論 文 要 旨 氏名 奥田 晃子 学位論文 題名 Regulation of development of CD56bright CD11c+ NK-like cells with helper function by IL-18 【研究目的】 ヒトγδT 細胞は、その活性化や増殖の機序について不明なことが多い。これまで我々 は、IL-2 とゾレドロン酸(ZOL)により刺激されたヒト末梢血中のγδT 細胞の増殖や 機能が IL-18 により著しく増強されること、その増殖には IL-18 によって誘導される CD56brightCD11c+の新奇 NK 様の細胞が重要な役割をしていることを報告してきた。こ の新奇 NK 様細胞の誘導の機序とそのγδT 細胞に対する作用機序を明らかにすること を目的とし、本研究を行った。 【研究方法】 健常人から採取した末梢血単核細胞(PBMC) (Ficoll-Hypaque 密度勾配遠心にて精製) を、AlysS505N-O 培地(5%AB 血清添加)を用いて培養した(37℃、5%CO2)。また、 細胞表面マーカーにより、細胞を選別した。γδT 細胞は PBMC を ZOL/IL-2/IL-18 で 刺激することにより、CD56brightCD11c+細胞は、CD3+T 細胞除去 PBMC を IL-2/IL-18 存在下で培養することにより、それぞれ得た。 【研究結果】 PBMC を IL-2/IL-18/ZOL の刺激下で培養したところ、γδT 細胞の増殖に先立ち CD56brightCD11c+細胞が増殖した。また、γδT 細胞の増殖促進作用は DC や pDC では 観察されず、CD56brightCD11c+細胞のみがγδT 細胞に対する強いヘルパー作用を有する ことが示された。 γδT 細胞を CD56brightCD11c+細胞と共培養するとクラスターを形成した。クラスタ ー形成及びγδT 細胞の増殖は ZOL により増強され、CD56brightCD11c+細胞のヘルパー 機能が増強されたことが示唆された。また、IL-2/IL-18 の刺激により CD56brightCD11c+ 細胞は CCL21 を産生した。これらは、γδT 細胞のクラスター形成が IL-2/IL-18 の刺激 により増強されることを示している。 CD56brightCD11c+細胞は、CD14+モノサイトと CD56intCD11c+細胞を IL-2/IL-18 の存 在下で共培養することにより誘導し増殖した。IL-2/IL-18 で前処理した CD14+モノサイ トと CD56intCD11c+細胞を共培養するとクラスターを形成し増殖したが、IFN-DC また は IL-4-DC ではクラスターは形成しなかった。これらは、CD56intCD11c+ 細胞から CD56brightCD11c+細胞への誘導には、CD14+細胞の関与と IL-2/IL-18 の存在が必須であ ることを示唆している。 ま た 、 CD56intCD11c+ 細 胞 と CD14+ 細 胞 の 直 接 の 細 胞 間 相 互 作 用 が な け れ ば 、 CD56brightCD11c+細胞の誘導、増殖は起こらなかった。さらに、IL-2/IL-18 の刺激によ り、CD14+モノサイトの細胞接着因子の発現は増強した。これらのことは、IL-2/IL-18 による CD14+モノサイトの刺激は、強力な細胞間相互作用を介した CD56brightCD11c+細 胞の誘導に必須であることを示している。 【考察】 本研究により、CD56brightCD11c+細胞は IL-2/IL-18 の存在下で CD14+モノサイトと CD56intCD11c+細胞とを培養することにより誘導され、増殖することが示された。IL-18 は、CD14+ モノサイトと CD56intCD11c+ 細胞との相互作用を増強することにより、 CD56brightCD11c+細胞の誘導に寄与することが示唆された。またモノサイトや DC はこ の細胞の誘導には関与しないことが示唆された。 以上の結果は、γδT 細胞の活性化や増殖の機序解明に示唆を与えるとともに、γδT 細胞の免疫治療法などの開発に役立つと思われる。
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