[55] ① 図 12.19 は,陸上や海洋の表面に現れている,世界の活火山の

[55]
① 図 12.19 は,陸上や海洋の表面に現れている,世界の活火山の位置を示す.
② 約 80 パーセントはプレートが収束する境界に見られ,15 パーセントはプレ
ートが分離する境界に,そして残りがプレート内に見られる.
③ しかしながら,この図上に示されたよりもさらに多くの活火山が存在する.
④ 地球表面に噴出した溶岩の大部分は,中央海嶺の拡大中心の上に位置する,
海底の火道からもたらされる.
図 12.19
火道が陸上や海洋の表面に現れている世界の活火山(赤点).約 80 パーセント
はプレートが衝突する境界に見られ,15 パーセントはプレートが分離する境界
に,そして残りのいくつかがプレート内のホットスポットに見られる.黒線は
プレートの境界である.この地図に示されていないのが,(海)水面下の中央
海嶺系の多数の(海嶺)軸火山(axial volcanoes)である.
拡大中心での玄武岩生産
[56]
① 毎年,おおよそ 3 立方キロメータ―の玄武岩質溶岩が,海洋底拡大の過程
で中央海嶺に沿って噴出する.
② これは,偽り無く莫大な体積である.
③ 対照的に,収束境界に沿った全ての活火山(約 400 個)は,年 1 立方キロ
メータ―以下の割合(速さ)で火山岩を生み出す.
④ 十分なマグマが過去 2 億年間に海洋底拡大で噴出しており,地球表面のほ
ぼ 2/3 を覆う,現在の海洋底の全てを作った.
⑤ この“地殻の工場”は,幅数キロメータ―の地溝の下に横たわり,数 1000
キロメータ―もの中央海嶺に沿って伸びる(図 12.20).
⑥ マグマと火山岩は,第 4 章で議論したように,マントルカンラン岩の減圧
融解中に形成される.
図 12.20
プレートテクトニクスは火山の全地球的パターンを説明する.
・海洋プレートと海洋プレートの収束境界では,マントルの部分溶融で生じた
マグマが火山性の島弧へと上昇し,ほとんどが玄武岩溶岩を噴出する.
・海洋プレートと大陸の収斂で形成されたマグマは,マントルからの玄武岩,
再溶融した珪長質大陸地殻及び沈み込むプレートの頂部で融けた物質の混合物
である.それらは火山へと上昇し,安山岩質溶岩を噴出する.
・中央海嶺でのプレートの分離とアセノスフェアの広い地域から上昇してきた
マグマは玄武岩質の火山活動,新しい海洋地殻とリソスフェアの創出の原因と
なる.
・ホットスポットの上でのプレートの運動は、プレートの中央に玄武岩質火山
島の列をつくる.
拡大中心での熱水活動
[57]
①
中央海嶺の頂部に見られる伸張性の割れ目は,新しい海洋地殻の全体にわ
たって海水を循環させる(海水が循環することを許す).
② 熱い火山岩とその深部のマグマからの熱は,冷たい海水を地殻中に吸い込
み,マグマとの接触を介して海水を温め,そして高温の水を上に横たわる海
洋へと吐き出すという激しい対流を駆動する.
[58]
①
②
③
④
⑤
⑥
陸上の火山性ジオシステムに温泉と間欠泉が頻繁に発生していることを考
えると,深海に沈んだ拡大センターでの広範囲な熱水活動の形跡はなんら驚
くべきことではない.
それにも関わらず,かつて地質学者は,対流の強烈さを認識し,その化学
的・生物学的な重大さを発見して当惑した.
この過程の最も壮麗な発現は,最初 1977 年に東部太平洋で見出された.
350 ℃に達する,高温で鉱物をたくさん含んだ水の噴流が,中央海嶺頂部
上の熱水火道を通って“ブラックスモーカー”となって吹き出ている.
流体の流れの速度は,たいへん速いことが判明した.
海洋地質学者は,海洋水の全体積が,拡大中心の亀裂と火道を通ってほん
の 1000 万年で循環すると見積もった.
[59]
①
科学者は,拡大中心での水圏と岩石圏の相互作用が海洋の地質,化学,そ
して生物学に大きく影響すると認識することになった.
[60]
① 新しいリソスフェアの創生は,地球内部から流出するエネルギーの約 60 パ
ーセントを占める.
② 循環する海水は新しいリソスフェアを極めて効果的に冷やし,そのため,
地球の内部の熱を外部へ輸送することに重要な役割を果たしている.
[61]
①
熱水活動は,新しい地殻から金属とその他の元素を溶出し,それらを海洋
に放出する.
② これらの元素は,世界の全ての河川によって海洋へ放出される鉱物構成物
と同じ程度で海水の化学に貢献する.
[62]
①
金属に富む鉱物は循環する海水中から沈殿し,海洋地殻の浅い部分に,亜
鉛(zinc),銅(copper),そして鉄(iron)の鉱石を作る.
② 鉱石は,海水が多孔質の火山岩に浸み込み,加熱され,これらの元素を新
しい地殻から溶かし出す際に形成される.
③ 溶解した鉱物に富んだ加熱された海水が上昇し,再び低温の海洋に入ると,
鉱石を形成する鉱物が沈殿する.
[63]
①
循環する海水からの熱水エネルギーと栄養素は,風変わりな生物-それら
のエネルギーが太陽光ではなく地球の内部に由来する-の独特のコロニー
を養う.
② 拡大中心での複雑な生態系は,巨大な二枚貝や長さが数メートルに達する
チューブワームに食料を提供する(=食料となる)微生物を含む.
③ これらのタイプの微生物はまた,水の沸点以上の温度をもつ温泉にも生息
する.
④ ある科学者達は,地球上の生命が海洋の拡大中心の活動的で化学的に豊か
な環境で始まったのかもしれないと推測した(11 章を見よ).
沈み込み帯での火山活動
[64]
①
沈込み帯の最大の特徴の一つは火山の鎖であり,それは上に載るプレート
が海洋地殻か大陸地殻かとは無関係に,海洋リソスフェアからなる沈み込む
スラブの上の収束境界に平行である(図 12.20 を見よ).
② 沈込み帯の火山活動を養うマグマは,流体に誘発される融解によって形成
され(4章を見よ),中央海嶺の火山活動の玄武岩よりも変化に富む.
③ 溶岩は,中間(安山岩質)組成がしばしば最も優勢であるが,苦鉄質から
珪長質,つまり,玄武岩質から流紋岩質と多様である.