静岡県工業技術情報 No.88(2015) 技術解説 変性剤濃度勾配ゲル電気泳動法 【概要】 変性剤濃度勾配ゲル電気泳動法(DGGE)は、環境中などの微生物群集を解析するために 用いられています。DGGE は、DNA を塩基配列の違い、つまり微生物の種類の違いによって分 離する手法です。遺伝子増幅手法の PCR 法と組み合わせることで微生物群集を解析する手 法を PCR-DGGE 法といいます。従来、微生物群集を解析するためには培養操作が必須でした が、分子生物学的な技術の進歩によって、培養を行わずに微生物の DNA 等を直接解析するこ とが可能になってきました。培養を必要としない微生物の検出は①時間の短縮、②培養の技術 や知識が不要、③培養困難な微生物も検出できる、などの利点があります。DGGE も微生物の DNA を直接解析するため、微生物群集解析の分野で普及が進んでいます。 【手順・原理】 PCR-DGGE 法は①試料中の DNA の抽出、②PCR による DNA の増幅、③電気泳動、の 3 段 階で行います。③の電気泳動では、DGGE の特徴となる DNA 変性剤(尿素とホルムアミド)に濃 度勾配をつけたポリアクリルアミドゲルを用います。この DNA 変性剤濃度の上昇に伴い、2 本鎖 DNA が断片化して解離します。塩基配列の違い(安定性の違い)によって DNA の解離する変性 剤濃度が異なるため、ゲル上での分離が可能になります(図)。 ▲写真 微生物群集解析装置 ▲図 変性剤濃度勾配による DNA の分離 【事例】 PCR-DGGE 法を用いた微生物群集解析の事例を以下に示します。 ・ 発酵食品(味噌や醤油など)中の菌叢評価による品質管理 ・ 土壌中の微生物相の解析による土壌病害の診断 ・ 排水処理施設における活性汚泥中の細菌叢の把握 沼津工業技術支援センターには DGGE を行うための微生物群集解析装置(日本バイオ・ラッ ド ラボラトリーズ㈱ DCode システム)を設置しています(写真)。詳細については、お気軽にお問 い合わせください。 お問い合わせ先 沼津工業技術支援センター バイオ科 電話 055-925-1101 8
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