August 17, 2001 - Sughrue Mion, PLLC

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Akamai 事件における方法クレームの共同侵害をめぐる CAFC 差戻し判決
– 命令または支配の定義の拡張 –
Akamai Technologies, Inc. v. Limelight Networks, Inc. 2009-1372 (8/13/2015)
米国特許弁護士
岸本芳也
2015 年 8 月 13 日、連邦巡回区控訴裁判所(CAFC)大法廷は全員一致で、被告は全
ての方法ステップを実施していないが、被告の顧客による最終ステップの実施は被告に帰属
すると認定し、方法クレームの直接侵害が立証されたと判示した。
CAFC は、他の行為者が被告の命令または支配(direction or control)に従っている場
合に帰属(attribution)が認められ、それは本人‐代理関係、契約の取決め、共同事業に限
定されないと述べた。CAFC によれば、侵害被疑者が行為への参加や利益の享受の条件とし
て特許方法の一以上のステップを実施させ、当該実施の形態やその時期を設定した場合にも、
米国特許法第 271 条(a)の責任が立証される。これにより、CAFC は、Limelight 社がウェブコ
ンテンツの配信方法をクレームとする Akamai 社の特許を直接侵害していないとした地裁判
決を覆した。
1.直接侵害と間接侵害
米国特許法第 271 条(a)には「直接侵害」について規定されている。第 271 条(a)には、
「本法に別段の定めがある場合を除き、特許の存続期間中に権限なく特許発明を米国におい
て生産し、使用し、販売の申出をし、もしくは販売する者、または特許発明を米国に輸入す
る者は、特許を侵害する。」と規定されている。直接侵害では、被告による侵害の意図を立
証する必要はない。
間接侵害(米国特許法第 271 条(b)の誘発侵害及び第 271 条(c)の寄与侵害)は、いず
れかの当事者が直接侵害行為の全体に直接責任があるとの認定を必要条件とする。間接侵害
では、被告の意図を立証する必要がある。
2.事件の経緯
(1) 地方裁判所
特許権者 Akamai は米国特許第 6,108,703 号を所有し、当該特許は、ゴーストサーバ
上のコンテンツ・プロバイダのウェブページの部分を格納し、格納された部分に関するウェ
ブブラウザリクエストをゴーストサーバに転送するためにウェブページを修正して、それに
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よって効率的にウェブページにアクセスする、インターネットコンテンツを配信する方法に
関する。
Limelight は、コンテンツ・プロバイダのウェブページの部分を格納する類似のサー
バのプライベートネットワークへのアクセスを可能にするが、顧客に対して自身のウェブペ
ージを必要に応じて修正してブラウザリクエストを転送するように指示する。当該特許クレ
ームの方法ステップには、画像要素に適切なタグ付けをすることをコンテンツ・プロバイダ
に要求するステップが含まれる。Limelight のプロセスは区別可能であり、自らタグ付けを
行うというよりむしろ、顧客にタグ付けを行うための情報を提供していた。Limelight は、
顧客が実施する「タグ付け」ステップを除き、全てのステップを実施していた。
地裁は、Limelight が顧客のタグ付け行為を「命令または支配(direct or control)」し
ていないことから、Akamai による特許法第 271 条(a)に基づく直接侵害の訴えを棄却した 1。
(2) CAFC による原判決
CAFC は原判決において、被告 Limelight がその顧客に対し、当事者間に代理人関係
がある場合、または契約上問題のステップを実施する義務を課していた場合にのみ共同侵害
が成立すると述べ、被告の直接侵害責任はないとの判断を下した。
(3) CAFC による再審判決
CAFC は大法廷判決において、Limelight も顧客も全ての方法ステップを実施してい
ないにもかかわらず、BMC Resources, Inc. v. Paymentech, L.P. (誘発侵害が認定されるために
は、一当事者が侵害を構成する全ての行為を行うことを要するとの判決)を破棄した。
CAFC 大法廷は、「被告が方法特許を構成するいくつかのステップを実施し、他人
に残余のステップを実施するよう奨励・誘発した場合には第 271 条(b)の誘発侵害となり、
たとえ誰も直接侵害者とはならない場合でも誘発侵害が成立する。…直接侵害があったとい
う証拠を求めることは、単一の当事者が直接侵害者としての責任があるとの証拠を求めるこ
ととは同じでない。」と判示した。
このように、CAFC は再審において、第 271 条(b)の共同侵害にかかる問題を直接侵
害ではなく、誘発侵害の問題として検討した。
(4) 最高裁判決
最高裁は、「対象特許の方法クレームは複数のステップを含んでいる。当裁判所の
判例法に従い、全てのステップが実施されない限り特許は侵害されない。…[本件において
1
地裁裁判において、Limelight は Akamai の’703 特許を侵害しているとの陪審評決を覆し、非侵害の
判決を下した。
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は]単純に対象特許方法は侵害されていない…なぜなら、全てのステップの実施が単一の者
に帰属してないからである」と判示し、CAFC へ差し戻した(Limelight Networks v. Akamai
Technologies, 134 S.Ct. 2111, 2117 (2014))。
最高裁によると、方法クレームの全てのステップが単一の事業体により実施される
か、または単一の事業体に帰属する場合でない限り、「Single Entity Rule」に従い直接侵害
とはならない。さらに、間接侵害(米国特許法第 271 条(b)の誘発侵害及び第 271 条(c)の寄
与侵害)は、いずれかの当事者が直接侵害行為の全体に直接責任があるとの認定を必要条件
とする。
本件において、米国特許第 6,108,703 号の方法クレーム 17 には「ページ内の組み込
みオブジェクトにタグ付けをし…」というステップがある。Limelight は顧客にタグ付けに
関する「指導を行い技術的支援を提供する」が、Limelight がサーバに格納させるために構
成要素にタグ付けをするステップを実施しない点について争いはない。過半数意見において、
「Limelight の顧客が方法クレームのいずれかのステップを Limelight の代理として実施した
り、Limelight のために代行することを示すものはない。これとは反対に、Limelight の顧客
は Limelight のコンテンツ配信網(CDN)の利用を命令し支配する。」と述べられており、
その結果、「Single Entity Rule」に従い、第 271 条(a)の直接侵害はなく、第 271 条(b)の誘発
侵害もないと結論付けられた。
以上、最高裁は第 271 条(a)の直接侵害責任を判断せずに、間接侵害の前提としての
直接侵害の要件が充足されることはないと判示し、CAFC による再審判決を破棄、差戻しと
した。
3.CAFC による差戻し判決(2015 年 8 月 13 日)
CAFC は差戻し審において、全ての方法ステップが単一の事業体により実施された
という証拠によって直接侵害が立証されたのではないため、誘発侵害の認定を行わなかった。
CAFC は、第 271 条(a)下での方法クレームの直接侵害責任は、クレームの全てのス
テップが、本人‐代理関係、契約関係、共同事業関係などにある『単一の事業体により実施
されるか、または単一の事業体に帰属する場合』に限定されず、「他人による方法ステップ
の実施が単一の行為者に帰属することとなる別の事実の筋書きもあり得る」と述べた。例え
ば、侵害被疑者が行為への参加や利益の享受の条件として特許方法の一以上のステップを実
施させ、当該実施の形態やその時期を設定した場合にも、米国特許法第 271 条(a)の責任が
立証される。このように、CAFC は本差戻し判決において、命令または支配(direct or
control)についての定義の拡張を行った。
CAFC は判決文において、Akamai の方法クレームに含まれる「タグ付けステップ」
を実施することを要求された顧客の責任を示す顧客契約を指摘し、以下のように述べている。
「Limelight の顧客が Limelight 製品の使用を希望する場合、顧客はコンテンツのタグ付け及
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びサービスを行わなければならない。そのため、Limelight が顧客によるコンテンツ配信網
の使用の条件として顧客によるタグ付けステップ及びサービス提供ステップを実施させたこ
とが実質的証拠により示されている。… Limelight の顧客は単に、Limelight の指示を受けて
自身のために独立して行為したのではない。むしろ、Limelight は、顧客による実施の形態
や時期を設定し、顧客は、方法ステップの実施によりサービスを利用できるにすぎない。」
本件差戻し審において、法律問題としての地裁の非侵害判決は破棄され、陪審によ
る侵害の評決は支持された。本件は、控訴審における残りの様々な争点を解決するため、
Appellate Panel に戻された。
以上
C 2015 SUGHRUE MION GAIKOKUHO-JIMU-BENGOSHI JIMUSHO
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