「ICH福岡会議」開催される

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「ICH福岡会議」開催される
ICH福岡会議(運営委員会、専門家/実施作業部会など)が2015年6月5日から11日にかけて福岡市で開催され、Q7
原薬GMP Q&Aがステップ4に到達し、日米EU 3極のガイドラインになりました。また、ICHの将来のあり方も継続して
検討され、ICH協会設立の要となる定款についての基本合意に至りました。
ICH福岡会議が開催された福岡市街
集合写真
2015年6月5日〜11日にかけて福岡市でICH定例国際会議(運営委員会、専門家/実施作業部会、以下福岡会議)が開催さ
れました。福岡会議には日米EUの産官8団体【米国食品医薬品局(FDA)、米国研究製薬工業協会(PhRMA)、欧州連合(EU)、
欧州製薬団体連合会(EFPIA)、厚生労働省/医薬品医療機器総合機構(MHLW/PMDA)、日本製薬工業協会(JPMA)、カナ
ダ厚生省、スイス連邦医薬品庁】
、オブザーバーの世界保健機関(WHO)、ICH事務局(スイス)、招待行政のうち、非ICH地
域で規制調和に取り組んでいる地域行政代表(アジア太平洋経済協力会議、東南アジア諸国連合、南部アフリカ開発共同
体、東アフリカ共同体、中東湾岸諸国協力会議、汎アメリカ規制調和ネットワーク)および国(中国、台湾、韓国、シンガポー
ル、ブラジル)を含め340名以上(製薬協55名)が参加しました。また、国際ジェネリック医薬品連盟、世界セルフメディケー
ション協会などの医薬品に直接関連する多くのグローバル業界団体の代表が参加しました。
今回の会議は、Q7原薬GMP Q&Aがステップ4に到達し、日米EU 3極のガイドラインになりました。ICHの将来に関する検
討では、現行のICH地域外の行政、ならびに業種別グローバル業界代表に門戸を開放する拡大路線の一環として、ICHの
法人化に向けた対応が実施され、ICH協会設立の要となる定款についての基本合意が図られました。以下に概要を紹介し
ます。
1. 今後のICH:ICH Reform
ICHは1990年の創設以来、日米EUのいわゆる3極での規制調和を図ってきましたが、医薬品のグローバルでの開発と患
者さんへの提供をさらに促進するため、現行のICH地域外の行政、ならびにグローバル業界代表が加わる新たな枠組みで
の規制調和を目指します。今回の福岡会議では、ICH協会設立に向けた対応の中で、要となるICH協会の定款(Articles of
ICH Association)について基本合意に至りました。会議体としてのICHは、今後、スイス法人ICH協会(Legal entity ICH
Association)
として進化し、2016年1月1日から稼働すべく準備が進められています。
ICH協会定款では、構成、総会および管理委員会の権限と義務、意志決定(方法)、財務、新規会員等の入会基準、事務
局等を規定しています。具体的には、ICH協会は、総会、管理委員会(Management Committee)、会員、事務局から構
成されます。また、設立されるICH協会のもとでは、会員適格基準(自国でのICHガイドライン履行、義務など)を満たせば、
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新たに会員になることができ、ガイドライン作成などに直接関与することができます。各専門家/実施作業部会の専門家は、
この会員の枠組みの中でICHガイドライン作成に向けた貢献、役割と義務を果たすことになります。
また、協会の管理運営を司る管理委員会は、現行ICHの運営委員会メンバー8団体のうち、6団体(定款記載団体代表名称:
EC, FDA, MHLW, EFPIA, PhRMA, JPMA)がICH協会創始団体となり、カナダ厚生省とスイス連邦医薬品庁を加えた計8団体が
常任委員としてスタートします。2年後の2018年、新たにICH協会会員となった現行ICH地域外の行政および業界の中から、
総会で選出された代表(団体)が、非常任委員として管理委員会に参加することになり、ICH協会の会員、管理委員会のメン
バーの拡大が図られます。
ICHの最も重要な活動の1つであるガイドライン作成では、従来通り、参加団体(会員)間の合意形成を基本とします。し
かし、合意形成が図られなかった場合は、メンバー国が最終的にはICHステップ4ガイドラインの自国での実施(Adoption
and implementation of ICH Guidelines)を求められること、さらにICH活動の価値の最大化を図るため、3創始行政(EC,
FDA, MHLW)の意見を優先させます。財務については、今まで3創始業界団体(EFPIA, PhRMA, JPMA)の貢献によるもので
したが、2016年から、ICH協会の会費(Membership fees)
で運営し、活動経費(事務局経費、年2回の定例国際会議費)を
一括管理します。当面はその経費のほとんどを3創始行政と3創始業界団体が等分に会費として負担することにしています。
2. ICHトピックの動向
専門家・実施作業部会で対面会議を実施したトピックは以下の12トピックです。
・S5、S11、Q12、E6(R2)、E9(R1)、E11(R1)、E14 Discussion Group、E17、E18、M4E(R2)、M2、M8
■
福岡会議でステップアップしたトピック
以下のトピックで進捗が図られました。
・Q3C(R6)残留溶媒:ステップ2
・Q7原薬 GMP Q&A:ステップ4
・E6(R2)GCP改訂:ステップ2
・M7(R1)遺伝毒性不純物 補遺:ステップ2
・M8 現行版eCTD品質関連Change Requests/
Q&A v1.27(管理戦略要約、CTD 3.2.S.2.6, 3.2.P.2, 3.2.S.4,
3.2.P.5):ステップ4
以下に、各トピックの進捗を紹介します。
■
ICH福岡会議ICH運営委員会の審議風景
有効性
・E6(R2)GCP 補遺:
本体は改訂せず補遺作成。ステップ2a到達、ステップ2bはpostal sign-offで実施。
・E9(R1)臨床試験の統計的原則 補遺:
“Estimand”および感度分析の理解のコンセンサス醸成を図る。
・E11(R1)小児臨床試験 補遺:
7つの補遺作成中(新規:Commonality小児用製剤開発における当局とのマイルストーンのタイミンクおよび内容の共
通性、Extrapolation of dataデータの外装、MID3/Modeling & simulationモデリングに基づく医薬品開発、改訂:
Ethical issues on pediatric studies倫理的問題、Age classification and pediatric subset新生児を含む年齢区分およびサ
ブセット、Clinical trial methodology試験の種類と試験方法、Pediatric formulation小児用製剤開発における剤形)。
・E14 Discussion Group:
Concept Paper承認し、IWG結成。当面はConcentration-Response modelingのQ&Aを作成(改訂)。
・E17 国際共同治験MRCT:
ステップ2は2015年12月予定。
・E18ゲノミックサンプリング:
ステップ2は2015年12月予定。
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・M4E(R1) リスクベネフィット:
本体の改定。CTD Section 2.5.6(臨床に関する概括評価)
「ベネフィットとリスクに関する結論」のフォーマットの共通化、
承認申請時の、申請者によるベネフィット・リスク評価をわかりやすくすること。改訂に伴い、CTD Section 2.5.1も最小限
の改定実施。
■
安全性
・S5(R3)生殖発生毒性試験:
初対面会議。現行ガイドライン本体の全面改訂。
・S11小児用医薬品の非臨床評価:
初対面会議。新ガイドライン作成。
■
品質
・Q12医薬品製品ライフサイクルの管理:
・初対面会議
承認後の変更事由(技術的、規制要件の考慮事項)の管理を意図し、承認申請書の記載方法、医薬品品質システムへ
の関与、承認後変更計画と実施計画等の課題を検討。ステップ1技術文書案を作成。
■
電子関連
・M2 医薬品規制情報の伝送に関する電子的標準:
承認5技術文書は上記ステップアップしたトピックの項要参照。
・M8電子化申請様式:
eCTD v4.0ステップ2実装ガイドに対するパブコメ対応中。
3. 次回定例国際会議開催予定
・2015年12月5〜10日 Jacksonville、フロリダ州(アメリカ)
・2016年春 欧州(日程、開催地未定)
・2016年11月5〜10日 日本(開催地未定)
4. ICHに関するコミュニケーション、成果等の情報共有、情報公開
ICHでは、ICH定例国際会議の成果を含め、ICHの活動に関する情報を積極的に公開し、関係者のみならず一般の方々に
対しても理解を深めるようにしています。
今回の定例国際会議であるICH福岡会議の成果などは、以下のウェブサイトから閲覧することができます。
・ICH Press Release
ICH公式ウェブサイト:
http://www.ich.org/ichnews/press-releases.html
・ICH Japan Symposium 2015(第32回ICH即時報告会):2015年7月23日
(全電通労働会館、東京)
JPMA website:
http://www.jpma.or.jp/information/ich/ich_list.html
ICH福岡会議の結果に関する情報を医薬品の開発や安全性確保を担当する企業の方々を含め、広く一般の方々と共有す
るため、福岡会議直後の2015年7月23日に、
「ICH Japan Symposium 2015」
と題してICH公式地域会議(第32回ICH即時報告
会)を東京で開催しました。各講演後に活発な質疑応答が行われ、ICHの将来、特にICH Reformならびに各トピックの進捗、
ガイドラインの理解等が深められました。本シンポジウムの講演資料は上記ウェブサイトから直接ご覧いただくことができ
ます。参考として、プログラムを以下に紹介します。
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プログラム:
(以下演者の敬称省略)
開会の挨拶
主催者:岸 倉次郎(製薬協)
ICHの将来
ICH Reform
(2)ICH Update in Fukuoka
齋藤 宏暢(製薬協 ICHプロジェクト委員会)
(1)Update on ICH Reform
医薬品規制情報の伝送に関する電子的標準に関するトピックの動向
(1)M2 医薬品規制情報の伝送に関する電子的標準化 (2)M8 eCTD 安全性に関するトピックの動向
(1)S3A IWG トキシコキネティックス マイクロサンプリングQ&A
富永 俊義(医薬品医療機器総合機構)
座長:井上 学(製薬協ICHプロジェクト委員会)、
岡田 美保子(川崎医療福祉大学)
橋本 勝弘(製薬協 ICHプロジェクト委員会)
渡邉 卓(医薬品医療機器総合機構)
座長:渡部 一人(製薬協ICHプロジェクト委員会)、
西川 秋佳(国立医薬品食品衛生研究所)
斎藤 嘉朗(国立医薬品食品衛生研究所)
(2)S5(R3)医薬品の生殖毒性試験法(改定)
藤原 道夫(製薬協ICHプロジェクト委員会)
(4)S11小児医薬品の非臨床評価
松本 清(製薬協 ICHプロジェクト委員会)
(3)S9 IWG 抗がん剤の非臨床安全性試験 Q&A
(5)M7 DNA反応性(変異原性)不純物の評価および管理 補遺
有効性に関するトピックの動向
(1)E6(R2)臨床試験実施基準 補遺
(2)E9(R1)臨床試験の統計的原則(改定)
中江 大(東京農業大学)
本間 正充(国立医薬品食品衛生研究所)
座長:金澤 誠器(製薬協 ICHプロジェクト委員会)、
宇山 佳明(医薬品医療機器総合機構)
松下 敏(製薬協 ICHプロジェクト委員会)
土屋 悟(製薬協 ICHプロジェクト委員会)
(3)E11(R1):小児臨床試験(改定)
佐藤 且章(製薬協 ICHプロジェクト委員会)
(5)E17国際共同治験
青井 陽子(医薬品医療機器総合機構)
(4)E14 Discussion Group QT延長
(6)E18ゲノミックサンプリング
(7)M4E(R2)ベネフィットリスクアセスメント
品質に関するトピックの動向
(1)Q3C(R6)Maintenance残留溶媒
(2)Q7 IWG原薬GMP Q&A
(3)Q11 IWG 原薬の開発と製造 Q&A
(4)Q12ライフサイクルマネジメント
閉会の挨拶
品川 香(医薬品医療機器総合機構)
石黒 昭博(医薬品医療機器総合機構)
渡部 ゆき子(製薬協 ICHプロジェクト委員会)
座長:大久保 恒夫(製薬協 ICHプロジェクト委員会)、
奥田 晴宏(国立医薬品食品衛生研究所)
広瀬 明彦(国立医薬品食品衛生研究所)
寶田 哲仁(製薬協 ICHプロジェクト委員会)
尾崎 健二(製薬協 ICHプロジェクト委員会)
岸岡 康博(医薬品医療機器総合機構)
主催者:岸 倉次郎(製薬協)
ICH Japan Symposium 2015
(第32回ICH即時報告会)
での
質疑応答
(国際規制調整部 岸 倉次郎)
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