【口腔外科1(制御系)】片側性唇顎口蓋裂患者の口蓋披裂形態について

平成26年度臨床研究テーマ成果報告書
診療科(部)名:
口腔外科学第一教室
研究期間: 平成 26 年 4 月 1 日~平成 27 年 3 月 31 日
研究課題名:片側性唇顎口蓋裂患者の口蓋披裂形態について
研究課題の概要及び成果:
当科では 1998 年より、片側性完全口唇口蓋裂症例(CUCLP)に対する標準的な手術プロ
トコールとして早期二期的口蓋形成術を行ってきた。これは、1 歳に Furlow 変法によ
って軟口蓋形成を行い、1 歳 6 カ月に硬口蓋閉鎖を行う手術法である。本法で軟口蓋形
成を行うと、多くの症例で、硬口蓋閉鎖までの 6 カ月間に硬口蓋部裂幅の縮小を認める。
硬口蓋部裂幅が縮小すると、硬口蓋閉鎖術の際の手術侵襲を低く抑えることができるた
め、口蓋の成長発育に有利である。すなわち本早期二期的口蓋裂手術は、良好な顎発育
を獲得する上で、硬口蓋閉鎖を遅らせる間の上顎発育を温存できるという利点に加え
て、硬口部裂の縮小によって硬口蓋への手術侵襲を抑制できるという利点を有する可能
性がある。後者の可能性を検討するために、当科において早期二期的口蓋形成術を受け
た CUCLP 患者を対象として、軟口蓋形成術前から硬口蓋形成術までの 6 カ月間における
硬口蓋および硬口蓋部裂の形態変化を分析した。
大阪大学歯学部附属病院第一口腔外科に生直後から受診し、早期二期的口蓋形成術を
受けた片側性完全唇顎口蓋裂患児のうち、今回は、十分な資料を採取し得た 24 例 (男
児 12 例、女児 12 例) を対象とした。対象症例の軟口蓋閉鎖時期は平均月齢 11.6±1.3
カ月、硬口蓋閉鎖時期は平均 18.4±1.8 カ月、軟口蓋閉鎖から硬口蓋閉鎖までの平均期
間は、6.8±1.2 カ月であった。
計測項目は、線的計測項目が上顎結節点間距離(TT`)、犬歯点間距離(CC`)、左右犬歯
点を結ぶ線上の裂幅(cc`)、左右歯槽堤の最狭窄部の裂幅(aa`)とし(下図
計測項目は、口蓋粘膜面積および硬口蓋部裂面積とした(下図
左)、面積
右)。口蓋面積は、口
蓋襞を有する口蓋粘膜で左右の上顎結節点を結んだ線(TT`)より前方の部分を計測し、
口蓋部裂面積は、aa` および cc` と左右被裂縁に囲まれた部分を観測面に投影した面
積とした。
非接触型レーザースキャナーであるVIVID910(KONIKAMINOLTA)を用いて石膏模
型の三次元的画像を撮影し,3D-Rugle3(Medic) により計測を行った。
結果は Mean±SD で示し、統計学的検定は Student-t 検定で行った。 p<0.01 を統計
学的有意とした。
全ての対象症例で、軟口蓋形成術後に硬口蓋部裂幅の狭小化を認めた。裂幅は、犬歯
点間で 3.4 mm(-60%)、 歯槽堤最狭窄部間で 1.2mm(-66%)縮小した。同期間内の歯槽弓
幅径は、上顎結節点間距離(0.77mm(-2.1%))、犬歯点間距離(0.94mm(-2.9%))共に 減少
した。口蓋面積の変化を評価した結果、軟口蓋形成術前から硬口蓋形成術までに
47mm2(14.0%)の増加、裂投影面積は 11mm2 (-49%)の減少を認めた。以上の結果から、本
早期二期的口蓋形成術では軟口蓋形成後に硬口蓋部裂が有意に縮小することが示され
た。さらに、この硬口蓋部裂の縮小は、口蓋セグメントの内側への発育および移動の双
方に起因することが示唆された。
早期二期的口蓋形成術を行うことによって、軟口蓋形成術後の 6 カ月間に硬口蓋部裂が
有意に縮小することが明らかとなった。
上記概要・成果に関連する図表等