口腔と全身 「口腔科学」:口腔診断内科 1. 口腔と全身の関係 1) 口腔固有の疾患(齲食や歯周病)および口腔領域で行われる処置や投薬が全身に及ぼす影響 慢性歯性病巣(歯性病巣感染) :肉芽腫性口唇炎、掌蹠膿疱症 歯科用材料とアレルギー:扁平苔癬、掌蹠嚢胞症 口腔手術の侵襲と背景疾患、一過性菌血症と細菌性心内膜炎 誤嚥性肺炎と口腔ケア 抗菌薬、鎮痛剤と合併疾患 2) 全身性疾患の部分症状としての口腔病変 全身→口腔 (1) 口腔病変を伴う症候群 Basal cell nevus syndrome, Gardner’s syndrome、Acromegaly SAPHO syndrome (DSO) * (2) 色素沈着Pigmentation アジソン病Addison disease ポイツ・ジェガーズ症候群 Peutz-Jeghers syndrome フォンレックリングハウゼン病von Recklinghausen disease アルブライト症候群Albright syndrome 3) 他臓器の疾患、他科での処置、全身状態の口腔への反映/影響 全身→口腔 (1) 慢性歯性病巣の急性化:原因歯の未治療など有り場合、全身状態の悪化で歯性炎症が急性化をきたす (2) 内臓疾患等に伴う口腔病変(oral manifestation of systemic disease) ① 一次性病変(同一の病因) :Sjogren syndrome, 天疱瘡、類天疱瘡、Bechet’s disease ② 二次性病変(間接的)の口腔粘膜:悪性貧血(Hunter 舌炎) 、Plummer-Vinson 症候群 (3) 免疫抑制状態での口腔病変: HIV-カンジタ、ヘルペス 骨髄移植-GVHD (4) 薬物性:ニフェジピンによる歯肉増殖症、ビスフォスフォネート製剤による顎骨壊死 BRONJ* 分子標的薬による口腔粘膜炎:セツキシマブ(アービタックス) 、リツキシマブ(リスキサン) 2)-(1) *基底細胞母斑症候群 nevoid basal cell carcinoma syndrome: NBCCS Gorin 症候群 常染色体優生遺伝 ヘッジホッグシグナル経路に関与するpatched homolog 1 (PTCH1) 遺伝子異常 上下顎骨内に多発性顎嚢胞(角化嚢胞性歯原性腫瘍 kerato cyst ic odontogenic tumor)をみる。 全身皮膚に青褐色の基底細胞母斑がみられ、手掌や足背部に角質層を欠いた小窩(pit)。母斑は癌化することもある。 顔貌:前頭部の突出、両眼隔離 ocular hypertelorism、鼻根平坦化、下顎前突を呈する。骨格系:二分肋骨、大脳鎌の石灰化、脊柱側弯 歯原性角化嚢胞は再発しやすい。長期の経過観察 *ガードナー症候群 Gardner’s syndrome 大腸ポリポージス、骨腫および皮膚の腫瘍を主徴とする疾患。大腸ポリープは高率に 癌化すると言われているため早期発見が重要である。 [原因] 常染色体優性遺伝、Adenomatous polyposis carcinoma (APC) gene のmutation [症状] 前頭骨・上顎骨・下顎骨の多発性骨腫、歯牙腫、埋伏歯、過剰歯、セメント質過形成、皮膚軟部組織の類表皮嚢胞と線維性腫瘍、結腸・直腸のポ リポージス びまん性硬化性下顎骨骨髄炎 Diffuse Sclerosing Osteomyelitis (DSO) 無菌性骨髄炎 びまん性硬化性下顎骨骨髄炎(diffuse sclerosing osteomyelitis:DSO)は、下顎骨の腫脹、疼痛、開口障害などを伴うが 排膿や膿瘍形成は認めず、抗菌薬や外科的療法が無効な原因不明の難治性疾患である。 SAPHO 症候群の部分症 (Synovitis, Acne, Pustulosis, Hyperostosios, Osteitis) (掌蹠膿疱症、掌蹠膿疱性関節炎) 【治療】Bisphosphonates 破骨細胞による骨吸収を阻害、ステロイド、NSAIDs 1 口腔と全身 「口腔科学」:口腔診断内科 *掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう) 手のひら,足のうらに無菌性の膿疱が生じる病気。根尖病巣、慢性扁桃炎などの病巣感染,歯科金属アレルギーが原因となっている場合 がある。 2)-(2) 色素沈着 Pigmentation を示す症候群 全身性疾患の部分症状としての口腔病変 この4つは国試に良く出る。 A) アジソン病 Addison disease 副腎皮質機能不全により皮膚、粘膜に色素沈着をみる疾患 [原因] 結核、癌転移、真菌症による、あるいは突発性の副腎皮質機能不全 [症状] 皮膚、粘膜の色素沈着、精神的・肉体的疲労、脱力感、食欲不振、体重減少、便秘、下痢、めまい、失神発作、低血糖、低ナトリウム血症、 好中球減少、好酸球増多 B) ポイツ・ジェガース症候群 Peutz-Jeghers syndrome 口唇・顔面の色素沈着と消化管のポリポージスを主徴とする疾患。ポリポージスは高率に癌化すると言われている。 [原因] 常染色体優生遺伝 原因遺伝子は19 番染色体短腕にあるセリン・スレオニンキナーゼ11(STK11/LKB1)が原因遺伝子 [症状] 口唇・頬粘膜・口蓋・歯肉にメラニン色素沈着、口唇・鼻腔・眼窩周囲の皮膚に茶褐色、境界明瞭、平坦な色素沈着、小腸・大腸・胃・十二指 腸に多発性のポリポージス、腸重積、卵巣の嚢胞・腫瘍 C) フォンレックリングハウゼン病 von Recklinghausen disease von Recklinghausen 病 神経線維腫症1 型neurofibromatosis type1; NF1 神経堤起源細胞由来の母斑症で、皮膚の多発性神経線維腫、色素沈着(特徴的なカフェオレ斑café au-lait spot)を主徴とする疾患 [原因] 常染色体優生遺伝、神経線維腫症(NF)は臨床的に8 型(NF1-8)に分類される。NF1(口腔領域に病変)とNF2(中枢病変が主体)以外はまれ。 [症状] 歯列不正、咬合異常、舌腫瘍、顎骨発育不全(顎角部骨欠損)、眼瞼の神経線維腫、水晶体腫、先天性緑内障、皮膚の神経線維腫、神経鞘腫、 色素沈着、カフェオレ斑てんかん、精神発達遅滞、脊柱側彎、偽関節、性的早熟、内臓の神経線維腫、褐色細胞腫 D) アルブライト症候群 Albright syndrome 多骨性線維性骨異形成症、皮膚の異常色素沈着および性的早熟を主徴とする疾患 [原因] 内分泌異常が考えられるが不明。Signal protein gene GNAS 1 のmutation が関与 [症状] 多骨性線維性骨異形成症、皮膚のミルクコーヒー色の色素沈着、性的早熟、アルカリ性フォスファターゼ値の上昇、若年性で女性に好発。 2 口腔と全身 「口腔科学」:口腔診断内科 3)-(2)-①. 内臓疾患等に伴う口腔病変(oral manifestation of systemic disease) 一次性病変(同一の病因) 口腔粘膜、皮膚病変を合併する疾患 皮膚、粘膜の水疱症 ウイルス感染による水疱よりやや大型の水疱 1)天疱瘡 Pemphigus 女性に多く、40 歳代に多い。 棘融解を伴う自己免疫性水疱性疾患.やや ① 尋常性天疱瘡 (65%) Pemphigus vulgaris 約 80%に粘 膜疹、60%に口腔初発、1 年以内に皮疹。 【原因】ほぼ全例に粘膜上皮細胞間に IgG の沈着、患者血清中に表皮細胞 間接着、天疱瘡標的抗原(デスモグレイン Dsg 3:デスモゾームの構成成 分でガドヘリンスパーファミリーに属する接着分子)に対する抗体(天疱 瘡抗体)、さらに補体成分 C3 の沈着(40%)がみられ、免疫機序によって細 胞相互間の結合が失われ、粘膜上皮内に水疱形成、血漿蛋白漏出を伴う。 棘融解 Acantholysis 棘細胞離開. ★ Dsg1 :皮膚 ★ Dsg3:粘膜 症状や経過とパラレル 【症状】前駆症なしに突然、皮膚、粘膜に水疱。頬粘膜、口蓋、舌、下唇、歯肉の順。 Nikolsky 現象:ニコルスキー徴候(尋常性天疱瘡の場合の皮膚の特異なぜい弱性.外見上は正常な表皮が,こすることによって 基底層のところで分離し,浮き上がる) Tzanck 試験:水疱の塗沫標本で棘融解細胞(Tzanck 細胞)の検出 【治療】ステロイド、免疫抑制剤 【予後】水疱、びらん、乾燥、治癒をくり返す。死亡率は数%。内臓悪性腫瘍との関連。腫瘍随伴症候群 2)類天疱瘡 Pemphigoid 棘融解を示 さず、表皮下に水疱。BP180 (col 17:17 型コラーゲン)が 病因自己抗体(後天的) 【原因】抗基底膜抗体:BP180 ヘミデスモゾームの 構成成分のインテグリンスパーファミリーに属する接 着分子に対する抗体(基底膜のラミニンと自己抗体)IgG, IgA の沈着、補体成分C3 の沈着 ①水疱性類天疱瘡(Bullous pemphigoid) 頬粘膜、口 蓋に好発。 ②粘膜類天疱瘡(Mucous membranepemphigoid) ほ ぼ 100%に口腔粘膜に初発、眼粘膜、尿道、鼻腔、陰部、 食道粘膜。歯肉(60%)、頬粘膜(26%)、口蓋(15%)の順。好 発年齢60 歳代、1:2 で女性に多い。 3) 先天性表皮水疱症 Epidermolysis bullosa hereditaria BP180 (col 17:17 型コラーゲン) が病因自己抗体(先天的) ・単純型先天性表皮水疱症(病巣が瘢痕形成せずに急速に治癒し,表皮基底細胞の細胞質全体が離開する表皮水疱症.長時間の歩行といったなれ ない外傷の後,成人の足に最も好発する.常染色体優性遺伝) .栄養障害型表皮水疱症(表皮水疱症の一型で,水疱を伴って表皮が完全に分離した後に瘢痕形成をきたす.優性遺伝的に生じるものは,幼小児 期にみられ,劣性遺伝的に生じるものは生下時あるいは乳児期初期にみられ,後者は致死型および非致死型を含む)瘢痕を形成して舌強直症、開口 障害をきたしやすい。エナメル質形成不全、萌出遅延、歯列不正がみられる。 3 口腔と全身 「口腔科学」:口腔診断内科 3)-(2)-①. 内臓疾患等に伴う口腔病変(oral manifestation of systemic disease) 一次性病変(同一の病因) 皮膚、粘膜に潰瘍 1) ベーチェット病 Behcet's disease: 再発性口腔内アフタ、外陰部潰瘍、前房蓄膿性ぶどう膜炎 を3大主徴とする皮膚粘膜眼症候群の一つ。上記3主徴に、結節性紅斑様発疹・血栓性静脈炎・毛嚢炎様発疹などが出現するものは完全型、他は不全 型と分類される。日本人に多く発症し、発症期は主に20 代である。 [原因] 遺伝的素因、細菌やウイルス感染、微量化学物質、免疫異常などが関与するとされているが、現在では自己免疫異常によるものと考えられて いる。HLA-B51 と強い相関 [症状] 再発性口腔内アフタ、外陰部潰瘍、ぶどう膜炎、再発性虹彩毛様体炎、皮膚の水疱、 皮疹、慢性関節炎、静脈炎、けいれん、下痢 血管型ベーチェット(動静脈に閉塞や脈瘤が生じる) 腸管型ベーチェット(消化管とくに大・小腸に潰瘍が多発し、食欲不振・腹痛など腹部症状が現れる) 神経型ベーチェット(髄膜刺激症状、小脳症状、痙性四肢麻痺、脳幹症状など神経症状や性格の変化、痴呆など精神症状) 2) 扁平苔癬 Lichen planus 皮膚:体幹、四肢の屈側に赤紫色の中央が陥凹した丘疹。口腔粘膜にも組織学的に同じ病変が生じる(口腔扁平苔癬OLP) 。皮膚病変を持つ患者の35-77% に OLP、皮膚病変なしの口腔単独の症例も多い。網状、斑状、丘状の型をとり白色線を特徴とし、粘膜は萎縮性でびらんを伴う。両側頬粘膜に乳白色 の細いレ− ス状の線状白斑が典型。歯肉、舌、口唇にも。日本では網状が多い。扁平苔癬からの癌化の報告もある(0.3-7%) 。 前癌状態(最近、異型性を伴うものは扁平苔癬様病変 leichenoid lesion として扁平苔癬と区別) 【病理】上皮層の角化亢進(錯角化)と上皮直下のリンパ球の帯状浸潤(T リンパ) : 異型性あるものは扁平苔癬様と表現 【原因】細胞性免疫異常説、金属アレルギー、降圧剤、抗てんかん薬の服用、HCV、GVHD などが関与している可能性がある。 3) Stevens-Johnson syndrome スティーヴンズ‐ジョンソン症候群 皮膚の紅斑、口内炎および眼症状を主徴とする疾患、多形滲出性紅斑の重篤な皮膚症状を伴うものをStevens-Johnson 症候群という。 [原因] 薬剤アレルギー、感染アレルギー [症状] 口唇・頬粘膜・歯肉・舌・硬軟口蓋の紅斑→水疱→壊死→偽膜、食物摂取困難、嚥下障害、口臭、流涎、結膜炎、角膜炎、角膜潰瘍、四肢皮 膚の発疹、肺炎、気管支炎、白血球増多、血沈促進、消化管潰瘍、外陰部の炎症 付録 舌の病変 Hunter 舌炎 Hunter’s glossitis 正中菱形舌炎 Median rhomboid glossitis カンジダ説 地図状舌 Geographic tongue ペラグラ Pellagra B2 群、ニコチン欠乏 頬粘膜に紅斑 Plummer-Vinson 症候群 溝状舌 Fissired tongue 苺状舌 Strawberry tongue 猩紅熱 scarlatina 黒毛舌 Black hairy tongue 菌交代現象 平滑舌 Bald tongue 4 口腔と全身 「口腔科学」:口腔診断内科 3)-(2)-② 二次性病変(間接的)の口腔粘膜 ・血液疾患にみられる口内炎 内臓疾患等に伴う口腔病変(oral manifestation of systemic disease) 1) 全身→口腔 白血病 Leukemia:血液の悪性腫瘍であり造血幹細胞様細胞(白血病細胞)が腫瘍性に増殖し、汎血球減少が起こる疾患。血小板減少により 出血傾向が出現し、歯肉出血を主訴として歯科受診したり、抜歯後出血がきっかけで確定診断された症例も少なくない。その他の口腔症状 として、腫瘍細胞浸潤による歯肉腫大、潰瘍・壊死形成、口臭、粘膜に腫瘤形成、う蝕がみられない歯での歯痛、頸部リンパ節腫大など がある。急性白血病の半数以上に口腔症がみられるとの報告がある。口腔の専門家である歯科医としてこの重大な疾患を見逃さず早期発見し、 適切な対応ができるようにしたい。 2) 血友病: 先天的に血液凝固第Ⅷ因子または第Ⅸ因子の活性が低下している疾患で、前者を血友病A、後者を血友病Bという。伴性劣性遺伝 で男子に発症するものであるが、孤発例も少なくない。軽症例は日常生活に出血傾向無く、乳歯の自然脱落、抜歯、スケーリングなどの観血歯 科治療後に異常出血をおこし発覚する場合が多い。血友病は、血小板は正常なため自然に出血するのではなく、血液が固まりにくい疾患であ る。二次止血血栓の形成が不十分なため、微少な傷から滲むような出血が続き、凝固因子補充療法が必要な時もある。局所麻酔には十分な注意 が必要である。可動粘膜下に薬液を注入すると粘膜下出血をきたすので付着歯肉に刺入する。伝達麻酔は禁忌である。観血的処置には補充療 法が必要である。1988 年以前の非加熱血液凝固因子製剤による薬害エイズ事件は記憶に新しい。 3) 特発性血小板減少性紫斑病 ITP:ITP は原因不明な血小板数の減少を示す疾患で、急性型は幼児に発症することが多く、多くは自然 治癒する。慢性型は 20-40 歳の女性に多く、自然出血は少ないが抜歯後止血困難を呈することが多い。症状は皮膚の紫斑、鼻出血、歯肉出血、 頬粘膜、軟口蓋、舌の粘膜下血腫など浅在部出血が主で、深部出血はまれである。血小板数が 5 万/mm3 以下で止血困難、2 万/mm3 以下で自然 出血をきたす。血小板数3万/mm3 以上で低侵襲の抜歯程度ならば局所止血に注意することにより止血可能である。一旦、血小板血栓が形成さ れれば凝固機能は正常に機能するからである。 4) 鉄欠乏性貧血 Iron deficiency anemia 低色素性小球性貧血で,血清鉄Fe 低値,総鉄結合能Total iron binding capacity (TIBC)の上昇,不 飽和鉄結合能 (UIBC)の上昇、血清フェリチンの減少,骨髄貯蔵鉄の減少を特徴とする. Plummer-Vinson 症候群(鉄欠乏性貧血、嚥下困難、萎縮性舌炎、匙状爪 spoon nail) 5) 悪性貧血 Pernicious anemia(Hunter 舌炎)大球性、巨赤芽球性貧血:B12 欠乏、舌乳頭萎縮、舌炎、味覚異常、嚥下困難 【既往】 胃全摘、胃炎の既往が多い【診断】血液検査でMCV, MCHC の上昇、VtB12 欠乏【治療】Vt B12 6) 再生不良性貧血 Aplastic anemia 骨髄造血細胞の低形成により末梢血の汎血球減少(赤血球、白血球、血小板の著明な減少)をきたす ため、全身倦怠、脱力感、発熱などの貧血症状がみられる。出血が初期の一般的症状で、粘膜の貧血所見、易感染性(壊死・壊疽) 、創傷治癒不 全が特徴である。 *ハンター舌炎、Plummer-Vinson 症候群: 「舌がひりひり」 「灼熱感」 「味覚異常」 「苦い」などの訴え。 【症状】舌乳頭の萎縮、舌の発赤(臨床症状からはカ ンジダ、舌痛症との鑑別が難しい) 【鑑別】従って血液検査、既往歴、細菌検査が重要になる。 5 口腔と全身 「口腔科学」:口腔診断内科 3)-(4) 薬剤性 歯肉増殖症 フェニトイン歯肉増殖症 Gingival hyperplasia due to phenytoin フェニトイン(Aleviatin)などのヒダントイン服用者の60% 性的早熟、多毛症 ニフェジピン歯肉増殖症 Gingival hyperplasia due to nifedipine シクロホスファミド歯肉増殖症 Gingival hyperplasia due to Cyclophosphamide 最近のトピックス ビスフォスフォネート関連骨壊死 BRONJ Bisphosphonates 製剤による顎骨壊死、骨髄炎 BP 製剤:注射、内服(アレンドロネート、パミドロネート、インカドロネート、ゾレドロネート) 作用:ビスフォスフォネートは骨組織に分布して破骨細胞の活性を特異的に抑制し、強力な骨吸収抑制作用を発揮する。 対象:注射 BP:癌の溶骨性骨転移(多発性骨髄腫、乳がん、前立腺がん などの骨転移抑制) 、腫瘍随伴性高カルシウム血症 経口 BP:原発性骨粗鬆症、続発性性骨粗鬆症:ステロイド性骨粗鬆症(リウマチ、天疱瘡の治療にステロイド投与されている) 場合にステロイド性骨粗鬆症の予防にBPが頻用) ;糖尿病 頻度:注射BP(海外 0.8-12%;日本 1-2%) 経口 BP(海外 0.01-0.04%;日本 0.01-0.02% 抜歯を行った場合、頻度は10倍に上昇) 最近、海外で静注用の BP を長期間投与されたがん患者に顎骨壊死が報告されるようになった。わが国でも、骨粗鬆症に対して内服の BP 製剤長期服用患者で骨壊死の報告が多数みられる。今後日本でも激増することが予想される。 【症状】契機は抜歯などの歯科手術に関連した骨露出がほとんどで、初期には自覚症状はほとんどない。病変部位が二次感染したり骨鋭 縁により軟組織が損傷した場合には、疼痛、粘膜の発赤、腫脹、歯牙の動揺、顎の知覚障害、排膿、皮膚瘻孔形成、開口障害などの症状。 骨壊死が進行すると難治性で治癒には至らない。顎骨壊死の発現部位は、通常の骨髄炎では上顎骨は稀でほとんどが下顎骨であるが、 BP を投与された患者では約 20〜40%が上顎骨にも認められる。 【危険因子】喫煙、糖尿病、化学療法、ホルモン療法、ステロイドの使用、抜歯などの歯科処置、局所放射線治療、口腔内の不衛生 【治療】抗生剤の投与(ペニシリンやクリンダマイシンの長期投与) 、口腔内の局所洗浄、局所に限定した壊死組織除去などの保存的治 療が推奨。外科的治療や、高圧酸素療法の有効性は示されていない。 なお、BP の投与に際しては、患者に十分なインフォームドコンセントを行うとともに、BP の処方医と歯科医が綿密に連携しつつ、顎 骨壊死の予防と治療を行うことが重要。 2015.10.13 口腔診断内科 北川 善政 6
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