予習資料

機械数学演習 ベクトル解析 (1)
高畑 智之
2015 年 11 月 17 日の演習のための予習資料
演習の前半に小テストを実施するので,以下を予習しておくこと.
添字表記
クロネッカーのデルタ δij とエディントンのイプシロン ϵijk は,つぎのように定義される.

1 (i = j)
δij =
0 (i ̸= j)


1
(i, j, k) = (1, 2, 3), (2, 3, 1), (3, 1, 2)


ϵijk = −1 (i, j, k) = (3, 2, 1), (2, 1, 3), (1, 3, 2)



−1 (上記以外)
添字標記の基本:
1. 総和の規約:同じ添字が二度出てきたらその添字について和をとる.
2. δij ai bj = ai bi
3. ϵijk = ϵjki = ϵkij = −ϵkji = −ϵjik = −ϵikj
4. ϵijk ϵilm = δjl δkm − δjm δkl
ベクトル A = [A1
A2
T
A3 ] および B = [B1
B2
T
B3 ] とすると,内積は,
A · B = Ai Bi
であり,外積(の i 成分)は,
(A × B)i = ϵijk Aj Bk
である.ただし,T は転置を表し,(A)i はベクトル A の i 成分を表す.
例題
1. クロネッカーのデルタ δij とエディントンのイプシロン ϵijk を用いて,次のベクトルベクトル三重積に関す
る恒等式が成り立つことを示せ.
A × (B × C) = (A · C) B − (A · B) C
解:左辺の i 成分について考える.
(A × (B × C))i = ϵijk Aj (B × C)k
= ϵijk Aj ϵklm Bl Cm
= ϵijk ϵklm Aj Bl Cm
= ϵkij ϵklm Aj Bl Cm
= (δil δjm − δim δjl ) Aj Bl Cm
= δil δjm Aj Bl Cm − δim δjl Aj Bl Cm
= Aj Cj Bi − Aj Bj Ci
= (A · C) Bi − (A · B) Ci
= ((A · C) B − (A · B) C)i
以上より示された.
2. クロネッカーのデルタ δij とエディントンのイプシロン ϵijk を用いて,次のベクトル恒等式が成り立つこと
を示せ.
A × (B × C) = (C × B) × A
3. クロネッカーのデルタ δij とエディントンのイプシロン ϵijk を用いて,次のベクトル恒等式が成り立つこと
を示せ.
(A × B) · (C × D) = (A · C) (B · D) − (A · D) (B · C)
スカラー場の勾配
スカラー場 ϕ (x, y, z) の勾配を,

∂ϕ
 ∂x 
 
 
 ∂ϕ 

∇ϕ = 
 ∂y 
 
 
 ∂ϕ 

∂z
T
と定義する.ただし, は転置を表す.
例題
1. スカラー場 ϕ = yz − zx + xy の,点 P(−1, 1, 1) における勾配 ∇ϕ を求めよ.
 
0
 
解:(∇ϕ)P = 0
2
 
x
1
1
 
2. 空間の点 r = y  について,r = |r| と定義する.このとき, の勾配 ∇ を求めよ.
r
r
z
r
解:∇r = − 3
r
2
ベクトル場の発散と回転
ベクトル場 A (x, y, z) = [Ax
Ay
T
Az ] について,発散を,
∂Ax
∂Ay
∂Az
+
+
∂x
∂y
∂z
∇·A=
回転を,
 ∂A
∂Ay 
 ∂y
∂z 




 ∂Ax
∂A
z


−
∇×A=
∂x 
 ∂z



 ∂A
∂Ax 
y
−
∂x
∂y
z
−
と定義する.ただし,T は転置を表す.
[
1. ベクトル場 A = x2 y
置を表す.
− 2xz
2yz
]T
の ∇ · v ,∇ × v ,∇ × (∇ × v) をそれぞれ求めよ.ただし,T は転



2z + 2x
0




解:∇ · A = 2y (x + 1),∇ × A = 
0
,∇ × (∇ × A) = 2 (x + 1)
−2z − x2
0
[
2. ベクトル場 A =
解:∇ · A = −

x
x+y
x−y
2 ,∇
(x + y)
3. ベクトル場 A = [y
−
−x
y
x+y
]T
0 について,発散 ∇ · V ,および回転 ∇ × V を求めよ.



×A=

0
0
1
x+y





T
0] を考える.ただし,T は転置を表す.
(a) (x, y) 平面でのベクトル場 A の概要を描け.
(b) 回転 ∇ × A を求めよ.
勾配・発散・回転の添字表記での表現
クロネッカーのデルタ δij とエディントンのイプシロン ϵijk を使うと,勾配,発散,回転を次のように表すこ
とができる.
(∇ϕ)i = ∂i ϕ
∇ · A = ∂i Ai
(∇ × A)i = ϵijk ∂j Ak
∂
, i = 1, 2, 3 とした.
∂xi
ここで,∂i は座標についての微分演算子であり,ベクトル場 A は座標の関数であるから,一般には例えば
∂i Ai ̸= Ai ∂i であることなどに注意.
ただし,(x1 , x2 , x3 ) 空間において ∂i =
3
1. クロネッカーのデルタ δij とエディントンのイプシロン ϵijk を用いて,次のベクトル恒等式が成り立つこと
を示せ.
∇ · (ϕ∇ψ − ψ∇ϕ) = ϕ∇2 ψ − ψ∇2 ϕ
解:
∇ · (ϕ∇ψ − ψ∇ϕ) = ∂i (ϕ∇ψ − ψ∇ϕ)i
= ∂i (ϕ∂i ψ − ψ∂i ϕ)
= ϕ∂i ∂i ψ − ψ∂i ∂i ϕ
= ϕ∇2 ψ − ψ∇2 ϕ
以上より示された.
2. クロネッカーのデルタ δij とエディントンのイプシロン ϵijk を用いて,次のベクトル恒等式が成り立つこと
を示せ.
∇ × (∇ × A) = ∇ (∇ · A) − ∇2 A
解:左辺の i 成分について考える.
(∇ × (∇ × A))i = ϵijk ∂j (∇ × A)k
= ϵijk ∂j ϵklm ∂l Am
= ϵkij ϵklm ∂j ∂l Am
= (δil δjm − δim δjl ) ∂j ∂l Am
= δil δjm ∂j ∂l Am − δim δjl ∂j ∂l Am
= ∂j ∂i Aj − ∂j ∂j Ai
(
)
= (∇ (∇ · A))i − ∇2 A i
以上より示された.
参考文献
[1] 日本機械学会, “機械工学のための数学,” 日本機械学会, 2013.
[2] 高木周, “機械系のための数学,” 数理工学社, 2005.
[3] 初貝安弘, “物理学のための応用解析,” サイエンス社, 2003.
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