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国際関係論(1 年生)/国際関係論 I (2 年生以上) 第 09 回 10 月 23 日
「国際経済関係(1)」
http://islamandeconomy.web.fc2.com/2015chuis/
I.
近代の国際経済体制
WWI までの欧米経済体制
重商主義:
積極的な貿易
→財貨を蓄積
→国富増大を目指す
産業革命:
石炭をエネルギーとする軽工業
帝国主義:
効率的な生産体制→独占資本の誕生。供給地・販売地必要。植民地獲得競争
→石油をエネルギーとする重工業
WWI 後の欧米経済
イギリス:
国際収支の黒字減少→ポンド下落→生産品の国際競争力下落。戦争債務と財際赤字
の積み上げ
アメリカ:
英に替わり輸出好調→貯蓄増大→株式投資ブーム→1929 年、世界恐慌
欧州の戦争債務
英仏:
ドイツ:
戦争債務
⇔
債権者は米
1,320 億マルクの賠償金=GNP20 年分
ドーズ公債:
←戦勝国の債務返済原資
独公債発行→米購入→独が英仏に返済→英仏が米に返済
WWII 前の欧米経済
背景:
①世界恐慌・金融危機、②独の賠償金支払い停止、③英仏の戦争債務返済の不安
恐慌に対する協調的な国際経済体制が維持できず
各国の対応策:
→各国別の経済政策
①英仏:ブロック経済。②アメリカ:積極的な財政出動によるニュー・ディー
ル政策。③ドイツ・イタリア:全体主義的な産業統制→対外膨張的政策→WWII
WWII 後
冷戦期:
西側陣営=資本主義体制
冷戦後:
社会主義陣営の崩壊
⇔
東側陣営=社会主義体制
→資本主義の導入=西側体制に吸収
ブレトンウッズ体制
概要:
1944 年 7 月、米ニューハンプシャー州で連合国通貨金融会議(45 ヵ国)実施。戦後の
国際経済体制のあり方を検討
ブレトンウッズ協定:
同協定に基づく体制がブレトンウッズ体制
内容: ①自由貿易:自由、無差別、多角主義。②国際通貨・金融体制の安定化。③国際通貨基金
(IMF)と国際復興開発銀行(IBRD)の設置決定。④国際貿易機関(ITO)→GATT の設置決定
II.
国際通貨制度
(1)国際通貨制度とは?
構成
中心:
基軸通貨
役割:
貿易、資金移動、国際収支の調整、金融市場、などの円滑化
運営:
通貨の取決め・協定、機関
国際通貨制度の変動
基軸通貨国の経済力の変化
→国際通貨制度の変動
金・ドル本位制
→変動相場制
米経済の変化:
米経済が金を維持できるか否か
(2)国際通貨、その条件
定義
1
国際関係論(1 年生)/国際関係論 I (2 年生以上) 第 09 回 10 月 23 日
「国際経済関係(1)」
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国際通貨(international currency)。国家間の取引決済に使用される通貨。別名、基軸通貨(key
currency)
為替レート:
通貨を交換する際、購買力に応じて成立する交換比率
→為替レートの設定を通
じ、他の通貨よりも需要の高い通貨=国際通貨
機能:
①需要が高い財・サービスについての生産力が高い国の通貨。②左記財・サービスの国
際的な商取引において媒介・決済通貨として使用。③価値を保護する手段。④国際的な価値尺度
国際通貨になるための条件:
国際通貨:
①国際通貨は準備通貨たりうること
①ある経済圏で中心的な役割をもつ。②金や他国の通貨と無条件の交換性をもつ→
他国から準備通貨に選好
国際通貨になるための条件:
②国際通貨は流動通貨たりうること
国際通貨国:他国と大規模かつ広範な貿易を行う
⇔
の金融市場にて保持
→通貨圏が形成
→中心国の金融市場が発展
国際通貨になるための条件:
国際通貨国:
貿易相手国:獲得した国際通貨を中心国
③国際通貨は安定的に供給されること
景気に左右されず各国での流通・保有に見合う供給行う
国外への供給方法:
資本移転=対外投資→国際通貨国は対外投資国
⇔
回収方法:国際通貨
国の対外投資企業の債券・株式を相手国が投資
国際通貨になるための条件:
条件③: 対外投資を実施
④国際通貨は経常収支が黒字の国の通貨であること
→金融収支の対外投資が赤字化
財やサービスの貿易黒字で相殺。
⇔
国際収支:金融収支の赤字は、
国際通貨国は生産性が高く、国際競争力のある財・サービス
を生産可能
(3)IMF と IMF 体制
概要
1944 年 7 月ブレトンウッズ協定。1944 年 12 月米で設立。国連の専門機関。加盟国=188 ヶ国
役割:
①加盟国からの出資が原資。外貨不足の国に対して短期的な融資を実施。②各国・地域
の経済・金融の動向をモニター。③加盟国に経済政策に関する助言。④経済・金融分野の政策担
当者への教育・技術支援
目的:
ブレトンウッズ体制の目的のである自由貿易を実施するための国際通貨体制
内容:
①金・ドル本位制と②固定相場制
金・ドル本位制: 金と米ドルが国際貿易における決済通貨。金 1 オンス(約 30g)=35 米ドル
で固定。米政府が保障
固定相場制:
米ドルと各国通貨の交換比率を±1%で固定(例)1 米ドル=360 円。各国政府は
相場を固定するため、各国政府による市場介入が義務
IMF 体制の効果:
①為替レートの変動の影響を受けることなく貿易が可能。②1950~70 年代
初めまで西側諸国における高度経済成長を実現。③通貨や経済発展が、保有する金によって規定
される
(4)国際通貨制度の変化
ニクソン・ショック
背景:
①金・ドル体制の要諦:金と米ドルが、固定された価格で自由に交換可能。②金の需要
高騰:米ドル兌換の公定価格と自由市場価格にギャップ。③米ドル不信:ベトナム戦争の戦費拡
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大と福祉政策拡充→財政赤字拡大。
→各国政府、米政府に対し「米ドルを引き受け、金と交換
する」ことを要求
米政府、米ドルと金の交換停止
→各国、自国通貨と米ドルとの固定相場制やめ変動相場制へ
スミソニアン体制
ニクソン・ショックへの対応:
必須
金・米ドルの自由兌換停止⇔自由貿易のため為替レート安定は
→新しい体制の構築を模索
スミソニアン協定:
1971 年 12 月、スミソニアン博物館で G10(先進 10 カ国蔵相会議)開催
①金ドルの固定価格復活。
②固定相場制の復活。
1 オンス=35 米ドル
1 ドル=360 円
③固定相場おける変動幅の拡大。
→38 米ドルへ切下げ
→308 円
(ドルの切下げ)
±1% →±2.25%
変動相場制
背景:
①ブレトンウッズ体制→スミソニアン体制:固定相場制が緩やかに。②金高、米ドル安
による固定相場維持が困難。③金ドルレート:1 オンス=38→42.22 米ドルへさらに切下げ
固定相場制の終焉: 各国、自国通貨の固定レートを維持が困難→1973 年 2 月日本、3 月 EC 諸
国がそれぞれ変動相場制に移行
キングストン合意:
1976 年、IMF 理事会で変動相場制への移行が追認
プラザ合意
背景: 1980 年代前半~中盤の米は双子の赤字(財政赤字と貿易赤字)が拡大。米経済は国際経
済体制の安定には不可欠な存在→米経済回復が必須
為替レート安定化のための協調介入:
1985 年 9 月、NY のプラザホテルで G5(先進 5 カ国蔵
相会議)開催
合意:
国際経済はドル安が望ましい
結果:
日本円は 250 円台から 2 年弱で 130 円台まで上昇
日本:
「輸入品の半額セール」→輸入・海外旅行ブーム、工場の海外移転
1987 年、ルーブル合意:
→各国が協調し、自国通貨高に導く
行き過ぎたドル安を止めるための G7 の合意
(5)変動相場制での不均衡
理論と実際
変動相場制:
貿易の不均衡
←為替レートの調整によって解決
現実:
貿易はじめ様々な不均衡発生。為替レートの変動で吸収しきれず
原因:
国際通貨としての米ドルと、国際通貨国のアメリカ経済に問題
(問題1)アメリカ経済の国際収支の赤字傾向の継続
安定的な米ドル供給:
米は海外投資する必要
投資分の赤字を財やサービスの貿易黒字で相殺
米ドル供給安定せず
対策:
→為替レート安定せず
←輸入超過で貿易赤字
→為替リスク発生
米ドルの負担減=バスケット制導入、地域通貨(ユーロ)採用、など
(問題2)世界各地域間の格差が拡大
貧困国:
①貧困問題、②対外債務問題
対外債務問題:
①工業化に向けた資本財・生産設備購入による赤字。②恒常的に貿易収支が赤
字・拡大
対策:
通貨、為替の問題では解決できない →開発援助、債務削減など
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(問題3)貿易黒字の悪循環
経常黒字国:
輸出によって国内経済支える:
米ドル高・自国通貨安が有利
黒字分:
→米国に米ドルが還流
還流:
III.
東アジア(日中韓台香)と産油国
大半を米国債に投資
国際通貨制度維持に貢献
⇔
自国・地域の格差改善に貢献せず
国際金融制度
世界銀行:
構成と呼称
世界銀行グループ(World Bank Group)
: 5 つの機関によって構成。国際復興開発銀行(IBRD)、
国際開発協会(IDA)、国際金融公社(IFC)、多国間投資保証機関(MIGA)、
国際投資紛争解
決センター(ICSID)
世界銀行:
国際復興開発銀行(IBRD)と国際開発協会(IDA)の両方指す
第二世界銀行:
国際開発協会のみを指す
国連との関係:
専門機関。人事・政策面で強い独立性
国際復興開発銀行
(IBRD)
概要:
1944 年 7 月、ブレトンウッズ協定→1946 年発足。国連の専門機関。加盟国=188 ヶ国
目的:
①WWII 後の世界経済の復興。②開発途上国に対する経済構造改革のための貸付。③世
界銀行=比較的長期の融資
日本:
IMF=比較的短期の融資
1950-60 年代、発電・製鉄・高速道路など 31 件で融資
国際開発協会(IDA):
概要:
⇔
別名「第二世銀」
設立 1960 年。目標=最貧国における貧困削減。対象国=現在、最貧国 77 ヶ国に融資。
これまでに 112 ヶ国を支援
融資内容:
経済成長促進、格差是正、生活水準向上のためのプログラム。貸付金利=無利子ま
たはごく低金利。あるいは贈与。返済期間=25~38 年(5~10 年間の支払猶予期間含む)。IBRD
よりも緩やか
国際金融公社(IFC):
途上国の民間事業に投資
多数国間投資保証機関(MIGA):
投資家保護、リスク保証
国際投資紛争解決センター(ICSID):
政府と外国投資家の間で発生する紛争の調停・仲裁
ワシントン・コンセンサス
定義: 受入れ政策の総称。1989 年ウィリアムソン命名。IMF、世銀からの融資
←融資を受け
る代わりに、融資対象国はコンディショナリティを受け入れる必要あり
融資の代わりに受け入れるべき政策:
財政赤字の是正、補助金カットなど財政支出の変更、税
制改革、金利の自由化、競争力ある為替レート、貿易の自由化、直接投資の受け入れ促進、国営
企業の民営化、規制緩和、所有権法の確立
実際:
1990 年代における経済危機と IMF からの融資。インドネシア、ロシア、韓国など
→
かえって不況が深刻化。政権交代も。各国で IMF 不況と呼ばれる
批判:
①コンディショナリティが経済回復に貢献しない。②民間企業による投資の比率が高ま
り、融資のインパクト小さい。③アメリカが推し進める資本主義・自由主義・市場経済化を体現
する手段
ブレトンウッズ体制の枠組みでの融資の効果に疑問
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IV.
国際貿易体制
(1)貿易の意義
貿易と経済成長の関係
GDP に対する注入効果:
生産要素の補完効果:
GDP と輸出入額
輸入国:生産要素(原材料、技術、生産手段など)を入手、生産力高め
る。天然資源輸出国:自国の生産要素の海外移転→資源流出、環境破壊
模倣・革新効果:
新しい知識・技術を入手:生産に対する意欲が湧く
⇔
新しい海外の商品
を入手:外国品消費が増加→資本蓄積には不利
市場拡大効果:
発展の初期は国内の市場規模は限定的→輸出により生産高める
⇔
安価な外
国製品の流入:①国内企業の倒産、②国内産業の工業化阻む
国民経済と貿易
貿易の実施:
メリットとデメリットの双方。両者の効果を測った上で適切な貿易を実施
メリットとデメリットの範囲:
一国内においても享受する社会階層が異なる
国内での対立、政治問題・政治闘争化
(2)ブレトンウッズ体制
1950~2000 年代の国際貿易の動き
第二次世界大戦前:
世界経済のブロック経済化→WW2 の原因→反省
⇒戦後、ブレトンウッ
ズ体制。自由貿易と自由な資本移動
GATT、WTO 体制: 自由貿易、貿易自由化を保証する協定と国際機関。先進国間の水平貿易(製
造品の貿易)が活発化。GATT、WTO による製造品に対する関税の継続的な引き下げ
1970 年代:
先進国から途上国への対外投資が活発化。途上国から先進国への輸出が急増
1980 年代:
欧州:
2000 年代:
①途上国の経済主権の確立、②工業化進展
EC、EU の登場と市場・通貨統合
→ヨーロッパの域内貿易が活発化
→南南貿易が伸張
ブレトンウッズ体制と GATT
正式名称:
関税と貿易に関する一般協定(General Agreement on Tariffs and Trade)。関税と
貿易の内容を規定する、多国間条約の総称。1947 年に締結
国際貿易機構(ITO)
: GATT に基づき、関税や貿易、紛争解決を行う国際機構。GATT は ITO
設立を見越した暫定的条約→米議会の反対で ITO 頓挫
ブレトンウッズ体制に基づく自由貿易:
国際機構が存在しないまま展開
(3)GATT
GATT の内容
基本理念:
原則:
自由貿易=自由、無差別、多角主義
①最恵国待遇、②内国民待遇原則、③数量制限の原則禁止
自由貿易実現に向けての障壁撤廃
⇔
国内産業保護のため例外規定あり
最恵国待遇の無差別適用
目的:
同一商品に対し、輸入国の違いによって関税等で格差をつけない
最恵国待遇:
他国に与えている優遇措置を全て与えると保証する約束
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無差別適用:
GATT の全締結国に対し、無条件で最恵国待遇を与える
内国民待遇原則
目的:
同一製品に対し、関税等で輸入品を国産品と格差をつけない
内国民待遇:
自国民のための待遇を、他国民にも与えると保証する約束
数量制限の原則禁止
目的:
関税以外の方法を用いての、輸入障壁を設けることを禁じる
数量制限:
特定期間内(1 年、1 ヶ月など)での輸入分量の上限を定める
GATT の例外規定
例外規定の意義:
障壁無き自由貿易=国境を越えて製品の売買が活性化→生活豊か
⇔
発生
する問題:輸入増大→①貿易収支の悪化、②国内産業の悪化
国や産業の状況にとって、輸出入に特別な条件を課すことが認められる
セーフガード(緊急輸入制限)
: 特定品目の輸入増加
→国内産業に影響
⇔
一時的に輸入を
制限する。
「輸入増加→国内産業打撃」を証明する必要あり。セーフガードの影響:①発動条件厳
しい、②貿易摩擦の原因が自国にあることを認める実用
⇔
輸出自主規制という GATT の規定
にない保護主義的政策が横行
その他の例外規定:
①条件付きの農業製品輸出入制限。②輸出補助金の承認。③国際収支悪化
を防ぐための条件付き輸入数量制限
関税交渉とラウンド
GATT における交渉:
自由貿易を達成するため、関税等のあり方を話し合いで解決
関税交渉(第 1~4 回):
2 国間で品目別に関税を何%に設定するか
ラウンド(第 5~8 回)
: 多角的貿易交渉。複数国間での話し合い。通称「ラウンド」。関税→非
関税障壁、サービス貿易、知的財産権などに移行
ウルグアイ・ラウンドで明らかになった問題点:
①非関税障壁の存在
非関税障壁(Non-Tariff Barrier): 関税以外の手段で政府が国産品と外国品を差別、輸出入を
規制する政策。①輸入制限:輸入数量制限、規格・認証・検査の厳格化。②輸出促進:融資など
の金融分野、税制(法人税減免など)、国内産業促進・育成政策、など
問題化:
非関税障壁の存在が顕在化、自由貿易の妨げ
ウルグアイ・ラウンドで明らかになった問題点:
サービス貿易:
←GATT では対応できず
②サービス貿易の拡大と規制
Invisible Trade=特許やライセンス、金融、保険、運輸、旅行、通信など
GATT の対象とせず
サービス貿易の拡大: 2000 年=23%。8 割は先進国の収入
(4)WTO
GATT から WTO へ
ウルグアイ・ラウンドでの決定を実施する機関必要
←GATT は条約のみ
1994 年マラケシュ協定で WTO の設置を決定
→1995 年設立
世界貿易機関(World Trade Organization):
本部ジュネーブ。
加盟国:128→159 ヶ国
WTO の理念と目的
理念:
自由貿易=無差別、貿易制限の禁止、公正な競争
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←GATT 引き継ぐ
←
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貿易自由化のための努力。同時に環境問題にも配慮
目的:
①GATT ウルグアイ・ラウンドでの合意事項の実行。②貿易問題をめぐる紛争処理手続
きの運用。③多角的貿易交渉(ラウンド)の促進。④各国の貿易政策の審査
対象と対応
対象:
①モノに関する関税貿易協定。②サービス貿易、知的所有権
対応:
①WTO の決定:加盟国全てに適応→拘束力は GATT 以上に強い。②ダンピング防止措
置:自国商品と同価格になるまで関税可能。③セーフガード:自国産業守るため、一時的に関税
を引き上げられる。④紛争処理:問題の多様化、複雑化、迅速な解決必要
紛争処理
理念:
自由貿易ができずに被害を受けた国は WTO への提訴が可能
GATT:二国間の交渉。手続きの複雑さ。GATT の枠組み外での制裁
⇔
WTO:パネル(紛争
処理小委員会)が問題調査と是正措置の勧告
ネガティブ・コンセンサス方式:
紛争処理のためのパネル報告、勧告に従わない国への対抗措
置の承認。全加盟国が否定しない限り否決されない
ドーハ・ラウンド
概要:
2001 年、カタールの首都ドーハで開始。ドーハ開発アジェンダ(Doha Development
Agenda)。2013 年 12 月、下記分野で部分合意
合意 3 分野:
⇔
他分野(特に農業)では交渉難航
①貿易円滑化、②農業の一部、③開発
ドーハ・ラウンドの問題点
農業分野の対立:
先進国の保護政策(補助金、関税などで保護)⇔途上国の促進政策(先進国
に輸出できるよう受入れ求める)。両者の利害対立
評価:
→2008 年以降、交渉が進まず
複雑化した世界貿易の新しい段階に対応するための国際機関
ンや貿易自由化の行き着く先を見通せず。南北対立の先鋭化
⇔
グローバリゼーショ
→地域主義の強まり
→FTA と
EPA の活用
(5)地域交渉
地域の経済・貿易関係
国際的な多国間の協定(WTO) ⇔
特定の地域内の協定(FTA, EPA)
: 物品の貿易から、ヒ
ト・モノ・カネ・情報円滑な移動まで、幅広く自由化交渉
FTA( Free Trade Agreement, 自由貿易協定): モノの貿易、貿易拡大。相互に関税を撤廃、
通関手続きの簡略化
EPA(Economic Partnership Agreement, 経済連携協定): モノ以外のヒト、カネ、情報。こ
れらの移動の促進。FTA を中心に、知的財産保護や人の移動を含めた協定
FTA, EPA の存在意義
FTA, EPA:
WTO に代わり、特定の地域を対象とした協定
して貿易自由化を目指す
⇔
WTO:
全加盟国を対象と
←実際は立ち往生
1990 年代以降、FTA,の EPA 活用が各国間で活発化
地域市場の形成:
グローバル化で国境の垣根が相対的に低くなる。自国のみならず、近隣諸国
の間でより広い地域市場の形成を目指す
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グローバル化による経済危機への警戒:
アジア通貨危機、ギリシャ危機など、経済危機が自国
に波及することに警戒→地域市場経済が防波堤
狭い範囲で目標実現:
途上国の工業化:
近隣諸国、立場・条件が似通った国同士で自由化実現目指す
進展
→市場拡大にも関心
アジアをめぐる FTA, EPA:
①RCEP
協定案: ①東アジア FTA(ASEAN+日中韓)
、②東アジア包括的 EPA(ASEAN+日中韓印豪
NZ)
←日中韓の関係が冷え込んでおり、いずれも難航
RCEP(包括的経済連携協定):
ASEAN、日中韓印豪 NZ とそれぞれ別個の FTA や EPA を提
携済。これらを一つにまとめて広域の経済圏創出を目指す
①アメリカが参加していない、②TPP と大きく重複
アジアをめぐる FTA, EPA:
2006 年:
→難航
②TPP
シンガポール、NZ、チリ、ブルネイの 4 ヶ国による P4 協定
2013 年まで:
8 ヶ国が交渉参加
→環太平洋・アジア規模
2015 年 10 月、大筋合意
2018 年:
妥結・発効目指す
対象: 貿易、非関税分野(貿易、投資、知的財産)、環境、労働、など。幅広い分野で高い自由
度がある包括的な協定発足を目指す
アメリカの目的:
①広範な市場、②国家統制の傾向強いアジア
→アメリカン・スタンダード
の導入で、主導権と貿易利益の確保見込む
(6)日本の事例
日米貿易摩擦
冷戦下の西側諸国の貿易は米のリーダーシップと軍事力・経済力が背景。1960 年代後半以降、日
本の製品輸出が米と対立、政治問題化。繊維、鉄鋼、カラーテレビ、工作機械、自動車など
典型的なパターン:
①日本の対米輸出増加→米業界団体、米政府に輸入制限を働きかけ。②米
政府、日本政府に輸出自主規制要請
→日本産業団体反発、交渉難航。③米議会、輸入制限の発
動(スーパー301 条)をちらつかせ、米政府も同調。④米政府、議会に同調して日本政府に圧力
→政治問題化。⑤日本側、自主規制で譲歩、問題は一時的に解決
日米経済協議
経済摩擦: 1980 年代後半、日本製品が米市場に進出→日本の自主規制では解決不可。米側:日
本の経済構造・制度を批判。貿易摩擦→経済摩擦
日米構造協議と日米包括経済会議(1989-90 年)
: 【米→日】排他的・系列取引⇔【日→米】財
政赤字、貯蓄性向の低さ、米企業の近視眼的経営。産業ごとの個別協議。米、日に数値目標求め
る。2 年間の協議の末、双方歩み寄れず物別れ
日本の方針
対 WTO: WTO による決定を遵守。経済政策・主張を WTO を通じて実現。ドーハ・ラウンド
が難航、WTO が有効に機能せず
対 EPA、FTA:
対 TPP:
→地域経済市場の構築も視野
発行済:11 ヶ国、交渉中:5 ヶ国
対米追従
⇔
農業中心に根強い反対
4