資料3.地質調査報告書

紫波町新庁舎建設予定地地質調査業務
報
告
書
平成 23 年 3 月
岩
手
株 式 会 社
県
紫
波
町
タ ッ ク エ ン ジ ニ ア リ ン グ
目
次
第 1 章 業務概要 ................................................................... 1
第 2 章 調 査 方 法................................................................. 3
2.1 機械ボーリング................................................................ 3
2.2 標準貫入試験 ................................................................. 4
第 3 章 地形・地質概要.............................................................. 6
第 4 章 調 査 結 果................................................................. 8
4.1 ボーリング結果................................................................ 8
4.2 地下水位 .................................................................... 16
第 5 章 考察 ...................................................................... 17
5.1 支持層及び基礎形式........................................................... 17
5.2 土質定数の検討............................................................... 20
5.3 設計・施工上の留意点......................................................... 22
【巻末資料】
・位置図
・土地利用計画図
・断面図
・地質断面図
・ボーリング柱状図
・写真集
現場作業写真
コア写真
−1−
第 1 章
業務概要
本報告書は、紫波中央駅前地区に新庁舎を建設するにあたり、構造物計画箇所の地質調査
結果をとりまとめたものである。業務の概要は以下の通りである。
(1)業 務 名 称:紫波町新庁舎建設予定地地質調査業務
(2)業 務 場 所:紫波郡紫波町紫波中央駅前二丁目 地内
(3)業 務 期 間: 自 平成 23 年 1 月 19 日
至
平成 23 年 3 月 25 日
(4)委託者: 岩手県紫波町
(5)調査数量: 機械ボーリング
標準貫入試験
φ66mm
3孔
JIS 規格
計 59.0m
計
59 回
調査内容の内訳については、表-1.1∼1.2 に示す。
(6)仕様書及び参考資料
・本業務特別仕様書
・委託業務共通仕様書「測量・地質調査編」
・建築基礎構造設計指針
岩手県県土整備部
日本建築学会
・建築構造設計基準及び同解説
公共建築協会
・紫波中央駅前地区まちづくり交付金事業測量調査設計業務地質調査報告書 平成 21 年度
(7)受
託
者: 株式会社タックエンジニアリング
盛岡市津志田西 2-3-20
TEL
019-638-2001
−2−
調査内容内訳書
表-1.1 ボーリング(m)
孔番号
粘性土、シルト
砂、砂質土
礫混じり土
計
H22B-1
10.4
3.7
4.9
19.0
H22B-2
6.5
6.6
2.9
16.0
H22B-3
10.4
9.5
4.1
24.0
計
27.3
19.8
11.9
59.0
表-1.2 標準貫入試験(回)
孔番号
粘性土、シルト
砂、砂質土
礫混じり土
計
H22B-1
9
5
5
19
H22B-2
5
8
3
16
H22B-3
8
11
5
24
計
22
24
13
59
−3−
第 2 章
調 査 方 法
2.1 機械ボーリング
機械ボーリングは、図-2.1.1に示す装置を用い地質構成、地下水位状況、構造物基
礎の支持層の確認などを目的として実施した。
ボーリングはロータリー式オールコアーボーリングとし、孔径66mmにて掘削して
所定の成果を得るまで行っている。
図-2.1.1 ハイドロリックフィードタイプボーリング装置の全体図
−4−
2.2 標準貫入試験
標 準貫 入試験 は 、JIS.A.1219の 規定 に基 づいて 実施 したも ので 、地盤 調査 では 広
く利用されている設計段階において地盤特性の量的判断資料である。
この試験は、地盤のサウンディングと土のサンプリングの両方の重要な機能を備
えていることと適用土質の幅が広いことに特徴がある。
試験法は、下図に示すように、ボーリングロッド先端に取り付けた試験用サンプラー
に、63.5±0.5kgのハンマーを76±1cm自由落下させ、この衝撃により孔底地盤に
30cm貫入するのに要する打撃回数をN値(回/cm)として表示するものである。
図-2.2.1 標準貫入試験
−5−
図-2.2.2 標準貫入試験主な試験用具
表-2.2.1 N 値と粘土のコンシステンシー,一軸圧縮強さの関係(Terzaghi and Peck)
qu(kN/m2)
N値
コンシステンシー
0∼2
0.0∼24.5
非常に軟らかい
2∼4
24.5∼49.1
軟らかい
4∼8
49.1∼98.1
中位の
8∼15
98.1∼196.2
硬い
15∼30
196.2∼392.4
非常に硬い
392.4∼
固結した
30∼
社団法人 地盤工学会「地盤調査の方法と解説」H16.9 P267
表-2.2.2 N 値と砂の相対密度の関係(Terzaghi and Peck)
相対密度
N値
(Terzaghi and Peck)
現場判別法
0∼4
非常に緩い
(very loose)
鉄筋が容易に手で貫入
4∼10
緩い
(loose)
ショベル(スコップ)で掘削可能
10∼30
中位の
(medium)
鉄筋を 5 ポンドハンマーで打込み容易
30∼50
密な
(dense)
同上,30cm 程度貫入
非常に密な
(very dense)
>50
同上,5∼6cm 貫入,掘削につるはし必
要,打込み時金属音
注) 鉄筋はφ13mm
社団法人 地盤工学会「地盤調査の方法と解説」H16.9 P263
−6−
第 3 章
地形・地質概要
3.1 位置及び地形
本調査地は、JR 紫波中央駅の西側 400m程の造成地に位置する。
当地域の地形は、東方に紡錘状を成して連なる北上山地、西方に秋田県との県境に南北
に連なる奥羽山脈が位置し、当地は中間に開けた平野部(北上平野)にあたる。この北上
平野は、当地の主流河川・北上川流域及びその支流沿いに形成され、その形状及び成因的
な面からは、扇状地性の段丘面、河岸段丘面、河岸低地などに区分される。
このうち調査地は、奥羽山脈の山裾から北上川の右岸にかけて広がる扇状地性段丘面の
扇端付近に位置し、東西方向には小規模な沢が発達している。
3.2 地質
調査地を含む一帯の地質は、新第三紀鮮新世の堆積岩類と、この上位を火山活動時の堆
積物、あるいは河川運搬による堆積物などが覆う地域である。
この堆積岩類は、奥羽山脈の山裾あるいは北上川地域に所々分布している。地質時代的
には最も新期の鮮新統であり、岩相としては泥岩、砂岩、礫岩等とされている。
このうち調査地では、第四紀洪積世の扇状地性段丘堆積物が確認されている。
付近の調査資料では、北上低地は、東の北上山地と西の奥羽山脈との間の凹地部に、断
層運動や奥羽山脈の隆起と大量の土砂供給によって順次扇状地が形成されるとともに、海
水準の変動などのために堆積と下刻(浸食作用)を繰返し数段の段丘が形成され、現在の地
形になったものである。このため、砂・砂礫が非常に厚く堆積していることが知られてい
る。調査地である紫波町も、地質的には類似した地域と考えられ、同様にこれらの第四系
が厚く分布することが想定される。
このうち、本調査地で確認された段丘堆積物は、最上部に薄く粘性土層が分布するが、
GL-5∼6m前後まで砂礫が分布する。砂礫層の下位には、比較的固結したシルト、砂が確認
されている。なお、平成 21 年度の調査を含めて軟弱地盤は確認されていない。
−7−
調査地
凡
例
図-3.1 地質平面図(縮尺 1:20,0000)
出典:「通商産業省工業技術院
地質調査所」
−8−
第 4 章
調 査 結 果
4.1 ボーリング結果
本調査は、紫波町新庁舎の構造物計画箇所において、以下に示す位置でボーリング 3 孔
延べ 59m 実施した。
表-4.1.1 ボーリング諸元
孔番号
地盤高(m)
掘進長(m)
H22B-1
110.09
19.00
H22B-2
109.74
16.00
H22B-3
110.32
24.00
ボーリング結果の詳細は、巻末「ボーリング柱状図」に示す通りであるが、得られた土
質状況から地層区分すれば、表-4.1.2 のようにまとめられる。
表-4.1.2 地層構成
地質時代
現
世
地層区分
盛
土
第四紀
土質名
記号
測定N値
礫混りシルト
Bk
―
砂質シルト
Dc1
6∼19
シルト混り砂礫
Dg1
18∼50
シルト混り砂
Ds1
2
粘 土
Dc2
7∼33
砂
Ds2
15∼32
砂
Ds3
>50
シルト混り砂礫
Dg2
>50
粘 土
Dc3
47
段丘堆積物
洪積世
この結果、調査箇所の地質は、上位より、現在の敷地造成の盛土と第四紀洪積世の扇状地
性段丘堆積物から構成されている。
扇状地性段丘堆積物は、最上部に粘性土層が分布し、この下位に砂礫層が分布する。砂礫
層下位は粘土と砂の互層からなるが、いずれも固結程度の良好な土質性状であり、GL-11
∼20m以深には、N≧50 の固結した砂(一部粘土、砂礫を挟在)が連続して確認されてい
る。
以下に各地層毎に土質性状や N 値などについて述べる。
紫波中央
駅前三丁
111.12
目
111.03
111.85
112.12
112.03
N
111.75
111.94
111.33
108.66
110.84
110.70
Y
110.24
110.06
109.51
109.75
109.95
108.90
109.11
109.32
-9-
110.73
111.10
111.39
111.61
111.74
111.53
S
111.87
S
緑地9
排
仕
町道中新田蓬田線W=20m
110.27
111.41
347.04 m
2
仕
172.80 m
2
111.55
NO.5
+10.028
NO.4
1
6.0
紫波中央駅前二丁目7号線
i=1.310%
L=116.064
NO.2
NO.1
NO.0
仕
排
仕
下
NO.1
NO.3
(4)NO.3
H=109.366
109.48
仕
L=20.650
i=0.920%
i=3.299%
L=14.552
緑地12
D
4
2.0
仕
109.64
(4)NO.1
H=111.764
109.30
(3)NO.4
H=110.432
111.14
(4)NO.2
H=111.378
仕
排
仕
109.79
NO.0
1
2.0
仕
110.29
110.53
110.82
L=14.140
(有)
仕
Y
S
Y
Y
110.10
NO.0
110.03
NO.1
NO.2
2
6.0
i=1.117%
L=128.000
NO.4
E
(4)NO.4
H=108.274
108.60
NO.3
紫波中央駅前二丁目6号線
110.03
i=3.253%
112.13
108.02
NO.6
NO.5
緑地10
L=36.000
i=0.833%
L=36.000
i=2.074%
12.0 5
NO.3
i=1.767%
NO.7
6.0 2
下
NO.11
NO.8
+6.028
i=1.482%
L=116.064
1
6.0
NO.9
NO.10
NO.12
+16.057
109.35
109.28
109.28
NO.13
NO.12
+19.930
i=0.766%
NO.11 L=128.000
2
6.0
NO.8
2
109.78
+4.657
B-1
GH=109.74m
GH=110.09m
NO.5
107.90
L=26.000
i=0.538%
④
緑地6
A棟
FH=108.10
2536.72 m 2
109.41
NO.5
NO.3
仕
108.24
駐車場4
FH=108.57
1916.51 m 2
5-2
緑地
緑地5-1
752.05 m 2
L=22.000
i=1.045%
108.97
5-3
緑地
i=0.512% L=129.000
NO.1
NO.2
NO.6
NO.7
2-1
歩道
FH 108.50
公共的施設(オガールプラザ)
B棟・交流促進
センター
NO.9
FH 108.50
108.09
NO.10
4-2
緑地
緑地2
FH= −
4018.47 m 2
4-1
緑地
108.31
168.97 m
駐車場1
FH= −
1604.60 m 2
108.25
i=0.260%
L=61.500
i=0.726%
L=85.44
凡
駐車場3
FH= −
NO.11
例
庁舎対象区域
公共的施設
開
1728.85 m 2
発
区
域
ボーリング調査地点
109.20
FH=109.29
2
公共的施設
FH 109.6
H=109.47(桝上)
汚
i=2.277%
L=7.906
仕
2
NO.8
L=32.000
i=0.974%
i=0.320%
L=87.385
(4)NO.11
H=109.258
108.90
NO.4
7000
仕
店舗兼併用住宅
2
12.0
107.70
108.55
NO.0
NO.2
D
107.78
2-2
歩道
広場1
3457.59m
D棟
FH=109.14
2259.50 m 2
109.25
2
107.60
i=0.632%
L=148.594
L=26.000
i=0.923%
i=1.692%
L=26.000
NO.1
108.72
NO.7
i=1.000%
L=17.000
2
7.0
254.84 m
下
NO.8
NO.9
NO.10
i=0.632%
L=136.000
緑地1
紫波中央駅前大通1号線
2
紫波中央駅前大通2号線 店舗兼併用住宅
D
仕
1
歩道
i=0.80%
②
NO.6
③
i=1.000%
L=17.000
3325.54m
NO.11
NO.12
109.58
NO.13
NO.7
12.0 3
m2
Y
1
7.0
①
+10.00
108.55
i=1.000%
L=17.000
広場2
NO.14
NO.16
NO.17
i=1.000%
L=17.000
4
109.44
105.12
NO.6
12.0
公園2
FH=109.56
4587.46 m 2
i=0.933%
i=0.502%
L=143.500
108.62
6602.70 m 2
109.41
D
109.28
108.69
NO.8
紫波中央駅前
二丁目5号線
108.81
B-2
GH=110.32m
L=26.000
i=2.269%
④
町
下野沢
B-3
庁舎
FH=109.48
町道
上野
沢丸
盛線
W=1
NO.18
0m
桜
NO.9
107.86
下
NO.3
NO.11
i=0.546%
L=51.272
NO.4
4NO.10
12.0
D
L=12.500
108.30
6
2.0
NO.5
109.78
109.72
110.00
NO.15
109.71
NO.4
L=15.000
緑地11
紫波中央駅前南北線
L=32.000
i=2.074%
ET
191.02 m
7
2.0
i=0.560%
NO.9
NO.10
107.95
NO.0
NO.7
2.0 5
L=30.000
(4)NO.9
H=111.219
①
②
111.00
D
i=2.100%
110.56
L=30.000
神社用地
FH=111.43
3176.66 m 2
有
2
108.01
NO.2
2
2.0
i=1.528% 1
L=36.000 6.0
NO.6
③
679.19 m
S
108.00
②
断
面
位
置
A-3
街
区
番
号
FH=135.00
計
231.00 m 2
汚
敷
画
地
高
面
積
汚
i=0.679%
排
H=109.81(上)
汚
件
排
200φ
H=109.48(桝上)
H=109.72(上)
汚
雨
図-4.1.1 調査位置平面図(S=1:1000)
i=0.7%
H=109.48(桝上)
H=109.72(上)
名
紫波中央駅前都市整備事業(オガール・プロジェクト)
施 工 箇 所 紫波郡紫波町紫波中央駅前二丁目地内
種
別
土地利用計画図
H=109.49(桝上)
200φ
排
フットボールセンター
H=109.59(上)
汚
i=0.7%
雨
排
200φ
H=108.59(管底)
汚
H=109.59(上)
FH 108.82
i=0.7%
L=83.000
i=0.974%
汚
汚
縮
図面番号
NO.12
排
1/1000
106.55
製図年月日 平 成 年 月 日 尺
緑地3
m2
紫
1471.69
103.53
波
町
−10−
(1)盛土・表土(Bk)
・土 質 名:シルト質礫
・分布深度
H22B-1:0.00∼0.80m
H22B-2:0.00∼0.80m
H22B-3:0.00∼0.30m
本層は、現在の造成に伴う盛土であり 0.3∼0.8mの層厚が確認されている。
性状としては、φ10∼20mm 前後の礫を含む粘性土の盛土を主体とし、一部有機質シルトの表
土を含む。
本層ではN値は測定されていないが、表-2.3.1 からは「軟らかい」コンシステンシーの粘性
土と推定される。
(2)段丘堆積物
1)砂質シルト(Dc1)
・分布深度
H22B-1:0.80∼3.00m
H22B-2:0.80∼2.10m
H22B-3:0.30∼2.20m
本層は、段丘堆積物最上位の粘性土層で 1.3∼2.2m 程の層厚で連続して分布が確認されてい
る。
性状としては、全体に細粒砂を多く含むシルトを主体とする。
測定N値は、N=6∼19 が得られており、硬さにばらつきがある。よって、期待N値は「土
質試験結果の解析と適用例」(土質工学会)に示される統計的な考え方に基づいた下式から求
める。
期待N値=平均N値−標準偏差/2
=12.75−5.07/2
≒10
この場合、表-2.3.1 からは「硬い」コンシステンシーの粘性土と推定される。
−11−
2)シルト混り砂礫(Dg1)
・分布深度
H22B-1:3.00∼6.90m
H22B-2:2.10∼4.00m,4.80∼5.80m
H22B-3:2.20∼6.30m
本層は、段丘堆積物上部の砂礫層であり、調査範囲では、GL-2.1∼3.0mから 3∼4m前後の
層厚が連続して確認されている。
性状としては、φ10∼30mm 前後の亜円礫とシルト分を含む細∼中粒砂を主体とする。H22B-2
地点では、GL-4.0∼4.8m間に層厚 0.8m程で砂層を挟在する。
図-4.1.2 に測定N値のヒストグラムを示す。この結果、N=18∼50 とばらつきが多く、平均
N=34.83、標準偏差σ=11.13 を示す。期待N値は、同様に統計的な考え方に基づいた下式か
ら求めると以下の通りとなる。
期待 N 値=平均 N 値−標準偏差/2
=34.83−11.13/2
≒29
10
9
8
7
6
度 数 (個)
基本統計量
最 大 値
50
最 小 値
18
中 央 値
34
最 頻 値
50
平 均 値
34.83
標準偏差
11.13
変動係数
0.32
5
4
3
2
1
0
4
9 14 19 24 29 34 39 44 49
∼ ∼ ∼ ∼ ∼ ∼ ∼ ∼ ∼ ∼ ∼
0
5 10 15 20 25 30 35 40 45 50
N
値
図-4.1.2 N 値のヒストグラム(Dg1)
また、N=50 は礫当たりによる過大値の傾向もあることから、これを除いた場合の平均値は、
N=29.78 を示す。よって、本層の期待値としては、N=29 程度と考える。この場合、表-2.3.2
からは「中位の」相対密度であると評価される。
−12−
3)シルト混り砂(Ds1)
・分布深度
H22B-2:4.00∼4.80m
本層は、砂礫層(Dg1)中に挟在される砂質土層で、H22B-2 地点に 0.8m程の層厚が確認されて
いる。
性状としては、シルト分を含む細∼中粒砂を主体とし、φ10mm 前後の小礫を少量含む。マト
リックスの土相は Dg1 層に類似しているが、既存調査を含め他のボーリングでは本層は確認さ
れていないことから、分布は極一部に限られると思われる。
測定N値は、N=2 と極めてルーズである。
4)粘土(Dc2)
・分布深度
H22B-1:6.90∼12.30m
H22B-2:6.50∼10.90m
H22B-3:6.30∼11.20m(8.30∼8.70m間:砂),16.20∼20.30m(17.9∼18.3m 間:砂)
本層は、GL-6.3∼6.9mから、一部砂の薄層を挟在しながら、4.4∼5.4m程の層厚で連続して
分布している。また、敷地西側では、GL-16.2∼20.3m間にも 4m程の層厚が確認されている。
性状としては、全体に均質な粘土で、一部細粒砂や有機物を混入する。
図-4.1.3 に測定N値のヒストグラムを示す。この結果、N=7∼33 とばらつきが多く、平均
N=19.38、標準偏差σ=8.31 を示す。期待N値は、同様に統計的な考え方に基づいた下式か
ら求めると以下の通りとなる。
期待 N 値=平均 N 値−標準偏差/2
=19.38−8.31/2
≒15
−13−
10
9
8
7
6
度 数 (個)
基本統計量
最 大 値
33
最 小 値
7
中 央 値
18
最 頻 値
17
平 均 値
19.38
標準偏差
8.31
変動係数
0.43
5
4
3
2
1
0
4
9 14 19 24 29 34 39 44 49
∼ ∼ ∼ ∼ ∼ ∼ ∼ ∼ ∼ ∼ ∼
0
5 10 15 20 25 30 35 40 45 50
N
値
図-4.1.3 N 値のヒストグラム(Dc2)
この場合、表-2.3.1 からは「硬い」コンシステンシーの粘性土と評価される。
5)砂(Ds2)
・分布深度
H22B-2:5.80∼6.50m
H22B-3:8.30∼8.70m,11.20∼16.20m,17.90∼18.30m
本層は、Dc2 層と互層、又は挟在される砂質土層で、H22B-2,H22B-3 地点に 0.4∼5.0m程の
層厚が確認されている。
性状としては、中∼粗粒砂を主体とし、有機物や小礫を混入する。
図-4.1.4 に測定N値のヒストグラムを示す。この結果、N=15∼32 とばらつきが見られ、平
均N=23.57、標準偏差σ=5.29 を示す。期待N値は、同様に統計的な考え方に基づいた下式
から求めると以下の通りとなる。
期待 N 値=平均 N 値−標準偏差/2
=23.57−5.29/2
≒20
−14−
10
9
8
7
6
度 数 (個)
基本統計量
最 大 値
32
最 小 値
15
中 央 値
24
最 頻 値
27
平 均 値
23.57
標準偏差
5.29
変動係数
0.22
5
4
3
2
1
0
4
9 14 19 24 29 34 39 44 49
∼ ∼ ∼ ∼ ∼ ∼ ∼ ∼ ∼ ∼ ∼
0
5 10 15 20 25 30 35 40 45 50
N
値
図-4.1.4 N 値のヒストグラム(Ds2)
この場合、表-2.3.2 からは「中位」の相対密度の砂質土と評価される。
6)砂(Ds3)
・分布深度
H22B-1:12.30∼15.50m,18.50∼19.00m
H22B-2:10.90∼16.00m
H22B-3:20.30∼24.00m
本層は、敷地中央∼東側で GL-10.9∼12.3mから分布し、敷地西側では GL-20.3mと深くなる。
層厚は 3.2∼3.7mが確認されている。
性状としては、比較的粒径の均一な中粒砂を主体とし、細かい石英粒を含む。
測定N値は、N>50 を示す。表-2.3.2 からは「非常に密な」相対密度の砂質土と評価される。
7)シルト混り砂礫(Dg2)
・分布深度
H22B-1:15.50∼16.50m
本層は、敷地東側の H22B-1 地点で、Ds3 層下位の GL-15.5∼16.5m間に分布する。
性状としては、φ10mm 前後の亜円礫とシルト分を含む細粒砂を主体とする。
測定N値は、N>50 を示す。表-2.3.2 からは「非常に密な」相対密度の礫質土と評価される。
−15−
8)粘土(Dc3)
・分布深度
H22B-1:16.50∼18.50m
本層は、Dg2 層の下位 GL-16.5∼18.5m間に分布している。
性状としては、全体に均質な粘土で、一部細粒砂や軽石を混入する。
測定N値は、N=47 が得られている。この場合、表-2.3.1 からは「固結した」コンシステン
シーの粘性土と評価される。
−16−
4.2 地下水位
本調査で確認された孔内水位を各ボーリング孔毎にまとめて示す。
表-4.2.1 地下水位
孔番号
水位(GL-m)
標高(m)
水位面の地層
H22B-1
2.40
107.69
砂質シルト(Dc1)
H22B-2
1.10
108.64
シ
H22B-3
2.10
108.22
砂質シルト(Dc1)
ル
ト(Dc1)
表-4.2.1 の水位は、無水掘りで確認された初期水位であり、段丘上部に胚胎する自然水位と
判断される。これらの水位は、ボーリング掘進中の水位であり、各孔の水位は測定日が異なる
ことから、一律に水位勾配を求めることはできないが、水位標高は、EL=107.69∼108.64mで
あり、西側に従いやや深くなっている。
−17−
第 5 章
考察
調査結果に基づき、構造物の基礎工計画等について考察する。
5.1 支持層及び基礎形式
本調査により確認された調査地の地層は、表-5.1.1 のようにまとめられる。
表-5.1.1 地層構成
地層区分
土質名
記号
盛土・表土
礫混りシルト
測定N値
代表
H22B-1
H22B-2
H22B-3
N値
Bk
0.00∼0.80
0.00∼0.80
0.00∼0.30
―
砂質シルト
Dc1
0.80∼3.00
0.80∼2.10
0.30∼2.20
10
シルト混り砂礫
Dg1
3.00∼6.90
2.20∼6.30
29
―
2
シルト混り砂
Ds1
―
2.10∼4.00
4.80∼5.80
4.00∼4.80
6.30∼11.20
粘 土
Dc2
段丘堆積物
6.90∼12.30
6.50∼10.90
16.20∼17.90
15
18.30∼20.30
砂
Ds2
砂
Ds3
シルト混り砂礫
Dg2
Dc3
粘
土
地下水位
―
5.80∼6.50
11.20∼16.20
20
10.90∼16.00
20.30∼24.00
>50
15.50∼16.50
―
―
>50
16.50∼18.50
―
―
47
2.40
1.10
2.10
―
12.30∼15.50
18.50∼19.00
この地層構成から本構造物の支持層について以下にまとめる。
(1)支持地盤の条件
構造物の重要度や荷重によって異なるが、一般に下記が良質な支持層の目安となる。
・粘 性 土 層:N 値 20 以上
・砂層、砂礫層:N 値 30 以上
−18−
(2)基礎形式
本調査で確認された地層構成において(1)の地盤条件から、以下の 2 つが基礎工法として考
えられる。
直接基礎:GL-2.1∼3.0mまでの上部砂質シルト層(Dc1)を地盤改良とする工法
完全支持杭:GL-10.9∼20.3m以深に分布する砂層(Ds3)を支持層とする工法
直接基礎による地盤改良工法は、荷重規模によっては、経済的で有効な基礎工法と考えら
れるが、砂礫層中にはN=2 の極めてルーズな砂層(Ds1)の挟み層が確認されていることから、
この場合、Ds1 層に対する地耐力の評価や地震時の液状化の検討が必要である。
完全支持杭による工法は、N≧50 の砂層(Ds3)に支持させるため、支持力的には最も安定
した基礎形式と言える。この場合、敷地西側で分布深度が GL-20.3mと深くなり、大きな起
伏が確認されていることから、杭先端深度の設定に留意が必要である。この場合の杭の工法
としては、表-5.1.2 の「杭の種類及び杭工法の選定表」に従えば、本調査及び既存調査では、
中間層である砂礫層(Dg1)中には巨礫の存在は確認されていないことから、各工法とも施工が
可能とされるが、打ち込み杭は、周辺の立地的環境面から、騒音、振動に対する制約が想定
されるため適切な工法とは評価し難い。また、場所打ち杭は施工が大規模で経済性に劣るこ
とから、本地盤条件では有効とは言い難い。従って、埋め込み杭が適するものと判断される。
なお、この他の基礎工法として、中間層に支持させる摩擦杭も考えられるが、当現場では
完全支持杭の深度が深くないことから、経済性で劣ることが予想される。
Bk
Dc1
Dg1
Dc1
Dg1
Ds1
Ds2
Ds2
Dc2
Dc2
Ds3
Ds2
Dg2
Dc3
Ds2
Dc2
Ds3
凡
例
地質時代
地層区分
土 質 名
記号
現 世
盛 土
礫混りシルト
BK
―
砂質シルト
Dc1
6 ∼1 9
シルト混り砂礫
Dg1
1 8 ∼5 0
シルト混り砂
Ds1
2
粘 土
Dc2
7 ∼3 3
砂
Ds2
1 5 ∼3 2
砂
Ds3
>5 0
シルト混り砂礫
Dg2
>5 0
粘 土
Dc3
47
第四紀
洪積世
図-5.1.1 地質断面図縮小版
段丘堆積物
測定N 値
−19−
表-5.1.2 杭の種類及び杭工法の選定表
出典:「建築構造設計基準及び同解説」(公共建築協会)
−20−
5.2 土質定数の検討
本項では確認された各層の設計時に採用可能な地盤定数について考える
(1)単位体積重量(γt)
土の単位体積重量は、下表を参考とする。
表-5.2.1 土の単位体積重量
種
類
盛
礫および礫混
状
態
単位体積
セン断
重量
抵抗角
(kN/m3)
(度)
粘着力
2
地盤工学会
kN/m
基
{G}
準
締め固めたもの
20
40
0
粒径幅の広いもの
20
35
0
分級されたもの
19
30
0
砂質土
締め固めたもの
19
25
30 以下
{SF}
粘性土
締め固めたもの
18
15
50 以下
{M}{C}
関東ローム
締め固めたもの
14
20
10 以下
{V}
密実なものまたは粒径幅の広いもの
20
40
0
密実でないものまたは分級されたもの
18
35
0
密実なもの
21
40
0
密実でないもの
19
35
0
密実なものまたは粒径幅の広いもの
20
35
0
密実でないものまたは分級されたもの
18
30
0
密実なもの
19
30
30 以下
密実でないもの
17
25
0
18
25
50 以下
17
20
30 以下
16
15
15 以下
17
20
50 以下
16
15
30 以下
14
10
15 以下
14
5
30 以下
じり砂
土
砂
礫
礫混じり砂
自
砂
然
砂質土
地
固いもの
盤
(指で強く押し多少へこむ
粘性土
N=8∼15)
やや軟らかいもの
(指の中程度の力で貫入 N=4∼8)
軟らかいもの
(指が容易に貫入 N=2∼4)
固いもの
(指で強く押し多少へこむ
N=8∼15)
粘土及び
やや軟らかいもの
シルト
(指の中程度の力で貫入 N=4∼8)
軟らかいもの
(指が容易に貫入 N=2∼4)
関東ローム
{S}
{G}
{G}
{S}
{SF}
{M}{C}
{M}{C}
{V}
日本道路公団編:設計要領第一集 平成 10 年 5 月 P1-37 より
−21−
(2)せん断強度
砂質土のせん断抵抗角(φ),粘性土の粘着力(C)は、「建築基礎構造設計指針」(日本建築学
会)に示されるN値からの換算式である次式を参考に求める。
・粘性土の粘着力:C=qu/2 qu=12.5N (kN/m2)
・砂質土の内部摩擦角:φ = 20N +15
(度)
(3)変形係数
変形係数(E)については「建築基礎構造設計指針」(日本建築学会)に示される推定式のう
ち次式に基づき算出する。
E=700N
(kN/m2)
これらの結果を一括して表-5.2.2 に示す。
表-5.2.2 設計用土質定数一覧表
γt(KN/m3) C(KN/m2)
φ(度)
E(MN/m2)
15以下
0
―
17
60
0
7000
29
18
0
39
20300
Ds1
2
17
0
21
1400
粘 土
Dc2
15
17
90
0
10500
砂
Ds2
20
18
0
35
14000
砂
Ds3
>50
20
0
40
35000
シルト混り砂礫
Dg2
>50
20
0
40
35000
粘 土
Dc3
47
17
290
0
32900
土質名
記号
N値
礫混りシルト
Bk
―
14
砂質シルト
Dc1
10
シルト混り砂礫
Dg1
シルト混り砂
Ds3,Dg2層の内部摩擦角は、表-5.2.1「密な礫」を上限値として採用した。
−22−
5.3 設計・施工上の留意点
(1)支持層について
直接基礎の支持層となる上部砂礫層(Dg1)は、締まり具合にばらつきがあることから、地耐
力の算定では留意が必要であり、特に敷地中央の H22B-2 ではN=2 の極めてルーズな砂の挟
み層が確認されていることから、改良深度の決定に際しては、この点についての影響を検討
し、設定することが望まれる。
杭基礎の支持層である砂層(Ds3)は、敷地西側(B-2 と B-3 の間)では分布深度が深くなる
ことから、支持層として扱う場合には起伏を考慮するとともに、構造物の配置が確定した際
には補足調査で分布深度を確認することが望まれる。
(2)砂礫層の礫径
本調査及び既存調査の結果から、上部砂礫層(Dg1)、及び下部砂礫層(Dg2)で確認さ
れた最大礫径は、φ50mm 程度であり、大きな巨礫相当は確認されていないが、本層は
扇状地性の堆積物であり、地層の成因的な面からは、確認された礫径以上のものが存
在する可能性も否定できないことから、設計、施工に際してはこの点に留意が必要で
あり、敷地周辺の施工事例を参考にして工法を決定するのが望ましい。
(3)浅部の土質性状について
砂礫層上位に分布する砂質シルト層(Dc1)は、N=10 程度の硬い粘性土であるが、本層中
に地下水が確認されていおり、地質的には火山灰質粘性土を起源とするものであることから、
床堀りで本層を掘削する場合、地下水の浸潤等により、乱した場合に強度低下が大きいこと
が予想される。よって、掘削面の安定や施工重機のトラフィカビリティーの確保に留意が必
要と考えられる。
(4)地震時の液状化について
本調査では地震時の液状化については検討していないが、「建築基礎構造設計指針」
(日本建築学会),p62 では、液状化の判定を行う必要のある飽和土層として以下のように示さ
れている。
1)地表面から20m程度以浅の沖積層。
2)細粒分含有率Fcが35%以下の土層。
3)Fcが35%こえても粘土分含有率が10%以下または塑性指数Ipが15以下の埋立
あるいは盛土地盤。
4)細粒土を含む礫や透水性の低い土層に囲まれた礫。
−23−
調査地で確認された地層構成は表-5.3.1のようにまとめられ、液状化が特に懸念されるゆ
るい沖積土層は確認されていないが、部分的に続成作用の進んでいない土層も分布すること
から、特に杭周面の摩擦力を大きく見込む摩擦杭を使用する場合等では、液状化の検討を実
施しておくことが望ましいものと考えられる。
表-5.3.1 地層構成
地層区分
土質名
記号
盛土・表土
礫混りシルト
測定N値
測定
H22B-1
H22B-2
H22B-3
N値
Bk
0.00∼0.80
0.00∼0.80
0.00∼0.30
―
砂質シルト
Dc1
0.80∼3.00
0.80∼2.10
0.30∼2.20
6∼19
シルト混り砂礫
Dg1
3.00∼6.90
2.20∼6.30
18∼50
―
2
シルト混り砂
Ds1
―
2.10∼4.00
4.80∼5.80
4.00∼4.80
6.30∼11.20
粘 土
Dc2
段丘堆積物
6.90∼12.30
6.50∼10.90
16.20∼17.90
7∼33
18.30∼20.30
砂
Ds2
砂
Ds3
シルト混り砂礫
Dg2
Dc3
粘
土
5.80∼6.50
11.20∼16.20
15∼32
10.90∼16.00
20.30∼24.00
>50
15.50∼16.50
―
―
>50
16.50∼18.50
―
―
47
2.40
1.10
2.10
―
―
12.30∼15.50
18.50∼19.00
地下水位
*網掛けは液状化検討対象層を示す
(5)地下水について
本調査で確認された地下水位は、GL-1.1∼2.4m(標高107.69∼108.64m)と浅いことから、
床掘り掘削に伴い、地下水が湧出する可能性が考えられる。掘削が上部粘性土の範囲では、
透水性は大きくないことから、多量の湧水は生じないともの考えられるが、砂礫層を掘削す
る場合には、湧水量が多くなることが予想される。
また、調査地は西側の奥羽山地からの地下水の供給が多いことから、降雨や融雪等により
水位変動が大きいことが予想される点に留意が必要と考えられる。