技術情報 Q&Aコーナー IRI ・ ・「金属材料関連技術の開発」 Q&A・ Q アルミニウムのリサイクル技術につ いて教えてください。 アルミニウムは、その用途に応じて様々 A な成分を添加した合金として、飲料用缶 や自動車部品、窓のサッシ、台所用品など、 様々な用途に利用されています。使用済みと なったアルミニウム合金スクラップは、原料 から製錬するエネルギーと比較して約3%で 済むことから、溶解して二次合金(または二 次地金、再生塊)に再生されます。 手順としては、集められたスクラップから 磁選などにより異物が除去されます。その後、 溶解炉(るつぼ炉や反射炉)で溶湯(溶融さ せた金属) とし、 ① 成分分析 ② 成分調整(不足成分を補い、過剰成分はフ ラックス(薬材)で除去する) ③ フラックスによる不純物(主に酸化物)除去 ④ 脱ガス処理を繰り返してから型に流し込み、 冷却してインゴット(鋳塊)にします。なお、 使用済みフラックスは、アルミニウム分を含 んでいますので製鋼用脱酸剤として有効利用 されます。 再生されたアルミニウムは、ダイカスト用 合金、特に自動車用部品に広く用いられるA DC12と呼ばれる合金とするのが主流となっ ています。これは、ダイカストでは溶湯を急 冷凝固させるため微細組織になり、各成分が 規格範囲内であれば優れた機械的性質を発揮 できるからです。 ADC12に再生するためにはマグネシウム (Mg) 濃度の制御が重要となりますが、北海道 で回収されるアルミニウムスクラップは、他 の地域よりMgが高い傾向があるため、より 安価な脱Mg材の開発が望まれています。 当場では、使用済み乾電池から精製した酸 化物粉末を用いた脱Mg材を数年前に開発し、 現在、リサイクル企業とリサイクルプロセス の改良を共同研究しています。 (材料技術部 板橋 孝至) Q イオン液体を用いた新しい表面処理技 術について教えてください。 電気めっき等の表面処理は一般的に水溶液 A を使用しますが、この水溶液の代わりにイ オン液体と呼ばれる液体を用いた新しい表面 処理が研究されています。イオン液体とはど ういうものか特徴を下記に示します。 ① 水素、炭素や窒素から構成されている。 一見、有機溶媒のようだが、水のように電流 を流すことができる。 ② -30℃以上~+300℃以下の温度域で も液体である。 ③ 蒸発がとてもしにくい。過去には蒸発しな いとも言われた。この特徴を利用し宇宙空間 のような真空中での潤滑剤としても研究され ている。 ④ 燃え難く、耐熱性が高い化学物質である。 ⑤種類によっては水とも有機溶媒とも溶け合 わない、もしくはどちらとも溶け合うような 種類があるためイオン液体は水でもなく有機 溶媒でもない「第3の液体」とも呼ばれてい ます。 このイオン液体をめっき液としたアルミニ ウムめっきが研究されています。アルミニウ ムはイオン化傾向が大きく、水素過電圧が小 さいため、水溶液でのめっき形成が困難な金 属です。非水溶液でのめっき操作だからこそ アルミニウムめっきが可能となります。その 他にタングステンやモリブデン等の金属めっ きの研究も行われています。 しかし、イオン液体は、有機溶媒のように 合成し、さらに不純物を取り除く等の製造工 程が必要なため、まだ価格が高く、また、大 気中の水分の吸収により、めっきの析出を悪 くさせるなどの実用化に課題があります。 現在、当場ではイオン液体を用いて耐摩耗 性の高い新しい表面処理の研究を行っており ます。 (材料技術部 坂村 喬史)
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