第9回 グラフ理論・組み合わせ論 情報学部門 瀧本 英二 http://www.i.kyushu-u.ac.jp/~eiji 平面的グラフ クラトウスキー(Kuratowski)の定理の証明の続き 復習+𝛼 4 位相同型 定義 𝐺 が 𝐻 から辺の細分とその逆操作の繰り返し で得られるとき,𝐺 と 𝐻 は位相同型であるという. 位相同型 5 クラトウスキー(Kuratowski)の定理 定理 グラフ 𝐺 が非平面的グラフであるための必要 十分条件は 𝐺 が 𝐾5 または 𝐾3,3 と位相同型な部分 グラフを含むことである. 平面的グラフではない例 𝐾3,3 と位相同型な部分グラフ 6 𝑘連結(少し修正) 定義 グラフ 𝐺 = (𝑉, 𝐸) が 𝑘連結 ⇔ 𝑉 ≥ 𝑘 + 1, かつ ∀𝑆 ⊆ 𝑉: 𝑆 ≤ 𝑘 − 1, 𝐺 − 𝑆 ≡ 𝑉 − 𝑆, 𝑒 ∈ 𝐸 𝑒 ⊆ 𝑉 − 𝑆 が連結 (𝑘 − 1 個以下のどの頂点を削除しても連結) このグラフは3連結 2連結でもある (𝑘連結 ⇒ 𝑘 − 1連結) 最小次数が 3 なので, 4連結ではない 7 𝑘連結(別定義) 定義 グラフ 𝐺 = (𝑉, 𝐸) が 𝑘連結 ⇔ ∀𝑢, 𝑣 ∈ 𝑉 𝑢 ≠ 𝑣 , 𝑢 と 𝑣 を結ぶ 𝑘 個の点素な (𝑢 と 𝑣 以外同じ点を共有しない)道が存在. 𝑣 𝑢 𝑣 𝑢 8 辺縮約 定義:グラフ 𝐺 = (V, E) の辺 𝑒 = {𝑥, 𝑦} ∈ 𝐸 に対し, 辺 𝑒 を縮約したグラフ 𝐺/𝑒 とは,𝑥 と 𝑦 を新しい頂点 𝑣𝑒 におきかえ,𝑥 または 𝑦 に接続する辺 𝑒 ′ ∈ 𝐸 を 𝑣𝑒 に接続するように置き換えたグラフのことをいう. 𝐺 𝑥 𝑒 𝑦 𝐺/𝑒 𝑣𝑒 9 演習 グラフ 𝐺 = (𝑉, 𝐸) に対し,以下が成り立つことを示せ. 1. 𝐺 が連結 ⇔ ∀𝑒 ∈ 𝐸,𝐺/𝑒 が連結 2. ∀𝑒 ∈ 𝐸, ∀𝑆 ⊆ 𝑉 ∖ 𝑒, 𝐺 − 𝑆 𝑒 = 𝐺 𝑒 − 𝑆. 𝐺− 𝑧 𝑒 𝑒 𝑧 𝐺 𝐺/𝑒 𝑧 (𝐺 − 𝑧 ) 𝑒 =𝐺 𝑒− 𝑧 10 演習 3. ∀𝑒 = 𝑥, 𝑦 ∈ 𝐸, ∀𝑆 ⊆ 𝑉, 𝐺 − 𝑆 ∪ 𝑥, 𝑦 = 𝐺 𝑒 − 𝑆 ∪ 𝑣𝑒 . 𝑥 𝑒 𝑦 𝑧 𝐺 𝑣𝑒 𝑧 𝐺/𝑒 𝐺 − 𝑥, 𝑦, 𝑧 = 𝐺 𝑒 − 𝑣𝑒 , 𝑧 11 証明の残り 補題1 ∀𝐺 = 𝑉, 𝐸 , 𝐺 が3連結で 𝑉 ≥ 5 ⇒ ∃𝑒 ∈ 𝐸, 𝐺/𝑒 も3連結. 補題2 ∀𝐺 = 𝑉, 𝐸 , 𝐺 が 𝐾5 または 𝐾3,3 と位相同型な部分グラフを持たない ⇒ ∀𝑒 ∈ 𝐸, 𝐺/𝑒 も 𝐾5 または 𝐾3,3 と位相同型な部分グラフ を持たない 補題の証明 13 補題1 ∀𝐺 = 𝑉, 𝐸 , 𝐺 が3連結で 𝑉 ≥ 5 ⇒ ∃𝑒 ∈ 𝐸, 𝐺/𝑒 も3連結. 証明(背理法) 𝐺 は3連結, 𝑉 ≥ 5 だが,∀𝑒 ∈ 𝐸,𝐺/𝑒 は3連結ではないと仮定. ∀𝑒 ∈ 𝐸,𝐺/𝑒 からある2頂点を削除すると非連結. 【命題】その2頂点のうち1つは,縮約頂点 𝑣𝑒 である. 命題の証明(背理法) • その2頂点からなる集合 𝑆 が 𝑣𝑒 を含まないと仮定. • 𝐺 𝑒 − 𝑆 が非連結.よって演習の2より 𝐺 − 𝑆 𝑒 が非連結. • よって演習の1より 𝐺 − 𝑆 が非連結. • これは 𝐺 が3連結であることに矛盾.(命題の証明終) 14 補題1 ∀𝐺 = 𝑉, 𝐸 , 𝐺 が3連結で 𝑉 ≥ 5 ⇒ ∃𝑒 ∈ 𝐸, 𝐺/𝑒 も3連結. 証明(背理法) 𝐺 は3連結, 𝑉 ≥ 5 だが,∀𝑒 ∈ 𝐸,𝐺/𝑒 は3連結ではないと仮定. ∀𝑒 ∈ 𝐸,𝐺/𝑒 からある2頂点を削除すると非連結. 【命題】その2頂点のうち1つは,縮約頂点 𝑣𝑒 である. もう1つの頂点を辺 𝑒 の相棒と呼び,𝑧𝑒 と記す. つまり, ∀𝑒 ∈ 𝐸,𝐺 𝑒 − 𝑣𝑒 , 𝑧𝑒 は非連結. 注:𝑒 の相棒 𝑧𝑒 は1つとは限らない. 演習の3より, 𝑒 = 𝑥, 𝑦 とすると,𝐺 − 𝑥, 𝑦, 𝑧𝑒 は非連結. 注:𝑒 の相棒が複数ある場合は,𝐺 − 𝑥, 𝑦, 𝑧𝑒 の最大の 連結成分が最大となるような 𝑧𝑒 を選ぶ. このときの最大の連結成分の頂点数を 𝑛 𝑒 とおく. 15 補題1 ∀𝐺 = 𝑉, 𝐸 , 𝐺 が3連結で 𝑉 ≥ 5 ⇒ ∃𝑒 ∈ 𝐸, 𝐺/𝑒 も3連結. 証明(つづき) ∀𝑒 = 𝑥, 𝑦 ∈ 𝐸, 𝐺 − 𝑥, 𝑦, 𝑧𝑒 は非連結. 𝐺 − 𝑥, 𝑦, 𝑧𝑒 の最大の連結成分の頂点数を 𝑛(𝑒) とおく. 以降では,𝑛(𝑒) が最大となる 𝑒 = 𝑥, 𝑦 とその相棒 𝑧𝑒 について 考える.𝐺 − 𝑥, 𝑦, 𝑧𝑒 の最大の連結成分を 𝐻 = 𝑉 ′ , 𝐸 ′ とおく. つまり,𝑛 𝑒 = 𝑉 ′ . 𝑉 ′′ = 𝑢 ∈ 𝑉 𝑧𝑒 , 𝑢 ∈ 𝐸, 𝑢 ∉ 𝑉 ′ , 𝑢 ∉ 𝑒 ≠ ∅ 【演習】 𝑢 ∈ 𝑉′′ を任意に選び,辺 𝑧𝑒 , 𝑢 の相棒を 𝑣 とおく. 𝑣 ∉ 𝑥, 𝑦 【演習】 𝑉 ′ ∪ 𝑥, 𝑦 ∖ 𝑣 は 𝐺 − 𝑧𝑒 , 𝑢, 𝑣 において連結している.【演習】 𝑉 ′ ∪ 𝑥, 𝑦 ∖ 𝑣 > 𝑛 𝑒 なので,𝑛(𝑒) の最大性に矛盾. 16 補題2 ∀𝐺 = 𝑉, 𝐸 , 𝐺 が 𝐾5 または 𝐾3,3 と位相同型な部分グラフを持たない ⇒ ∀𝑒 ∈ 𝐸, 𝐺/𝑒 も 𝐾5 または 𝐾3,3 と位相同型な部分グラフ を持たない 証明(背理法) ∃𝑒 ∈ 𝐸, 𝐺/𝑒 が 𝐾5 または 𝐾3,3 と位相同型な部分グラフ 𝐻 を 含むと仮定. 𝑣𝑒 は 𝐻 において次数2ではない【演習】 以降では,𝐻 が 𝐾5 と位相同型な場合について証明する. 17 証明(つづき) ∃𝑒 = 𝑥, 𝑦 ∈ 𝐸, 𝐺/𝑒 が 𝐾5 と位相同型な部分グラフ 𝐻 を含む と仮定 命題より,𝑣𝑒 の次数は4. 縮約前の部分グラフを 𝐻′ とする. 𝑣𝑒 𝑥 𝑒 𝑦 𝐻 縮約前の部分グラフ 𝐻′ の例 18 証明(つづき) 縮約前の部分グラフを 𝐻′ とする. 【場合1】 𝑥 (または 𝑦)の次数が 1 の場合. 𝐻′ − 𝑥 は 𝐾5 と位相同型.𝐻 ′ − 𝑥 は 𝐺 の部分グラフ なので,仮定に反する. 【場合2】 𝑥 (または 𝑦)の次数が 2 の場合. 𝐻′ は 𝐾5 と位相同型なので,仮定に反する. 𝑥 𝐻′(場合1) 𝑥 𝑒 𝑒 𝑦 𝑦 𝐻′(場合2) 19 証明(つづき) 【場合3】 𝑥 および 𝑦 の次数が 3以上の場合 (これ以降,次数2の頂点は無視し,6頂点のグラフと考える.) 𝑥 と 𝑦 の次数がちょうど3になるように適当に辺を削除 𝑥 を赤く塗って 𝑥 の隣接頂点を青く塗り,𝑦 の隣接頂点を赤く塗る. 両端点が同色の辺を削除すると,このグラフは 𝐾3,3 と位相同型. これは 𝐺 の部分グラフなので,仮定に反する. 𝑥 𝐻′ (場合3) 𝑥 𝑥 𝑒 𝑒 𝑒 𝑦 𝑦 𝑦 20 補題2 ∀𝐺 = 𝑉, 𝐸 , 𝐺 が 𝐾5 または 𝐾3,3 と位相同型な部分グラフを持たない ⇒ ∀𝑒 ∈ 𝐸, 𝐺/𝑒 も 𝐾5 または 𝐾3,3 と位相同型な部分グラフ を持たない 証明(背理法) ∃𝑒 ∈ 𝐸, 𝐺/𝑒 が 𝐾5 または 𝐾3,3 と位相同型な部分グラフ 𝐻 を 含むと仮定. 𝐻 が 𝐾5 と位相同型な場合について,矛盾を導いた. 𝐻 が 𝐾3,3 と位相同型な場合についても,同様に矛盾を導け. 【演習】 21 外平面的グラフ 定義 グラフ 𝐺 が外平面的であるとは,𝐺 のすべての 頂点が外面に接するように平面描画できるときをいう. 外平面的グラフの例 左のグラフの外平面描画 22 外平面的グラフの特徴づけ1 定義 グラフ 𝐺 = 𝑉, 𝐸 に対し, 𝐺 + 𝐾1 = 𝑉 ∪ 𝑣0 , 𝐸 ∪ ただし,𝑣0 ∉ 𝑉. 𝑣, 𝑣0 𝑣∈𝑉 , 𝑣0 𝐺 𝐺 + 𝐾1 23 外平面的グラフの特徴づけ1 定理 グラフ 𝐺 = 𝑉, 𝐸 が外平面的 ⇔ 𝐺 + 𝐾1 が平面的 𝑣0 𝐺 𝐺 + 𝐾1 24 外平面的グラフの特徴づけ2 定理 グラフ 𝐺 = 𝑉, 𝐸 が外平面的でない ⇔ 𝐺 が 𝐾4 または 𝐾2,3 と位相同型な部分グラフを持つ 𝐾4 𝐾2,3
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