。
5
10
図7
最大荷重 3998N で荷重が伸びず変形が進行したため試験終
15
20
25
変位(mm)
30
35
40
45
50
No.3、4 荷重レベルおよび変位
了。終了時状況は引張側ブレース下部取付金具の変形及び
圧縮側ブレースの座屈。
試験 No.2
3700N 付近で引張側ブレース上部金具が吊りボルト下方に
滑った。その後 3972N で圧縮側ブレースが座屈し、試験終了。
終了時状況は圧縮側ブレースの座屈。
写真 8 試験 No.3 試験終了時状況
試験 No.3
7400N 付近で圧縮側ブレース下部金具の変形が生じ最大
4.まとめ
荷重 7525N で試験終了。
本研究では、グリッドシステム天井に逆ハの字にブレースを
試験 No.4
設置し耐震補強する場合に吊りボルトに圧縮補強の束補強を
7000N 付近で圧縮側ブレース下部のTバーに変形が生じ
最大荷重 7648N で試験終了。
追加した際のブレース 1 対及び天井面を含めた強度を確認し
た。従来の逆ハの字配置(圧縮補強なし)の試験結果と比較す
束補強なし(No.1’)
ると最大荷重で約 1.5 倍の強度があることを確認した。さらに束
最大荷重付近で引張側ブレースの吊りボルトに変形が生じ
補強材及び天井面の補強を高耐力のものとすることにより、
2598N以上荷重の上昇は確認出来なかった。試験終了時状
約 1.9 倍の強度を有していることを確認した。このことから耐震
況は引張側ブレース下部が接合した吊りボルトの変形および
補強のブレース設置組数を減少できることが確認でき、より実
圧縮側ブレース上部金具の変形。
現場に則した設計が可能であることを確認した。
*1
桐井製作所
桐井製作所
*3
桐井製作所
*2
Kirii Construction Materials Co., Ltd.
Kirii Construction Materials Co., Ltd, Dr.Eng.
Kirii Construction Materials Co., Ltd, M Eng.
工学博士
修士(工学)
― 874 ―