認知特性への気づきを促す教材・教具の提案方法に関する検討 一特別支援学校のセンター的役割としてできること一 専攻 特別支援教育学 コース 特別支援教育コーディネーターコース 学籍番号M071191 氏名 門積敦子 1 同題と日的 「特別支援教育」の対象のうち、行動面・社 会性に課題があるAD/HDや広汎性発達障 匪……1コ 通常学設の中で個に応じた教材・教具を 提案するには 目的) 害は、周囲への影響が大きいため対応が急がれ てきた。しかし、肝捉えにくい障害』(海津、2003) と言われるし D死への支援は、進んでいない。 それは、LD児の学力困難が「認知発達に関す る部分的な遅れや偏りから生じている。」(海津、 2003)ために、つまずきの本質が見極めにくい と考えられる。さらに、認知特性に合わせたL D児の「特別なわかり方」(別府ら2003)には、 それに合わせたr特別な教え方」が必要となる。 しかし、玉木ら(2007〕の研究によると「個別に 対して行われる、あるいは多くの準備時間やカ リキュラムの変更を必要とする支援の工夫は 実施が困難」という担任の実情がある。 L D児の特別なわかり方に対しては、通常の 指導との隙間を埋める教材・教具・教示が、大 きな意味を持つと思われる。そこで、『個の二 一ズ』を見極め『個に応じた指導』を専門とす る特別支援学校のコーディネーターが、通常学 級担任に対して、『個の二一ズ』を見極める視 点とそれに応じた支援(教材、教具、教示)の 提案方法を検討する。適切な提案は、通常学級 担任の特別支援教育への意識を向上させ、児童 一人ひとりの認知特性への気づきを引き出す ことができるのではないかと考えられる。特別 支援学校の巡回相談のあり方の一考察を行う。 ①児童の認知特性への気づきを引き出すための 教材・教具活用に関するコンサルテーション。 ②教材・教具活用を研究授業において提案する。 ③B小学校教員アンケートから担任の教材・教具 に対する意識・実践度を調査する。 期間)X年4月∼11月 対象)A市立B小学校3年生3学級 手続き) ①実態把握…簡易チェックリストの実施。 授業観察…授業観察記録シートの活用。 コンサルテーション …担任の指導スタイルや特別支援教育の認 識度に合わせた助言と教材・教具の提案。 ②アセスメント…簡易アセスメントの実施 事前検討会議…教材・教具・指導案の提案。 研究授業の観察。 事後検討会 …指導・支援について意見交流。 ③特別支援教育の意識度調査。 教材・教具の活用、個に応じた支援の必要性な とに関する意識と実践度調査。 塵塵亘1共通教材r漢字クイズ』の冒作と活用 目的)注意集中を促し、授業への意欲を高めるた めの導入としての共通教材の試作と実践。 期間)X年 10月 対象)学校 X市立Y小学校2年生2学級 l1方法 手続き) 日亟ヨ センター的機能としての ①実態把握…簡易チェックリスト 漢字アセスメント ②プレテスト ③漢字クイズ実施 ④ポストテスト ⑤実施学級の児童及び担任に漢字クイズに関す るアンケート 徴材・徴兵支援の現状と課目 目的)巡回相談における教材・教具提供の現状と 課題を把握し、意義を検討する 対象)H地域にある特別支援学校6校の地域支援 担当コーディネーター 内容)口頭質問による聞き取り調査 ①学校の概要 ②コーディネーター及び校内委員会の位置づけ ③コーディネーターの仕事内容 ④地域支援における教材・教具に関す相談の現状 ⑤校内の教材・教具の備蓄状況 一242一 l11結果 援の工夫の助言を筆者に求め、意欲的に取り組ん だ。事後検討会では担任Cの授業について、児童 の実態をふまえて意見交換会が行われた。「補助 支援教材の大切さを改めて感じた。」という感想 が聞かれた。筆者が作成・提案した具体物操作教 材はr今後も使える」と喜ばれた。 囮 6校の特別支援学校地域コーディネーターの、教 材・教具の提供に関する考え方は以下の通りであ った。 学校 A X 教材・教具の提供方法 その学校にあるもので 教材・教具提供の意義 有効だと思っが余裕が 活用を進める。 ない。 適切な提供は難しい。 有効だと思っが余裕が (校内アンケート) 特別支援教育の知識や意識は高く、個別支援や 支援教材の作成について必要性を感じているが 実践となると難しいことが伺われた。 ない。 O P Q 学習面での相談はなか 児童観察ができないの った。 で難しい。 ヒントは与えても通常 あまり支援しすぎない 学校に任せるべき。 方が良い。 提供のシステムができ 有効だと思う。 チェックリストの結果から、学習面に特に二一 ズのある児童と、注意集中に課題がある児童が確 認できた。その結果や漢字アセスメントをもとに 漢字クイズを構成し、実施した。 注意集中に課題のある児童は漢字クイズに熱 心に取り組めたが、漢字学習に二一ズのある児童 にとっては、出題方法やタイミングなどに漢字ク イズの課題が浮かび上がった。 アンケート結果によると、児童は漢字クイズに 興味・関心を持ち、またやりたいという希望が多 く、漢字クイズが意欲付けに適していることが評 価できた。担任も児童の様子から漢字クイズの効 果を認め、このような教材があれぱぜひ活用した ていない。 R 通常学校に任せるべ あまり支援しすぎない き。 方が良い。 函 (コンサルテ・ション) チェックリストから見えた児童の認知特性へ の担任の意識度、観察から見えた担任の指導スタ イルに合わせて、段階的に教材・教具の提案をコ ンサルテーションした。 担任Cには、r良い支援を見つけて意味づける』 ことを手がかりに、認知特性への気づきと環境整 備の大切さを伝えた。担任Dには、工夫している 視覚支援教材について、児童の認知特性とのつな がりを分析し、また特に気になる児童への具体的 な支援教材を提案した。担任Eには、ユニバーサ ル型の授業を分析し、児童の認知特性と結びつけ て、全体への支援と個の支援に分析、気になる児 童の支援についても助言した。 担任CとDは、日ごろ自分が行ってきた教材・ 教具の工夫を高く評価されたことで、安心感と自 信を持ち、さらに前向きに取り組み続けることが いという意見だった。 111考豊 予備調査では、教材・教具の提案について特別 支援学校コーディネーターの意見が分かれてい たが、筆者は、特別支援学校が得意とする個に応 じた指導・支援と個別の教材作りを提案すること は、大きな意味があると考える。取り組みに際し ては、特別支援学校にとっては児童や学校の実態 を体験することで発達障害を学び(木村ら、2007)、 通常学校は特別支援学校が強みとする個別支援 を学ぶ場(橋爪、2006)として行った。 研究1から、教師の指導スタイルや特別 支援教育の認識度に合わせたコンサルテーショ ンが、児童の認知特性への気づきを促し、教材・ 教具の提案もしやすくなると感じられた。アンケ ートからは、個別の具体的な支援方法や教材・教 具の見本があれば、意識はあるものの実践は困難 と感じている担任に活用してもらえるのではな いかと思われた。また研究2で行った共通教材の 取り組みでも、支援を必要とする児童の視点で製 作したものが学級全体の意欲向上に役立つこと できた。また、今まで実践できなかったあるいは、 気づかなかった支援の工夫も取り入れるように なった。担任Eは、筆者の助言をうけとめ、気に なる児童の認知特性を受け止め、個別的な支援を 工夫した。 (研究授業) 筆者からの提案は、興味を引きつける導入教材 と具体物操作、児童が活動する授業であった。加 えて担任Cには、児童の二一ズに基づいて環境整 備と視覚支援教材の必要性を提案し、担任Cは肯 定的に受け止め、教室環境を整え、教材の作成、 指導案の改訂、教示の工夫を実践した。担任D・ Eとは、具体物操作教材の活用や体験型学習につ いて検討を重ね、担任Eはたくさんの活動と教材 を盛り込み、担任Dは、さらに興味付けや視覚支 が感じられた。 主任指導教員 宇野宏幸 指導教員宇野宏幸 一243一
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