平成26年(ネ) 第3116号 地位確認等請求控訴事件 控訴人 廣瀬明美 被控訴人 日本赤十字社,株式会社スタッフサービス 控訴人意見陳述書 2015年2月19日 控訴人 廣瀬 明美 控訴人の廣瀬明美です。私は1975年生まれ現在39歳で、今年の5月1日に 40歳になります。 私の30代は、1985年に制定された「労働者派遣法」による派遣制度と向き合 う毎日となっています。派遣法はちょうど今年で30年の節目を迎えます。 この1985年という年は、国内で男女雇用機会均等法の制定、国民年金 第3 号被保険者制度の制定、そして派遣法が厳しい一定条件の下に生まれました。 その厳しい条件は、戦前の労働者供給事業による人身売買、強制労働、中間 搾取などの弊害を除去し、直接雇用を大前提の上に労働の民主化を図るため設 けられた職安法の趣旨に基づくものであることを、私たちは忘れてはならないと思 います。 1999年には派遣法の対象業務を原則自由化する大幅な規制緩和がなされま した。その流れは、均等法との抱き合わせで女性が非正規雇用に固定化されて 行く流れと合流し、1975年生まれの私の世代の多く、そして私も派遣という働き 方に合流することになってしまいました。派遣という働き方はすでに「一般化」し間 口の広い状況下であったということを貴裁判所にはご理解をお願いします。 日赤とメディカルサービスの採用面接がすでに偽装派遣を依頼し違法行為をし ていることに焦点を当ててください。そして違法派遣を労働者個人の自己責任に 1 しないでください。私たちは違法を選んでいません。労働者が違法派遣によって受 ける被害から目を反らさないでください。 私がこの係争を通して最もつらかったことは、控訴人陳述書(甲87号証)でも 述べましたように「違法派遣の『是正指導によって労働者の雇用が奪われる』とい うこと」でした。違法をした法人企業は是正をするだけで、一方の労働者は職だけ でなく路頭に迷い生活あるいは命を奪われているのが現状です。 貴裁判所におかれまして、とりわけこの派遣制度が人の犠牲の上に法整備をさ れて来た歴史を重く受け止めて、私の事件を判断してください。 この間、控訴人として原判決の事実認定や法律論への反論、また一審では立 証仕切れなかった点を書面や書証でいくつか主張・立証してまいりました。その書 面などのやり取りをする中で、私の「特定目的行為」の1つにあたる2008年3月 の国内最大級の献血ルームへの選抜・配転の部分について、原判決の事実認定 に誤りがあることが明確になり、それについては被控訴人日本赤十字社も認めま した。 つまり、この点を取っても原判決は不確かであり、まだまだ控訴人が詰めると齟 齬が出てくると言い切れるのであり、立証は途中です。 そして、原審と控訴審でも未だに私が「なぜ失業しなければいけなかったか」 「何が原因で労働者派遣契約が打ち切られ、私は失業することになったのか」が 解明されていません。この私の事実上の解雇から5年4カ月余りが経過しますが、 これを明らかにしなければ、私の気持ちが一つも晴れることはありません。それほ ど理不尽でした。単にその時点での「失業」ではないのです。私の3年3カ月12日 という日々の『失業に至るまでの違法派遣の構造』を内包しているのです。 それは、派遣会社の実態のないいびつな三面関係の構造です。 原判決は被控訴人ら会社の違法行為は認定しました。原判決は不充分です が一連の違法派遣と日赤職員との「同一業務」は認めました。私の実態労働の真 実は職安法違反の「労働者供給」です。原判決は採用面接を「施設見学と業務確 2 認等」と書き換え、選抜と配転と直接雇用の承諾も「意見表明」等とし、その実態 に何ら触れようとしませんでした。しかし、神奈川労働局と東京労働局には私の保 有個人情報開示請求の結果の対象文書が合計2278頁分あります。私が神奈 川労働局へ申告した結果の是正指導書など「対象文書」は、保管期間が5年間で す。今月16日に神奈川労働局へ確認を取りましたが、もうその「5年」を迎えよう としています。東京労働局が今年3月1日、神奈川労働局が3月16日ということ になり、真実を明らかにできる時間が迫っています。真実を知りえるのは貴裁判 所のインカメラ手続きなのです。今、それが行われなければ、私は置き去りです。 不可思議を抱えたまま、私は救われないということになります。 この状態で真実の判断ができるとは言い難く、審理を続けることを、この場で要 請いたします。 貴裁判所におかれましては、この後、和解協議を設定していただいていますが、 控訴人の気持ちは、まず第一に審理を続けて立証活動をさせてほしい、なにより も文書提出命令と証人尋問を職権で採用して欲しい、という願いのほかにありま せん。 以上 3
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