ジオシンセティックスを用いた補強土の新しい利用法の模索

ジオシンセティックス技術情報 1
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会員の声
ジオシンセティックスを用いた補強土の新しい利用法の模索
(株)エイ・シイ・デイ湖上正浩
私が補強土と関わりをもつようになってから約 1
0年になりますが、ほとんどが補強材として帯
鋼や鋼棒を用いた工法でした。また、私の業務の中心が防災関係であったことからあまり深く関
わることもなかったのです。私がジオシンセティックスを用いた補強土に興味をもちはじめたの
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7年に実施したアメリカ合衆国コロラド州の視察で、の R
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t氏(通称ボブという)と
の出会いに始まります.ボブは、コロラド州交通局で M S E(MechanicallyS
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W A L Lの開発に長期にわたって従事してきた方で、現在は民間の企業でMSE-WALLの設
計・施工を行っています。この視察でボブにジオシンセティックスを用いた補強土の現場を数カ
所案内して頂いた中で、直壁の壁面材として軽量のフロックを使用していることや、ブレストレ
スを導入した補強士で橋台を構築していることに私自身驚きを感じました。このとき案内して頂
いた現場の中にジオシンセティックスを用いた補強士擁壁を落石防止擁壁として使用している構
造物があり、防災対策に携わる技術者として非常に興味を持った次第です。
帰国後、私たちは思いついたら実行あるの
みと奮い立ち、ジオシンセティックスを用い
た補強土擁壁を落石防止擁壁として利用する
ための開発を始めたのです。コロラド州のジ
オシンセティックスを用いた落石防止補強土
擁壁(以後、落石防護補強土擁壁と称す)
は、比較的小規模な落石に対して実験が実施
され、その結果をもとに設計が行われていま
した。私たちは、アメリカと同じ規模で実験
図 -1 落石防護補強士擁壁
するよりは、大規模な落石に対する性能確認
を行おうということで実物実験を計画しました。また、大規
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模な落石に対応するための構造についても同時に開発を開始
しました。実物実験を行う落石防護補強土擁壁の形状は、い
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くつかの基礎的実験を実施し、その結果から図-1の形状に
行き着いたのです。 1
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8年に図ー 2に示す実験斜面で実物実
験を実施し、 7
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Nの岩塊を 24m/sの速度で衝突させ、約 2
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Jのエネルギーに対する安全性を確認しています。この実験
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3回ジオシンセティックスシンポジウムで発表し
結果は、第 1
4回ジオシンセティ
ていますので御覧下さい。解析桔果は第 1
ックスシンポジウムで発表する予定です。ジオシンセティッ
図 -2 実験斜面
クスを用いた補強士の新しい利用法の 1つとして提案した落石防護補強仁擁壁は、現時点で採用
が決定している現場が数カ所あり、すでに施工が行われた現場もあります。
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このことをきっかけにジオシンセティック
スを用いた補強土の新しい利用について相談
をもちかけられる機会が増え、ある時補強士
擁壁を雪崩防護擁壁として利用できないかと
の相談を受けました。私は、ます過去に行わ
れた補強士の水平荷重に対する抵抗力を評価
図 -3 雪崩防護補強土擁壁
するための研究を調査したのですが、地震時
の挙動に対するいくつかの研究がある以外、結局は衝突荷重を評価するための研究は見あたりま
せんでした。ジオシンセティックスの補強効果を見かけの粘着力として評価する方法が提案され
ているのですが、異方性の粘着力であるため、水平荷重が作用した場合にどの程度期待できるか
明らかではありません。そこで、補強土と水平抵抗の明らかなコンクリートや改良土と組み合わ
せることにより対応できないかと考え、図 - 3のような構造を提案しました。この構造は、せっ
かく補強土を採用するのだから緑化したいとの意見を取り入れ、改良した法面ユニットを用いて
植生層を設けています。
次にコンクリートが打設できないような現場の砂防
堰堤に補強土を利用できないかとの相談を受けたと
き、雪崩防護擁壁と同様に水平抵抗力が問題となり、
水の影響が顕著なことから止水性が問題になると思っ
たのです。また、
『コンクリートが打設できない現場
だ』との条件からコンクリートと組み合わせることは
図 - 4 補強土による砂防堰堤
できないため、止水性の必要な部分をセメント改良土
で構築し、内部を補強土とすることで対応できな
いかと考え、図 - 4のような構造を提案しまし
た
。
また、先に提案した落石防護補強士擁壁は、道
路際に設置する場合、用地的な制約が多いことか
ら図 -5のように補強土の天端で落石を受ける構
造についても開発を行っています。現在、この構
造は性能確認実験を実施しています。私たちが行
っているジオシンセティックスを用いた補強土の
図 -5 落石防護補強土擁壁改良型
新しい利用法の模索について紹介しましたが、補強材が軽量であり、現地発生土や建設発生土の
利用が可能なジオシンセティックスを用いた補強土は、多岐にわたって利用できる工法であると
考えています。今後もジオシンセティックスを用いた補強土の新しい利用法の模索を続けていき
たいと考えています。
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