「工業製品の耐久性評価技術」

「工業製品の耐久性評価技術」
―長もちの科学―
「長もちの科学」とは、主に工業製品が設計通りの機能や耐久性を有することを確認する科
学です。2010 年 8 月に研究開発組織「長もちの科学研究センター」が発足され、京都工芸繊
維大学では、この「長もち」を一つのキーワードにして研究者たちが集い、成果を披露し、
良い製品を長く大事に使うための技術について日々討論しています。
今回、いくつかの工業製品の事例を基に耐久性評価技術について紹介していただきました。
〈講師〉
京都工芸繊維大学
教授 西村
寛之
氏
〈講演内容〉
◆長もちの科学
工業製品が設計通りの機能、耐久性を有することを確認する陰で支える技術である。
少子高齢化により、工業製品を支える共通基盤技術者が企業内に不足し、工業製品の品質レベル
が低下して、日本製品の国際競争力低下が危惧されている。それで、共通基盤技術を長もちの科
学として大学で実施する。
◆強化材、充填材、添加材を含有
強化材にはガラス繊維強化材、炭素繊維強化材、天然繊維強化材があり、強化材添加で短期強
度は上昇するが、破壊形状が複雑で界面技術が重要である。
充填剤には無機充填剤、顔料等あり、充填剤を大量に入れると長期耐久性が低下する場合があ
る。添加剤には酸化防止剤、難燃剤、離型剤、可塑剤等がある。
◆ガスメーターの位置づけ
10 年毎に検定が義務付けられていて、設置
に互換性が必要であり、所有者はガス会社で
ある。
地震(震度 5 以上)、ガス圧力低下、ガス
長時間流動、ガス多量流動時には遮断をする
保安機器である。
主要部品(基板、感震器、遮断弁、圧力ス
イッチ等)はガス会社が全て纏めて購入し、
ガスメーター製造会社に貸与する。
◆ガス用ポリエチレン管の破壊の分類
岩の接触、管破壊、スクイズオフ等では、亀裂が管内面に発生し、主に内圧により、長手方向
に内面から外面へ進行する。継手の曲げ、管の曲げ等では、外力により発生して、亀裂は外面か
ら内面に進む。融着部では、カンナ掛け不足、低温融着等現場の施工不良と思われる破壊、キャ
ップ、トランジション継手等では、材料やシールの初期設計不良と思われる破壊が発生する。
ポリエチレン樹脂の破壊様式には、延性破壊と、脆性破壊に分類される。
◆クレーズとクラック
クレーズは、亀裂中に分子の配向鎖が存在し、応力に対してクレーズを発生させることにより
応力を開放し、可逆的である。クラックは、その中が空隙で先端に応力が集中し、不可逆的であ
る。
◆促進劣化試験方法
膜式ガスメーターの保安機能を担う圧力スイッチでは、リユース時に実施する選別検査の合格
基準を明確化して、さらに 10 年間の性能担保を可能にする。
◆講演風景