2.光と自然の相互作用 pp.5

平成 27 年 4 月 23 日
教養展開科目 「生活と光の作用」
千葉大院融合科学研究科 椎名
2.光と自然の相互作用
2.光と自然の相互作用
・太陽からの光、空の色、雲の色
太陽からの光は近紫外から赤外におよぶ広い範囲に分布している。地球大気に降り注ぐ際に、オ
ゾン層によって、波長 300nm(UV-C)以下の紫外光はカットされる。大気を透過してきた光は大
気分子によって散乱を受け、波長が短い光(青い光)程、より強く散乱される。これはレイリー散
乱と呼ばれ、波長の 4 乗に逆比例して強くなる。これが空が青くみえる理由となる。地球の大気の
80%が窒素であり、この窒素分子が散乱を生じさせる要因となる。一方で夕日は大気中を長い距
離伝搬してくる過程で、波長の長い光(赤い光)だけが残ることになり、結果空を赤く染めること
になる。大気の組成が異なれば、空には違った色が生じることになり、大気をもつ惑星の空の色も
また、その大気構成分子の組成を反映したものになる。
一方で雲はその雲粒子の大きさが4−8μm の大きさをもつために、光の波長よりも大きな粒子
による散乱−ミー散乱−によって生じる。ミー散乱は波長に依存性が低いために、入射した光の色と
同色の散乱となる。雲や霧が白く見えるのはこの散乱の作用による。
太陽光スペクトル
空の色の説明
・虹の色、オーロラの色
虹の色は雲の粒子よりも大きな雨滴(雨粒子)によって作り出される。デカルトによって、雨滴
の中で屈折/反射する光がつくり出すものが虹になることが説明された。これによって、虹が生じ
る条件が理解された。つまり、太陽を背にして空を仰ぎ見た際に約 40 度の角度に主虹が、約 50 度
の角度にふく虹が生じる。しかし、デカルトはなぜ虹が色を生じるかに関しては説明できなかった。
その謎を解いたのがニュートンである。ニュートンはプリズムによって、白い太陽の光が 7 色の色
に別れて見える−分散−現象を理解し、それが虹の色を生成させる原因であることを説明した。つま
り、雨滴の中に入った光は波長に依存した屈折の仕方(角度)で雨滴から放たれる。これによって
光の波長に依存した光、いわゆる虹色が生成される。雨滴の中での反射の回数によって出射の角度
と色の順番がことなり、主虹は内側が青、副虹は内側が赤の逆な色の並びとなる。
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虹の説明
一方、オーロラの色の生成には全く異なる原因がある。北極圏や南極で観察されるオーロラは太陽
から飛び出してくる電子や陽子が、地球の磁場に閉じ込められて螺旋運動をしながら大気圏に降下し
た際に、大気中の分子と衝突して光を発する。酸素原子や窒素分子と衝突して緑やピンクの色を発生
する。
オーロラの発生
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・雷、プラズマ放電
雲は雨滴ばかりでなく、その温度により氷の粒−氷晶−をもつ。氷晶は雲の中の対流によって衝突を
繰り返し、やがて電気を帯びる。この電気(電荷)はプラスの電荷が雲の上の方に、マイナスの電荷
が下の方に溜まり、その間で放電が起こるのが雲の中でのカミナリである。そして、地面に発生した
プラス電荷と雲の下の方のマイナス電荷との間で放電が起こるのが落雷となる。単位体積当たりの電
気量で言えばそれほど大きくはないが、落雷の時に対極となる地面との距離は 1km ほどもあるから、
電圧では1億ボルト以上、という値になる。電流の方も数万アンペアという桁違いの大きさで、放電
時には激しい光と雷鳴を轟かせることになる。ところが、実際の落雷の持続時間は 1 万分の 1 秒程度
しかない。つまり、カミナリ一発で一般家庭の1か月分の電力になる。
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濃い霧が発生したした際に高圧送電線の近くで、ボーっとその電柱が光っていたり、ジーっという
音がすることがある。これは大気がプラズマ化したことによる。大航海時代、船乗り達は船の舳先や
マストの先端に炎が出る現象−セントエルモの火−を不吉なものとして恐れた。現代では雲の中を飛行
する飛行機の翼端にも発生することがある。
〜 Memo 〜 やさしい言葉は、たとえ簡単な言葉でもずっとずっと心にこだまする。 マ ザ ー ・ テ レ サ 8