第2章 フロンってなに？ 3 科学者からの警告 成層圏オゾンの破壊を警告 1974年、アメリカの二人の科学者シャーウッド・ロー ランドとマリオ・モリナは、フロンが成層圏のオゾンを がくじゅつ ざ っ し 破壊すると「ネイチャー」という学 術雑 誌で発表しまし た。彼らは大発見をしたにもかかわらず、喜びを感じるど ころか、世界の終わりが来た気分だったといいます。そし て、 「この影響は今すぐに出るのではなく、ずっと後になっ たいさく こう て お く てからのことだが、今すぐ対策を講じなければ手遅れにな ローランド博士 モリナ博士 けいこく る。」と警告したのです。 （単位：万t) 110 100 せ け ん 90 しかし、彼らの警告は世間では受け入 80 70 れられませんでした。特にフロンを作っ 60 50 ている化学品メーカーは、ローランド博 40 ひ な ん 30 士の言っていることを非難し、生産を続 20 けました。そしてその後もフロンの生産 10 フロンメーカーの反発 量は世界的にどんどん増えていきました。1930 ローランドの警告 オゾンホール 発見 1940 1950 1960 1970 1980 1990 年 CFCの生産量 フロンガス協会資料より作成 オゾンホールの発見！ よ そ く ところが実際は、ローランド博士たちが予測した以上のスピードでオゾン層の破壊は しんこう 南極上空にオゾンホールが発見 進行していました。博士たちの警告から10年後の1984年、 されたのです。 問題がはっきりしてからでは遅い？ と う じ しんけん かたむ もし、ローランド博士たちの言葉に当時みんなが真剣に耳を傾けていたら、オゾン層破 だんかい 壊をもっと早い段階でくい止めることができたでしょう。また、もし博士たちの警告が なかったら、オゾンホールの原因がわからず、対策がもっと遅れていた可能性もありま こうせき ひじょう す。彼らの功績は非常に大きいのです。1995年、ローランド博士とモリナ博士はノーベル しょう じゅしょう 化学賞を受賞しました。どんな環境問題も、結果が目に見えるようになってからではなく、 よぼうげんそく ひつよう 予防原則のもとにできるだけ早い段階で、対策をとる必要があります。 24
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