ハウス半促成なす 当面の栽培管理 平成28年3月15日 芳賀農業振興事務所 【関東甲信地方の1か月予報(H28.3.10 気象庁発表)】 ○期間の前半は気温がかなり高くなる可能性があり、向こう1か月の気温は高い見込みです。 ○低気圧や前線の影響で、向こう1カ月の降水量は多く、日照時間は平年並か少ないでしょう。 ○向こう1カ月の平均気温は、高い確率50%です。降水量は多い確率50%、日照時間は平年並また は少ない確率ともに40%です。 ○週別の気温は1週目が平年並または高い確率ともに40%、2週目は高い確率60%です。3~4週目 は平年並または高い確率ともに40%です。 【気象経過(真岡アメダス観測点:2016/3/10現在)】 - 1 - 【栽培管理のポイント】 ①ハウス内の高温と急激な温度の変化に 注意し、こまめな温度管理を徹底する。 ②かん水不足に注意するとともに地温の 維持に努める。 ③急激な天候の回復による生理障害(ぼ け果、焼け果)の発生に注意する。 ④ハウス内の湿度管理を徹底し、病害の 発生に注意するとともに、害虫の早期 発見早期防除に努める。 1.温度管理:温度の測定は、なすの生長点付近の葉陰で正確に! ○急激な温度の変化を避け、草勢が維持できるようこまめな温度管理に心がける。 ◆温度管理の目安 時間帯 午前 温度管理 28~30℃ 昼 備 考 ・午前中は、光合成を促進するため、温度の確保に努める。 ・単棟ハウスは、温度が急激に上昇するため注意する。 温 午後 25℃前後 ・午後は、夕方からの転流(葉で作られた同化産物を盛んに果実 に送り込む)を促進するためやや低めとする。 ・高めの温度管理は、呼吸消耗を助長するため注意する。 夜 温 10~13℃ ・夜温が 10 ℃を下回らなくなったら保温資材を除去する(除去 前は、大きく換気したり、夜間も開放するなど徐々に慣らすよ うにする)。 ・生長点がトンネルに付かないように注意する。 ◆換気 ○換気は、直接なすに生風が当たらないように工夫して行う。 【換気場所】 → 風 → → → 風 → → 二重パイプハウス 一重パイプハウス - 2 - 2.枝・葉の管理 (1)芽の整理 ◆第1側枝の下の側枝 ○第1側枝の下の側枝は、早めに除去するが、一度に行うと樹に負担がかかるため、2回くら いに分けて行う。 ○草勢が弱い場合は、草勢が回復してから行う。ただし、大きくなりすぎると、樹に傷をつ けるので注意する。 ◆整枝・剪定 ○原則として、芽の整理は 1 芽とし、側枝を長く伸ばさない。 ○採光性を良くするため、高い部位の芽ほどよく整理する。 ○ふところ部の落花防止のため、摘心は目の高さ(150 ㎝程度)で行い、ふところ部に光 線を入れるような管理に心がける。 (2)葉かき ○1番花下(第1側枝下)の葉は、主枝についた花が3~4花開花した頃に、2~3回に分けて摘葉 する。 1回め:1番果の下の葉を2~3枚残して除去する。 2回め:1番果の下の葉をすべて除去する。 ○主枝や側枝の葉は、整枝・剪定に合わせて、ふところ部に光線が入るよう摘葉する。 3.かん水管理 ○かん水は、晴天日の午前中(午前 10 時くらいまで)に行い、地温の低下を避けるため少 量多回数かん水とする。 ○急激な乾湿は、根を傷めたり、ぼけ果の発生を助長するため注意する。 4.追 肥 ○追肥は、2番果の収穫開始前後を開始の目安とし、草勢をみながら行う。 ◆液肥による追肥の目安 月 1回当たりの窒素成分量 追肥の間隔 1か月当たりの窒素成分量 4月 1.0Kg/10a 15~10日 2~3Kg/10a 5月 1.0Kg/10a 10日程度 3Kg/10a 6月 1.0Kg/10a 7~10日 3~4Kg/10a ※追肥量や間隔は、生育や着果状況に応じて調整する。 - 3 - 5.ホルモン処理 ○なすは、日最高気温が20℃以上の日が続くようになると正常に開花・結実が可能となるが、 開花期に17℃以下の低温に合うと花粉の発芽が悪くなり、着果不良になりやすい。このため、 確実に着果させるようホルモン処理を行う。 【トマトトーンの使用方法(H28.3.7現在)】 作物名 な 使用目的 す 着果促進、果実の肥大 促進、熟期の促進 ※希釈倍率50倍 希釈倍数 使用時期 使用回数 50 倍 開花当日 1 花房につき 1 回 → 水2ℓに対してトマトトーンを40mℓ(トマトトーン2本) 6.草勢に応じた管理 草勢が弱い場合 草勢が強い場合 ①摘果を行い着果負担を軽減する。 ①ホルモン処理で1番花を着果させる。 ②追肥 ②葉面散布(メリット赤等500倍)を5~7日 ・株元へ液肥(500~1000倍)を300~400mℓ 程度の間隔で3回程度施用する 程度施用する。 ・葉面散布剤(メリット青等500倍)を5~7 日程度の間隔で3回程度施用する 7.生理障害(ぼけ果、焼け果)対策 ◆急激な蒸散防止 ○曇雨天日の翌日に晴天となった場合は、吸水能力が低下しているため、内張カーテン等を 利用し遮光する。 ○急激に温度が上がらないよう換気を十分に行う。 8.病害虫防除 ●農薬を散布する際は、必ずラベルをよく読み適正に使用する。 ●病害防除は、ポイントを抑えた予防をすることが重要となる。 ●害虫防除は、早期発見、早期防除で、多発生する前に防除する。 ●病害葉や果実は、ほ場外に持ち出し処分する。定期的に開花後の花弁は除去する。 ●湿度が高まると、病害発生を助長するので、換気や循環扇等を利用し、除湿する。 ●IPMによる栽培を行う場合は、天敵(カブリダニ)への影響日数に注意する。 - 4 - 〈なすに登録のある主な殺菌剤(H28.3.7現在)〉 分 類 SDHI 対象病害虫 薬 剤 名 使用 使用 時期 回数 カブリダニ 影 響 日 数 希釈倍率 うどんこ病、すすかび病 灰色かび病、菌核病 アフェットフロアブル 2,000倍 前日 3回 ◎ 灰色かび病、菌核病、すすかび病 カンタスドライフロアブル 1,000~ 1,500倍 前日 3回 ◎ うどんこ病、灰色かび病 フルピカフロアブル 2,000~ 3,000倍 前日 4回 ◎ グアニジン うどんこ病、すすかび病 灰色かび病 ベルクート水和剤 3,000倍 前日 3回 ◎ クロロニトリ ル うどんこ病、すすかび病 灰色かび病、黒枯病 ダコニール1000 1,000倍 前日 4回 ◎ QoI うどんこ病、すすかび病 アミスター20フロアブル 2,000倍 前日 4回 ◎ 灰色かび病、菌核病 ファンタジスタ顆粒水和剤 2,000~ 3,000倍 前日 3回 ◎ 菌核病 スクレアフロアブル 2,000倍 前日 3回 ◎ うどんこ病、すすかび病 トリフミン乳剤 2,000倍 前日 5回 ◎ うどんこ病、すすかび病 ラリー水和剤 4,000~ 6,000倍 前日 4回 ◎ 灰色かび病 セイビアーフロアブル20 1,000~ 1,500倍 前日 3回 ◎ 灰色かび病、うどんこ病、 すすかび病、ハダニ類 アザミウマ類 ポリオキシンAL水溶剤 5,000倍 前日 3回 × (約21日) 灰色かび病 ロブラール500アクア 1,000~ 1,500倍 前日 4回 ○ (約7日) 灰色かび病、菌核病 スミレックス水和剤 1,000~ 2,000倍 前日 6回 ◎ 灰色かび病、黒枯病 ベンレート水和剤 2,000~ 3,000倍 前日 3回 △ (約14日) 700倍 前日 4回 △ (1日) 1,000~ 2,000倍 前日 - ◎ アニリノピリ ミジン DMI フェニルピロ ール ポリオキシン ジカルボキシ イミド MBC 菌核病 有機銅 炭酸水素Na + 無機銅 2,000倍 うどんこ病、すすかび病 サンヨール うどんこ病 ジーファイン水和剤 ※天敵(カブリダニ)への影響、◎:影響が少ない、○:多少影響有り、△:影響強い、×:影響強い(死滅) - 5 - 〈なすに登録のある主な殺虫、殺ダニ剤(H28.3.7現在)〉 分 類 対象病害虫 薬 剤 名 使用 使用 時期 回数 カブリダニ 影 響 日 数 希釈倍率 有機リン アブラムシ類 ハダニ類 マラソン乳剤 2,000~ 3,000倍 前日 6回 × (60日以上) ピレスロイド アブラムシ類、ハダニ類 ミカンキイロアザミウマ ハスモンヨトウ アーデント水和剤 1,000倍 前日 4回 × (60日以上) アグロスリン乳剤 2,000倍 前日 5回 アブラムシ類 オンシツコナジラミ ネオニコチノ イド ミナミキイロアザミウマ 1,000倍 アブラムシ類 テントウムシダマシ類 4,000倍 アザミウマ類 2,000~ 4,000倍 コナジラミ類 2,000倍 アブラムシ類、コナジラミ類 ミナミキイロアザミウマ フロニカド モスピラン水溶剤 ベストガード水溶剤 アブラムシ類 ウララDF コナジラミ類 ミカンキイロアザミウマ 1,000~ 2,000倍 2,000~ 4,000倍 × (60日以上) スワル○ (約7日) 前日 3回 前日 3回 スワル◎ スパ○(約7日) 前日 3回 ◎ スパ△ (約14日) 2,000倍 ピメトロジン アブラムシ類 コナジラミ類 チェス顆粒水和剤 5,000倍 前日 3回 ◎ その他 アブラムシ類、コナジラミ類 カスミカメムシ類 コルト顆粒水和剤 4,000倍 前日 3回 ○ (約14日) クロルフェナ ピル ハダニ類、チャノホコリダニ オオタバコガ、ハスモンヨトウ ヨトウムシ、ミナミキイロアザ ミウマ、ミカンキロアザミウマ テントウムシダマシ類 コテツフロアブル 2,000倍 前日 4回 × (約14日) マクロライド ハダニ類、チャノホコリダニ コナジラミ類、ハモグリバエ類 コロマイト乳剤 1,500倍 前日 2回 × (約7日) アザミウマ類、オオタバコガ チャノホコリダニ、ハダニ類 マメハモグリバエ ハスモンヨトウ アファーム乳剤 2,000倍 前日 2回 × (約7日) β-ケトニト リル誘導体 ハダニ類 チャノホコリダニ スターマイトフロアブル 2,000倍 前日 1回 ◎ 物理的防除 アブラムシ類、コナジラミ類 、ハダニ類、うどんこ病 ムシラップ 500倍 前日 - △ (1日) アブラムシ類、コナジラミ類 、ハダニ類、うどんこ病 エコピタ液剤 100倍 前日 - △ (1日) ※天敵(カブリダニ)への影響、◎:影響が少ない、○:多少影響有り、△:影響強い、×:影響強い(死滅) - 6 - <生理障害果発生要因> 障 害 名 ヘタのつや不 発 生 要 因 ①低温により果実の肥大に時間がか 足 (ヘタ白果) かっ た場合や草勢が低下した場合。 ②チャノホコリダニ等が多く発生す 対 策 ①草勢維持を図る。 ②チャノホコリダニ等の害虫防 除の徹底 るとみられる。 ヘタ枯れ ①低温 ②水分の競合 ①温度+湿度の確保 ぶく果 ①日照不足による同化養分不足。 ①適正な肥培管理に努める。 ②窒素肥料が多く(栄養過多)、草 ②メリット赤の葉面散布を行 勢が強い場合。 う。 ★草勢は強くなくても、日照不 足の場合も発生するので注意! 落花(花飛び) ①花芽発育中、特に、開花7~15 ①草勢維持を図る。 日前に15℃以下の低温や35℃以上の高 温にあうと花粉の発芽が阻害され、受 精が行われず落花する。 ②日照不足 ③草勢の低下(栄養不足) ④乾燥または肥料不足 つやなし果 ①昼夜の高温 ①土壌水分の補給。 (ぼけ果) ②果実肥大中期~後期の水分不足 ②根の活力維持を図る。 ③根の老化や草勢低下によって吸水力 が不足した場合にも発生しやすい。 ④低温等により果実の肥大日数が長い と発生が多くなる。 首細果 ①日照不足による同化養分不足。 ①適正な肥培管理、土壌水分の補 ②高温。 給により、草勢の安定確保を図る。 ③草勢の低下(栄養不足)。 曲がり果 ①昼夜の温度差が大きい。 ①生育に合わせた肥培管理により ②高夜温 草勢の維持を図る。 ③日照不足 ④極端な強い葉かき ⑤根の障害による草勢の低下 ⑥ホルモン剤の高濃度処理 - 7 - 【天敵農薬(カブリダニ剤)】 ○天敵導入までに使用した農薬の影響日数を再確認し、導入日を決定する。 ※天敵への影響日数を過ぎてからでないと、定着しにくく、死滅する場合もある。 ○天敵導入前に、害虫発生状況を確認し、導入日を決定する。 ※害虫が増えてしまった場合は、天敵に影響の少ない農薬で防除後に天敵を導入する。 ○天敵農薬(カブリダニ剤)を使用する場合は、2番花開花期以降に放飼する。 ※花粉なども餌とすることができるので、花数が増えてから放飼すると定着しやすい。 ※スパイデックスは、ハダニ類しか捕食しないので、ハダニ類発生初期に放飼する。 〈天敵農薬(施設栽培)〉(H28.3.7現在) 薬剤名 スワルスキー 対象害虫 使用量 (10a当たり) 使用時期 使用 回数 使用 方法 アザミウマ類 コナジラミ類 チャノホコリダニ 250~500mℓ (25,000~50,000頭) 発生直前~ 発生初期 - 放飼 スワルスキープラス アザミウマ類 100~200パック (25,000~50,000頭) 発生直前~ 発生初期 - 茎や枝等に吊り 下げて放飼 ハダニ類 100~300mℓ (2,000~6,000頭) 発生初期 - 放飼 ハダニ類 40~120パック (2,000~6,000頭) 発生初期 - 茎や枝等に吊り 下げて放飼 ハダニ類 100~300mℓ (2,000~6,000頭) 発生初期 - 放飼 (スワルスキーカブリダニ) (スワルスキーカブリダニ) コナジラミ類 チャノホコリダニ スパイカルEX (ミヤコカブリダニ) スパイカルプラス (ミヤコカブリダニ) スパイデックス (チリカブリダニ) - 8 -
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