フライホイールエネルギー貯蔵システム向け 可変推力機構付き磁気カップリングの基礎検討 佐藤 大介*,伊東 淳一,渡辺 智貴,吉田 貴則,山田 昇(長岡技術科学大学) Investigation of Variable Thrust Magnetic coupling for Flywheel Energy Storage System Daisuke Sato, Jun-ichi Itoh, Tomoki Watanabe, Takanori Yoshida, Noboru Yamada (Nagaoka University of Technology) 1. はじめに Motor 近年,エネルギー貯蔵装置として,長寿命大出力を実現 Magnet coupling できるフライホイール(FW)を用いたシステムが注目されて (1) いる 。FW システムには電動機/発電機(MG)を真空容器の Pivot bearing Vacuum Case Flywheel 中,あるいは外に置く 2 つのタイプがあるが,MG の放熱 の観点から,大出力 FW システムでは,MG 外置き型が有 利と思われる。一方,FW の軸受損を低減する方法として, ピボット軸受がある。しかし,ピボット軸受は基本的にコ マのように自立して浮上するため,FW の軸はフリーでなく Fig. 1. てはならず,MG 外置き型には適用されていない。 Flywheel Energy Storage System. 本論文では MG 外置き型 FW におけるピボット軸受適用 の可能性を探る。真空容器外から,非接触で駆動力を FW に伝達する手段として,磁気カップリング(2)に着目し,磁気 Electromagnetic カップリングの推力を制御することで,間接的に FW の軸 Master For torque transmission に自由度を与え,ピボット軸受で FW を自立させる。ここ では,その初期段階として,可変推力機構付き磁気カップ リングを設計し,有限要素法による電磁界解析による評価 を行う。 2. 可変推力機構付き磁気カップリングの設計 Slave For variable thrust For thrust reduction Fig. 1 に FW エネルギー貯蔵システムを示す。本システム では 1 MJ の運動エネルギーを FW に貯蔵する。運動エネル Fig. 2. Variable Thrust Magnetic coupling. ギーは速度の 2 乗に比例することから,上部の駆動用電動 Table 1. 機を速度制御することで貯蔵エネルギーの調整が可能であ る。FW に動力を伝達する磁気カップリングは原動側が大気 中,従動側が真空中に位置する。 磁気カップリングの設計にあたり,要求する仕様として, 許容トルクは使用する電動機の最大出力トルク 7.4 Nm 以上 とする。また,カップリングによる推力は可変推力機構が 動作していない状態にて FW にかかる重力 490 N と一致す るように設計する。さらに,可変推力機構の動作により, 動作していない状態と比較して最大で 10%程度,推力を変 化させることを目標とする。 Fig. 2 に設計した磁気カップリングのモデル,Table 1 にパ ラメータを示す。電磁石部および原動側はハーフモデル, 従動側はフルモデルである。トルク伝達用磁石は 16 極で構 成し,必要以上の推力を抑制するため内側に同極同士を対 Parameters of Magnetic coupling. Pole number Coil number Turn number of coil Rated coil current Yoke and core Magnet Master Outer diameter Slave Inner diameter Thickness of magnet Between master and slave Air-gap length Between coil and slave 16 16 40 10 A S45C N45M 155 mm 255 mm 45 mm 4 mm 10 mm 7 mm 向させた推力低減用磁石を配置している。可変推力機構は 電磁石部と従動側の外側の磁石で構成される。コイルに電 流を流すことにより電磁石に起磁力が生じる。起磁力 F の 大きさは(1)式で表される。 F NI ......................................................................... (1) N はコイルのターン数,I はコイル電流である。(1)式より, 電流を変化させることで,電磁石による起磁力を調整でき, 推力が変化する。 また, コイルは 16 個を直列接続しており, 起磁力方向の正負切り替えができるように,インバータに 接続する。インバータでは電流制御を行い,間接的に推力 を制御する。 3. 推力およびトルクの解析結果 本節では設計した磁気カップリングのモデルを作成し, 有限要素法による電磁界解析を行う。解析結果より推力や Fig. 3. Analysis model of the magnet coupling. トルクの特性を評価する。解析には JMAG Designer (JSOL) を使用する。 600 Fig. 3 に解析モデルを示す。 対称性から 45 度モデルとし, 400 紫色の上面が N 極,青色の上面が S 極であり,温度は 20 度としている。なお,コイルを流れる電流が左回りの場合 を正とする。したがって,起磁力は上向きのとき正となる。 Thrust [N] 要素数は空気領域を除いて 212,691 である。また,磁石は赤 Master (0 A) Slave (0 A) Master (-400 A) Slave (-400 A) 200 0 -200 本モデルにおいて,従動側を固定した状態で,原動側を回 -400 転させ,各回転角度における推力とトルクを解析する。 -600 Fig. 4 に可変推力機構が動作していない状態 (F = 0 A) お 0 よび定格動作状態 (F = -400 A) における推力,トルクの解 5 10 15 20 Rotation angle [degree] 析結果を示す。Fig. 4(a) より,回転角度 0 度,F = 0 A にお (a) いて,推力は設計条件に近い 487 N であることがわかる。 している。これは起磁力の方向が下向きであることから, 常に一定の反発力となる。次に,Fig. 4(b) より,トルクは 11.25 度で最大の 16.7 Nm となることから,電動機の最大出 10 Torque [Nm] この磁石は 1 極で構成しているため,回転角度に依らず, Thrust at F = 0 A and 400 A 20 また,F = -400 A とした場合,従動側の推力が 54.3 N 低減 従動側の磁石との間に反発力が生じるためである。さらに 25 0 Master (0 A) Slave (0 A) Master (-400 A) Slave (-400 A) -10 力トルクの 2 倍程度許容できる。なお,F = 0, -400 A でトル クが一致している。これは,電磁石による起磁力の方向が -20 すべて軸方向であり,トルクに全く影響しないためである。 0 Fig. 5 に回転角度 0 度において電磁石による起磁力変化時 5 10 15 20 Rotation angle [degree] (b) 25 Torque at F = 0 A and 400 A に従動側に生じる推力を示す。推力は起磁力に比例してお Fig. 4. り,定格動作状態 (F = -400, 400 A)のとき,推力は 55.4 N 増加,減少していることから,目標の 10%を上回る 11.4% Analysis result of thrust and torque. 600 4. まとめ 本論文では可変推力機構付き磁気カップリングの設計, 解析を行い,電磁石により定格動作時,推力を 11.4%増減 可能という見込みを得た。今後は実機実験にて評価を行う 予定である。 Thrust [N] 変化することがわかる。 550 500 450 400 文 -400 献 Fig. 5. (1) 伊東,田中,松尾,山田:電学論 D,Vol.134, No.1 (2014) (2) 藤田,池田他:日本 AEM 学会誌, Vol.17, No.4 (2009) -200 0 200 Magnetomotive force [A] 400 Characteristic between thrust and magnetomotive force.
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