血痰・喀血

血痰・喀血
呼吸器内科 レジデント
加藤 高英
定義
気管・下気道からの出血のうち・・
O 血痰(bloody sputum)
痰の中に血が混じっているもの.
O 喀血(hemoptysis)
ほぼ血液そのものを喀出するもの.
100-600ml/日以上の喀血=大量喀血!
原因疾患
気道病変
・気管支拡張症
・気管内異物
感染症
・細菌性肺炎
・抗酸菌感染症(肺結核,非結核性抗酸菌症)
・真菌症(肺アスペルギルス症など)
免疫異常
・肺胞出血(膠原病,血管炎,Goodpasture症候群など)
・多発血管炎性肉芽腫症
腫瘍性病変
・肺癌
心血管異常
・肺水腫,うっ血,心不全
・肺動静脈瘻
・胸部大動脈瘤
特発性
・特発性肺胞出血(原因不明)
その他
・月経随伴喀血
・凝固異常,血小板減少症
・医原性(気管支鏡検査後,抗血栓薬など)
・気管癌,気管支癌
原因疾患
気道病変
・気管支拡張症
・気管内異物
感染症
・細菌性肺炎
・抗酸菌感染症(肺結核,非結核性抗酸菌症)
・真菌症(肺アスペルギルス症など)
免疫異常
・肺胞出血(膠原病,血管炎,Goodpasture症候群など)
・多発血管炎性肉芽腫症
腫瘍性病変
・肺癌
心血管異常
・肺水腫,うっ血,心不全
・肺動静脈瘻
・胸部大動脈瘤
特発性
・特発性肺胞出血(原因不明)
その他
・月経随伴喀血
・凝固異常,血小板減少症
・医原性(気管支鏡検査後,抗血栓薬など)
・気管癌,気管支癌
初期対応
・バイタルサインのチェック(呼吸数も)
・気道確保,酸素投与
→大量喀血は窒息リスク!場合により
①出血側を下にした側臥位
②片肺挿管(健側へ.気管支鏡があると便利)
・血管確保
・感染対策
→標準予防策+肺結核を念頭に.
手袋,マスク,ゴーグル(あれば)など着用.
問診
・いつから?どの程度?色は?
→血痰か,喀血か,吐血か,鼻出血か.
・既往歴(特に慢性呼吸器疾患)
→肺結核では,治療歴の有無も重要!
・服薬歴(抗血栓薬の有無),喫煙歴
・免疫抑制状態を示唆する所見はないか?
→DM,免疫抑制療法,化学療法,HIV,手術歴等
喀血?吐血?
喀血
吐血
状況
咳とともに喀出
嘔吐とともに吐出
臨床症状
呼吸困難,喘鳴
胸痛,背部痛など
悪心,上腹部不快感
心窩部痛,下血
色調
鮮紅色
暗赤色
性状
泡沫状,凝固しにくい
塊状,凝固しやすい
混在物
喀痰,膿性痰
食物残渣
pH
アルカリ性
酸性
(Bidwell JL et al. Am Fam Physician 2005;72:1253-1260)
身体診察
・喀出したものの観察(あれば)
・胸郭運動左右差,呼吸音異常の有無
・心不全徴候,心雑音の有無
・鼻腔,口腔内のチェック
(余裕があれば・・・)
・膠原病,血管炎を示唆する所見のチェック
→毛細血管拡張,皮疹,出血斑など
検査
・血液検査
・動脈血ガス分析(条件を必ず記載!!)
最低限:血算,生化学,凝固線溶系,血液型
可能なら:QFT,MAC抗体,膠原病自己抗体,
ANCA,β-DG,腫瘍マーカー等
・尿検査(潜血/蛋白尿の有無)
膠原病や血管炎のスクリーニングとして.
検査
・胸部単純X線写真(全例!)
・CT検査(できれば造影)
可能なら肺野はHRCT Thin-slice(1mm)で.
造影剤アレルギーと腎機能のチェック!
・心電図,経胸壁心エコー図検査
心疾患のスクリーニングとして.
検査
・喀痰検査
必ず抗酸菌検査も!
腫瘍や真菌の検索には細胞診が有用.
・気管支鏡検査
出血源の検索,原因精査,止血のため.
気管支鏡による刺激で再出血を誘発することも.
・気管支動脈造影
喀血の約9割は気管支動脈等の体循環系由来.
治療(コイル塞栓術)も兼ねることが多い.
治療方針
・入院の基準
①呼吸不全など,バイタルが不安定
②中等量以上の出血が持続する
→結核が否定できない場合は28病棟陰圧室
→空気感染対策+喀痰抗酸菌3連検
※抗酸菌塗沫陽性だけでは,
TbかNTMか,死菌か生菌か,判別困難.
→呼吸器内科,ICTへ相談を.
治療方針
・気道確保,酸素投与,血管確保
・止血剤投与
carbazochrome(アドナ®)
100mg/日まで
tranexamic-acid(トランサミン®) 2500mg/日まで
※血栓傾向のある症例では慎重に!
・出血側を下にする側臥位
健側肺への流入,窒息を防ぐ!
場合により健側への片肺挿管を要す.
治療方針
・原疾患の治療
感染症:抗菌薬,抗真菌薬,抗結核薬,等
膠原病・血管炎:ステロイド,免疫抑制剤,等
腫瘍:抗がん化学療法,放射線療法,等
心血管系:利尿剤,血管拡張剤,等
・気管支動脈塞栓術(Bronchial Artery Embolization)
呼吸器科・放射線科で相談し,適応を決定.
・手術療法
肺アスペルギローマ,肺動静脈瘻など
病変の切除により出血のコントロールが可能な場合.
症例①
【症例】80歳,女性
【既往歴】気管支拡張症,肺結核後遺症
【病歴】
上記既往による血痰・喀血を以前から繰り返し
ており,気管支動脈塞栓術(BAE)目的で当科入
院した.
【主要な検査結果】
QFT:判定保留,MAC抗体:陰性
喀痰抗酸菌塗抹陰性
胸部単純X線,CT検査
気管支動脈塞栓術(BAE)
症例②
【症例】89歳,女性
【既往歴】肝硬変,肝細胞癌
【病歴】
肝細胞癌治療後の経過観察中,急速進行性の
呼吸苦が出現.大量喀血及び貧血の進行があ
り,精査加療目的で当院へ救急搬送.
【主要な検査結果】
QFT:判定保留,β-DG:感度以下
喀痰抗酸菌塗抹陰性,MPO-ANCA:9830
胸部単純X線,CT検査
治療後
症例③
【症例】66歳,男性
【既往歴】特記事項なし
【病歴】
1ヶ月以上持続する血痰,喀血のため当科受診.
精査目的で気管支鏡検査を施行.
【主要な検査結果】
QFT:陰性,抗MAC抗体:陰性
喀痰抗酸菌塗抹陰性,Aspergillus抗体:32倍
画像
Take-home message
O 喀痰抗酸菌検査を忘れない
常に結核の可能性を念頭に.
※通常の肺炎の際も一度は喀痰抗酸菌を.
O 適切な酸素投与,気道確保
怖いのは失血死ではなく,窒息死!
O 初期対応後,呼吸器科コンサルト.