理学療法士 鈴木 徹大 暦上では春ですが、朝晩はまだ冷えますね。この時期は少しずつ 運動意欲も出てくる頃でなないでしょうか。私もランニングを始め ようかと思っています。今回は、みなさんがよく口にする「筋(す じ)」ついてお話ししたいと思います。分かりやすいように、筋肉と 比較していきながら説明します。 まずは「筋肉」についてです。筋肉とは、筋線維と呼ばれる糸の ようなものが集まり束になったものです。その束は筋膜という膜に 覆われています。縮んだり伸びたりする性質を利用して、関節を動 かしています。 次に「筋(すじ)」ついて述べていきます。皆さんが筋という言葉 を使うときは、 「筋を痛めてしまった」 ・ 「筋を伸ばしてしまった」な どが多いと思います。私自身も、臨床上そのようなフレーズをよく 耳にします。ここでいう筋とは一体どこを指しているのでしょうか。 一般的に筋とは、筋肉と骨を繋いでいる腱という部分や、骨と骨と を繋ぐ靭帯を指しています。 腱は筋肉と骨をつないでいる組織であり、腱自体の伸長性は乏し いとされています。腱が切れるということでよく知られているのは 足の「アキレス腱断裂」や肩の「腱板断裂」などです。柔軟性がな く無理に伸ばすと切れてしまうこともある腱ですが、筋にしっかり と結びついているので、強く引っ張られても骨と腱の接続部分が抜 けてしまうことはないと言われています。また、腱は筋肉の柔軟性 を助ける役割もあります。私たちが日頃、体を動かしたりストレッ チを行うには筋肉の柔軟性だけでは不十分です。それを補うのが筋 肉と腱をつなぐ筋腱移行部だと言われています。 医療法⼈社団めぐみ会 南大沢メディカルプラザ リハビリテーション科 靭帯は筋肉と違って柔軟性や弾力性がなく、硬い組織です。この 硬さは体を守る上では非常に重要です。簡単に言えば、骨と骨との 仲介役で、身体が異常な方向に動かない様にしてくれているのです。 野球のグローブに例えると、革紐がなければグローブの形を保つこ とは出来ません。この革紐が靭帯と同じ役割を果たしています。ま た、靭帯は身体が異常な方向に動かない様にしてくれていると述べ ましたが、腱と同じように、身体の許容範囲を越えて無理に力を加 えると靱帯が引っ張られ、重度であれば断裂してしまいます。靱帯 断裂で有名なものは、膝の「前十字靭帯断裂」などがあります。 「筋(すじ)」と「筋肉」では同じ漢字を書きますので、中には同 じものだと思っている方もいるかと思います。しかしこれまで述べ たように、皆さんがよく口にする「筋(すじ)」は筋肉とは別物です。 このような正しい知識を持つことは、運動意欲を高め、運動への興 味を引き出す材料にもなってくれると思います。また、怪我をして しまい、病院でどこを痛めてしまったのかを伝えなければならない 場面においても、少しの知識があればより正確に伝えることができ ます。正しい運動方法を身につけることも大切ですが、正しい知識 を覚えることも大切です。知識を生かした運動を行い、運動効果を 実感してみましょう。 医療法⼈社団めぐみ会 南大沢メディカルプラザ リハビリテーション科
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