β‐グルカンを利用した機能性給食メニューの有効性

β‐グルカンを利用した機能性給食メニューの有効性
西森美恵 1)、野村晴香 2)、長瀧充 2)3)、笹岡真由美 3)、圖師扶美 1)、
沖恵美 1)、山本恵子 4)、池上裕倫 3)、吾妻建 2)
1)㈱高南メディカル,2)高知大医学部看護,3)㈱ソフィ,4)介護老人保健施設夢の里
[背景] 60歳以上の約20%の人は低栄養状態にあると言われている。その一つの原因として、加齢や自
立度の低下に伴い増加する便秘症状があげられる。介護施設における入所者の便秘症状の緩和には主に
下剤が使用されているが、下剤の常用は腸機能の低下、脱水症状、ミネラルの不足を引き起こし、結果
として低栄養状態の原因となる。
[目的] 我々はこれまで、食品の1次機能の栄養特性はもとより、0次機能である安全性、2次機能の嗜好
特性に重点を置き給食を提供してきた。しかし食事摂食量、水分摂取量を担保できても、高齢者の低栄
養を大幅に改善するに至っていない。そこで我々は、既に免疫賦活や血糖値改善などの機能性が報告さ
れているソフィβ-グルカンを食材に用いることで、
生理機能を重要視した機能性給食メニューの検討を
行った。ソフィβ-グルカンは主成分として水溶性β-1,3-1,6-グルカンを含む非常に水分保持力に優れ
た物質であり、腸における便からの水分の過度の吸収を抑制し便秘症状を緩和する効果が期待できる。
そこで本研究では、ソフィβ-グルカンの食品形態への応用と、高齢者を対象にした便秘の改善効果につ
いて検討を行った。
[方法] 介護老人保健施設、介護老人福祉施設、ケアハウスに入居している高齢者77名に聞き取りを行
い、排便状況と下剤使用量、食事摂取量、水分摂取量、日常生活強度について調査した。さらに入所者
から募ったモニター30名に、1日45 mlのソフィβ-グルカンを2週間摂取させ、摂取前後の便秘症状を日
本語版便秘評価尺度(CAS)で評価した。また、ソフィβ-グルカンを添加したゼリーを、モニター9名に毎
食後4週間摂取させ、摂取終了後2週間の追跡調査を含め、1週間毎に便秘症状をCASにて評価した。
[結果] 水分摂取量や食事摂取量が普通量であっても便秘症状は確認された。1日45 mlのソフィβ-グル
カンを2週間摂取したモニターの80%で、CASの値が減少し便秘症状の緩和がみられた。便の排泄状況や直
腸での便の充満感が改善され、CASの平均値も4.2から1.9に改善した。ゼリー摂取時でも同程度の改善効
果が見られ、ゼリー状に加工しても生理作用が失われなかった。また、追跡調査からは、摂取終了後2
週間の時点においても効果の持続が確認された。
[考察] ソフィβ-グルカンを経口摂取することによって便秘改善効果が得られた。また、摂取終了後に
も同効果が持続することから、腸内環境に作用している可能性が示唆された。また、グルカンを食品に
加工しても効果発現に影響は見られず、ソフィβ-グルカンの汎用性が高まることが示唆された。結果を
受け、50 床の介護老人保健施設、90 床の特別養護老人ホームにて、一定期間のソフィβ-グルカンを用
いた給食の試食を行った結果、ともに高い評価を受け導入への運びとなった。ソフィβ-グルカンを給食
の食材として使用することで、グルカンの持つ生理機能を付加した給食を提供できるだけでなく、本来
給食に求められている健全な食事をサポートする効果も期待できることを示していた。