経済調査 レポート 関東一の酒処・茨城 ~消費拡大へ、官民の取組み~ 関東財務局 水戸財務事務所 ◆ 関東最多の酒蔵を有する茨城県では、各酒蔵が積極的に販路を開拓し、行政も支援策を講じている。 ◆ 行政の積極的な支援もあり、地産地消の促進や認知度の向上が図られ、地方創生に繋がる取り組みとして期待される。 2.消費拡大に向けた行政の支援 1. 酒類の消費動向等と、各酒蔵の販路開拓事例 (1)酒類を取り巻く国内環境 (1)地産地消の支援 ○ 酒類の消費習慣のある者は、男女とも30歳代から50歳代が多い。 しかし高齢化に伴い、販売(消費)数量は平成8年度以降減少。 ➢さらに、飲酒習慣のある者においても飲酒量は減少。 (国税庁:酒のしおり(平成27年3月)) <笠間市> 平成25年12月に県内初の乾杯条例「笠間市地酒を笠間焼で乾杯する条例」を制定。 市内のイベントでは乾杯条例が適用されるため、地酒がより身近に。 ➢「地酒を名産物として認識し、市民からの愛着度が増している。」 (須藤本家(株) 須藤氏) <石岡市> ○ 「『石岡の地酒』で乾杯を推進する条例」を制定。市内の酒造会社4社 ランチョンマット が連携し、紙製ランチョンマットを作成する等、普及啓発活動を推進。 (石岡市) ➢「地道な普及活動の結果、地酒を取り扱う店が増えている。」 (白菊酒造(株) 廣瀬氏) ➢このほか、乾杯条例は水戸市等でも制定。影響について明利酒類(株) の加藤氏は・・・ 「地元のお酒を認知し、消費することは地産地消そのもの。地産地消の 促進は、売上の増加以上に、大きな成果であると認識している。」 ○ (2)酒造りに適した地・茨城県 ○ ○ 大消費地である都心部に近く、出荷がしやすい立地。 農産物の生産が盛んな上、5つの水系が存在し、 酒造りに適した環境。また、国内最古の酒蔵・須藤本家(株) 水系別蔵元立地箇所 (茨城県酒蔵組合) を始め、蔵元数は関東最多の46。 「大手・準大手のような全国区の酒造メーカーがなく酒処のイメージはないが、 小さいながらも個性を出して頑張っている。」(白菊酒造(株) 廣瀬氏) ○ 全国的に販売数量及び飲酒量が減少しており、厳しい環境ではあるが、 各酒蔵は積極的な販路開拓を行っている。 (3)販路開拓事例 ○ 販路開拓に向け、各酒蔵では特色ある取組みを行っている。 <木内酒造(資)> ➢地元産の麦を使用し、世界的に有名な「常陸野ネストビール」 を生産、販売。30か国以上に毎週出荷。このほか、同ビールが 味わえる飲食店を東京都内に出店。店内では醸造体験も可能で、 山海嘉之社長 賑わいを見せている。 <須藤本家(株)> ➢平安時代創業の国内最古の酒蔵。地元産の米を使用した「郷乃譽」 を、欧米を中心に輸出。さらに、「山桜桃」については、フランス の有名レストランで採用されるほどの高い評価。また、笠間市乾杯 条例制定に尽力。 <白菊酒造(株)> ➢ベトナム向けに「白菊」を輸出。ラベルには浮世絵を描き、 日本文化を連想させる仕様に。浮世絵ラベルは外国人に好評で、 国内の免税店でも売れ行きは良い。 <明利酒類(株)> ➢ベトナム、フランス等に「百年梅酒」を輸出し、海外販路を 積極的に開拓している。また、水戸市内に観光酒蔵「別春館」を 開設し、観光振興にも寄与。最近では中国人見学客が多く、梅酒 の「爆買い」をする者も多い。 (2)海外展開の支援 乾杯条例ポスター 常陸野ネストビール (木内酒造) 山桜桃、郷乃譽 (須藤本家) <茨城県> (水戸市) ○ 農業分野の協力関係強化を目的に、ベトナムと覚書を交わす(平成26年3月)。 ➢ベトナムとの関係が深化。地酒は農業分野ではないものの、茨城の地酒をベトナム でPRしてもらうよう、ベトナムのメディア関係者を対象とした酒蔵見学ツアーを実施。 <(独)日本貿易振興機構 茨城貿易情報センター(ジェトロ茨城)> ○ 平成26年6月開設。商談会の開催をはじめ、企業の海外進出を支援。 ➢「茨城の地酒は質が良く、海外進出は十分可能。そのための 後押しを行う。」(ジェトロ茨城 西川氏) 消費拡大に向け、行政も積極的に支援 商談会の様子 (ジェトロ茨城) 3.今後の課題とまとめ ≪今後の課題≫ 海外販路の更なる開拓と、地産地消の一層の促進 白菊 (白菊酒造) 別春館(明利酒類) 国内需要が落ち込む中、積極的に販路を開拓 ○ 「外国人の認識を『日本酒は日本食の一種』から『日本酒はアルコールの一種』 へ変えるため、ブランド構築が必須。そのためには、更なる販路開拓が必要。」 (ジェトロ茨城 西川氏) ○ 「乾杯条例」の制定を推進し、認知度を高めることにより、地産地消を一層促進。 茨城産の地酒が国内外で消費されることにより、地産地消の促進や、 認知度の向上が図られ、地方創生に繋がる取り組みとして期待される。
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