絹及びナイロン繊維の吸着水の観察 大塚美香 酒井哲也 (共立女大)

第49 回 大 会〕
被 服
紙おむつ の含水に よ、
る 性能変化
○典倉 弘子* 丹 羽 雅 子**
(*滋賀大教育 **奈 良 女 大 生 活 環 境 )
1 Ha −6
目 的 : 紙 お む つ は 直 接 肌 に 接 し て 使 用 さ れ る た め 、含 水 に よ る お む つ 内 の 局 所 環 境 の 温 湿
度 や 表 面 特 性 の変 化 が 、皮 膚 炎 の発 生 や 着 用 快 適 性 に 影 響 を 与 え る と 考 え ら れ る。 本 研 究
で は 、 紙 お む つ の 肌 触 り に 関 与 す る 表 面 特 性 、圧 縮 特 性 お よび 水 分 ・熱 移動 特 性 に 着 目 し、
含 水 に よる 特性 変 化 を 評 価 し て 、 紙 お む つ の性 能 設 計 と使 用 に 関す る 基 礎 資 料 を 得 る。
方 法 : 市 販 の 大 人 用 ・ 乳 幼 児 用 紙 お む つ49 種 類 を 広 範 囲 か ら 収 集 し て 試 料 と し た 。 紙 お
む つ の 股 部 中 央 よ り 試 料 片 を 切 取 り 、7.5× 10.5cm^ の セ ル に 挿 入 し て 、KES-FB シ ス テ ム に
よ り 表 面 特 性 と圧 縮 特性 を 計 測 し た。 表 面 特 性 の 計 測 に はU 型 接 触 子 、圧 縮 特 性 の 計測 に
は ゴ ム 半 球 型 加 圧 子 を 用 い た1) 。 含 水 状 態 の 特 性 値 の 計 測 は 、 試 料 に0.9% の 生 理 食 塩 水
を 、 1 回 の 排 尿 に 相 当 す る0.4g/cm^ 注 入 後 に 行 っ た 。 液 戻 り 量 は 、 含 水 5 分 後 の 紙 お む つ
ダ)表 面 に 濾 紙 を 置 き 、 体 圧 に 相 当 す る45g/cm^ 加 圧 下 で の 濾 紙 の 吸 水 量 と し た 。 ま た 、 母
親 ・ 女 子 大 生 を 被 験 者 と し て紙 お む つ の 肌 触 り の 良 否 に 関 す る 5段 階 評 価 を 行 っ た。
結 果 : 紙 お む つ の 形 状 変 化 と し て の 厚 さ は 、含 水 に よ り 平 均16% 増 加 し た 。 含 水 後 の 圧 縮
特 性 は 、 線 形 性 が 約20% 増 加 し 、圧 縮 レ ジ リ ェ ン ス が 約20% 減 少 し て 、圧 縮 か た く 回 復 性
が 低 下 し た 。 表 面 特 性 に つ い て は 、 表 面 摩 擦 係 数 が 約70% 、 表 面 粗 さ が 約30% 増 加 し 、 排
尿 後 の 早 期 の お む つ 交 換 の 必 要 性 が 示 唆 さ れ た 。 液 戻 り 量 は0.5 ∼24mg/cm^ で 、 少 な い ほ
ど肌 触 り の 主 観 評 価 が 良 かっ た 。大 人用 お むつ は 乳 幼児 用 に 比 べ て含 水 状 態 に お け る 肌 触
り の評 価 が 低い 傾 向 に あ り 、 性 能 設 計 上 考慮 す る必 要 が認 め ら れ た。
文 献1)H.Yokurサa.
1 Ha −7
M.Niwa:Proceedingsレof Textile/Research Symposium at MtJuji,p. 169(1996)
絹 及び ナイロ ン繊 維の 吸着水 の 観察
○大 塚美 香 酒井哲 也 ( 共 立女 大 )
【 目的 】 著 者ら は 、こ れまで にナイ ロン6繊維 の吸着水 の挙動 に ついて 、TI 測定 や等 温吸着
測 定など によ る検 討を行い 、家政学 会 で発表 してきた 。
絹は ナイロ ン、
6繊維 と類似 のイ1岸 構 造を持つ が 、天然 繊維で あ るため 複雑 で多 様 な性質 を示
す 。本研究 で は 、絹と ナイロ ンの非晶 域におけ る微細 構造の差 異を水 の吸着 挙動を通 して比 較・
検 討す ることを意 図し 、吸着水 に関す るNMR
めT1 値に注目 し 、併 せて D S C測 定 、TG −
D TA測 定を行い 、総合的 な議 論を試 みた 。
【 方法】 絹マ ルチフ ィラメ ント糸及 びナイロ ン6繊維 (マ ルチフ ィラメ ント糸 、モノフ ィラメ
ント糸 )を用い 、未処 理試料と 分散染 料 、及び酸 性染 料を用い染 液 濃度を変え て染 色した染 色試
料 、対照 処理した対 照試 料の3 種を用意 した 。各 試料に ついて 、い くつ かの環 境条件 下で調 湿し 、
測 定に供 した 。
【 結果 】 分散染 料によ る染色 処哩は 、染 着量 の増加と と もに絹 の吸着 水のT 1値を 減少させ る
が 、酸性染 料 の場合 はT 1値は 殆ど変化 しなか った 。一 般に 、分 散染 料は疎水 的雰囲 気が強い た
め染 色繊 維に吸着 す る水分 子と 反発 し 、こ のため水分子 は吸着位 置を 繊維分子 間距離 のより密 な
場 所に求 めたと思 わ れるが 、親 水性 の酸 性染料 ではこ のよう・な反 発 を生 じない と考え た 。こ の結
果 は 、ナイロ ン繊 維にお ける結 果と逆 の傾向を示 してお り 、絹 の親 水的 性質と ナイ ロンの疎水 的
性質と の違い による ものと思 われる 。
ナイ ロン6繊 維の吸着水 の結 晶化 または融解 挙動を 、T G−D T Aによ って 検討 したところ 、
吸着水 のほと んどが不 凍水であ るこ とカ 堰 め られた 。ナイロ ン6繊維 の恒温吸 着曲線 は 、シグモ
イ ド型を 示し 、この形 は多 層吸 着であ るとい われてお り 、こ のよう な諸結果 を総合的 に理解で き
るよ うな微細構 造と水 の吸着と の関係 を提案 したい 。
199