微細藻類によるデンプン生産

P-214
微細藻類によるデンプン生産
(福井高専専攻科環境システム工学専攻 1,福井高専物質工学科2)
○越桐武児 1・高山勝己2
キーワード:バイオマス,微細藻類,デンプン,Chrorella
1.緒言
現在の社会はエネルギーや様々な化成品の
多くを石油に代表される化石資源から製造し
ている。しかし近年,化石資源の利用に伴う地
球温暖化や資源の枯渇などの問題に直面して
いる。そこでこれらの問題を解決する方法とし
てバイオマスへの代替が提案されている。バイ
オマスは再生可能な資源であること,利用して
も大気中の二酸化炭素を増加させない(カーボ
ンニュートラル)ことから注目されている。中
でも微細藻類バイオマスは食糧としての需要
が無いことや,リグノセルロース系バイオマス
と比較して糖化が容易なことから次世代のバ
イオマスとして研究がなされている。しかしコ
ストがかかるため実用化には至っていない。
本研究では微細藻類 Chrorella.emasonii の
バッチ培養を行い、高炭水化物含量のバイオマ
スを生産することを目的としている。
2.実験操作
2.1 C.emasonii からのバイオマス生産
培養は異なる培地を用いて 2 段階の培養を
行い,1 段階目を増殖フェーズ,2 段階目を蓄
積フェーズとし、検討した各フェーズでの培養
時間を表 1 に示した。1 段階目は TAP+Yeast
Extract 培地 300 mL に C.emasonii 前培養液を
1 mL 植菌し,温度 25 ℃,光量 80 µmol/m2s,
100 rpm で培養を行った。培養後,菌体を集菌・
洗浄し,S-TAP 培地(TAP 培地から硫黄成分を除
去した培地) 300 mL に全量植菌し,2 段階目の
培養を同条件で行った。培養後,菌体は回収し,
液体窒素によって凍結し,24 時間真空乾燥さ
せバイオマスを得た。
表 1 検討した各フェーズでの培養時間
表 1 検討した各フェーズでの培養時間
カルシウムで酸を中和し糖化液を得た。これを
0.2 μm メンブレンフィルターによって固形
物を除去し,HPLC によってグルコース濃度を
測定し,(1)式より炭水化物含量を算出した。
3.結果と考察
各培養条件における炭水化物含量を図 1 に
示した。
図 1 各培養条件における炭水化物含量
No.1~4 は増殖フェーズにおける培養時間を 7
days に固定し,蓄積フェーズでの培養時間を
変更し培養した。これによって得られたバイオ
マスの炭水化物含量は蓄積フェーズの期間が
4 days のときに最大となった。これは S-TAP
培地という硫黄飢餓条件で培養することによ
って,炭水化物の蓄積を誘導できたためである
と考えられる。次に No.5 は増殖フェーズを
4days に短縮し,培養を行った。このときのバ
イオマスの炭水化物含量は今回検討を行った
培養条件の中では最大の炭水化物含量であっ
た。これは定常期に植替えを行うより対数増殖
期に S-TAP 培地へ植替えを行う方が,より炭水
化物の蓄積を誘導できるためだと考えられる。
表 1 検討した各フェーズでの培養時間
2.2 NREL 法による炭水化物含量の測定
2.1 で得られたバイオマスを薬匙で粉砕し、
25mg 量り取り,72 wt% 硫酸を 250 μL 加え、
ウォーターバスで 1 時間インキュベートし、
超純水を 7mL 加え、オートクレーブで 121 ℃,
1 時間加熱した。室温になるまで静置し、炭酸
お問い合わせ先
氏名:高山勝己
E-mail:[email protected]
P-215
沖縄植物資源シマヤマヒハツ色素成分による
抗酸化能の評価および色素成分の同定
~ブルーベリーよりもシマヤマヒハツ~
(沖縄高専専攻科
生物資源工学コース 2 年)
○山里 洸佑・平山 けい
キーワード:沖縄植物資源、アントシアニン、酸化ストレス、LC/MS、抗酸化作用
【背景・目的】
生体内で過剰に産生される過酸化水素(H2O2)
やヒドロキシラジカル等の活性酸素種は酸化ス
トレスを増大させ、認知症や悪性新生物、アルツ
ハイマー病などのリスクを高める 1)。シマヤマヒ
ハツは沖縄に自生する植物で、濃赤色を呈した果
実を実らせる。先行研究により、シマヤマヒハツ
果実に、赤ワインの約 7 倍のアントシアニン成分
を含むことが明らかになっている 2)。アントシア
ニン成分は強い抗酸化能を持つため、シマヤマヒ
ハツが生体内の酸化ストレス抑制に機能するこ
とが示唆される。本研究は、アントシアニン成分
を豊富に含むシマヤマヒハツに植物資源として
の価値を見出すことを目的とし、シマヤマヒハツ
由来アントシアニン成分における抗酸化能の評
価及び有効成分の探索を行った。
【方法】
エタノールで、シマヤマヒハツ果実からアント
シアニン色素の抽出を行った。酸化ストレス抑制
能の評価は SH-SY5Y 細胞を用いた。SH-SY5Y
細胞は 37.0 ℃、5 % CO2 存在下、High glucose
DMEM で培養した。①DPPH ラジカル消去活
性:アントシアニン成分のラジカル消去活性を、
DPPH 法を用いて評価した。②アントシアニン
成分の同定:LC-MS により、シマヤマヒハツの
アントシアニン成分を同定した。③細胞毒性:ア
ントシアニン成分の細胞毒性を MTT assay を
用いて評価した。④酸化ストレス抑制能:アント
シアニン成分を処理した細胞に H2O2 水溶液を添
加し、24hr インキュベート後の細胞生存率を
MTT-assay を用いて確認した。
【結果】
シマヤマヒハツの DPPH ラジカル消去活性を
評価した結果、ブルーベリーと同等の抗酸化活性
を有することが分かった。シマヤマヒハツは
Delphinidin-3-Sambubioside(以下、D-3-S)と
Delphinidin-3-(2G-xylosylrutinoside)(以下、
D-3-2G)の 2 種のアントシアニン色素が含まれる
事が明らかになった(図 1)。D-3-S はハイビスカ
ス類に含まれる色素成分である一方、D-3-2G は
先行研究による報告がないため、シマヤマヒハツ
特有の成分である可能性が考えられる。D-3-S と
D-3-2G による酸化ストレス抑制能を評価した結
果、D-3-2G 単体では酸化ストレス抑制能は示さ
なかったが、D-3-S と同時処理した場合、D-3-S
の酸化ストレス抑制能を増強させることが分か
った(図 2)。以上の結果は、シマヤマヒハツとの
食べ合わせにより抗酸化食品・物質の効果を高め
ることが期待できる。
図 1. Delphinidin-3-(2G-xylosylrutinoside)同定結果
図 2. アントシアニン成分の酸化ストレス抑制作用評価
【今後の展望】
シマヤマヒハツ抽出液と、既に酸化ストレス抑
制能を有することが知られている抗酸化物質と
の相互作用を評価し、シマヤマヒハツを機能性補
助食品として利用できる可能性を検討する。
【参考文献】
1) 嵯峨井勝、酸化ストレスから身体をまもる:活
性酸素から読み解く病気予防、岩波書店, 2010,
55-135
2) Shohei Takyasu, Anthocyanin in Pants from
Okinawa Inhibits Serotonin Reduction by Inhibiting
Monoamine Oxidase Activity, Research Reports of
Advanced Course, 2, 163-198, 2012
お問い合わせ先
氏名:平山 けい(沖縄工業高等専門学校)
E-mail:[email protected]
P-216
イモリ初期胚における神経誘導モデル
(熊本高専専攻科生産システム工学専攻 1,
尚絅大学生活科学部栄養科学科2,熊本高専生物化学システム工学科3)
○春元眞愛 1・本村恵理子2・元木純也3
キーワード:有尾両生類,アカハライモリ,神経誘導,神経同士の相互作用,部域性
1.緒言
両生類の神経の頭尾軸に沿ったパターンは,予
定神経外胚葉に接するオーガナイザーや中軸中
胚葉からの神経誘導によって形成されるという
モデルが主流である.しかし,神経領域の大きさ
から考えて,中胚葉からの誘導のみによる説明は
困難である.そこで本研究では,誘導された神経
同士による相互作用によって,全体的な神経パタ
ーンが形成されるという仮説を立て,イモリの胚
を用いた移植実験及び神経マーカー遺伝子の発
現解析を行った.その結果,神経同士の相互作用
による神経形成が確認できたので,それを踏まえ
た新たな神経形成モデルを提案する.
2.実験方法
2-1 移植実験 2~4 細胞期の胚に蛍光色素
(FDA)を注入した胚を培養させ,移植片とした.
培養液中で st.11 胚のアニマルキャップを 500μ
m 四方で切り取り,st18 胚の神経板に隣接するよ
うに移植した.頭部,側方前方部,側方前方部両
側,側方中央部,側方後方部に移植を行った.20℃
で約 24 時間~1週間培養し,移植片の組織分化
を調べた.
2-2 組織観察 1 週間ほど培養した胚を固定し,
パラフィンを用いて包埋した.10µm の厚さで連
続切片を作製し,移植片部分の観察を行った.
2-3 HoxB9 遺伝子のクローニング 新しい神経
マーカー遺伝子として,脊髄に発現する HoxB9
のクローニングを行った.5’側,3’側のそれぞ
れで cDNA ライブラリーを鋳型として PCR 産物を
得た.これを Ligation,形質転換し,Plasmid
を得た.その後,Genetic Analyzer(ABI3500)を
用いて塩基配列を決定した.
2-4 Whole mount in situ hybridization(WISH)
24 時間培養した胚を用いた.DIG アンチセンス
RNA プローブを用いて hybridization させ,AP
標識抗 DIG 抗体を反応させた.その後,発色基質
である NBT/BCIP を加えて発色させ,過酸化水素
により脱色して観察を行った.全神経マーカーの
Sox3 および前方神経マーカーの Otx2,後方神経
マーカーの HoxB9 の発現を調べた.
3.結果・考察
移植実験の結果,移植後約 3 日あたりから移植
片の形態変化が観察された.全ての移植片は神経
褶様の構造を形成し,その後の形態は移植箇所に
よって異なった.組織観察の結果,移植片に形態
変化が起きている部分の断面で,ホストの神経と
は別に,移植片由来細胞で神経の構造を確認でき
た.以上の結果から,移植片(アニマルキャップ)
が神経板からの神経誘導を受け,位置に応じた神
経組織に分化したと考えられる.
HoxB9 遺 伝 子の ク ロー ニン グ の 結 果, 5'側
(756bp),3’側(1157bp)の塩基配列を読むことが
できた.他の生物の HoxB9 遺伝子との相同性があ
り,5’側断片に開始コドンが,3’側断片には終
始コドン,ポリAが含まれていたことから完全長
のクローニングが完了したと言える.HoxB9 の発
現は,正常尾芽胚で脊髄後方に見られた.
Sox3 による WISH の結果,移植後 24 時間(尾
芽胚期)での発現は,ホストの神経管と移植片で
検出できた.この時点では,移植片は外形から神
経組織として判断はできないが,遺伝子レベルで
見ると既に神経誘導が起きていることを示して
いる.Otx2 の発現は,頭部移植の場合のみ移植
片で検出できた. 以上の結果から,神経板自身
が神経誘導能をもち,その誘導能には部域差があ
ることが分かり,それが頭尾軸に沿った神経のパ
ターニングを進行させている可能性があること
が判明した。
以上をふまえた新しい神経形成モデルとして,
第一段階として中胚葉から外胚葉への大まかな
誘導が起きた後に,第二段階として誘導された神
経から外胚葉への誘導が起こることで全体的な
神経パターンが形成されると言える.
お問い合わせ先
氏名:元木純也
E-mail:[email protected]
P-217
セルロースナノファイバーの代謝症候群予防作用
(沼津高専物質工学科)
○齋藤日向・竹口昌之・芳野恭士
キーワード:セルロースナノファイバー, 代謝症候群
1. 緒言
セルロースは植物を構成している成分であ
り,地球上に非常に多い有機物である.その豊
富な資源を健康食品として活用したい.しかし
濃度を,それぞれ臨床検査キットを用いて測定
し,糖や中性脂肪の吸収抑制作用を検討した.
3. 結果と考察
マウス血漿中のグルコース濃度は,普通食,
セルロース自体は不溶性食物繊維として分類
高脂質高ショ糖食,CNF 含有高脂質高ショ糖
され保水性が低いため保健作用が期待し難い.
食で飼育したものでそれぞれ,343.4 mg/dL,
そのため,セルロースの保水性を高めることで
258.6 mg/dL,320.3 mg/dL であった.トリグリ
有用な食品添加物としての利用を考えた.セル
セリド濃度は,122.9 mg/dL,59.2 mg/dL,53.4
ロースを物理的・化学的に処理してナノサイズ
mg/dL,であり,コレステロール濃度は,118.3
まで解繊して得られるセルロースナノファイ
mg/dL,163.8 mg/dL,149.5 mg/dL,LDL 濃度
バー(CNF)は,高い粘性や水への高分散性が知
は,18.7mg/dL,28.0 mg/dL,26.7 mg/dL であっ
られている.そこで,本研究では,マウスの代
た.コレステロールでは,CNF による吸収の
謝症候群モデルに CNF を投与した場合の血中
抑制が見られ,コレステロールを全身の組織へ
や肝臓中の糖量などの変動を比較し,その効果
と運ぶ働きをする LDL でも,CNF による濃度
について検討した.
減少の傾向が確認できた.グルコースとトリグ
2. 実験方法
リセリドでは,普通食が最も濃度が高くなった
針葉樹由来のパルプ(NBKP)に水を加え,ミ
が,これは飼料の摂取量が影響したものと考え
キサーで解繊後,ジルコニアビーズと共に丸底
られる.また肝臓抽出液中のトリグリセリド濃
フラスコに入れ,分液ロート振とう機に
度は,各群で 9.4 mg/dL,41.0 mg/dL,39.0 mg/dL
300rpm で 24 時間かけて,1 wt%CNF を調製
であり,コレステロール濃度は 2.1 mg/dL,10.6
した.CNF を高脂質高ショ糖食に 1%になる
mg/dL,11.9 mg/dL であった.この結果より,
よう加え,その飼料を用いて 4 週齢雄性 ddY
肝臓中では CNF によるトリグリセリドの吸収
系マウスを 1 週間飼育した.対照として,普通
抑制の傾向が確認できた.
食と高脂質高ショ糖食で飼育した 2 群を用意
お問い合わせ先
した.飼育後,血液と肝臓を採取し,血液は遠
氏名:齋藤日向
心分離により血漿を調製した.肝臓は,ホモジ
E-mail:[email protected]
ネートしたものをクロロホルム-メタノール溶
液で脂質抽出した.血漿ではグルコース,トリ
グリセリド,コレステロール,低比重リポタン
パクコレステロール(LDL)の各濃度を,肝臓抽
出液では,トリグリセリドとコレステロールの
P-218
アカザカズラの葉エキス中の保健成分に関する研究
(沼津高専物質工学科 1,(株)三協ホールディングズ2)
○高橋駿平 1 ・丸山浩司 2 ・芳野恭士 1 ・嘉島康二
2
キーワード:アカザカズラ,肥満,ポリフェノール,サポニン
1. 緒言
フォーリン-チオカルト法でポリフェノールの
近年,現代病として代謝症候群が注目されて
定量を行った.その後,アカザカズラ葉エタノ
いる.これまでアカザカズラの水抽出エキスは
ール抽出エキスを用いて,同様に固相抽出によ
マウスに対し,降圧作用および脂質異常改善作
るポリフェノールの分取を行った.
用を有することや,代謝症候群を誘発させたマ
3. 結果と考察
ウスに対する改善効果が報告されている.昨年
アカザカズラの葉からのエタノール抽出物
度までの我々の研究室では,抽出溶媒としてエ
の収量は 11.7%であった.5 μg/mL,10 μg/ mL,
タノールおよびメタノールを用いてその効果
39.6 μg/mL の没食子酸エチルの固相抽出によ
を,水抽出エキスと比較検討,エタノール抽出
るポリフェノール画分への回収率は 65.7%,
エキスで最も高い抗代謝症候群作用が見られ
47.2%,49.3%であり,アカザカズラ葉エタノ
ることを明らかにした.本研究では,アカザカ
ール抽出エキスでは 16.1%であった,今回の固
ズラ葉エタノール抽出エキス中で抗代謝症候
相抽出ではポリフェノールが十分に回収でき
群作用が期待されるポリフェノール画分とサ
ないことがわかったため,今後固相抽出で得ら
ポニン画分を分離し,これらの成分に同作用が
れるすべての透過液中に含まれるポリフェノ
あるのかを確認することを目的とする.
ール量を測定し,ポリフェノールがどの画分に
2. 実験方法
存在するかを確かめるとともに,用いるカラム
アカザカズラの乾燥葉粉末 10 g に,エタノ
の種類や抽出溶媒の濃度を検討することとす
ール 1 L を加え,100℃で 5 分間加熱抽出,ろ
る.次に,サポニン画分についても同様に回収
過した後減圧下で濃縮乾固した.この抽出物を, 率の高い固相抽出の条件を検討する.得られた
10 mg/10 mL になるように蒸留水に溶解し,ア
ポリフェノールとサポニンの画分について代
カザカズラ葉エタノール抽出エキスとした.固
謝症候群の改善効果を検討する.
相抽出により得られるポリフェノール画分の
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ポリフェノールの回収率を決定するため,標準
氏名:高橋俊平
物質として 5 μg/mL,10 μg/mL,39.6 μg/mL の
E-mail:[email protected]
没食子酸エチルを固相抽出用カラム(Sep-pak
Plus C18 カートリッジ,Waters 社製)に注入し,
さらに水 8 mL,20%メタノール 20 mL,80%
メタノール 10 mL の順にカラムに通しそれぞ
れ,水溶性ペクチン画分,ポリフェノール画分,
サポニン画分を分取した.得られたポリフェノ
ール画分を濃縮乾固後 4 mL の蒸留水で溶解し,
P-219
陸上飼育ツメガエルにおける赤血球転換機構促進の解析
(鈴鹿高専生物応用化学科)
○池村美佳・黒田望英・山口雅裕
キーワード:ツメガエル,赤血球,変態,陸上飼育,造血
1.緒言
両生類では、変態期に赤血球が幼生型から成
体型へ転換することが分かっている。しかし水
生のアフリカツメガエルでは陸生種に比べて
この転換が遅れて生じる。ツメガエルは変態完
了後も水中で生活を続けるので、これがこの転
換の遅れの原因ではないかと考えた。
そこで本研究では変態直後の、まだ幼生型ヘ
モグロビンを多量に持つアフリカツメガエル
を陸上で飼育し、SDS-PAGE によってそのグ
ロビンパターンの変化を解析した。また赤血球
転換のタイミングの変化に造血部位での何ら
かの変化が伴うのかを解析するため、造血部位
である肝臓の切片を作製し、赤血球、赤芽球、
増殖細胞の量や分布について解析した。
2.実験方法
1) 飼育と血液採取
変態直後のアフリカツメガエル幼体を、水を
含ませたスポンジ上で飼育し、これを陸上飼育
個体とした。また、陸上飼育個体と同じ大きさ
の容器を用い、これに水を入れて飼育した個体
を対照群の水中飼育個体とした。飼育期間中は
給餌せず、約 1 週間後に心臓から全採血を行い、
これを用いてグロビンパターンの解析を行っ
た。また、同時に肝臓を摘出し、4%パラホル
ムアルデヒドで固定し、これを組織学・免疫組
織化学的解析に供した。
2) グロビンパターンの解析
陸上又は水中で飼育した変態直後のアフリ
カツメガエルと酸素環境を変化させて飼育し
た幼生の末梢血を採取し、それらのグロビンパ
ターンを 15%アクリルアミドゲルを用い、
SDS-PAGE で解析した。
3) 組織学・免疫組織化学
造血組織として肝臓に関し、パラフィン切片
を作製した。これをヘマトキシリン-エオシン
染色し、全体的な組織像を観察した。細胞増殖
検出のためには PCNA の抗体染色を行った。
また、赤血球が内在性のペルオキシダーゼ活性
を持っていることを利用し、ジアミノベンチジ
ンによる染色で赤血球系の細胞の検出を行っ
た。
3.結果
計 11 組の陸上飼育個体と水中飼育個体につ
いて解析を行ったところ、4 組で陸上飼育個体
の方が成体型のグロビンの割合が高く、グロビ
ン転換が早く生じていることが示された。一方、
水中飼育個体の方が転換が早く生じている場
合はなく、残りの 7 組では全てグロビン転換の
進行は同程度だった。このことから、陸上飼育
によってグロビン転換が早まることが強く示
唆された(図 1)
。
図 1:陸上飼育個体と水中飼育個体のグロビ
ンパターンの比較
次に、各個体について肝臓の組織切片につい
て解析を行った。全体的な組織構築、PCNA
の抗体染色、赤血球系細胞の染色において、両
飼育群の間に顕著な差は見られなかった。
4.考察
陸上飼育個体ではグロビン転換が早く進行
することから、少なくともアフリカツメガエル
では、甲状腺ホルモン以外の環境因子(例えば
酸素分圧など)が赤血球転換に影響を与えてい
ると考えられる。一方、陸上飼育を行ってもほ
とんど赤血球転換が促進されなかった場合も
あった。このような組み合わせによる違いが何
に依存するのかは今のところ不明である。陸上
飼育開始のタイミングや微妙な飼育環境の違
い(温度、湿度など)が影響している可能性も
あり、今後はこの点に関する解析が必要である。
また、今回は造血組織である肝臓に、飼育群の
間で差が見られなかった。陸上飼育によって赤
血球転換が促進される仕組みに関しても、今後
解析を進めていきたい。
お問い合わせ先
氏名:山口雅裕
E-mail:[email protected]
P-220
アフリカツメガエル変態期における造血部位の同定
(鈴鹿高専生物応用化学科)
○藤沢美佑・山口雅裕
キーワード:アフリカツメガエル,赤血球,変態,造血部位,肝臓
1.緒言
両生類では、変態期に幼生型ヘモグロビンを
持つ幼生型赤血球が成体型ヘモグロビンを持
つ成体型赤血球に置き換えられることが知ら
れている。そしてこの転換は、造血部位の変化
を伴うという説がこれまでに提唱されている。
実際、私たちはアフリカツメガエルにおいて、
末梢血での細胞増殖が変態期に低下すること
を示しており、これは赤血球造血が末梢から別
の部位に移行することを示唆している。しかし、
その他の部位における造血活性が変態の前後
でどのように変化するのかは詳しく調べられ
ていない。
そこで今回の研究ではアフリカツメガエル
を用い、両生類で造血が報告されている肝臓、
脾臓、腎臓に加え、肺において変態の前後でど
のように造血活性が変化するか、組織学・免疫
組織化学的に解析した。
2.材料と方法
1) 実験動物
実 験 に は ア フ リ カ ツ メ ガ エ ル ( Xenopus
laevis)を用いた。幼生及び変態後の亜成体か
ら組織を摘出し、4%パラホルムアルデヒドで
固定し、これを組織学・免疫組織化学的解析に
供した。
2) 組織学・免疫組織化学
摘出した組織に関し、パラフィン切片を作製
した。これをヘマトキシリン-エオシン染色し、
全体的な組織像を観察した。細胞増殖検出のた
めには PCNA の抗体染色を行った。また、赤
血球が内在性のペルオキシダーゼ活性を持っ
ていることを利用し、ジアミノベンチジンによ
る染色で赤血球系の細胞の検出を行った。
3.結果と考察
肝臓のヘマトキシリン-エオシン染色切片
を観察したところ、幼生、亜成体、いずれの個
体においても細胞質がエオシンで濃染される
赤血球・赤芽球様の細胞が肝細胞中に集団で局
在しているのが観察された。ジアミノベンチジ
ン染色でも同様の像が観察された。PCNA 陽
性細胞もどちらからも検出された(図 1)
。従
って、肝臓は変態の前後を通じて造血部位とし
て機能することが示唆された。
図 1:肝臓切片に対する PCNA 抗体染色
一方、脾臓は有尾幼生類の造血部位として知
られているが、アフリカツメガエル亜成体にお
いても赤血球・赤芽球様の細胞が検出され、無
尾幼生類においても造血部位であることが示
唆された。一方、亜成体の腎臓や肺では、顕著
な赤血球・赤芽球様細胞の分布は観察されなか
った。これらの組織の幼生における解析は今後
進めていく予定である。
4.考察
Weber (1991)はアフリカツメガエルにお
いて、変態に伴って造血部位が末梢から肝臓に
変化すると報告している。私たちも、アフリカ
ツメガエル幼生の末梢血では PCNA の発現が
強く検出されるのに対し、変態期を境にしてこ
の発現が減少することを確認しており、末梢が
幼生特異的な造血部位であることはおそらく
確かだと考えられる。しかし、肝臓に関しては
Weber(1991)の報告するような成体特異的
造血部位ではなく、変態の前後を通じて造血活
性を持つことが今回の研究から示唆された。従
って、変態期の前後で造血部位が変化するので
はなく、造血部位が減少するのかもしれない。
但し、脾臓や腎臓においてはまだ幼生期の観察
が不十分であり、今後解析を進めていく必要が
ある。また、今回の解析は定性的なものである
ため、今後は定量的に造血活性を評価する方法
の開発も必要であると考えられる。
お問い合わせ先
氏名:山口雅裕
E-mail:[email protected]
P-221
エラスチン変性に対するサラシアの抑制作用
(沼津高専物質工学科 1,(株)盛光 2)
○山下遥捺 1 ・芳野恭士 1 ・金高隆
2
キーワード:サラシア,エラスチン,皮膚老化
1. 緒言
エラスチンは皮膚の真皮に存在するタン
リ性銅試薬 1.5mL を加え 10 分間放置した.
フェノール試薬 150μL を加えて 30 分間放置
パク質の一種であり,コラーゲンの網目構造
した後,660nm の吸光度を測定することで,
にコイル状に巻きついてコラーゲンを支え
エラスチンから紫外線で分解されたアミノ
る働きをすることで,肌のハリや弾力性を維
酸あるいはペプチドを定量した.被験試料と
持している物質である.しかし,皮膚に紫外
しては,サラシア幹エキスとその成分である
線が当たると活性酸素が発生し,それにより
マンギフェリン,サラシア葉エキスとその成
エラスチンが変性して肌のハリや弾力性が
分であるマンギフェリン,エピガロカテキン
失われ,シワなどの皮膚老化が起こるものと
(EGC),エピカテキン(EC)を用いた.
されている.
3. 結果と考察
サラシア(Salacia reticulata)は東南アジア
用いた試料のエラスチン変性抑制率は,サ
やブラジルなどの熱帯地域に広く自生する
ラシア幹エキス:48.3%,マンギフェリン
デチンムル科(Hipporateaceae)のつる性の低
(幹)
:39.6%,サラシア葉エキス:11.0%,
木である.インドや中国では,古くから糖尿
マンギフェリン(葉)
:5.50%,EGC(葉):
病や肥満の治療に用いられてきた.また,抗
25.4%,EC(葉)
:2.92%となった.これら
酸化物質としてマンギフェリン,エピガロカ
の結果から,サラシア幹エキスの示すエラス
テキン(EGC),エピカテキン(EC)等を含
チン変性に対する抑制作用は,その成分であ
んでいることが知られている.
るマンギフェリンでほぼ説明できることが
本研究では,抗酸化物質を含むサラシアの
わかった.一方,サラシア葉エキスについて
エキスを利用することで,エラスチンの変性
は高い抑制作用は見られず,その抑制作用に
を抑制する可能性について検討することを
は主に EGC が寄与しているものと予想され
目的とする.
た.
2. 実験方法
お問い合わせ先
被験試料とエラスチン 10mg,および蒸留
水を混合した後,シャーレに移し入れ,紫外
線照射機で 352nm と 253.7nm の波長の紫外
線を 17 時間照射した.その後,この溶液を
4000rpm,4℃で 15 分間遠心分離し,上清を
0.2μm のメンブレンフィルターで濾過した.
この操作により,分解されなかったエラスチ
ンを除去した.次に,濾液 300μL にアルカ
氏名:山下遥捺
E-mail:[email protected]
P-222
タゴガエル変態期における小腸分化の仕組み
(鈴鹿高専生物応用化学科)
○桂川夏野・山口雅裕
キーワード:小腸,分化マーカー,タゴガエル,ラクターゼ,SGLT
1.緒言
両生類では変態期に、幼生型の草食に適応し
た消化管が成体型の肉食に適応した消化管に
作り替えられる。この転換はアフリカツメガエ
ル小腸の場合、幼生型細胞のアポトーシスと成
体型細胞の増殖によって引き起こされること
が報告されている。一方、タゴガエルは幼生期
に摂餌せず、原理的にはこのような消化管の作
り替えを必要としない。しかしタゴガエルにお
いても、胃では幼生型細胞のアポトーシスを伴
う細胞の入れ替えが生じていること、幼生初期
のから摂餌しないにも関わらず消化酵素分泌
能を持つことを私たちはこれまでに示してき
た。一方、小腸においてはこのような細胞の入
れ替えが観察されず、幼生期の小腸がそのまま
成体の小腸として成熟する可能性も示唆され
ている。
そこで今回、私たちは小腸の分化マーカーを
まずアフリカツメガエルを用いて探索し、これ
をタゴガエルにおいて単離することを試みた。
2.実験方法
1) アフリカツメガエル
成熟したアフリカツメガエル成体、およびス
テージ 57 から小腸、胃を摘出し、Isogen を用
いて RNA を抽出したのち、逆転写して cDNA を
合成した。これを鋳型として、小腸分化マーカ
ーとしてラクターゼ、ナトリウム依存性グルコ
ーストランスポーター(SGLT)の発現を RT-PCR
により解析した。
2) タゴガエル
変態直後(ステージ 25)のタゴガエル全体
から、アフリカツメガエルと同様の方法で
cDNA を合成した。
アフリカツメガエルでの結果から、ラクター
ゼが小腸分化マーカーとして使用できること
が分かったため、これに対する縮重プライマー
を 設 計 し 、 合 成 し た cDNA を 鋳 型 と し て
RT-PCR に よ り タ ゴ ガ エ ル ラ ク タ ー ゼ の
cDNA 増幅を試みた。
3.結果
アフリカツメガエル成体についてラクター
ゼの発現を解析したところ、小腸では強い発現
が見られた一方、胃では発現が見られなかった。
このことから、ラクターゼは消化管の中でも小
腸特異的分化マーカーとして使用できること
が示された。また、ラクターゼは幼生小腸でも
発現が見られたため、発生の時期を問わずに小
腸分化マーカーとして使用できることが示唆
された。
(図 1)
。一方、SGLT の場合、成体小
腸で強い発現が見られたものの幼生小腸では
発現が見られず、幼生期の小腸では分化マーカ
ーとして使用できない可能性が考えられた。
図 1:ツメガエル小腸のラクターゼ発現
そこで、タゴガエルについて縮重プライマー
を用いてラクターゼの単離を試みた。1 回の
PCR ではバンドが検出されなかったため、さ
らに nested プライマーとなる縮重プライマー
をデザインし、1 回目の PCR 産物を鋳型とし
て nested PCR を行った。その結果、目的のサ
イズに近いバンドが検出されたため、これを抽
出し、シークエンス解析した。しかし、増幅さ
れた断片は polycomb 遺伝子の断片などであり、
ラクターゼではなかった。
4.考察
両生類において変態の前後を通じて分化マ
ーカーとして使用できる遺伝子はこれまでほ
とんど調べられていない。本研究により、ラク
ターゼが発生の時期を問わずに使える分化マ
ーカーとして使用できることが示された。
SGLT についても、再度その可能性を検討する
予定である。
一方、タゴガエルラクターゼについては、今
回はその単離が行えなかった。これは鋳型が個
体全体の cDNA であったためであると考えら
れる。今後は小腸 cDNA を鋳型としてタゴガ
エルラクターゼの単離を試みる予定である。
お問い合わせ先
氏名:山口雅裕
E-mail:[email protected]
P-223
食欲促進ペプチドグレリンの両生類における単離と発現
(鈴鹿高専生物応用化学科)
○竹内佑喜・山口雅裕
キーワード:アフリカツメガエル,タゴガエル,グレリン,食欲,胃
1.緒言
両生類では変態期に、幼生型の草食に適応し
た消化管が成体型の肉食に適応した消化管に
作り替えられる。この転換はアフリカツメガエ
ル小腸の場合、幼生型細胞のアポトーシスと成
体型細胞の増殖によって引き起こされること
が報告されている。一方、タゴガエルは幼生期
に摂餌せず、原理的にはこのような消化管の作
り替えを必要としない。しかしタゴガエルにお
いても、胃上皮の細胞がガストリン放出ペプチ
ド合成能を持ち、少なくとも部分的には消化酵
素分泌能を持つことを私たちはこれまでに示
してきた。しかし、それではなぜタゴガエルは
摂餌しないのかその理由は不明である。
今回、私たちは食欲を制御するペプチドと
して知られるグレリンに着目し、アフリカツ
メガエルにおいて、餌の投与とグレリンの発
現パターンに関連があるのかを解析した。次
いでタゴガエルにおいてグレリンの単離を試
みた。
2.実験方法
1) アフリカツメガエル
成熟したアフリカツメガエル成体から小腸、
胃を摘出し、Isogen を用いて RNA を抽出した
のち、逆転写して cDNA を合成した。これを鋳
型として、グレリンの発現を RT-PCR により確
認した。
次に、変態直後の仔ガエルを用い、一方を摂
餌群として 3 日間に一度給餌し、他方を絶食群
として給餌せずに飼育した。2 週間飼育後、同
様に胃を摘出しここから RNA 抽出、cDNA の合
成を行い、グレリンの発現量を解析した。
2) タゴガエル
変態直後(ステージ 25)のタゴガエル全体
から、アフリカツメガエルと同様の方法で
cDNA を合成し、これを鋳型として RT-PCR
によりタゴガエルラクターゼの cDNA 増幅を
試みた。プライマーは縮重プライマーとオリゴ
dT プライマーを用いた。1st PCR では縮重プ
ライマーと oligo dT プライマーを用い、この
PCR 産物を用いて 2 種類の縮重プライマーを
用いた nested PCR を行った。
3.結果
ツメガエル成体でグレリンの発現を解析し
たところ、胃と小腸の両方でグレリンの発現が
検出された(図 1)
。
また、アフリカツメガエル仔ガエルの摂餌群
と絶食群でグレリンの発現を比較したところ、
両群の間で発現に大きな差は認められなかっ
た。
図 1:ツメガエル成体消化管でのグレリンの発現
タゴガエルに関しては、nested PCR を行っ
た結果、目的のサイズに近いバンドが検出され
たため、これをクローニングして配列を解読し
たが、グレリンではなかった。プライマーはき
ちんと当たっていることが確認できたので、プ
ライマーのデザインが適切ではなかったと考
えられる。現在プライマーを変えて再度クロー
ニングを試みている。
4.考察
食欲とグレリンの関係は高等脊椎動物では
よく調べられているが、両生類における機能は
ほとんど知られていない。わずかにウシガエル
幼生において、グレリンが摂食促進作用を持つ
こと、摂餌後速やかに発現が低下することが報
告されている程度である(Shimizu et al.,
2014)。今回、摂餌群と絶食群でグレリンの発
現量に差は見られなかった。ウシガエル幼生の
場合、摂餌後 15-60 分以内にグレリンの発現
が低下する。今回の実験では摂餌からサンプリ
ングまでの時間が長すぎたのかもしれない。今
後は給餌頻度やサンプリングのタイミングな
どを検討しつつ、更に発現を解析していく予定
である。また、タゴガエルにおけるグレリンや
その受容体の単離も引き続き行っていきたい。
お問い合わせ先
氏名:山口雅裕
E-mail:[email protected]
P-224
干潟に生息するカニにとって海水濃度の NaCl は猛毒である
(鈴鹿高専生物応用化学科)
○浮田菜央・杉浦祐海・甲斐穂高・平井信充・山口雅裕
キーワード:カニ,干潟,塩化ナトリウム,共存塩,毒性
1.緒言
海は「生命のゆりかご」であり、全ての門に
渡る動物が生息している。海水に存在する主な
イオンはナトリウムイオンと塩化物イオンで
あり、これらが浸透圧調節などの面から海産動
物の生息に必須であることはよく知られてい
る。一方、ナトリウムイオンや塩化物イオンの
他にも海水には微量のイオンが多種類溶けて
いるが、これらの役割についてはよく分かって
いない。私たちは最近、干潟に生息するカニ類
にとって、海水程度(3%)の濃度の NaCl 溶液
が種によっては淡水よりもずっと有毒である
こと、3% NaCl 溶液中で生存するためには適切
な共存塩が必要であることをみつけた。そこで、
カニ類の生息を可能とするイオン環境につい
て解析した。
2.実験方法
津市河芸町の田中川河口干潟でヤマトオサ
ガニ、アシハラガニ、コメツキガニを採集し、
これらを用いて主に実験を行った。
蒸留水に各種の塩を溶解して飼育液を作製
し、これにカニ類を入れ、23oC で 2 日間飼育し
た。飼育期間中は毎日生死を確認し、2 日後の
生存率を求めた。
3.結果と考察
3% NaCl 溶液で飼育した場合、海水飼育の
場合と比較して 3 種とも生存率が低く、特にヤ
マトオサガニとアシハラガニの場合、全く生存
不可能だった。そこで、3% NaCl に 0.68%
MgSO4、0.52% MgCl2、0.15% CaCl2、0.08%
KCl を添加したところ、3 種とも生存率 100%
となったので、これを以後の実験の基本飼育液
(3%N-MMCK 液)として使用することとし
た。0.05% NaCl 溶液であれば 3 種とも生存可
能だったことから、共存塩はカニの生存に必須
ではなく、むしろ NaCl の毒性を軽減するため
に必要であると考えられた。
次に、これらの共存塩のうち、どれが必要か
を調べるため、3%N-MMCK 液から共存塩を
どれか 1 種類だけ除いてカニ類を飼育した。そ
の結果、KCl を除くとヤマトオサガニは全く生
存不可能であり、アシハラガニとコメツキガニ
も生存率の低下が見られた。このことから、
KCl はいずれの種でも NaCl の毒性軽減に必
要であることが示唆された。一方、他の 3 種の
塩に関しては、除去してもカニの生存率低下は
見られなかった。
そこで、次に共存塩のうち、どれか 1 種類だ
けを加えてカニ類を飼育した。その結果、KCl
だけを加えた場合、3% NaCl 液と比べてある
程度の生存率回復が見られたが、ヤマトオサガ
ニ、アシハラガニの場合、3%N-MMCK 液に
比べると生存率は低かった。従って、KCl 以外
の塩も、NaCl の毒性軽減に寄与していること
が示唆された。但し、MgSO4、MgCl2、CaCl2
だけをそれぞれ 3% NaCl に添加しても、全体
に生存率の回復の程度は低かった。
MgSO4、MgCl2、CaCl2 の単独投与で生存率
の回復程度が低かった原因として、それぞれの
濃度が低かった可能性が考えられる。
3%N-MMCK 液では、MgSO4、MgCl2、CaCl2
の全てをあわせた濃度は、約 0.07 M となる。
そこで、これらの塩が単独で 0.07 M となるよ
うに 1 種類だけを加えて飼育した。その結果、
生存率の上昇が見られた。以上の結果から、1)
NaCl の毒性軽減には、KCl と二価の塩が必要
であること、2) マグネシウム塩とカルシウム
塩は少なくとも短期的には代替可能であり、同
じ経路で機能していることが示唆された。
今回のカニ類が示した NaCl の毒性は汽水
種に特有のものであり、海産種には当てはまら
ない可能性もある。そこで、海産種のカニとし
てイワガニとヒライソガニを用い、3% NaCl
液と 3% N-MMCK 液で飼育を試みた。その結
果、両種とも 3% NaCl では 100%の致死率、
3% N-MMCK 液では 100%の生存率を示した。
また、イワガニは 0.5% NaCl でも生存できず、
典型的な海産種としての特徴を示した。これら
のことから、今回私たちが解析したカニの特徴
は汽水種に特有のものではなく、海産種にも広
く当てはまるものであることが示唆された。
無脊椎動物は一般に体液組成と環境液組成
が類似しており、脊椎動物よりも環境液の影響
を受けやすい生存戦略をとっている。この戦略
は、海水の微妙なイオンバランスの上に成り立
っていることが今回の研究で示唆された。
お問い合わせ先
氏名:山口雅裕
E-mail:[email protected]
P-225
香煎茶の糖尿病予防作用
(沼津高専物質工学科 1,サンダイヤ(株)2)
○芳野広起 1・清水篤 2・芳野恭士 1
キーワード:香煎茶,抗酸化作用,糖尿病,血糖値
1.緒言
糖や脂質の過剰摂取による肥満の患者数は,
た.それに対し,ヤブキタ緑茶,およびその香
煎茶エキスの 0.05 および 0.1%(w/v)水溶液を調
年々増加している.一方,茶は糖の吸収抑制作
製し,これらを飲料水として自由摂取させた群
用をもつことが知られている.香煎茶とは,緑
を作成した.無処理の健常群も用意した.各群
茶を加圧加熱処理することによって痩身効果
のマウスは 4 匹とした.飼育終了 20 時間前よ
をもつ重合ポリフェノールの含有量を高めた
り絶食させた後,麻酔下でマウスの心臓から採
茶のことである.本研究では緑茶とその香煎茶
血を行った.3000 rpm,4℃,10 min の条件で
のエキスについて,糖や脂質の過剰摂取が原因
血液を遠心分離し,得られた血漿についてグル
で発症する生活習慣病の代表である糖尿病に
コース CⅡテストキット(和光純薬社製)を使
対する作用を,in vitro の系やマウスを用いて
用し,血糖値を測定した.
検討することを目的とする.
3.結果と考察
2.実験方法
ジフェニルピクリルヒドラジル(DPPH)の
アゾラジカルを消去することによる吸光度の
減少を測定し,茶エキスの抗酸化力を測定した.
各種茶エキスの DPPH ラジカルの捕捉作用
は,ヤブキタ緑茶 45.6%,ヤブキタ香煎緑茶
36.2%となった.
2 型糖尿病モデルマウスへのヤブキタ試料
0.04 M リン酸緩衝液(pH7.4)850 µL,0.2 mg/mL
の投与における各群のマウスの血糖値は,健常
ヤブキタ緑茶,およびその香煎茶の熱水エキス
群 1.96 mg/mL,2 型糖尿病群 3.44 mg/mL,低
水溶液 50 µL を入れ撹拌した.そこに 0.5 mM
濃度緑茶投与群 4.72 mg/mL,高濃度緑茶投与
DPPH エタノール溶液 100 µL を加え撹拌し,
群 2.98 mg/mL,低濃度香煎緑茶投与群 3.74
直ちに遮光した.20 分間放置した後,反応液
mg/mL,高濃度香煎緑茶投与群 4.24 mg/mL と
について 525 nm における吸光度を測定し,
なり,高濃度の緑茶エキスのみ,血糖値低下作
DPPH アゾラジカル捕捉率を算出した.
用を示した.
次に,2 型糖尿病モデルマウスへのヤブキタ
以上の結果から,エキスの同量を用いた場合
試料の投与を行った.マウスを 24 時間絶食さ
の香煎緑茶の保健作用は緑茶よりも弱いこと
せた後,1.2%(w/v)ニコチンアミド水溶液 0.01
が推測されたが,一方で,香煎緑茶のエキスの
mL/g-体重を腹腔内投与し,その 15 分後に
収量は緑茶の 1.4 倍高かった。
1.0%(w/v)ストレプトゾトシン(STZ)水溶液
お問い合わせ先
0.01 mL/g-体重を腹腔内投与した.この操作を
氏名:芳野広起
一日空けて 2 回繰り返した後,通常の飼育条件
E-mail:[email protected]
で 12 日間飼育したものを,2 型糖尿病群とし
P-226
2 次加工茶「香煎茶」の成分分画と保健作用
(沼津高専専攻科総合システム工学専攻 1, サンダイヤ㈱ 2,
沼津高専物質工学科 3)
○伊藤 彩 1・清水 篤 2・芳野恭士 3
キーワード:香煎茶,α-グルコシダーゼ活性阻害作用,透析,固相抽出
1. 緒言
近年日本では,肥満患者およびそれに伴うメタ
フェノール量をフォーリン・チオカルト法により
測定した。また,濃度が希薄であった低分子量画
ボリックシンドロームや糖尿病などの生活習慣
分を Sep-pak Plus C18 ミニカラム(Waters 社製)
病患者の増加や,高齢化に起因した国民医療費に
を用いた固相抽出により濃縮した。ポリフェノー
よる財政圧迫が問題となっている。予防可能な生
ル成分は,メタノールを用いてミニカラムから溶
活習慣病の患者が,全国民医療費の 3 割を使用し
出した。濃縮した各茶エキスの低分子量画分およ
ている状況を改善する必要がある。その対応策と
び高分子量画分のα-グルコシダーゼ活性阻害作
して,古来より日本を含む世界中で摂取されてい
用の測定を行い,スクラーゼ活性に対する 50%
る飲料である茶の糖吸収抑制作用と抗メタボリ
阻害濃度(IC50 値)を測定した。
ックシンドローム作用の利用が考えられる。本研
究で着目した香煎茶は,一次加工された茶葉を加
3. 結果と考察
圧加熱処理することにより重合ポリフェノール
香煎茶中の総ポリフェノールの含有量は緑茶
の含量を高め,渋味を軽減させた二次加工茶であ
のそれに比べてやや低かった。しかし,この値を
る。これまでに,香煎茶について肥満患者に対す
茶葉重量当たりの値に換算すると,香煎茶加工に
る痩身効果やマウスの糖消化酵素であるα-グル
より茶葉重量当たりのエキスの収量が増加する
コシダーゼ活性に対する阻害作用等が報告され
ため,原料のヤブキタ緑茶に比較して香緑茶のエ
ている。本研究では高分子の重合ポリフェノール
キスの方がポリフェノール含量は多かった。
を多く含有し,渋味が少なく飲み易い香煎茶につ
透析によって得られた全ての画分は,固相抽出
いて,そのポリフェノール成分の分離と糖吸収抑
により濃縮することができた。さらに,透析によ
制作用を検討する。
り得られる香煎茶中の高分子量のポリフェノー
ルの含有率は,緑茶よりも高かった。濃縮された
2. 実験方法
ヤブキタ緑茶およびそれを香煎茶処理した茶
画分中のポリフェノールの濃度はラット小腸ア
セトンパウダー由来のα-グルコシダーゼの活性
(香煎緑茶)の茶葉 8 g を,1 L の熱水に加え 10
に対する阻害効果を測定するのに十分であった。
分間抽出を行った後ろ過し,抽出液を凍結乾燥す
香煎茶エキスから得られた低分子量のポリフェ
ることで各茶の抽出物を得,これを用いて実験を
ノール画分よりも,高分子量のポリフェノール画
行った。各抽出物中の総ポリフェノール量を,フ
分の方が in vitro においてより強いα-グルコシダ
ォーリン・チオカルト法により測定した。各抽出
ーゼ活性阻害を示した。従って,香煎茶に含まれ
物中の高分子および低分子のポリフェノール成
る高分子量のポリフェノールはより強いα-グル
分を分離するために,排除分子量 3,500-5,000 の
コシダーゼ活性阻害作用を持つことが分かった。
Float-A-Lyzer G2(Spectrum Labs 社製)セルロー
お問い合わせ先
スエステル膜を用いて透析を行った。透析で得ら
氏名:芳野恭士
れた高分子量画分および低分子量画分中のポリ
E-mail:[email protected]
P-227
沖縄県産ヤエヤマアオキの酸化ストレス抑制効果
(沖縄高専 生物資源工学科)
○鈴木明香里・上里佳寿葉・平山けい
キーワード:ヤエヤマアオキ, 抗酸化能, NGF, 認知症予防
【目的】
平均寿命の高齢化に伴い、認知症を始めとし
た脳神経疾患の予防・改善策が求められている。
沖縄県に自生する植物は、強い紫外線ストレス
に適応するために生体防御物質を多く含有す
ることが期待される。本研究では、沖縄県にて
民間療法で用いられている沖縄県産ヤエヤマ
アオキ(以降ノニ)の有用性に着目した。ノニ
果実に認知症の予防・改善に有効な植物資源と
しての価値を見出すことを目的とし、発酵ノニ
液の抗酸化能を評価した。また、神経細胞突起
を伸張させる NGF 様効果を評価したので、その
結果を合わせて報告する。
【方法】
1)DPPH 消去活性能試験
抗酸化能評価は、DPPH(1,1-Diphenyl-2picrylhydrazyl)法を用いた。DPPH ラジカルは
体内における酸化原因物質と同様の性質を持
つ人工ラジカルである。600 µM DPPH ラジカル
を発酵ノニ液と反応させ、吸光度 520 nm にお
ける DPPH 消去能を Trolox 当量に換算して評価
した。Positive Control にはブルーベリー果
実抽出液を用いた。
2)NGF 様効果試験
NGF(神経成長因子)は、神経細胞に必要不可
欠な因子であり、PC12 細胞(ラット副腎髄質由
来褐色細胞腫)を神経細胞様に分化させること
が知られている。低分子分画(<3,000)発酵ノニ
液を添加し、Control との比較により NGF 様効
果を評価した。PC12 細胞における分化及び分
化傾向がある細胞を顕微鏡写真中の全細胞数
に対する割合で評価した。
【結果】
1)DPPH 消去活性能試験
各濃度発酵ノニ液 50 µL を DPPH と 20 min
反応させた結果、抗酸化能の指標となる DPPH
吸光度は Control と比較して、濃度依存的に約
20 %ずつ低くなった(図 1.)。このことから、
発酵ノニ液は抗酸化能を有することが明らか
となった。Trolox 当量は、ブルーベリー果実、
発酵ノニ液においてそれぞれ 7281 µM/g、3530
µM/g であった。このことから、発酵ノニ液は
ブルーベリー果実抽出液の約 1/2 の抗酸化能
を有している。
図1. 発酵ノニ液抗酸化能
各サンプル添加反応後の 520nm における DPPH 吸光度
を、Control との比率で表した。T 検定にて Control
との有意差を求めた。(**p<0.01) N:発酵ノニ液、B:
ブルーベリー果実抽出液。
2)神経突起伸張試験
PC12 細胞では、サンプル処理 4 日後 Control
で 21 %、発酵ノニ液で 50 %、NGF で 91 %の分
化細胞を確認でき、NGF 様効果が認められた。
このことから、ノニ発酵液は PC12 細胞を神経
細胞様に分化させる NGF 様効果を持つ物質を
含有していることが明らかとなった。
【考察】
今回の実験の結果から、発酵ノニ液は、
Positive Control の 1/2 の抗酸化能を有する
こと、及び神経細胞を活性化させる NGF 様効果
を有することが明らかになった。発酵ノニ液を
摂取することによって、認知症の要因の一つで
ある酸化を抑制し、神経細胞を活性化させる可
能性が示唆される。そのため、発酵ノニは認知
症の予防・改善に効果があると期待できる。
今後、細胞レベルでの抗酸化能を評価するた
めに、発酵ノニ液を添加した神経細胞に H2O2
で酸化ストレスを与え、細胞生存率を確認し、
酸化ストレス抑制能を評価することで、ノニの
有用性評価の信頼性を高める。
本研究に使用した発酵ノニ液は、金秀バイオ
株式会社に供与を受けたものである(多良間ノ
。
ニ 超熟発酵ストレート)
お問い合わせ先
氏名:平山 けい(沖縄工業高等専門学校)
E-mail:[email protected]
P-228
ミヤコグサ Al イオン耐性機構に関する研究
(神戸高専専攻科応用化学専攻 1,神戸高専応用化学科2)
○渡邊宏幸 1・下村憲司朗2
キーワード:マメ科植物,ミヤコグサ,Al イオン耐性遺伝子,STOP1,STOP2
1.緒言
酸性土壌は熱帯、温帯の農耕地の 30-40%を
占める土壌である。この土壌では土壌中の Al
がイオンとして溶出し、植物根の伸長を阻害す
るため、有効な作物生産が期待できない。
しかし、シロイヌナズナやコムギなどからは
Al イオンの毒性を抑制する幾つかの機構が確
認されており、これらの機構の発現に関与する
遺伝として ALMT1(aluminum activated malate
transporter)遺伝子と MATE(multidrug and toxic
compound extrusion) 遺 伝 子 、 ALS3(aluminum
sensitive)遺伝子が確認されている。また、転写
因子の STOP1(Sensitive to proton)と STOP2 が前
述した Al イオン耐性遺伝子の発現量を調節す
る研究報告もある。
シロイヌナズナやコムギでは Al イオン耐性
機構の研究が進んでいるが、重要な食糧源とな
るマメ科植物では Al イオン耐性機構の解明が
ほとんど進んでいない。そこで本研究室では、
マメ科のモデル植物であるミヤコグサを用い
てマメ科植物の Al イオン耐性機構の解明を進
めてきた。
これまでの研究結果より、マメ科のモデル植
物であるミヤコグサからシロイヌナズナの
STOP1(以降 AtSTOP1)とアミノ酸配列が類似
した LjSTOP1 が確認されている。更に、この
アミノ酸配列に対して比較解析を行った結果、
LjSTOP1 が AtSTOP1 と 53.2%の相同性を示し、
ダイズの STOP1 と 83.9%の相同性を示すこと
が確認できた。更に、LjSTOP1 が AtSTOP1 と
同じ DNA 結合タンパク質の領域をアミノ配列
中に持つことが確認できた。これらの解析結果
より、LjSTOP1 がミヤコグサの Al イオン耐性
機構に関与することが予想できた。しかし、比
較解析による予想であるため、LjSTOP1 の機能
はまだ明らかになっていない。そこで本研究で
は、LjSTOP1 の機能解析を行った。機能解析で
は LjSTOP1 の発現量を変動させたミヤコグサ
遺伝子組換え個体が必要になるため、まず遺伝
子組換え個体の作製に着手した。また、STOP1
と共に Al イオン耐性機構に関わる STOP2 の類
似遺伝子がミヤコグサにおいて確認されてい
ないため、ミヤコグサゲノムデータベースを用
いて検索を行った。更に、検索対象の遺伝子の
機能を予測するため、アミノ酸配列の比較解析
も行った。
2.結果
LjSTOP1 の発現を促進する遺伝子構造物:セ
ンスコンストラクトと発現を抑制する遺伝子
構造物:アンチセンスコンストラクトが完成し
た。これらをアグロバクテリウムを介してミヤ
コグサ胚軸に導入し、形質転換を行った。形質
転換後、ミヤコグサ胚軸を培養し、個体再生を
行った。これまで行ってきた操作により、個体
再生が完了したミヤコグサを 28 個体獲得した。
また、個体再生後のミヤコグサのうち、センス
コンストラクトを導入した個体 1 個体とアン
チセンスコンストラクトを導入した個体 1 個
体において遺伝子導入を PCR によって確認で
きた。
また、シロイヌナズナの STOP2 アミノ酸配
列(以降 AtSTOP2)を用いてミヤコグサゲノム
データベース検索を行った結果、配列が類似し
たアミノ酸配列および塩基配列が確認された。
確認された遺伝子を LjSTOP2 とし、そこから
予測されたアミノ酸配列と既知の STOP2 アミ
ノ酸配列に対して系統樹解析を行った。結果、
LjSTOP2 がマメ科植物の STOP2 でグループを
形成することが確認できた。また、LjSTOP2
と AtSTOP2 では 56%、LjSTOP2 とダイズの
STOP2 では 67%の相同性を示した。更に、
LjSTOP2 が AtSTOP2 と共通した DNA結合 Zinc
フィンガードメインを持つことが確認できた。
3.展望
比較解析により、LjSTOP2 が AtSTOP2 と
高い相同性を示し、AtSTOP2 と同じ DNA 結
合 Zinc フィンガードメインを持つことが確認
できた。今後は LjSTOP2 に対して機能解析を
行い、その機能及びミヤコグサ Al イオン耐性
機構への関与を解明する。
LjSTOP1 の機能解析では、アンチセンス及
びセンスコンストラクト導入遺伝子組換え個
体の作製が完了した。今後は、遺伝子組換え個
体から種子を採取し、Al イオン存在下で育成
する。育成したミヤコグサの根の伸長を比較す
ることで、LjSTOP1 の機能を明らかにする。
お問い合わせ先
氏名:下村憲司朗
E-mail:[email protected]
P-229
南極産地衣 Umbilicaria aprina 及び Usnea sphacelata
共生藻における rRNA コード領域並びに rbcL 領域の遺伝学的解析
(久留米高専 1,国立極地研2)
○手柴まり子 1・井村智 2・中嶌裕之 1
キーワード:南極産地衣,共生藻,rRNA,rbcL
1.緒言
地衣類は糸状菌である地衣菌と緑藻類やシ
アノバクテリア等共生藻との複合生物である。
本研究室では、先行研究において 2004 年に
採取した南極産地衣 Umbilicaria aprina 及び
Usnea sphacelata の地衣菌について rRNA コー
ド領域の遺伝学的解析による系統分類を行っ
た。そこで、本研究では両者共生藻の rRNA コ
ード領域並びに葉緑体遺伝子である rbcL 領域
の塩基配列解析を行うことにした。
2.実験
Umbilicaria aprina については、2004 年に
ラングホブデ上釜池で採取した地衣体から分
離培養して得た藻コロニーを供試共生藻とし
て用いた 1)。一方、Usnea sphacelata は、2004
年にラングホブデ四池谷で採取したものを供
試地衣体として用いた。
DNA は、バグクラッシャー(タイテック社)
で破砕した藻コロニー及び地衣体から、Chelex
法により抽出した。いずれも KOD –Plus- Neo
DNA ポリメラーゼ(TOYOBO 社)を用いて PCR
法により増幅を行った。PCR 反応は、96℃で 5
分間の反応を 1 サイクル行った後、熱変性を
96℃で 1 分間、アニーリングを 55~69℃で 1
分間、伸長反応を 68℃で 2 分間の反応を 26 サ
イクル行った。得られた PCR 産物は、QIAquick
PCR Purification Kit(キアゲン社)を用いて
精製した。精製 DNA は(株)ファスマックに塩
基配列の決定を依頼し、配列データについて
BioEdit 及び GENETYX(株式会社ゼネティック
ス)を用いて解析した。
3.結果及び考察
Umbilicaria aprina 共生藻は、18S rRNA コ
ード領域から ITS2 領域全域にかけて 2,565 bp
の塩基配列を決定した。この中には、18S rRNA
コード領域 1,791 bp、ITS1 領域 333 bp、5.8S
rRNA コード領域 153 bp、ITS2 領域 288 bp を
含んでいた。18S rRNA コード領域と ITS 領域
について系統樹を作成したところ、いずれも
Coccomyxa と近いクレードに属した(図 1)。一
方、Usnea sphacelata は、18S rRNA コード領
域から 5.8S rRNA コード領域にかけて 848 bp
の塩基配列を決定した。この中には、18S rRNA
コード領域 509 bp、ITS1 領域 280 bp、5.8S rRNA
コード領域 59 bp を含んでいた。ITS1 領域に
ついて系統樹を作成したところ、Trebouxia と
同じクレードに属した。
図 1 Umbilicaria aprina 共生藻の ITS1 領域の系統樹
ま た 、 rbcL 領 域 の 中 流 域 に つ い て 、
Umbilicaria aprina で 336 bp 、 Usnea
sphacelata で 338 bp の塩基配列を決定した。
同領域について両者を他の藻と比較したとこ
ろ、いずれの共生藻も Trebouxia 5 種とは 92
~98 %の相同性を示したのに対し、Coccomyxa
5 種 と は 81 ~ 84 % に と ど ま っ た 。 ま た 、
Chlamydomonas 5 種との相同性は 82~86 %、
Chlorella 5 種とのそれは 81~87 %であった。
4.結言
Usnea sphacelata 共生藻は、ITS1 領域の系
統樹解析と rbcL 領域の塩基配列解析により
Trebouxia と近縁種であることが示唆された。
一方、Umbilicaria aprina は、18S rRNA コー
ド 領 域 及 び ITS 領 域 の 系 統 樹 解 析 で は
Coccomyxa と近縁種であったのに対し、rbcL
領域の塩基配列解析では Trebouoxia と高い相
同性を示した。
5.参考文献
1)三上茉実(2014),久留米高専 2014 年度卒
業論文
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P-230
アルミニウム電極を利用した
タンパク質センサーの作製
(長岡技大生物機能工学専攻)
○神戸芳樹・近藤みずき・桑原敬司・下村雅人
キーワード:アルミニウム電極,電極修飾,静電容量,バイオセンサー
3. 結果と考察
Fig. 2 は Al 電極および Al/HMDS の緩衝液中
における容量の経時変化を示している。Al 電
極に見られる容量の増加は,酸化の進行が電極
表面を粗面化することによる表面積の増加に
由来する。Al/HMDS では継時的な容量の増加
は見られず,HMDS をあらかじめ Al 表面の活
性部位と反応させることで,液中での酸化反応
の進行を抑制できたといえる。
Fig. 3 に Al/HMDS を用いて BSA の検出を検
討した結果を示した。BSA を含む溶液に測定
溶液を交換すると,静電容量の値は 50 nF 程度
増加した。この増加は BSA が電極表面に疎に
吸着することで,容量成分が並列に追加された
ことに起因すると考えられる。
BSA
Al
Al/HMDS Al/HMDS/BSA
Fig. 1. Configuration of the working electrode.
80
Buffer
Buffer
60
∆C (nF)
2. 実験
Al 電極は 0.1 M NaOH 溶液に浸漬し自然酸
化膜を除去した後,蒸留水およびエタノールで
の洗浄を行い,空気中,室温で乾燥させた。表
面の修飾は乾燥させた電極をヘキサメチルジ
シラザン(HMDS)に 30 秒間浸漬した後,乾
燥および洗浄することで行った。インピーダン
ス分光測定は,同一の修飾を施した電極(Fig.
1)を両極に用いて二電極系で行った。測定溶
液には 50 mM Tris-HCl 緩衝液(pH 8.0)および
0.5 mg/ml の BSA を含む同緩衝液を用いた。測
定条件は電圧 0 V,振幅 20 mV,周波数 100 mHz
から 8 MHz とした。測定は緩衝液中で 5 分ご
とに 3 回行った後,溶液を緩衝液,もしくは
BSA 溶液に入れ替えて 3 回,計 6 回の 25 分間
行った。測定は Fig. 1 に示した 3 種類の電極で
行った。容量は,測定により得たインピーダン
スの値から算出した。
HMDS
40
Al electrode
20
0
Al/HMDS
-20
10
15
20
25
30
Time (min)
Fig. 2. The comparsion of capacitance changes
measured with Al electrode and Al/HMDS in 50
mM Tris-HCl buffer solution (pH 8.0).
0
80
5
Buffer
BSA
60
∆C (nF)
1. 緒言
アルミニウム(Al)は金や白金などの電極材
料と比較して安価である。しかしながら,水溶
液中での安定性の低さからバイオセンサーへ
の応用例は少ない。本研究では, Al 電極の水
溶液中での安定性の改善およびその静電容量
式バイオセンサーへの応用を目指している。本
報告では,表面修飾が Al 電極の安定性に及ぼ
す効果,およびバイオセンシングのモデル物質
としてウシ血清アルブミン(BSA)の検出を試
み,得られた知見について述べる。
40
20
0
-20
0
5
10
15
20
25
30
Time (min)
Fig. 3. Capacitive measurement during the BSA
adsorption using the Al/HMDS electrode.
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氏名:桑原敬司
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P-231
固定化カタラーゼを用いた酸素ガスの生成
(長岡技大生物機能工学専攻)
○島元貴広・近藤みずき・桑原敬司・下村雅人
キーワード:酵素固定,表面修飾,カタラーゼ,ガス生産
1.緒言
化学エネルギーを我々が利用するには、他の
エネルギーに変換する必要がある。本研究では、
化学エネルギーの機械エネルギーへの直接変
換の足掛かりとして、カタラーゼ(Cat)の酵素
反応により生成される酸素ガスを用いたエア
エンジンの駆動に取り組んでいる。本報告では、
担体へのカタラーゼの固定化およびそれらを
用いた酸素ガスの生産について述べる。
2.実験
ガラスビーズへの Cat の固定化は以下の手
順で行った。まず、3-アミノプロピルトリメト
キシシランのメタノール溶液へガラスビーズ
を浸漬することで、ガラスビーズ表面へアミノ
基を導入した。続いて、グルタルアルデヒド水
溶液へ浸漬することで、ガラスビーズ表面のア
ミノ基とシッフ塩基を形成させ、アルデヒド基
をガラスビーズ表面へ導入した。さらに、Cat
溶液に浸漬することで、Cat のアミノ基とシッ
フ 塩 基 を 形 成 し 、 Cat の 固 定 化 を 行 っ た
(Scheme 1)。酸素ガス生成量は、基質となる
過酸化水素との反応前後の反応全体重量変化
を電子天秤を用いて測定し、算出した。Cat 固
定化量については、Cat 固定化溶液の 280 nm
における吸光度の減少から算出した。
3.結果と考察
基質となる過酸化水素を含む水溶液への遊
離 Cat または固定化 Cat の添加にともない、
反応槽の重量が減少した。これは、酵素反応に
より生じた酸素が、反応槽外へ放出されたため
である。この重量減少量から、放出された酸素
ガスの体積を算出した(Fig.1)。1 M 過酸化水
素溶液中におけるの遊離 Cat(Fig.1 (A))の酵
素 1 g あたりの酸素ガス生成量は 2000 秒で
544 L/g であった。また、直径 0.5 mm(Fig.1
(B))および 5 mm(Fig.1 (C))のガラスビーズ
に Cat を固定化したものを用いた場合は、それ
ぞれ 60 L/g および 49 L/g であった。つまり、
酸素ガス生成量は遊離 Cat と固定化 Cat で約
10 倍の差があった。これは、酵素固定による
酵素活性の低下および基質の拡散速度の制限
が原因であると考える。
(A)
(B)
(C)
Fig.1 Amount of O2 gas produced by free
catalase (A) and catalase immobilized on glass
beads having a diameter of 0.5 mm (B) and 5
mm (C) in 0.1 M phosphate buffer solution
(pH 7.0) containing 1 M hydrogen peroxide.
Scheme 1 Catalase immobilization step.
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氏名:桑原敬司
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P-232
ポリドーパミンにより修飾した
磁性粒子へのタンパク質の固定
(長岡技大生物機能工学専攻)
○佐藤直登・近藤みずき・桑原敬司・下村雅人
キーワード:ポリドーパミン,磁性粒子,表面修飾,タンパク質固定
2. 実験
Fe3O4 表面の PDA による修飾は,50 mM
Tris-HCl 緩衝液(pH 8.5、Tris Buffer)200 mL
に Fe3O4 10 g,ドーパミン塩酸塩 200 mg を加
え,撹拌することで行った(Scheme 1,2)
。反
応時間は 1~12 時間の範囲で行った。作製した
PDA 修飾 Fe3O4(PDA-Fe3O4)は Tris Buffer で
洗浄した。牛血清アルブミン(BSA)の固定化
は、1.5 mg/mL の BSA を含む Tris Buffer 5 mL
に,PDA-Fe3O4 0.2 g を加え 24 時間転倒混和す
ることで行った。PDA や BSA による修飾は,
ダイヤモンドクリスタルを用いた ATR 法によ
って確認した。
3. 結果と考察
Fe3O4 , PDA-Fe3O4 お よ び BSA 固 定 化
PDA-Fe3O4(BSA-PDA-Fe3O4)の ATR スペク
トルを Fig. 1 に示した。Fe3O4 のスペクトルに
は目立ったピークは見られなかった。一方で,
PDA-Fe3O4 では,2200 cm-1 付近にインドール
環に由来する N-H が確認された。
したがって,
Fe3O4 表面を PDA により修飾可能であること
を確認した。また,BSA-PDA-Fe3O4 では新た
に 1000 cm-1 付近および 1500~1600 cm-1 付近に
ピークが観察された。1000 cm-1 付近はケトン
やエステル,1500~1600 cm-1 付近は C=O,アミ
ノ基の N-H などに起因すると考えられる。こ
れらの官能基は BSA 中のアミノ酸由来である
と考えられることから,PDA を足場として
Fe3O4 表面に BSA を固定可能であることが確
認できた。
Scheme 1 Schematic illustration of PDA-Fe3O4
preparation.
Scheme 2 Preparation of PDA.
Fe O
3
Transmittance
1. 緒言
磁性粒子(Fe3O4)はドラッグデリバリーの
キャリアーなどの用途が見出されており、機能
性物資の固定化を目的として、様々な表面修飾
法が検討されている。また、ポリドーパミン
(PDA)は吸着タンパク質から着想を得た物質
であり、多くの材料の表面を修飾可能な物質で
あることが知られている。そこで本研究では、
Fe3O4 表面へのタンパク質の固定化の足場とし
て PDA に着目し、PDA による Fe3O4 の表面の
修飾とそのタンパク質固定化能について検討
した。
4
PDA-Fe O
3
4
BSA-PDA-Fe O
3
2400
2000
1600
1200
4
800
-1
Wavenumber [cm ]
Fig. 1 ATR spectra of Fe3O4, PDA-Fe3O4, and
BSA-PDA-Fe3O4.
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氏名:桑原敬司
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P-233
ポリチオフェン誘導体膜の電解形成条件と
酵素電極の性能の関係
(⻑岡技術科学大学)
○桑原敬司・吉田貴郎・近藤みずき・下村雅人
キーワード:酵素電極,ポリチオフェン,電解重合,グルコースオキシダーゼ
3. 結果・考察
検討した 16 種類の溶媒のうち,PTh 膜を形成
可能であったものは 4 種類であった。なかでも,
アセトニトリルを使用した場合に最も大きな重
合電流が得られた(Fig. 2)
。
アセトニトリルを重合溶媒として作製した
PTh/GOx を用いて重合時の電圧およびモノマー
濃度の酵素触媒電流への影響を検討した。その結
果,重合電圧は 3.0 V,モノマー濃度は 0.50 M で
膜を作製した場合に最も大きな酵素触媒電流が
得られた(Fig. 3)。酵素触媒電流は,電気化学イ
ンピーダンス測定および酵素活性測定により得
られる,電荷移動抵抗が小さく,活性が高い電極
ほど大きい傾向があった。走査型電子顕微鏡観察
の結果を考慮すると,これらをもたらす要因は重
GOx immobilization
0.80 C/cm2
1h
PTh
GOx
PTh/GOx
2
Current density [mA/cm ]
Fig. 1 Schematic of enzyme electrode preparation.
40
Acetonitrile
30
Acetone
Nitromethane
20
Propylene carbonate
10
0
0
20
40
60
Time [s]
80
Fig. 2 Polymerization currents obtained in different
solvents containing monomers (0.50 M) at 2.2 V.
2
A
B
2
2
j / mA/cm
2
2. 実験
酵素固定化担体として利用した PTh 膜は電解
重合法により金電極上に作製した。重合には,モ
ノマーとして 3-メチルチオフェンとチオフェン
-3-酢酸,支持電解質として過塩素酸テトラエチ
ルアンモニウム(0.10 M)を用いた。溶媒には水
および 15 種類の有機溶媒を用いた。印加電圧は
+1.4 から+3.0 V vs. SCE の範囲で検討した。モノ
マー濃度は 0.05 M から 5.0 M の範囲で変化させ
た。重合はいずれの条件の場合も 0.80 C/cm2 の
電荷が流れるまで行った。酵素固定は,2 mg/mL
の GOx および縮合剤を含む溶液に重合膜を電極
ごと 1 時間浸漬することにより行った(Fig. 1)
。
作製した電極の評価は電気化学的および生化学
的な手法により行った。酵素触媒電流は 1 mM の
p-ベンゾキノンおよび 0.10 M のグルコースを含
む 0.10 M リン酸緩衝液(pH 7.0)中でサイクリッ
クボルタンメトリにより測定した。
Electrochemical
polymerization
Au
j / mA/cm
1.緒言
ポリチオフェン誘導体(PTh)膜を酵素の固定
化担体として用いた酵素電極のバイオ燃料電池
やバイオセンサーへの応用が報告されている。し
かし,膜の物性が電極の性能に与える影響は明ら
かになっていない。そこで,さまざまな電解形成
条件で膜を作製し,それらを用いて作製したグル
コースオキシダーゼ固定化電極(PTh/GOx)の性
能と電解形成条件の関係を調べた。
1
0
1
2
3
E / V vs. SCE
1
0
0 1 2 3 4 5 6
c/M
Fig. 3 Influence of (A) polymerization potential and
(B) monomer concentration on glucose oxidation
current.
合条件により決定づけられる,PTh 膜の電気化学
的に活性な表面積の大きさである。
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