Non-dipper と血管老化 南野 徹 はじめに ヒトは老化に伴い、血管の

Non-dipper と血管老化
南野 徹
はじめに
ヒトは老化に伴い、血管のコンプライアンスの低下、血管新生能の低下、炎症の亢
進などの変化を認めるようになる。これらの変化がいわゆる血管老化あるいは動脈
硬化の病態生理に関与しており、高血圧、心筋梗塞、脳卒中などの基礎病態に寄与
する。例えば、老化に伴う血管のコンプライアンスの低下は、血管内皮細胞における
一酸化窒素 NO やプロスタサイクリンの産生能の低下などによる内皮依存型血管弛
緩作用の低下、また、炎症性の亢進は、サイトカインや接着因子の発現亢進が関与
しているといわれている。しかし、加齢に伴ってこれらの血管機能障害が引き起こされ
るメカニズムは明らかでない。通常ヒト正常体細胞の分裂回数は有限であり、ある一
定期間増殖後、細胞老化とよばれる分裂停止状態となる。その寿命は培養細胞のド
ナーの年齢に相関すること、また、早老症候群患者より得られた細胞の寿命は有意
に短いことも報告されていることから、細胞老化のヒトの個体老化に対する関与が示
唆されてきた。
一方、加齢に伴って、血圧や心拍数、体温、睡眠など様々な生理機能の日内変動
が変化することが知られている。これらの日内変動は、視交差上核と呼ばれるマスタ
ーペースメーカーによって制御され、時計遺伝子と呼ばれる一連の分子がその制御
に関与する。具体的には、BMAL1 と CLOCK と呼ばれる転写因子がヘテロダイマー
を形成することによって、PER や CRY といった時計遺伝子の発現を正に調整するの
に対して、これらの時計遺伝子から生成されるタンパクが BMAL1 と CLOCK の転写
活性を負に調整することで、日内変動リズムのコアループを形成している(図1)。循
環器疾患の発症時間が早朝に多いことやシフト勤務の労働者に循環器疾患の発症
率が高いことなどが知られており、加齢に伴う日内変動リズムの障害が、老化による
循環器疾患の有病率増加の原因の一つである可能性がある。そこで本稿では、「老
化した血管細胞が老化関連疾患の病因となる」といういわゆる細胞老化仮説につい
1
て概説するとともに、血管の老化と時計遺伝子の関連性について検証してみたいと
思う 1,2)。
個体老化と日内リズム、時計遺伝子は密接に関係する
体内の時計機能は、様々な生理機能の日内リズムを調整している。上述したように
その中枢は視交差上核に存在するが、末梢組織にも時計機能が存在し、中枢からの
液性因子や神経因子によって外部の環境と同期するよう調節される。これらの体内
時計機能は、加齢に伴い障害され、日内リズムの振幅や周期が変化する。その結果、
体温、ホルモンレベル、睡眠や血圧などの日内リズムの障害として認められるように
なる。時計遺伝子の発現の日内リズムは、加齢に伴って障害されることから、高齢者
において認められる生理機能の日内リズムの障害の原因となっていると考えられる。
一方、明暗サイクルを障害すると、ショウジョウバエやマウスの寿命が短縮すること
も報告されている 3)。また、一部の時計遺伝子の欠損は、老化を促進する可能性があ
ることを示唆する報告がなされている。例えば、CYCLE や PERIOD と呼ばれる時計
遺伝子に変異を持ったショウジョウバエの寿命は、短縮することが知られている
3)
。
Bmal1 を欠損したマウスでは、血圧を含めた様々な日内リズムが消失することが報告
されている 4)。出生時には異常を認めないが、35 週齢ぐらいまでには早老症の形質、
すなわち、筋肉量の低下や骨粗鬆症、皮下脂肪の減少などを呈し、平均 37 週齢で死
亡する 5)。Clock や Per2 を欠失したマウスにおいても同様に早老症の形質を認め、寿
命が短縮することが知られている 6)。さらに、Clock ミュータントマウスでは、放射線暴
露後に老化の形質を示すようになると報告されている
7)
。また、長寿遺伝子として有
名な Sirtuin ファミリーが時計遺伝子と相互作用し、その転写活性を調節していること
も明らかとなった。以上の知見は、加齢と日内リズムの密接な関係を示しているが、
加齢がどのようにして時計遺伝子の発現を障害するのか?あるいは、時計遺伝子の
異常がどのようにして老化を促進するのか?についてのメカニズムはわかっていない
8)
。
2
細胞レベルの老化が血管を老化させる
ヒト培養細胞は、およそ 50–80 回の分裂の後老化し、大型で平坦な形態を示すよう
になり、分裂を停止する。このような分裂寿命を規定している因子として、テロメアが
重要であると考えられている 1,2)。テロメアは染色体の両端に存在する G rich なリピー
トで、染色体の保護や複製における基質の役割を担う。DNA ポリメレースによる不完
全な DNA 複製のためテロメアは分裂に伴って短縮し、極度に短縮したテロメアは
DNA 損傷と認識され、p53 依存性の老化シグナルが活性化する。テロメアを負荷する
酵素がテロメレースであるが、通常の体細胞では活性が低いため、細胞分裂に伴う
テロメアの短縮は免れない。酸化ストレスや放射線などによる DNA 損傷や、がん遺
伝子の発現などによる過剰な増殖刺激によっても p53 依存性の老化シグナルが活性
化することが知られており、この場合はテロメア短縮を伴わない
1,2)
。細胞老化は、が
ん遺伝子による過剰な増殖反応や DNA ダメージによるがん化を防ぐ機構であると考
えられている(図 2)。
加齢に伴って、ヒトの様々な組織において、老化した細胞が集積することが報告さ
れている
9)
。ヒト動脈硬化巣の病理学的検討も広く行われ、その検討から老化した培
養血管細胞に似た形質を示す細胞が、動脈硬化巣に存在することが示されている
10)
。
これらの老化血管細胞では、内皮型 NO 合成酵素(eNOS)の発現低下、炎症性分子
の発現亢進など様々な血管機能障害の形質を示したことから、細胞レベルの老化が
動脈硬化・血管老化の病態生理に関与していることが示唆された(図 3)。
これらの血管細胞では p53 依存性の老化シグナルの活性化が認められたが、その
一部はテロメアの短縮によるものと考えられる。実際、ヒト腹部大動脈や大腿動脈の
内膜では加齢とともにテロメアの短縮がみられるが、その短縮率は内胸動脈と比較し
て増加していることから、血流によるストレスが内膜の cell turnover を増強し、テロメア
の短縮を促進している可能性がある
11)
。さらに、虚血性心疾患患者の冠動脈内皮の
テロメアは健常群に比較して有意に短縮していることが報告された
12)
。一方、生活習
慣病において認められる高インスリン血症や高血糖、アンジオテンシン II の活性化は、
テロメア非依存性に p53 シグナルを活性化し、血管細胞を老化させることによって動
3
脈硬化を促進していることが、マウスモデルで示されている。これらのマウスにおいて
p53 依存性の細胞老化シグナル活性化を抑制すると、動脈硬化の進展を抑制するこ
とができることが示されている 13-15)。
テロメアが短縮したテロメレース欠損マウスでは、寿命の短縮やストレスに対する応
答の低下など、加齢と同様の変化が認められるようになる 16)。また後期世代マウスで
は、テロメア短縮により血管新生能も障害されるようになる
17)
。テロメラーゼ欠損マウ
スでは、線維性キャップの薄い動脈硬化プラークが形成されることが観察されており、
これらのことから、血管細胞でのテロメアの短縮は、ヒト動脈硬化巣におけるプラーク
破綻に関与する可能性がある
18)
。また、同マウスモデルでは、血管収縮物質である
エンドセリン−1 の産生が亢進するため、高血圧の形質を示すことも報告されている 19)。
以上のように、細胞レベルの老化が加齢に伴う血管機能の異常、すなわち、血管老
化に重要な役割を果たしていることが示唆されている。
細胞老化に伴い時計遺伝子の発現リズムは障害される
日内リズムの調整は、中枢性の時計機能が重要であることが知られているが、末
梢の臓器や細胞それぞれにも時計機能が存在し、その重要性が明らかとなりつつあ
る。例えば、血管特異的に時計遺伝子の発現が障害されているマウスにおいても、
血圧や血栓形成の日内リズムの異常が認められることがわかっている。
そこで著者らは、細胞レベルの老化が末梢の時計機能を障害することによって、加
齢に伴う日内リズムの障害に関与するのではないかと考え検証した。まず初期継代
の血管細胞を血清刺激すると、時計遺伝子の発現は日内リズムを形成するのに対し
て、老化した細胞ではそのリズムが著しく障害されていた。細胞老化に伴うリズムの
障害は、テロメレース導入によって改善したことから、テロメア機能と時計遺伝子の発
現調節には関連性があると考えられた(図 4)20)。CREB は光刺激に対する中枢性時
計機能に重要な転写因子として知られている。そこで、その関与を調べてみると、老
化血管細胞では、血清刺激に対する CREB のリン酸化が障害されていることがわか
った。さらに、抑制型 CREB を初期継代の血管細胞に導入すると時計遺伝子の発現
4
リズムの障害がみられることや、逆に CREB を活性化すると老化血管細胞における
時計遺伝子の発現リズムの障害が改善することなどから、CREB による転写調節の
重要性が示唆された。老化血管細胞では血清刺激に対する ERK のリン酸化も障害
されていたが、その再活性化によって、老化血管細胞における CREB のリン酸化と時
計遺伝子の発現リズムの障害が改善することから、その上流のシグナルとして、ERK
経路が重要であることも明らかとなった。
加齢に伴う時計機能の障害は、主に中枢性の原因が重要であると考えられていた
が、末梢性の時計機能の関与については知られていなかった。そこで著者らは、その
重要性について検証した。まず、心血管系における時計遺伝子の発現リズムは、高
齢マウスで異常を示すことを確認した。次に、その異常が末梢性の時計機能に依存
するかどうかを確認するため、細胞をマトリゲル内に封入し、若年マウスの皮下に移
植して、その細胞における時計遺伝子の発現について検討した。その結果、初期継
代細胞を移植した際には時計遺伝子の発現リズムは正常に認められるのに対して、
老化細胞移植時にはその発現リズムは著明に低下していた。逆に、初期継代細胞を
高齢マウスに移植しても、時計遺伝子の発現リズムはほとんど障害されていなかった
ことから、加齢に伴う時計機能の障害には、細胞老化に伴う末梢性の時計機能異常
が重要であることが示唆された 20)。
時計遺伝子の異常により血管機能障害が誘導される
様々な遺伝子改変マウスを用いた検討によって、時計遺伝子の循環器疾患におけ
る病態生理学的役割が明らかになりつつある。例えば、Per2 遺伝子変異マウスでは、
NO や血管拡張性プロスタグランジンの産生が低下しており、シクロオキシゲナーゼ-1
によって誘導される血管収縮性プロスタグランジンが増加しているため、内皮依存性
の弛緩反応が著明に低下していることが示されている
21)
。さらにこのマウスでは、血
管内皮細胞の老化が亢進しており、虚血モデルにおける血管新生が障害されていた
22)
。Per2 遺伝子変異マウスの血管内皮前駆細胞は、増殖能や遊走能も低下しており、
虚血後の血流回復の低下に関与していると考えられた。Bmal1 欠失マウスや Clock
5
遺伝子変異マウスにおいても、血管内皮機能異常が認められ、その結果、血管障害
後のリモデリングの異常を来すことが示されている 23)。
前述したように、Bmal1 欠失マウスでは、血圧や心拍数の日内リズムが消失してお
り、その消失には、カテコラミンの合成や代謝に関わる遺伝子の発現変化を伴ってい
る 24)。Cry1Cry2 欠失マウスや Clock 遺伝子変異マウスにおいても血圧の日内リズム
は障害されているが、カテコラミン代謝を含めた血圧に関する形質が、それぞれの遺
伝子改変マウスで異なっていることから、時計遺伝子の血圧の調整に対する役割に
は、微妙な相違があるものと思われる
24,25)
。これらの遺伝子欠損マウスでは、血管以
外の組織においても時計遺伝子の変異・欠失を伴っていることから、血管の時計機
能の重要性は明らかでなかった。これに対して Wang らは、血管特異的な PPARγの
欠損マウスでは、Bmal1 の日内リズムの異常を来し、血圧や心拍数の日内リズムが
障害されるという報告をしている 26)。さらに血管内皮特異的な Bmal1 欠失マウスでは、
血圧の日内リズムの障害はわずかであったが、血栓形成の日内リズムが著明に障
害されていた
27)
。これらの結果は、血管における時計機能の重要性を示すものとして
興味深い。
NO は時計遺伝子を制御することによって血圧の日内リズムを調整する
遺伝子改変マウスを用いた検討により、時計遺伝子の循環器疾患における病態生
理学的役割については明らかとなっているが、加齢に伴う血圧の日内変動の低下の
メカニズムは不明である。加齢に伴い血管の老化が進行し、血管機能の鍵分子であ
る NO の産生は低下する。そこで著者らは、加齢に伴う血圧の日内変動の低下に NO
の産生減少が関与しているのではないかと考え検証した。
まず、NO の時計遺伝子発現に対する影響について培養血管細胞を用いて調べた
ところ、NO は Per をはじめとする時計遺伝子の発現を正に調節していること、その調
節には CREB と Bmal1 の活性化が関与していることがわかった。その活性化には、
それぞれ NO/PKG による CREB のリン酸化と Bmal1 に対する S-ニトロシル化が関与
していた。NO によって培養血管細胞の時計遺伝子の発現リズムは増強し、NO 阻害
6
によりそれらのリズムは減弱したことから、時計遺伝子の発現調節に NO が重要な役
割を果たしていることが明らかとなった 28)。また、NO による時計遺伝子の発現調節は
老化した血管細胞で障害されていたことから、加齢に伴う時計遺伝子の発現異常に
は、細胞レベルの老化の関与が示唆された。
次に心血管系における eNOS の活性について調べたところ、若年マウスではその活
性が日内リズムを示すのに対して、高齢マウスではリズムが消失していることがわか
った。その結果、老化マウスの心血管系では CREB と Bmal1 の活性や時計遺伝子の
日内リズムが障害されていることが観察された。eNOS 欠失マウスや NO 阻害薬を投
与したマウスにおいても、時計遺伝子の日内リズムが障害されていることから、生体
内における時計遺伝子の発現調節にも NO が重要であることが確認された。
高齢マウスや NO 阻害薬で処理したマウスでは、時計遺伝子の発現リズムの障害
に伴って、血圧の日内変化も障害されていた。そこで、若年マウスで eNOS の活性化
される時間に合わせて高齢マウスに NO ドナーを投与したところ、時計遺伝子の発現
リズムは正常化し、血圧の日内リズム障害も改善した(図 5)。NO による血圧の日内
リズムの改善は、Bmal1 欠失マウスでは認められないことから、NO は時計遺伝子の
発現リズムの正常化を介して血圧の日内リズム障害を改善しているものと考えられた
(図 5)。以上より、血管老化に伴う NO 産生の減弱は、心血管系の時計遺伝子の日
内リズムの障害を引き起こすことによって、血圧の日内変動に影響を与えている可能
性が示唆された 28)。
おわりに
血管の老化と時計遺伝子の関連について概説した。加齢が時計遺伝子の日内リズ
ムを障害するのに対して、時計遺伝子の異常は老化を加速する。細胞レベルにおい
ても、時計遺伝子の異常は老化を促進し、老化した細胞では時計遺伝子の発現が障
害されている。すなわち、血管の細胞レベルの老化が時計遺伝子の発現リズムを障
害し、その結果、さらに血管老化を加速する(図 6)。これらを結ぶ鍵因子の一つが
NO であると考えられる。今後もこのような研究によって、老化に伴う血圧変動の異常
7
など様々な疾患に対する新たな治療開発が期待される。
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8
Figures
図 1 時計遺伝子のフィードバックループ
9
図 2 細胞老化と p53/p21 シグナル経路
細胞分裂に伴うテロメアの短縮(テロメア依存性)や酸化ストレス(ストレス誘導性)は、
DNA ダメージを誘導し、p53/p21 老化シグナルを活性化することによって細胞老化を
引き起こす。
10
図 3 ヒト動脈硬化巣における老化血管細胞
冠動脈疾患患者から得られた冠動脈(CA)と内胸動脈(IMA)を用いて SA β gal 染
色をおこなった。写真は血管の内腔を示している。濃染している部分(青色)は老化し
た細胞領域をあらわしている(文献 10)より改変)。
11
図 4 細胞老化による時計遺伝子発現リズムの障害
血清刺激後の時計遺伝子発現リズムをノーザンブロットで解析した。初期継代の血
管細胞を血清刺激すると、時計遺伝子の発現は日内リズムを形成するのに対して、
老化した細胞ではそのリズムが著しく障害されていた。細胞老化に伴うリズムの障害
は、テロメレース導入によって改善した。
12
図 5 NO による血圧リズムの正常化(文献 28)より改変)
高齢マウスや NO 阻害薬(L-NAME)で処理したマウスでは、血圧の日内変化が障害
されていた。高齢マウスに NO ドナー(GSNO)を投与したところ、血圧の日内リズム障
害も改善した。NO による血圧の日内リズムの改善は、Bmal1 欠損マウスでは認めら
れなかった。
13
図 6 老化と時計
加齢に伴い体内時計機能は低下し、時計遺伝子の機能異常は細胞老化や個体老化
を促進する。これらの相互作用が、加齢関連疾患の発症進展に関与している。
14