アルミニウム・その化合物

アルミニウム・その化合物
1.アルミニウム
アルミニウムは、地殻中に化合物とし
て、酸素、ケイ素についで多く存在する。
アルミニウム・Alは、周期表の13族
に属する元素で、3個の価電子をもち、
3価の陽イオンになりやすい。
2.単体の性質
単体は、原料となるボーキサイトから白
色の酸化アルミニウム(アルミナ)Al2O3をつくり、これを炭素電極で、溶融塩電解(融解塩電解)
して製造される。このとき、アルミナの融点が高いため、融解した多量の氷晶石・Na3AlF6を溶媒
として、そこに、アルミナを少しずつ混合して約950℃で融解するようにしている。アルミニウムは
軟らかい銀白色の軽金属で、展性や延性に
富み、電気伝導性が大きい。
3.単体の反応
アルミニウムAlは、両性元素で、単体は酸の水溶液にも塩基の水溶液にも、水素を発生して溶ける。
*Alと塩酸・水酸化ナトリウム水溶液に溶ける反応*
① (酸との反応)
2Al+6HCl→2AlCl3+3H2
② (塩基との反応) 2Al+2NaOH+6H2O→2Na[Al(OH)4]+3H2
テトラヒドロキソアルミン酸ナトリウム
4.アルミニウムの化合物
(1)酸化アルミニウムAl2O3
酸化アルミニウムはアルミナともよばれ、両性酸化物で、水には溶けないが、酸の水溶液にも強塩基の
水溶液にも溶ける。
*Al2O3 が塩酸・水酸化ナトリウム水溶液に溶ける反応*
⑤(酸との反応)
Al2O3+6HCl→2AlCl3+3H2O
⑥(塩基との反応) Al2O3+2NaOH+3H2O→2Na[Al(OH)4]
テトラヒドロキソアルミン酸ナトリウム
(2)水酸化アルミニウムAl(OH)2
アルミニウムイオンAl3+を含む水溶液にアンモニア水または少量の水酸化ナトリウム水溶液を
加えると、水酸化アルミニウムAl(OH)3の白色沈殿を生じて白濁する。
水酸化アルミニウムはアンモニア水には溶けないが、両性水酸化物なので、酸の水溶液や
強塩基の水溶液に溶ける。
*Al(OH)3 が塩酸・水酸化ナトリウム水溶液に溶ける反応*
⑦(酸との反応)
Al(OH)3+3HCl→AlCl3+3H2O
⑧(塩基との反応) Al(OH)3+NaOH→Na[Al(OH)4]
*(Na[Al(OH)4]
*[Al(OH)4]
-
テトラヒドロキソアルミン酸ナトリウム)*
テトラヒドロキソアルミン酸イオン*
*NaOH水溶液とNH3水を少量・過剰に加えると*
Al3+は、塩基(NaOH・NH3)を少量加えると、Al(OH)3の白色沈殿が生じる。過剰の
NaOH水溶液を加えると、
[Al(OH)4]-となって溶ける。NH3水を過剰に加えても溶けない。
5.ミョウバン・AlK(SO4)2・12H2O
ミョウバンは、硫酸アルミニウムAl2(SO4)3と硫酸カリウムK2SO4の混合水溶液を冷やすと得
られる無色透明の正八面体結晶で、水に溶かすとAl3+、K+,SO42-の各イオンに電離する。
<複塩>ミョウバンのように複数の塩が結合した化合物で、水に溶けると個々の成分イオンに電離す
る。
亜鉛とその化合物
1.亜鉛
亜鉛Znは融点が比較的低い青白い光沢をもつ重金属である。原子は価電子を2個もち、2価の陽イオ
ンになりやすい。単体は、閃亜鉛鉱ZnSなどから酸化鉛ZnOをつくり、それを炭素で還元するか、硫
酸にとかして電解して製造する。電池の原料、CuとZnの合金(黄銅)の原料などに用いられる。亜鉛
は、酸や塩基、高温の水蒸気と反応し、水素を発生する。
2.亜鉛とその化合物
(1)亜鉛は酸とも塩基とも反応する
亜鉛は、希硫酸や希塩酸に水素を発生してとけるが、両性元素なので、水酸化ナトリウムのような
強塩基の水溶液にも、水素を発生して溶ける。
①(酸と反応)
Zn + 2HCl
→ ZnCl2 + H2
Zn + H2SO4
→ ZnSO4 + H2
②(塩基と反応) Zn + 2NaOH +2H2O → Na2[Zn(OH)4] + H2
テトラヒドロキソ亜鉛(Ⅱ)酸ナトリウム
(1) 酸化亜鉛・ZnO
単体の亜鉛を空気中で熱すると、酸化亜鉛ZnOになる。酸化亜鉛は水に溶けにくいが、酸化亜鉛は
両性酸化物であるから酸の水溶液や強塩基の水溶液と反応して溶け、それぞれ塩と(水)を生じる。
③ (酸と反応)
ZnO + 2HCl → ZnCl2 + H2O
④ (塩基と反応) ZnO + 2NaOH + H2O → Na2[Zn(OH)4]
テトラヒドロキソ亜鉛(Ⅱ)酸ナトリウム
(3)水酸化亜鉛Zn(OH)2
亜鉛イオンZn2+ を含む水溶液に水酸化ナトリウム水溶液を少量加えると、水に溶けにくい白色の
水酸化亜鉛Zn(OH)2が沈殿する。水酸化亜鉛は、過剰の水酸化ナトリウム水溶液にも、酸の水溶
液にも溶けるので、両性水酸化物とよばれる。
⑤ (酸と反応)
Zn(OH)2 + 2HCl →
ZnCl2 + 2H2O
⑥ (塩基と反応) Zn(OH)2 + 2NaOH → Na2[Zn(OH)4]
また、亜鉛イオンはアンモニア水によっても水酸化亜鉛が沈殿するが、アンモニアを過剰に加えると、
沈殿は溶解し、無色の溶液となる。
⑦(過剰なアンモニア水と反応)Zn(OH)2 +4NH3→[Zn(NH3)4]2+ + H2
テトラアンミン亜鉛(Ⅱ)イオン
この水溶液に硫化水素H2Sを通じると、硫化亜鉛ZnSの白色沈殿が生じる。