Topics「ROE に過剰反応する株式市場 に過剰反応する株式市場(1)」

Topics「
Topics「ROE に過剰反応する株式市場(1)
に過剰反応する株式市場(1)」
(1)」
平成 27 年 06 月 26 日
■ 市場では ROE を重視する流れが続いている。議決権行使助言大手の米 ISS は、ROE が年平均 5%
以下の企業の経営トップの再選には反対するよう勧告している。日本の信託銀行や生命保険会社も
この動きに追随、投資先への要求を強めている。
■ 一般的に、
「ROE が低い」→「自己資本の貯めすぎ」→「株主に還元しない」に該当する場合は、
株主から「配当あるいは自社株買いを実施し、株主に還元すべきだ」と主張されても仕方が無い。
数年前まではリーマンショックのダメージも残り、「万一の際に備えて、自己資本を厚くすべき」
との経営政策も受け入れられたと思うが、完全に流れが変わった。
■ 企業側の過剰反応も目立ち始めた。ある大手企業では、ROE の 3 分解で(ROE=売上高利益率×
回転率×財務レバレッジ)、いずれの数値にも目標を定めるという経営政策を打ち出した。理屈に
は合うのだが、かえって経営自由度を制限する可能性もありそうだ。
■ この政策は、コンサル会社か社内の MBA 出身者が作ったものだろうが、株主や市場に配慮しすぎ
た印象だ。この政策が成功する可能性は高くないと考えている。第一項の売上高営業利益率では、
目標を定める企業も多く、特に問題はない。
■ しかし、第二項の「回転率=売上高/資産」を制限すると、長期の固定資産投資を行いづらくなる。
更に、第三項の「財務レバレッジ=資産/自己資本」では、低くなりすぎると格付低下や信用不安
時に倒産リスクが高まることで、少なくとも一定レベルの確保は必要だろう。
■ 株価のパフォーマンスでは、高 ROE 銘柄は低 ROE 銘柄を凌駕しているが、業種によっては極端
に評価が分かれている。以下の事例は「葬儀業界」の 2 銘柄である。
決算期
2485 2013.9
ティア 2014.9
2015.9e
9628 2014.3
燦HD 2015.3
2016.3e
ティア
燦HD
営業収益 営業利益 経常利益
8,919
9,527
10,000
18,062
18,437
18,500
939
992
1,032
1,638
2,018
1,590
株価(円) 時価総額
668
13,471
1,751
9,835
846
925
980
1,621
2,021
1,590
PER
21.4
10.6
純利益
517
548
630
953
985
930
PSR
1.3
0.5
EPS(円) 営業利益率 ROE
28.38
30.07
31.24
169.8
175.42
165.58
10.5%
10.4%
10.3%
9.1%
10.9%
8.6%
総資産 自己資本自己資本比率
19.5%
17.8%
8,504
10,451
2,873
4,807
33.8%
46.0%
4.6%
4.6%
26,231
26,734
20,932
21,693
79.8%
81.1%
PBR EV/EBITDA 配当利回
4.1
10.5
0.9%
0.5
3.1
2.3%
※金額:百万円。株価は 6/26 引値。ティアの 2014.9B/S は増資後の 2015.3 末時点とした。
■ 2485 テイアは、業界最大手の燦 HD より売上高・利益水準いずれも大きく劣り、自己資本は 1/4
以下であるが、時価総額は 134 億円で逆に燦 HD の 98 億円を大きく凌駕している。
■ 同業種間でどうしてこのような現象が生まれたのか。株価指標で見ると、PER、PSR、PBR、
EV/EBITDA、配当利回り、いずれの指標もテイアが割高、燦 HD は割安である。
■ 唯一 ROE のみテイアが燦 HD を大きく上回っている。しかし事業規模に約 2 倍の差があり、自己
資本も大きな差があるにもかかわらず、果たしてこの株価は妥当といえるのだろうか。
■ ROE は、株価のレベルに全く関係しないことが問題の一つだろう。ティアの株価がどこまで高く
なろうが ROE は変わらない。その点 PER 等では、確実に「割高」なサインが出る。銘柄のスク
リーニングで ROE だけを重視せずに、PER や自己資本比率等と併用すべきとの意見があるのは、
このあたりが大きな理由である。
■ 前述の燦 HD であれば、配当性向を 30%に引上げ、自社株買いを発行済株数の 5%程度実行、減損
会計を前倒しで実施、ROE 目標を 7%に引き上げれば、かなりの確率で株価は大きく上昇するで
あろう。
■ 最近目にするが、無理な自社株買いも問題である。ファナックのように現預金が潤沢であれば、
BPS よりはるかに高い株価で自社株買いを行っても、財務への影響は限定される。
■ しかし、自己資本比率が低く PBR が 1 よりはるかに高い企業が行うと、リーマンショッククラス
の信用不安が起きた場合、赤字が継続すると自己資本を毀損しかねない。
■ ファイナンス理論では、自社株買いは BPS より低い株価で行うべきであり、資本コストより高い
利回りが見込める投資案件の無い場合に限られるだろう。
■ ROE がいくら高くても、自己資本比率が低く業績の振れが大きい銘柄や、前述のように同業種比
較で規模の割に時価総額が高くなりすぎた銘柄には、慎重姿勢でのぞみたい。