第15回認知症ケア学会大会 「後世への認知症ケア」のテーマのもとに 全国からケアスタッフが集合 日本認知症ケア学会(理事長:認知症介護研究・研修東京センター長本間 昭氏 )が 1 年に 1 回開催する大会には、 全国から大勢のケアスタッフが集い、認知症について学び、情報交換を行う。第 15 回大会(大会長:医療法人社 モーニングセミナー「認知症診断直後の様々な家族支援に ついて」の講師を務めた医療法人藤本クリニック理事長・ 院長の藤本直規氏 同モーニングセミナーに藤本氏とともに登壇した同クリニ ック認知症専門デイサービスセンター所長の奥村典子氏 同モーニングセミナーの座長を務めた日本医科大学武蔵 小杉病院教授・認知症センター部長の北村 伸氏 団翠会 和光病院病院長今井幸充氏 )は2014年5月31日、6月1日の2日間、東京国際フォーラム(東京都千代 薬の効果の感じ方については、藤 きるようになったからではないかと 現在では、ほかの障害をもった人や 本氏らは家族にオリジナルの問診票 推測した。また、藤本氏は「問診票 老人会の人なども参加し、孤立しが を用いて薬の効果を評価。初回の は家族と医療者との会話を深める ちな家族にとっても社会とつながる チェックでは、例えば、 「何度でも きっかけとして有効」と付け加えた。 場になっている。 田区 )で開かれ、3,000 名を超える参加者が講演やシンポジウムに熱心に耳を傾けた。 もう一度認知症ケアとは何か を考える大会に 第 15 回の節目となる今回の日本認 知症ケア学会大会のテーマは「後世 への認知症ケア」 。同大会大会長の 今井幸充氏は「認知症ケアを地域あ るいは社会で支える仕組みづくりが 軌道に乗りつつある現状を踏まえ て、もう一度認知症ケアとは何かを 問う場にしたいと考えた」とテーマ の意義を説明した。開会あいさつに 認知症介護研究・研修東京センター長で、日本認知症 ケア学会理事長の本間 昭氏 大会長を務めた医療法人社団翠会和光病院病院長の今井 幸充氏 続いて同じテーマで大会長講演を たオレンジプランについても言及 行った今井氏は、1972 年に発表され し、介護保険制度を改正して行われ 同クリニックでは 2000 年より、発 た有吉佐和子氏の『恍惚の人』や 82 る地域支援事業を拡充して認知症対 症初期の軽度の人に病気や症状の正 年に制定された老人保健法、89 年に 策を行うとした。 しい理解を促し、また仲間の存在を 策定されたゴールドプランなど高齢 ター部長の北村 伸氏が務めた。 そのほか 1日目には、認知症介護 知ってもらうことで孤立感を和らげ 者ケアの歴史を振り返ったあと、 「今 研究・研修仙台センター長加藤伸司 るために、本人・家族向けの心理教 は認知症の人の生活をどう支えるか 氏や首都大学東京教授繁田雅弘氏ら 育と、娘・嫁・妻・男性介護者など の議論に発展している。支えていく が登壇した特別企画「私たちが伝え がそれぞれの立場で語り合える本 ためには、医療と介護がスクラムを たい認知症ケア」と、パーソンセン 人・家族交流会を開いてきた。藤本 組むことが大切」と強調し、 「後世に タードケアや回想法について取り上 氏は「認知症と診断された本人や家 継承していくべきケアは希望・歓喜 げたシンポジウム「次世代に向けた 族が、心理教育や交流会で、それぞ を提供するケアである」と結んだ。 ケアメソッド」などが行われた。 れに仲間の存在を知り、お互いが病 1日目の午後に行われた特別講演 では、厚生労働省老健局前局長の原 勝則氏が「オレンジプランの推進と 認知症の人と家族に対する 取り組みを紹介 気のことを話し合うことで、これか らの生活を諦めないでおこうと思え るようになる。診断直後の軽度の時 介護保険制度改正」と題して講演し 2日目には医療法人藤本クリニッ た。6 月25日に公布・施行された 「地 ク理事長藤本直規氏と同クリニック を促すことは重要な支援」と述べた。 域における医療及び介護の総合的な 認知症専門デイサービスセンター所 奥村氏は「それぞれの会には目的 確保を推進するための関係法律の整 長奥村典子氏によるモーニングセミ があり、本人や家族から生活の中で 備等に関する法律」について、地域 ナー 「認知症診断直後の様々な家族 困っていることを語ってもらい、そ における介護サービス提供体制の整 支援について:正しい病気の理解・ れが病気とどう関係するのかを説明 備や持続可能な介護保険制度の構築 薬の効果の感じ方・仲間と出会える している。それを繰り返し行うこと などを行う法律であると解説した。 場所」が開かれた。座長は日本医科 で、病気への理解が少しずつ深ま 2013 年から5ヵ年計画がスタートし 大学武蔵小杉病院教授・認知症セン る」と話した。 34 期から、こうした機会を設けて参加 同じことを話すことが増えた」とい 同クリニックで、藤本氏らは 2011 セミナーの最後に奥村氏は、 「介 うネガティブな評価の反面、 「口数 年から、発症初期の人を支えるため 護をする・されるといった関係をな が増えた」というポジティブな評価 の新たな実践として、若年認知症の くすことに、これからも取り組んで も同時に書かれることがあった。し 人が社会とつながりながら仲間と出 いきたい」と抱負を語った。藤本氏 かし、チェックを継続していくうち 会えるようにと、若年認知症の人に は「発症初期の本人が認知症ケアと にポジティブな評価が多くなった。 仕事の場を提供している。これには その支援者に出会うことによって、 その理由について奥村氏は、評価の 若年認知症の人だけでなく、現役の 限られた期間であっても普通のこと 視点を具体的に示すことで、 「『何度 介護家族も参加。認知症の人が家族 を普通にできるようになることは、 でも同じことを話すことが増えた』 に仕事のやり方を教えるといった、 家族にとって喜びであり、家族が喜 ことを『口数が増えた』というポジ 病気を意識しない会話のやり取りが ぶことは本人にとっても生きていく ティブな評価として捉えることもで 両者の間で行われている。そして、 支えになる」と参加者に訴えた。 平成 26 年度認知症ケア学会・読売認知症ケア賞の受賞者(前列)と審査委員 「平成 26 年度認知症ケア学会・読売認知症ケア賞」および 「未来をつくる子どもたちの作文コンクール」授賞式 未来をつくる子どもたちの作文コンクールの受賞者(前列) 同大会の 1 日目に平成 26 年度認知 症ケア学会・読売認知症ケア賞の授 賞式が行われた。受賞者は次のとお り(敬称略 ) 。 ●功労賞 五島シズ(認知症ケアア ■3 名の子どもが受賞 あり方を模索するため、2013 年、全 国の小学生・中学生を対象に「未来 をつくる子どもたちの作文」を募集 した。同コンクール初となる授賞式 が 2 日目に行われた。また、受賞者 はそれぞれ自分の作文を読み上げ た。受賞者は次のとおり(敬称略 ) 。 ●最優秀賞 「それが、ばぁちゃん ドバイザー) 、三山吉夫(藤元メディ カルシステム大悟病院認知症疾患医 療センター長 ) ●奨励賞 旭 俊臣(旭神経内科リハ ビリテーション病院長 ) 、特定非営 利活動法人老いと病いの文化研究所 同学会では、未来をつくる子ども たちが認知症をどのように捉えて関 わっているか、また認知症に対する 考え方がどのように変化していった のかを作文を通して知り、認知症の 学校教育や認知症の人の家族支援の なのだ」三國櫻子(北海道・中学1年 生) ●優秀賞 「おばあちゃんとぼく」中 村大祐(三重県・小学 3 年生 ) 、 「しろ ちゃんのおじんちゃとおばんちゃ」長 南穂実(山形県・小学 2 年生 ) われもこう、特定非営利法人中空 知・地域で認知症を支える会 ●特別賞 相田 洋(ドキュメンタリー ディレクター) 35
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