やさしい「財務諸表」の見方(9)

コンサルティング 基礎講座
─ 指標について(1)~収益性に関するもの ─ 山田 貴也
小谷野公認会計士事務所
税理士
【最初に】
[やまだ・たかや]医療業を専門とする会計事務所、税理士講座の専任
講師、SPCを専門とする会計事務所を経て、現在に至る。
「損益計算書」には、
「売上総利益」
「営業利益」
「経
前回までは、会社が作成する「財務諸表」について
常利益」
「税引前当期純利益」
「当期純利益」といった
の確認でしたが、今回からは、その会社がどのような
様々な利益がありますが、
「資本利益率」を算出する
状態にあるかの判断基準となる各種の「指標」につい
上で使用する「利益」は、
「経常利益」が一般的とな
て確認していきます。今回は、その「指標」のうち、
ります。また、算式中の「資本」は、
「総資本」であり、
その会社がどの位の利益をあげているかを表す指標で
「負債の部」の金額と「純資産の部」の金額の合計額
ある「収益性」に関するものについての確認となりま
となります。
「貸借対照表」の「借方」の金額の合計
す。
「収益性」に関する指標には様々なものがありま
額と「貸方」の金額の合計額は一致するため、
「総資本」
すが、代表的な指標である「資本利益率」
「総資本経
の金額は「資産の部」の金額と同額となります。
常利益率」
「売上高経常利益率」
「総資本回転率」
「自
己資本利益率」を中心に確認していきます。
貸借対照表
資産の部
負債の部
「他人資本」
【
「資本利益率」について】
純資産の部
「自己資本」
「資本利益率」とは、資本に占める利益の割合であり、
「Return on investment」の頭文字を取って「ROI」と
呼ばれることもあります。
「資本利益率」は、下記の
算式により算出されます。
利益
×100(%)
資本
この「資本利益率」は、次のように細分化されます。
「貸借対照表」の「借方」は資金の使途、
「貸方」は
資金の調達方法を表しますが、
「負債の部」には、借
入金等の他の者から調達した資金が記載されるため
「他人資本」の金額、
「純資産の部」には、資本金等の
自社で調達した資金が記載されるため「自己資本」の
金額が記載されます。
「資本利益率」は、会社が調達
算式中の「売上高利益率」は、利益の幅を表す指標で
した全ての資金が会社の行う経営活動によってどの位
あり、この割合が高いほど、利益の幅が広いとされて
の利益を生み出しているかを表す指標となりますので、
おります。一方の「資本回転率」は、資本の利用頻度
を表す指標であり、この割合が高いほど、資本の運用
効率が良いとされております。
「総資本」の金額を使用します。
「資本利益率」は、高ければ高いほど良いとされて
おります。
利益
売上高
(売上高利益率)×
(資本回転率)
売上高
資本
2015. 5 ◆ 不動産フォーラム21
19
Consulting Basic Lecture
やさしい「財務諸表」の見方(9)