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民法予習編
第 19 回目
レジュメ
・債権者による代位、債権者による取消
・債権者による代位
債権β
債務者B
第三債務者C
債権α
債権者A
Aに対する債務者Bが債権を持っているにもかかわらず、その債権を行使しない
このような場合、Bの代わりに、Aが債権βを行使できる
=債権者代位権
債権β(被代位債権)
債務者B
第三債務者
権利なら被代位権利
債権α
(被保全債権)
債権者A
・民法 423 条「債権者は、
自己の債権を保全するため、
債務者に属する権利を行使することができる。
ただし、債務者の一身に専属する権利は、この限りでない。
」
「債権者は、自己の債権を保全するため」
⇒被保全債権
どんな場合に自己の債権を保全しないといけないのか?
債務者Bがお金もちであるならば、
Aによる債権βの行使を認める必要がない
⇒債務者Bが無資力であること
「債務者に属する権利」
⇒被代位債権(被代位権利)
⇒債務者Bが無資力ならば、債権者Aは、債務者Bに属する権利を、
債務者Bに代わって行使することができる
・民法 423 条 1 項但書「ただし、債務者の一身に専属する権利は、この限りでない。
」
⇒債務者の一身専属権については、債権者は代位行使ができない
・一身専属権とは、権利を行使するかどうかを、その人の意思に
任せるべきもの
BがCに慰謝料請求の意思を有していないにもかかわらず、
AがBの代わりに、慰謝料請求権を行使することはできない。
ただ、BがCに慰謝料請求の意思表示をし、それにより、B
C間で具体的に一定額についての請求権が確定した場合は、
通常の金銭債権と同じと言え、代位行使が認められる
・民法 423 条 2 項「債権者は、その債権の期限が到来しない間は、
裁判上の代位によらなければ、前項の権利を行使することができない。
」
⇒・期限の未到来の時に、債権者代位権を行使する場合は、
裁判上の代位によらなければならない
・期限が到来しているならば、裁判上の代位によらなくても、
債権者代位権を行使できる
2 項但書「ただし、保存行為は、この限りでない。
」
⇒保存行為とは何か?
Ex.債権βが時効によって消滅しそうな場合に、
時効を中断すること
・既にBが債権βを行使しているのであれば、Aによる代位行使を認めるべきではない
・債権者代位権はどのような制度なのか?
債権者代位権とは、債務者の責任財産を保全するための制度
⇒債権者代位権を行使できる場面とは、
債務者の責任財産を保全する必要があるのに、債務者がその権利を行使しない場合
・Aによる債権者代位権の行使がなされるのであれば、
Bによる債権の行使は認めるべきではない
↓
Aによる代位行使がなされたことについて、Bが知っている場合に限って、
Bによる債権行使が禁止される
<判例>「債権者が債務者に代位の通知をした場合、もしくは、
債務者が債権者の代位の事実、を知った場合に、
債務者は、もはや、債権を行使できない」
・債権者代位権の行使できる範囲、そして、行使の行方
債権β(200 万円)
債務者B
第三債務者C
債権α
(200 万円) (200 万円)
債権者A
Aは 200 万円の請求ができ、直接CからAに引き渡すように請求できる
ただ、債権者代位権は債務者の責任財産を保全するための制度
Aは 200 万円をBに返す必要があるのか?
⇒相殺の結果として、200 万円を返す必要はなく、
Aは自分の債権について全額回収したことになる
債権β(200 万円)
債務者B
第三債務者C
債権α
(100 万円)
債権者A
Aは自分の持っている債権の範囲内(100 万円)でしか、請求できない
←債権者代位権が、実は債権者のための制度であるという点に着目している
・債権者代位権の転用事例
債権者代位権の転用事例
A
B
C
A
B
C
登記移転請求権
登記移転請求権
BのAに対する登記請求権をCが代位行使する = 債権者代位権の転用
このような転用は認められるか?
この債権者代位権の行使は、完全にCのためであって、Bの責任財産を保全していない
⇒責任財産を保全しないような代位権の行使が認められるか?
民法 423 条「債権者は、自己の債権を保全するため、
債務者に属する権利を行使することができる。」
⇒条文には、どこにも、責任財産を保全するためと書いていない
⇒条文の要件を満たしているならば、債権者代位権の行使が認められる
責任財産の保全の目的がない場合なので、債務者の無資力要件は不要
・債権者取消権(詐害行為取消権)
424 条 1 項本文
「債権者は、
債務者が債権者を害することを知ってした
法律行為の取消しを
裁判所に請求することができる。
」
「債権者を害することを知ってした法律行為」
⇒1.債務者の行った法律行為が客観的に債権者を害する行為であること
→詐害行為
2.詐害行為について、債務者が主観的に、債権者を害する意思を持っていたこと
→詐害意思
3.詐害意思があるためには、詐害行為のなされる前に、
債権者と債務者の間に債権関係があることが求められる
⇔債権者代位権の場合は、被代位債権が先に成立して、
その後に、被保全債権が成立した後でも、代位権の行使が可能
424 条 1 項本文
「債権者は、
債務者が債権者を害することを知って(詐害意思)した
法律行為(詐害行為)の取消しを
裁判所に請求することができる。
」
「裁判所に請求することができる」
⇒必ず裁判所の関与を必要とする
詐害行為
債務者B
受益者C
転得者D
無償譲渡
債権α
(1000 万円)
債権者A
424 条 1 項但書
「ただし、
その行為によって利益を受けた者又は転得者が
その行為又は転得の時において
債権者を害すべき事実を知らなかったときは、
この限りでない。
」
取消請求権を行使するためには、受益者または、転得者が
その法律行為が詐害行為であることを認識していなければならない
・民法 424 条 2 項「前項の規定は、
財産権を目的としない法律行為については、適用しない」
⇒家族法上の行為について、原則として、取消の対象としない
⇒Bの相続放棄という法律行為を、Aは取り消すことはできない
ただし、遺産分割協議の場合に取消権行使の対象となる
遺産分割協議とは何か?
遺産分割される前の相続財産は、まず、相続人全員の共有になる。
そのうえで、遺産分割協議とは、その財産関係について、
新たに財産の帰属先を、確定させるものである
⇒遺産分割協議は、財産権を目的とする法律行為である
⇒新たに財産の帰属先を確定するもので、通常の取引と同様に考えることができる
・民法 425 条「前条の規定による取消しは、
すべての債権者の利益のためにその効力を生ずる。
」
⇒取消権は、総債権者のために行なわなければならない
⇒責任財産の保全のために制度である
⇒転用は認められない
・取消権の使われ方
424 条 1 項本文
「債権者は、
債務者が債権者を害することを知って(詐害意思)した
法律行為(詐害行為)の取消しを
裁判所に請求することができる。
」
法律行為の取消を請求できるとは?
取り消すだけなのか?取り消したあとは、どうなるのか?
⇒詐害行為を取り消したうえで、出ていった財産を取り戻すことができる
詐害行為
債務者B
受益者C
無償譲渡
債権α
(1000 万円)
債権者A
転得者D
陶磁器がCの手元にあるならば、Cを相手に
Dの手元にあるならば、Dを相手に、裁判上、請求することになる
実際に詐害行為をしたBを相手に裁判するわけではない
では、Dの手元にある場合で、Cを相手に裁判した場合は?
CがDに陶磁器を売っているのであれば、代金を受け取っているはず
その代金を取り戻すことができる
424 条 1 項ただし書き
「ただし、
その行為によって利益を受けた者又は転得者が
その行為又は転得の時において
債権者を害すべき事実を知らなかったときは、
この限りでない。
」
(レジュメここまで)