技術情報「期待!自給粗飼料微細断収穫機」

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期待! 自給粗飼料微細断の収穫機
広島県立総合技術研究所 畜産技術センター 飼養技術研究部 研究員 末永 晋一氏
今回は,来年度の市販を目指して実証試験を行ってい
る『微細断収穫機』について紹介します。当センターの
圃場で収穫実証試験を行っていますが,開発研究責任者
の近畿中国四国農業研究センターの高橋仁康主任研究員
に取材しました。
Q . 今回の収穫機について,特徴を教えて下さい。
A .前提として,「微細断の収穫機」と「飼料イネのバン
カーサイロ調製」などを頭にいれていただき、あくま
で新しい収穫体系の構築と提案だと理解ください。
今回の収穫機は,幅広のクローラーを取り付けてい
るため,他社製の回転ドラム式の収穫機では対応がで
きない湿田などの足場の悪い場所でも刈り取りができ
るという特徴があります。収穫機後方にテッピングワ
ゴンを装備しておりトラック輸送とバンカーサイロに
対応しています。こうすることで,湿田でも収穫機の
ワゴンから輸送用トラックへダイレクトに積み込みが
できるため、土壌の混入などによる飼料イネの品質劣
化が抑制できます。
また,回転ドラム式刈取ヘッダにより,自給粗飼料
のトウモロコシと飼料イネの両方が収穫可能であると
いう特徴もあります。
Q .なるほど。今回の収穫機は微細断できるという点が
ポイントですが,どれくらいの長さの調節が可能な
のでしょうか?
A .切断長の設定は未決定ですが,カッターは 6mm ま
での微細断が可能になる予定です。切断長を短くす
ることで,圃場からの搬送効率の向上と,搬送費用
の低下,さらに,サイレージ調製での詰込密度の向上,
乳酸菌発酵の促進を目標に取り組んでいます。
Q .フレール型等,その他,様々な収穫機がありますが,
それらの収穫機とどのような点に違いがあります
か?
A .フレール型もコンバイン型も,通常,収穫物は一つ
一つ個別にロールベールに形成されます。その場合,
1つのロールベールにつき,ネットとフィルムの経
費は 800 円以上かかります。一方,今回の微細断収
穫機はバンカーサイロ等でダイレクトに貯蔵するこ
とを目的としていますので,ロールベール形成に要
するランニングコストが削減できます。
Q . お話ありがとうございました。
トウモロコシや飼料イネの収穫風景を見た感想として
は,収穫速度が早く,スムーズであるという印象を受け
ました。
微細断収穫機の操作性も非常に良いとのことで,誰で
も操作できるようになっているとのことでした。また,
中山間地域特有の狭小圃場を得意とする小回りの利く収
穫機ですので,本県の農家の方々にとって,大変利便性
の良い収穫機であると思います。
さて,予告です。来月の11月19日,「平成27年
度農食事業 微細断収穫に係る現地検討会」を開催しま
す。庄原市七塚西の水田での飼料イネ「たちすずか」の
収穫と当センターでのバンカーサイロ詰込作業の実演を
行いますので,微細断収穫機に関する詳細な情報(規格,
販売時期,価格等)が知りたい方は是非お越し下さい。
微細断収穫に係る現地検討会開催案内
1. 日時 11 月 19 日(木)13:20~16:30
2. 集合場所
広島県立総合技術研究所畜産技術センター
住所:〒 727-0023 広島県庄原市七塚町 584
電話:0824-74-0331
3. 内容
13:20 当センター駐車場集合 13:30 貸し切りバスで , 七塚西の飼料イネ圃場到着
「たちすずか」収穫作業見学
14:30 七塚西圃場出発
14:40 当センターにて , バンカーサイロ調製実演見学
15:20 休憩
15:40 TMR 給与・摂取の状況および搾乳ロボット見学
(微細断収穫機のプロトタイプ:
刈取部が特徴的)
Q . デメリットはありますか?
A .デメリットは収穫圃場とサイロの設置場所が遠距離
の場合には向いていません。輸送距離が長くなれば,
必要なダンプの台数や搬送時間が増え,その分コス
トがかかるためです。
目安として,輸送距離が片道 20 分以内の範囲で,
圃場の集積面積が 25ha 以上という条件をクリアして (飼料イネ収穫圃場風景:ぬか
いる場合,コストダウンが可能です。
るむ圃場もなんのその)
(ダンプ詰め替え作業)
( 写真右:高橋主任研究員
左:末永研究員 )
広島
2015年
(平成 27年)10月
〔№ 259〕 10