平成 27 年度 山口県臨床検査技師会 精度管理調査 病理細胞部門(病理検査領域) 解説 【設問 1】解答:3.しわ 写真上に 2 箇所アーティファクトが認められます。その部位では組織が折れ曲がり,重な っている様子が確認でき,薄切時における切片のしわと判断出来ます。 【設問 2】解答:4.コンタミネーション 写真 A,B 共に,中央付近にエオジン好性の無構造物質が認められます。明らかに大腸由来 の細胞ではなく,また,組織切片とピントも異なっており,標本上へのコンタミネーショ ンと判断できると思います。今回は,薄切時における皮膚の扁平上皮のコンタミネーショ ンを出題しています。 【設問 3】解答:1.食道+胃 写真中央部より右側は、白色の扁平上皮細胞に覆われた食道です。中央部より左側は、 胃の部分切除標本です。 【設問 4】解答:5.偏光顕微鏡下ではアミロイドは黄色偏光を呈する Congo Red 染色はアミロイドを特異的に染め分ける特殊染色の一つで,同様の目的でダイ レクト・ファースト・スカーレット(DFS)染色が行われることもあります。 Congo Red 染色では,アミロイドは橙赤色に染色され,偏光顕微鏡下では緑色偏光を呈す ることが特徴です。 媒染液には,塩化ナトリウムを溶かしたエタノール溶液に,ピリジンもしくは水酸化ナト リウムを加えたものを使用します。試薬は結晶が析出しやすく,使用前に濾過を行うこと が望ましいです。 1 【設問 5】解答:1.トルイジン青染色 矢印部は、気管支軟骨でメタクロマジーにより赤紫色を呈しています。 トルイジン青染色では、染色液の pH を変えることで酸性粘液多糖類の大まかな鑑別が可能 です。 レフレルのメチレン青染色は、組織内の抗酸菌以外の細菌を証明する簡便な染色法です。 ベルリン青染色は、3価の鉄イオン(組織中では主にヘモジデリン)の証明、アルシア ン青染色では、酸性粘液多糖類を染め、ビクトリア青染色は、HBs 抗原や弾性線維を 染める染色です。 【設問 6】解答:2.粘膜固有層にとどまる病変(pLPM) 粘膜中央部に粘膜上皮を越えて病変が確認されます。 病変は粘膜筋板には達していないため、粘膜固有層にとどまる病変(pLPM)を選択す ることができます。 【設問 7】解答:4.乳腺(D と E)、甲状腺(A と F)、耳下腺(B と G)、 前立腺(C と H) 乳腺のマクロ像では、一部に皮膚がみられ大部分の脂肪に混じって乳腺組織と思われる白 色の部がみられます。ミクロ像では周囲の脂肪組織とともにコラーゲン線維性組織内に円 柱もしくは立方上皮で裏打ちされた導管がみられます。 甲状腺は、濾胞細胞と濾胞傍細胞で構成され、内腔にはコロイドで満たされています。 耳下腺は小さな導管と顆粒性の漿液細胞(腺房細胞)で構成されています。 前立腺は円柱上皮細胞からなる腺管内に層板状澱粉体が一部みられます。マクロ像では中 心部に尿道と思われる腔がみられます。 【設問 8】解答:3.Desmin 陽性部位である粘膜筋板が茶褐色を呈しています。 選択肢のうち、横紋筋や平滑筋に発現する“Desmin”が正解です。 S-100 ではグリア細胞、シュワン細胞、神経系腫瘍に、Cytokeratin5/6 では重層扁平上 皮細胞や中皮細胞が陽性となります。EMA は上皮系マーカー、Vimentin は間葉系マ ーカーとして用いられます。 2 【設問 9】解答:5.ISH 法の陽性判定基準は HER2/CEP17 比≧2.0 または HER2/CEP17 比<2.0 かつ HER2 遺伝子コピー数の平均が 1 細胞あたり≧6.0 のものである。 2013 年に ASCO/CAP ガイドラインが改訂され、IHC 法,ISH 法ともに検査の判定基準が変 更されました。 FISH 法には、蛍光顕微鏡が必要であり、水溶性封入剤を使用するため、永久保存はできま せん。 SISH 法では光学顕微鏡で判定を行います。 選択肢4では、 “CEP20”ではなく、“CEP17”が正しい表現です。 【設問 10】解答:5.神経侵襲 脈管侵襲の表記は“ly”(リンパ管侵襲)や“v”(静脈侵襲)で、近位(口側)切離端 や遠位(肛門側)切離端はそれぞれ“PM”や“DM”また、垂直断端(粘膜下層断端) は“VM”と表記されます。 3
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