「内臓脂肪をためない生活習慣」の 企画と編集にあたって

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オレオサイエンス 第 15 巻第 8 号(2015)
特集序言
「内臓脂肪をためない生活習慣」の
企画と編集にあたって
清 水 将 夫
(花王株式会社)
メタボリックシンドロームは内臓脂肪型肥満に加え,高血糖,高血圧,脂質異常のいずれか 2 つ以上をあわ
せもった状態であり,動脈硬化の進行,ひいては心臓病や脳卒中の発症リスクを高めます。メタボリックシン
ドロームの予防・改善には内臓脂肪を減らすことが効果的であり,そのためには生活習慣の改善が重要です。
本特集では,生活習慣の改善を通した内臓脂肪の低減,メタボリックシンドロームの予防・改善について,最
前線で取り組んでいらっしゃる先生方に解説をいただきました。
野口緑先生(尼崎市・大阪大)には,尼崎市役所における保健指導の見直しにより虚血性心疾患による現職
者の死亡者をゼロとした実績に基づき,内臓脂肪に着目した保険指導の方法とその可能性について解説をいた
だきました。具体的なイメージを与えることで,指導を受ける側が自らのリスクを実感として感じ,生活習慣
を変える行動変容を促すことができる事など,保健指導について詳しく説明いただきました。田村好史先生(順
天堂大)からは,内臓脂肪だけでなく異所性脂肪である脂肪筋や脂肪肝の蓄積もインスリン抵抗性等の原因と
なり得る,との最新の知見を解説いただきました。脂肪筋は日常生活の活動量と関連し,運動の意義を説くと
ともに,具体的な運動指導についても言及いただいています。最後にトピックスとして,梁美和先生(三井住
友銀行)に新しい内臓脂肪量の測定方法である,腹部生体インピーダンス法について解説いただきました。従
来の CT 法と異なる放射線非被爆の測定方法であり,保健指導などの臨床現場への応用例とともに紹介いただ
きました。本特集はメタボリックシンドロームの予防・改善に向けた具体的かつ実践的な内容となっており,
読者の皆様の本分野における研究の推進だけでなく,健康維持の一助となれば幸いです。
最後になりましたが,本特集にご理解をいただき,お忙しい中ご執筆をいただきました先生方に,この場を
借りて深く御礼申し上げます。
(執筆者)
・内臓脂肪に着目した保健指導の展開と可能性
The Importance of Health Education Targeting Visceral Fat
野口 緑(尼崎市,大阪大学)
・内臓脂肪と異所性脂肪“脂肪筋”から考える運動の役割
The Role of Exercise for Visceral Fat and the Ectopic Fat“Intramyocellular Lipid”
田村 好史(順天堂大)
・腹部インピーダンス法を用いた内臓脂肪測定器
Visceral Fat Area Measurement by the Abdominal Bioelectrical Impedance Analysis
梁 美和(三井住友銀行)
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