肉の加熱における砂糖の影響 大妻女大 長谷川典子 市川朝子 下村道子

第51 回 大 会 〕
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食 物
真 空 調 理 中に 生 じ る 鶏 ク リ ー ム煮 ソー ス 部 の 分 離 に 関 与 す る 水 溶 性 タ ン パ ク
質 の 加 熱 凝 集 に つ い て ○ 西村 公 雄* 後 藤 昌弘¨ 松 村 康 生・ 3
(・同 志 社 女 大 生 活 科 学 ,¨ 高 知 女 大生 活 科 学・
3京 大 食 研)
目 的 真 空 調 理 法 を 用 い て 鶏 の ク リ ー ム 煮 を90 °C下 で 調 製 す る と , 加 熱 中 に 鶏 肉 か ら 溶 出
し て く る 水 溶 性 の タ ン パ ク 質 に よ り , ソ ー ス 部 の 分 離 が 生 じ る が, 75 °
C下 で 調 製 す る と生
じ な い こ と を 前 回 報 告 し た1) 。 本 研 究 で は , 両 加 熱 温 度 に よ る 分 離 の 有 無 の 原 因 を 水 溶 性
タ ン パ ク 質 の 加 熱 凝 集 の 状 態 を 調 べ るこ とで 明 ら かに しよ う と した 。
方 法 及 び 結 果 牛 血 清 ア ル ブ ミ ン(BSA)
を 用 い て も ,鶏 の ク リ ー ム 煮 調 製 時 と 同 じ 現 象
が 見 ら れ る こ と か ら , 系 を 簡 略 化 す る た めに , ま ず , 鶏 肉 中 の 水溶 性 タ ン パ ク 質 の 代 わ り
にBSA の み を 用 い て 検 討 し た 。0.4% BSA 溶 液 を75 及 び90 °Cで 加 熱 し , ゲ ル ろ 過 一多 角 度 光 散
乱 法 に よ り 分 子 量 分 布 を 測 定 し た と こ ろ, 75゜
C 加 熱 で2. 5MD の, 90°C加 熱 で6MD の 凝 集 体 が
多 <形 成 さ れ て い た 。 次 に , 走 査 型 電子 顕微 鏡 を用 い て 加 熱 凝 集 体 の 微 細 構 造 を 観 察 した
と こ ろ, 90 °C加 熱 で は, 75 °'c
加 熱 に 比 べ, 網 目 構 造 が よ り 発 達 し て い る こ と が 認 め ら れ た 。
さ ら に , レ オ ロ グ ラ フ に よ り75 及 び90 °C加 熱 中 の6% BSA 溶 液 の 貯 蔵 粘 弾 性 の 変 化 を 追 跡 し
た 結 果 , 加 熱30 分 で そ れ ぞ れ4200 及 び19000dyne/cm' に 達 し て い た 。 こ れ ら の こ と か ら 加
熱 温 度 の 高 い 方 が タ ン パク 質 の 重 合 化 が 進ん で お り, 構 造が 密 とな って い る こ と が 推 察 さ
れ た 。 ま た, 90 °C加 熱 の 方 が , 加 熱 初 期 に よ り 大 き な 凝 集 体 が 生 成 さ れ て い る こ と も 認 め
ら れ た 。 さ ら に , 鶏 肉 水 溶 性 タ ン パク 質 を用 い た 実 験 か らも 同 様 の 傾向 が 認 め ら れ た 。 従
っ て , ホ ワ イ ト ソ ー ス の 分 離 に 差 が 見 ら れ る 原 因 は, 90°C加 熱 の 方 が75 °C加 熱 に 比 べ て 水
溶 性 タ ン パ ク 質 が , よ り 構 造 の し っ か り した 巨 大 な 加 熱凝 集 体を 形 成 す る た め と 考 え た 。
1) 西 村 公 雄 後 藤 昌 弘 日 本 食 品 科 学 工 学 会 第45 回 大 会 講 演 要 旨 集p. 143(1998)
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肉の加熱における砂糖の影響
大妻女大 ○長谷川典子 市川朝子 下村道子
【 目 的 】 西 欧 で は 畜 肉 の 調 理に 砂 糖 に 用い るこ と は ほ と ん どな い が 、東 洋 で は 畜 肉 の調
理 に 砂 糖 を用 い るこ と が多 い 。そ こ で 本 実 験で は 、畜肉 を 加 熱 す る際 に砂 糖 を添 加 す る こ
と の 効果 を調 べ よ うと し た。
【 試 料 と 実 験方 法】 試 料 は 牛 も も 肉及 び 牛 す ね 肉(屠 殺 後9 ∼21 日)を 東京 都 千代 田区 内
精 肉 店 よ り購 入 し た。 牛 も も 肉 は 厚 さ0.5 cmに切 り 、牛 肉 と 同重 量 の 以 下 の 5 種類 の 煮 汁
中 で10 分 間 加熟 し た 。① 全 重 量の2.5% 塩 分 濃 度 のし ょ う ゆ液 、② ① に 砂糖10 % 添 加 液 、
③ 全 重 量 の1.5% 塩 分濃 度 の し ょ うゆ液 、 ④ ③ に 砂 糖2.5% 添 加 液 、 ⑤ 水。 牛 す ね 肉 は 角
切 り にし 肉重 量 の10% の 砂 糖添 加 後 5分 間 放 置し 、圧 力 鍋(セブジヤパン)で15 分 間加 熱 し 調
味 し た。加 熱 肉 の 物 性、水 分 、色 の測 定 、官 能検 査 を 行 っ た。物 性 測 定 はレ オ メ ー タ ー(山
電,RE-33005) に よ り 破 断 強度 解析 を 行い 、水 分及 び 圧 出 水 分 を測 定 し 、肉 の 色は 測 色 色 差
計(日本 電 色 工業,Z-100IDP) で 測 定 し た。 官 能検 査 は 二 点識 別 試 験 法 に よ り行 っ た。
【 結果 】1) もも 肉 と す ね 肉い ず れ に おい て も砂 糖 添 加 に よっ て破 断 強 度測 定に よ る最 大
荷 重値 、破 断 応力 値 が有 意に 低 下 し た。2)加 熱 肉 の 水 分 は砂 糖 添 加 肉 の方 が 少 な かっ た が、
圧 出 水 分 は多 く なっ た 。3) 砂 糖 添 加 肉 は 無添 加 肉 よ り も測 色 色差 計 に よ る 明 る さ が 低 下
し 、△E が上 昇 し た。。4)
官 能検 査 で は 砂 糖を 添 加 し た 肉 の方 が無 添 加 肉 より も水 分 は少 な
い にも か か わ ら ず 、硬 さは 軟 ら かい と評 価 され た。 ま た、す ね肉 で は 砂糖 を 添 加 し た 方 が
歯切 れ や すい こ と が認 めら れ た。
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