日本の農業と主権をアメリカに売り渡す TPP 交渉は中止せよ

【談話】
日本の農業と主権をアメリカに売り渡す TPP 交渉は中止せよ
2015 年 8 月 1 日 農民運動全国連合会会長 白石淳一
1.7 月 28 日から 31 日までハワイで開かれていた TPP 閣僚会合は、
「大筋合意」とい
うフィクションをでっちあげることに失敗し、次回の会合の予定を決めることもできない
ままで終わった。
「TPA」法成立を受けて、米日政府が「最後の」場として満を持して臨ん
だ閣僚会合が決裂した原因は、日本をはじめ参加各国の国民の運動の成果であるとともに、
TPP をめぐる矛盾がますます明瞭になっていることにある。
TPP は単なる貿易協定ではなく、アメリカのルールをアジア・太平洋地域に押しつけ、参
加国の国家主権を侵害し、国民の生活を悪化させる。TPP は、知的財産権の強化により貧
者から医薬品を奪い、ISD 条項により参加国の環境・健康などの公共政策を破壊する。TPP
はまた、競争・国有企業・政府調達条項により、各国の発展段階に則した経済政策の実行
を著しく阻害する。
2.この矛盾は「秘密交渉」のベールがはがされるにつれて、今後ますます深まりこそ
すれ、解消されることはない。矛盾の激化は交渉参加国政府にも及んでいる。ハワイ閣僚
会合前から、カナダやマレーシア、ニュージーランドが「乱」を起こし、日米政府はこれ
らの国を交渉から排除すると脅してきた。カナダのメディアは「TPP は脅迫の段階に入っ
た」と批判したが、排除をちらつかせた「脅迫」をもってしても政治決着ができなかった
ところにハワイ閣僚会合の深刻な特徴がある。私たちはハワイを文字通り「最後の閣僚会
合」にすること、つまり TPP 交渉そのものをきっぱり中止することを要求する。
3.ハワイ閣僚会合での安倍政権の交渉姿勢は史上最悪であり、国会決議を全く無視し
て日本の農業をアメリカに売り渡すことになんのためらいもないものであった。アメリカ
米の輸入枠の拡大、牛肉・豚肉の関税大幅引き下げ、乳製品の輸入枠拡大に加えて小麦・
砂糖の輸入拡大措置の検討や鶏肉関税引き下げなど、農産物市場開放のバーゲンセールと
いわざるをえない。
「重要農産物」を守って一歩も譲ろうとしなかったカナダ政府や、
「憲
法と主権、中小企業・マレー人優遇など国の中核となる政策は変更しない。今回の交渉で
はいかなる合意にも署名しない」として交渉に臨んだマレーシア政府と比べれば、安倍政
権の従属・売国ぶりは明らかである。日本の農業と経済主権をアメリカに売り渡す TPP
推進と、日本の若者の命をアメリカに差し出す戦争法案は根が一つであり、ここにこの政
権の史上最悪ぶりがあらわれている。
4.私たちは TPP 閣僚会合が事実上決裂に終わったことを歓迎するとともに、これ以上
無駄で有害きわまりない交渉を中止すること、TPP 交渉の情報公開を要求する。あわせて、
日米協議で日本が示した農産物の譲歩提案をすべて撤回するとともに、その国会決議違反
の全容を国民に公開し、謝罪することを要求する。
TPP 推進勢力のもくろみは大きく崩れた。安部政権は 8 月末にも閣僚会合を開き、
「も
う一度、会合が開かれればすべてが決着するだろう」としているが、私たちは国内の広範
な諸階層との共同と国際的連帯をますます強め、TPP の息の根を止める運動を広げる。
以上