医療応用を志向したタンパク質の 凍結・凍結乾燥保護剤 名古屋大学 大学院創薬科学研究科 基盤創薬学専攻 教授 廣明 秀一 1 新技術の概要 • 本品は、35~45アミノ酸のペプチドである。 • モデル酵素(乳酸脱水素酵素)が、凍結融解 を繰り返すと活性が5%以下に低下する、その 凍結保存時の活性低下を、本品を50 mg/ml 添加することで、阻止できる。 • また、5種類のうちの3種類については、凍結 乾燥による乳酸脱水素酵素の失活も、保護す る活性があった。 2 新技術の特徴・原理・機構 植物の凍結保護タンパク質 デヒドリンより着想を得て 「天然変性タンパク質」に 凍結保護活性があるのではないか と仮説をたて、実証実験を行った。 HPRD ヒトゲノム由来タンパク質 全配列 (約30000) 凍結保護剤を、ヒトゲノム配列から、バイオ インフォマティクス手法により探索し、実際 に試料調製を行った後、活性を評価した。 (左図:探索の概要、右図、活性評価法) 天然変性タンパク質 予測プログラム POODLE (産総研) 35~45アミノ酸 ヒトゲノム由来 天然変性タンパク質 5(+1)配列 3 新技術開発に至った技術基盤 天然変性タンパク質はバイオインフォマティクスで予測できる DISOPRED POODLE-S PrDOS DisPro VSL1, 2 DISOClust, IUPred(short), DisEMBLE GlobProt PONDR IUPred(long) POODLE-L VL2,VL3, VL3H, etc… RONN, GenesilicoMetaDisorder MetaPrDOS POODLE-T FoldIndex FoldUnfold POODLE-W POODLEシリーズ:産総研CBRC 岩村(清水)佳奈研究員が開発したIDP予測アルゴリズム 4 凍結保護活性をもつ天然変性タンパク質の発見 1. 試したすべての天然変性タン パク質に標品(BSA)よりも 高い凍結保護活性!! 2. もう一つの標品セリシンより も高活性 3. 立体構造を有する比較対象 (部分的天然変性タンパク 質C9、リゾチーム、PDZ1) よりも高い活性 ↓ 「天然変性タンパク質である ことが重要」 5 凍結保護活性をもつ天然変性タンパク質の発見 1. 試したすべての天然変性タンパク質に標品(BSA) よりも高い凍結保護活性!! 6 凍結乾燥保護活性をもつ天然変性タンパク質の発見 二種類の天然変性タンパク質に標品 (BSA)よりも高い凍結乾燥保護活性 7 新技術の動作原理 上図:凍結保護剤 が存在しない時。 凍結時の氷の結 晶成長に伴い、タ ンパク質の局所濃 度が上昇し、分子 同士の衝突と凝集 が起こる。下図: 保護剤が、タンパ ク質同士の直接 の接触・衝突の確 率を低減する。 8 想定される用途 • ヒトへの臨床応用を目指したバイオ医薬品 (抗体医薬品・酵素補充療法・インターフェロン など)の、凍結保存または凍結乾燥保存時の 安定化剤に利用可能である。 • タンパク質の凍結保護剤・凍結乾燥保護剤と して一般的なBSAなどは、医薬品添加物とし て使用することができない。 • 使用直前に取り除く必要がない、そのまま使 える凍結保護剤、という新たなコンセプト。 9 想定される用途(イメージ) • (1) これまでにない全く新しい特徴を持つ (2) ヒトゲノム 配列由来の (3) バイオ医薬品向け【凍結保護剤】 10 企業への期待 • 現行の低分子の凍結保護剤では問題解決できない、 開発中ないし開発中止の医療用抗体の改質などに協 力することができる。 • カスタムメイドの凍結保護剤の開発も可能。 • 本技術の応用に興味のあるバイオ医薬品を開発中の パートナー企業と協働したい。 • ライセンスアウト先も募集中である。 • 本格的な「医薬品添加剤」としての実用化を行うため、 ヒト体内での毒性・安全性の評価の技術を持つ、企業 との共同研究も併せて希望。 11 お問い合わせ先 名古屋大学 学術研究・産学官連携推進本部 コーディネーター 鈴木 孝征 Tel: 052-747-6483 e-mail: [email protected] 名古屋大学 大学院創薬科学研究科 教授 廣明 秀一 Tel: 052-747-6879 e-mail: [email protected] 12
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