~理科編~ - 県立広島国泰寺高等学校

探究の技
~理科編~
ふしぎだと思うこと
これが科学の芽です
よく観察してたしかめ
そして考えること
これが科学の茎です
そうして最後になぞがとける
これが科学の花です
朝永振一郎
(京都市青少年科学センター所蔵の色紙より)
広島県立広島国泰寺高等学校
「学習」と聞くと,皆さんは「授業を聞くこと。教科書を読むこと。先生に言われた通りに実習すること」と
思うかもしれない。しかし,それは「学習」の1つに過ぎない。理科の「学習」は,教科書に書かれている自然
現象に関する基本的な原理や法則性を理解し,整理して身につけることも重要であるが,それとともに科学的な
探究の方法を習得して,学習の過程や日常生活の中で生じる疑問や興味について,自分で考え,調べ,研究して
いく態度や能力を身につけることも理科の「学習」の大きな目標の1つである。こうした活動を通して,私たち
の知識は本当に自分のものとなり,先人たちが築いてきた業績をより深く理解することができるようになる。な
ぜなら,教科書にはさりげなく書いてある事柄でも,優れた研究者たちが科学的な探究の方法を駆使して,何年
も費やし,解明してきた成果だからである。
探究のサイクル(White&Frederiksen,2007)
理科の教育(平成 26 年 11 月発行)より
1 研究テーマの設定
さまざまな自然現象について「なぜだろう?」
「どうなっているだろう?」
「本当だろうか?」など,疑問に思うこと
から研究テーマを設定する。
①継続して研究できる内容。
(単なる興味本位の,安易なものになっていないか。
)
②解決の見通しが立つもの。
(テーマが大きすぎないか。資料はあるか。実験器具・設備は大丈夫か。
)
③実験・観察が可能なもの。
④研究の成果が生かせるもの。
(物事の改善,社会貢献に結びつくか。
)
研究テーマ
2 副題
研究の目的を明確(具体)化する。
副題
3 予備調査
研究テーマが決まったら,テーマに関する文献や予備調査を行い,様々な情報を集める。また,予備的な観察・実
験を行うと,研究の目的をしぼることができる。
予備調査で分かったこと
4 仮説の設定
予備調査によって得られた情報をもとに,疑問(研究テーマ)に対する解答を予想しよう。これが仮説の設定であ
る。仮説とは,これまでの学習や予備調査などを踏まえ,これから調べる課題に対して「きっとこうなるであろう」
と考えた,根拠をもった論理的な考えである。設定した仮説をもとに観察・実験を行うのだから,検証可能な仮説に
する必要がある。
仮説
理由
5 検証(観察・実験)計画の立案
仮説は頭の中で考えたことで,仮説が本当に正しいかどうかは,観察・実験によって検証される必要がある。そこ
で,仮説が正しいかどうかを確かめるには,どのような観察・実験,調査を行えばよいか,材料や器具,薬品などに
は何を用いたらよいのか,測定方法や記録方法,結果のまとめ方(どんなデータが必要か,どんな表やグラフにする
かなど)はどのようにしたらよいか,どのような結果になったらよいかを考え,具体的な検証(観察・実験)計画を
立案する。
材料
材料は,観察・実験の目的にあったものを選ぶ必要がある。季節と関係のあるものが多いので,入手しやすいものを
選ぶ。材料の事前処理や材料の飼育・栽培・培養なども必要なことがあるので,その計画も行う。
薬品・器具
観察・実験器具や使用薬品を点検し,もれなく,必要な数量を整える。装置や用具を自作しなければならないことも
ある。薬品の扱いには注意が必要な場合もある。
対照実験
仮説の検証に必要な実験(処理実験)だけでなく,結果を比較するために仮説検証のための処理は行わないが,それ
以外は処理実験と全く同じにした実験(対照実験)を考える。
観察・実験計画
6 結果の予想
仮説が立証されるとしたら,どのような結果が得られるか。
7 観察・実験の実施
準備が整えば,計画に従って観察・実験を行う。観察・実験を開始したら,途中経過や結果を正確に記録する。
その日の天候,気温,日時,途中経過で気づいたこと,新たに発見したことなども正確に記録しておく。
また,数量的なデータを集めたいときは測定を行う。測定値を正確にするため,同じ条件のもとで測定を繰り返
し,多くのデータから信頼性や妥当性のある実験結果を得ることが大切だ。顕微鏡観察などの場合は,目的にあっ
たスケッチ(または写真や動画)と文章で記録しておく。
8 結果の処理
観察・実験で得られた結果は,表やグラフに表すと,特徴などが分かりやすくなる。
・グラフや表,図だけを示すのではなく,それから読み取れることを文章で示すことも大切である。
・データの信頼性,妥当性を高めるために統計的な処理を行う。
・有効数字に配慮し,誤差の範囲を確認しておく。
※追試と再現性
観察・実験とその結果が信頼できるかどうかは,同じ観察・実験を再度,行ったとき(追試)に同じ結果が得ら
れるかどうか(再現性)によって決まる。結果に再現性がない場合は,観察・実験方法のどこに原因があるのか
などを考えて実験計画を立て直す。
9 考察
仮説と観察・実験結果を照らし合わせ,根拠をあげて仮説の正誤を述べる。
定型文
仮説と観察・実験結果を照らし合わせた結果,仮説が正しといえる(又は正しいとはいえない)
。
その理由は(根拠となる観察・実験結果と自分の考え)だからである。
このとき,観察・実験の結果から分かった事実と,各自の推論とを混同しないように注意する。また,はじめに
たてた仮説が結果から検証される場合はよいが,仮説が立証できなかった場合は,検証(観察・実験)方法が正し
かったのか,データ処理やその解釈が適切であったのか,仮説が適切であったのか等,いろいろな面から検討し,
仮説が立証できなかった原因を考え,考えた内容を理由に論述する。そして,適切でないと考えられる部分を修正
して,再度,研究を行う。
ただし,仮説が否定されることも科学的には立派な結論であるから,その研究も無駄ではなかったことに留意す
る。かえって,このような結果が重要な発見につながる場合もある。
10 結論
この研究で明らかになったこと,ならなかったことをまとめる。
11 課題と展望
12 引用・参考文献
この研究で引用または参考にした文献を全て書く。
13 論文にまとめる
研究の成果は,論文などを通して発表しなければ,研究成果が自分の中にとどまってしまうことになる。これでは,
研究する意味が半減してしまう。
<論文の文章表現で大切なこと>
①論理的であること
他人が読んで意味がはっきり分かるためには,筋道が通るように書く必要がある。
②簡潔な文章(意味が明確に述べられていること)を心がける。
・主語,述語の関係を正しくする(ねじれがないように)
。
・文を短くする(一つの文では,一つのことを言う)
。
・文末は断定的にする。
・あいまいな指示語(その,そんななど)をできるだけ使わないようにする。
③科学用語を使う
専門的な科学用語を使うと,文章が簡潔,明確になり便利である。
④接続詞を使う
接続詞を入れると文と文との間に,論理のねじれや飛躍があることを気づきやすい。
⑤「事実」と「考え」を区別すること
「結果」には事実を,
「考察」には考えを書く。
⑥文章を推敲する
文章を書くことで一番大切なことは,推敲することである。何度も推敲して,誰が読んでも内容を理解で
きるような文章にまとめ上げることが大切である。
☆引用・参考文献
酒井邦嘉(2006)「科学者という仕事―独創性はどのように生まれるか」
,中公新書
松原静郎(1997)「中等化学教育における個人実験を通しての科学的表現力育成に関する調査研究」, 科学研究費研
究成果報告書
石井哲彰(1996)「実験レポートにおける表現の指導」
『高校化学・中学理科における表現力育成のための個人実験
教材と実践報告』, 科学研究費補助金(一般研究B)中間報告書(代表:松原静郎,課題番号 07458027), pp16-19.
第一学習社(2008)『改訂生物Ⅰ』
新興出版社啓林社(2006) 「高等学校改訂版 生物Ⅰ」
数研出版株式会社(2008) 「改訂版 高等学校 生物Ⅰ」
東京出版株式会社(2007) 「生物Ⅰ」
日本理科教育学会(2014)「理科の教育」
,株式会社東洋出版社