1 5 7 s u l m b aP s y c h % g i c a /R e s e al'c h 2 0 1 4 .4 7 .1 5 2 3 東自本大震災で被災した自治体職員の外傷後成長1) 筑波大学大学院人間総合科学研究科桑原裕子・高矯幸子 曲豆 筑波大学人閥系松井 P o s t t r a u m a t i cgrowthi nl o c a lgovernmento f f i c e r si ne a r t h q u a k edamageda r e a so f] a p a n Y u k oK u w a h a r a,S a c h i k oT a k a h a s h i( G γ αduα t eS c h o o l0 1Compγ e h e n s i v eHumα nS c i e n c e s ,U n i v eγ s i t y 0 1T sukuba,T sukubα305-8572 ,} ; α抑的 Y u t a k aM a t s u i( F i . α c u l t y0 1HumanS c i eγ z c e s ,U n i v e γ s i t y0 1T sukubα ,T sukuba305-8572 , , jα pan) Theq u e s t i o n n a i r esurveywasconductedi nJ u l y2012ont h eo f f i c e r sworkingi nt h r e el o c a l governments( t w oi nc o a s ta r e aa n donei ni n l a n d )i nM i y a g ip r e f e c t u r et oexaminet h ef a c t o r so ft h e i r p o s t t r a u m a t i cg r o w t h(PTG)i nt h eG r e a tE a s tJ a p a nE a r t h q u a k ea r e a s .A l l6 1 5p a r t i c i p a n t sh a v ebeen w o r k i n gi nt h o s ea r e a sb e f o r eMarch1 12 0 1 1 .PTGwasa s s e s s e dbyO r i g i n a lq u e s t i o ni t e m s,r e f e r r i n g Y a m a z a k ie ta l ( 2 0 1 2 ) .Ther e s u l t si n d i c a t e dt h a ts u p p o r tf r o mt h e i rmanagersa n dp e e r sf a c i l i t a t e dt h e i r PTG.C o l l a p s eo ft h e i rh o u s e s,a p p r e c i a t i o nf r o mc i t i z e n s,a n do f f i c er 'sy o u t hi n f l u e n c e dp o s i t i v e l yPTG m e d i a t e dbyt h es u p p o r tf r o mt h e i rmanagersa n dp e e r s .I nmales u p p o r tf r o mt h e i rf a m i l yf a c i l i t a t e d PTG. Keywords: l o c a lgovernment0百i c e r si nt h ed i s a s t e ra r e a s,t h eG r e a tE a s tJ a p a nE a r t h q u a k e,P o s t t r a u m a t i cg r o w t h 目 的 を対象に震災から l年 2か丹後に行った調査(労働 大学出版センター. 2 0 1 2 ) によると,被災地の自治 本研究の目的は,東日本大震災で被災した自治体 職員の外傷後成長に影響を及ぼす要因を検討するこ 体職員の 5割がストレスを抱え. 1割強がメンタル 面の不調をいつも抱えていた。一方で. I いまの生 とである。東日本大震災の被災地では,多くの人が 活に満足している j ゃ「将来に希望がある j と回答 死別や住宅の喪失を体験した。被災地の自治体職員 した職員も. 3割を超えていた。 震災などの災害は,被災者に外傷後ストレス反応、 0条. 3 5条)が は,職務専念義務(地方公務員法第 3 あるため, 自ら被災しながらも発災直後から住民へ の支援を優先させ続けてきた。全日本自治団体労働 組合(以下,自治労)が岩手・宮城・福島の組合員 P o s t t r a u m a t i c を生じさせる一方で,外傷後成長 ( g r o w t h ) を生じさせることが明らかになっている 1 e d e s c h i& C a l h o u n( 19 9 5 ) は,外傷後成長を「非 0 常に!~難な生活環境とたたかう結果として経験され 1)謝辞 復興活動のためにご多忙な中で,本調査にごlBl 答くださった職員の皆様に,こころから感謝いたしま す。調査笑施にあたり,ご、協力いただいた,株式会社 保健 i 司入社様,宮城県市町村共済組合;様,及び自治体 総務担当者の皆様へお礼申し上げます。本研究は,筑 波大学東日本大震災復興支援プロジェクトの助成を受 4田大 けた。研究成果の一部は, 日本社会心理学会第 5 会で発表(桑原・高橋・松井. 2 0 1 3 ) された。 る肯定的な心理的変化 J と定義した。安藤 ( 2 0 0 8 ) は,外傷による肯定的変化を以下の 4つの側面にま とめた。すなわち,①他者との関係,②自分自身に 対する見方の変化,③新しい可能性の認識③人生 の価値の再認識である。 被災地の自治体職員の外傷後成長に影響する要因 は,以下の 4つに整理される。第一は,被災地の自 1 6 筑波大学心理学研究 第 47 号 治体職員自身の被災体験である。災害は,生命や財 携わった開の家族からの支えである。自治労総合企 産を突発的に脅かす事態をもたらす。被災による死 画総務局長として被災地の自治体職員に関わった i 盟 別体験や守自身及び家族が怪我をした経験,生命危 国 ( 2 0 1 1 ) によれば,仕事が辛くても家族には言え 機の経験,所有物の損害や経済的な損失経験,転居 ずー逆に家族から「家が流されて大変なのに、仕事ー lは災害 1寺 経験は精神状態に影響を与え,特に,女'l' ばかりしている」と責められ,無力感をつのらせた J 危弱であることが l i j : jらか のメンタルヘルスに対して l 職員もいた。上述した被災消防職員の調査(大規模 になっている ( N o r r i s,Friedman,Watson,& Byrno, 寺などにおける惨事ストレス対策研究会, 災害 H 2 0 0 2 a,N o r r i s,Friedman,& Watson,2 0 0 2 b )。一方, 外傷後成長の生起には,愛する人や友人家族の死. ] I J } 舌や いじめ等の人間関係上の問題,妊娠や中絶, 7 2 0 1 3 ) では,活動中の支えとして f 家族からのメー ル や 電 話 に よ り 励 ま さ れ た J(49.8%) が最も多く あげられた。宅 ( 2 0 1 0 ) は,外傷後成長に影響を及 離婚などのストレスの高い出来事から,ライフイベ ぼす要因を概観し普段の生活を意味づける能力 ント危機的な出来事までさまざまな内容のものが ヤ,出来事の I~~ 示のあり方,家族や友人など他者か 含まれる(宅, 2 0 1 0 )。これらの知克に基づくと, らのサポートなどをあげた。これらの知見に基づく 被災地の自治体職員自身の被災経験や住宅の喪失経 と被災地の自治体職員への家族からの支えは 見会は.外傷後成長に影響を与えると予測される。 員の外傷後成長に影響を与えると予測される。 J 隊 第二は,被災地の自治体職員が発災直後に行った 第四は,発災後から回答!l寺までの,職場の仁司や 業務での体験である。 救 助 ・ 援 助 活 動 に 携 わ っ た 隊員への支援である。ある 同僚から被災地の自治体 i 人々の心的ストレスを職業ごとに比較した P e r r i n, 敗務をねぎら 自治体のトップは職員のこれまでの i Grande,Wheeler ,Thorpe,F a r f e l,& B r a c k b i l l,( 2 0 0 7 ) によれば,災害とは無関係の職種で、災害業務へ従事 い , _lこ司に対して部下の健康状態に留意するように 0 1 2 )。一方で, 指示を出した(宮城県広報課, 2 した者の PTSD発 生 率 が 高 ま っ て い た 。 被 災 後 の だまだ!被員にはやらせます。残業代もカットしま 業務の中では特に,遺体と遭遇する体験は過酷であ す 。 Jなど公務員 1/1きのような発言をしたトップも U r s a n o,F u l l e r t o n, ることカf明 ら か に な っ て い る ( J, 2012) 。松井・立 ll~ìJ ・高橋 (2008) に いた(香iJ Vance,& Kao,1 9 9 9 )。 ま た , 発 災 後 , 被 災 地 の 自 治体職員は,今まで経験の無い災害関連業務に就 策においては,組織内サポートが重要視されてい I ま よれば,消防など公安系の専門職へのストレス対応 き.不IlK 不休で働くなかで,被災住民から身近な攻 るo H uddleston,P a t o n,& Stephens,( 2 0 0 6 ) が警察 撃の対象とされ,ストレスや不満をぶつけられた 官に行った調査によれば,組織内の信頼の保持や, I I .佐野・佐藤・吉野・藤井・立浮・桑 (重村・谷 } 成果への評価,励ましなどの意識を高める行動・振 原-立花・野 ~F~. 2 0 1 2 )。 自 治 労 が2012年 5月(被 る舞いは,直接外傷後成長に有意な影響を及ぼして 4ヶ 月 援 ) に 行 っ た 調 査 ( ビ ジ ネ ス ・ レ ー 災後1 いた。これらの知見に基づくと,職場の上司や同僚 ノてー・トレンド編集部, 2 0 1 2 ) によれば,被災地の からの支援は,被災地の自治体職員の外傷後成長に 隊員の 3人に l人が,住民から暴言・暴力を 自治体 i 影響を与えると予測される。 : m不尽なクレームを受けた j [ J 能員も, 受け, J 4割強に のぼった。 } _ ) 、j こを整理すると,被災地の自治体職員は,職員 自身の被災体験や発災直後の業務で住民から感謝さ J( 2 0 1 2 ) の東日本大震災の被災地で、 他方で,香iJ れた体!倹発災直後の業務に携わっていた簡の家族 } 1き1 1')(りによれば. I 司震災でその活動が評価さ の/ からの支え,発災直後から回答1 1 寺までの l 殿場の上司 れ,感謝を表現された支援者は,大変きつい任務で や同僚からの支援により あっても「報われた jという気持ちを l 味わっていた。 と推定される。 外傷後成長を高めている また, I 可震災の被災地の消 1 ) ) j J 被員を対象にした調査 そこで,本研究は,震災前から被災地で業務を (大規模災害時などにおける惨事ストレス対策研究 行っていた被災地の自治体職員の震災後 1年 4ヶ月 会 , 2 0 1 3 ) によれば.被災後の活動の支えになった 後の外傷後成長を把握しその規定留を探る事を目 こととして. I 被災者から感謝されたり,お礼を言 的とする。具体的には,職員自身や居宅の被害程度 われたりした j 体!投をあげた消防職員が37.5%もい や発災直後に行った業務での体験,家族からの支 た。これらの知見に基づくと,被災地の自治体職員 え,そして発災後から回答持まで、の職場の上司や同 の震災直後の業務で,評価や感謝された体験は, 僚からの支援が,外傷後成長に与える影響を探索的 自 治体職員の外傷後成長に正の影響を与えると予測さ れる。 第三は,被災地の自治体職員が発災度後の業務に に1 食 会j する。 上記の目的 f こ沿って本研究では,まず¥被災地 の自治体職員自身の被災体験や,発災直後の職員の 桑原裕子・高嬬幸子・松井 1 7 豊'東日本大震災で被災した自治体職員の外傷後成長 r 業務体験や業務を行っていた関の家族からの支えを 「一部だけ継続できた J 全 く 継 続 で き な か っ た j の 性別ごとに把握する。次に,職員の被災体験や発災 4選択肢から単一lITl答形式で回答を求めた ( T a b l e 直後の業務での体験や家族からの支えが,発災時か 2 )。 m答 1寺 ま で の 上 司 や 同 僚 か ら の 支 援 を 介 し て 外 傷 ら1 業務内容 河村・辛-西田・立木 ( 2 0 1 1 ) を参考 後成長にどの様に影響を与えるのかを検討するため に,発災直後に就いた業務を以下のように設定し に,性別ごとにパス解析を行う。 た。避難所関連業務は「①避難所や施設の運営i f ②支援物資の運搬・配送・搬入J. r r ③支援物資の 仕分けJ. ④ 避 難 所 や 施 設 の 閉 鎖 jの 4業務とした。 方 法 r 住民関連業務は「①被災した住民との連絡J. ⑤ 被 r 調査手続き 災した住民への物資の配布J. ⑦ 遺 体 安 置 所 で の 業 2012年 7月から 8月までに,宮城県の沿 j 宇部(A. B) 及び内!箆部 ( C ) の 被 災 し た 3つ の 自 治 体 の 担 務J. ③情報入力J. 1 ①通行許可証の発行・受付J. 当者から職員(A. r r 「⑮役所内での電話対応J. ⑪ 提 災 証 明 書 の 発 行 ・ Bは全職員. cは本庁の全職員) 配布された。無記名個別回答で個 に 職 場 で 調 査 票 がi T a b l e1 自身及び身近な人の被害の肯定率(%) 別郵送回収した。 男 性 女 性 X2 { 直 項目 調査対象者 宮城県の 3つ の 自 治 体 に 採 用 さ れ , 震 災 時 に も 当 η354 0, 8 4 9. 4 0, 8 自分自身がけがを負った 1 9 8 ( d ( =1 ) 0, 0 0. 48 4 0, 9 3, 7 1t 0, 0 0. 48 該i 主治体職員として業務を行っていた者を対象とし 75票 を 配 布 し 有 効 回 答 は 615名 ( 巨i 収率 た 。 9 6 3 . 1%),男性 3 9 1名,女性 217名,不明 7名であった。 也j 或に)苦{主する J [ : 能員は, 3 84名 で あ り , 内 陸 に 沿岸j 家族が大きなけがを負った 家族が亡くなった・行方不明に なった 5 0. 4 . 0 4, 11 3 1名であった。年齢構成は, 1 2 0 居住する職員は, 2 親戚が大きなけがを負った 0 4 2 . 8 2 . 5 0, 代 jが 9, 8%,1 3 0代」が30, 1% , 1 4 0代 Jが 28.0%,1 5 0 親戚が亡くなった なった 代 j が 30.7%, 1 6 0代 j が 0.8%であった。有効!日答 自身に身の危険を感じた 行方不明に 2 9. 1 3 4, 8 1 .9 6 福 祉 ・ 保 健 ・ 子 供 jが 2 9 . 1% , 1 都 者の所属部署は, 1 知人や友人が大きなけがを負った 市 整 備 ・ 経 済 ・ 商 工 - 企 業 ・ 農 林 水 産 ・ 建 築 土 木j 知人や友人が亡くなった 明になった が2 0, 0%, 1総 務 ・ 企 画 ・ 環 境 j が 1 9 . 7 % . 1教 育 J が1 1 .5%, I f サ政・出産I ! jJが 5. 4 % , 1そ の 他 Jが 13.6%であった。 調査項目 毘答者の属性 性別,年齢,震災当時の所罵部署 4 . 8 3 .0 0 . 0 1 行方不 4 4, 1 4 3. 4 0 . 0 2 職場の上司や同紫が大きなけがを 負った 2, 3 1 .5 0 . 0 8 職場の上司や同僚が亡くなった 行方不明になった 1 2 . 7 1 1 .6 0 . 14 その他 4 9 1 1 .9 1 6 . 7 2. tpく. 1 0 を尋ねた。 自身及び身近な人の被害 被災地の自治体職員の 被災体験を測定するために,自身や身近な人の被害 T a b l e2 住まいの被害 仕事への影響の肯定率(%) 状況について1 1選 択 肢 ( T a b l e1 ) を設け,多重回 住まいの被害 被災地の自治体!隊員の被災体験を 測定するために,自身の居住家屋の被害状況を f 津 波 で 流 さ れ た J1 津波で流されなかったが住めなく 揺 れ が 原 因 で 壊 れ て 住 め な く な っ た J1 家 なった J1 財が散乱していたが r 継続して住める J 特に被害 γ l 特に被害はなかった 家財ーが散乱していたが住める 震災で住めなくなった 仕事への影響 問題なく継続できた T a b l e2 )。 を求めた ( 震災が被災地の自治体職員の仕事 に与えた影響を測定するために,仕事の継続状況を r 「問題なく継続できた J 問 題 は あ る が 継 続 で き た J 問題はあるが継続できた 一部だけ継続できた 全く継続できなかった 3 8 7 1 4 . 7 6 9 . 3 1 6 . 0 X2 { 直 d j = 2 ) 2 1 5 ( . 3 3 1 3 . 0 0 7 0, 7 1 6 . 3 男性 γ t はなかった j の 5選 択 肢 か ら , 単 一 回 答 形 式 で 回 答 仕事への影響 男性女性 住まいの被害 答形式で回答を求めた。 3 8 4 4 . 4 3 0 . 7 1 6 . 9 4 7 . 9 2 0 7 4, 3 31 .4 1 5 . 9 4 8 . 3 10 0. 1 8 第 4 7号 筑波大学心理学研究 r 受付J. ⑫ 生 活 再 建 支 援 制 度 関 連 ・ 義 指 金 支 援 金 申 T a b l e3 8業 務 と し た 。 住 宅 関 連 業 務 は 「 ⑬ 瓦l 潔・家屋ーの撤去J. r ⑬ 被 害 判 定 調 査 j の 2業 務 と 発災直後に最も関わった業務の肯定率(%) 請 関 連 業 務 jの した。これらに「その他J. しづを加えた 1 6選 択 肢 と し , 最 も か か わ っ た 業 務 に ついて.単一問答形式でI T I答 を 求 め た ( T a b l e3 )。 発災直後の業務体験と家族からの支え と,その│笥の家族からの支え 避難所 業務内容 で選択した最もかかわった業務で体験した 5項 目 3項 自 の 計 8項 目 r 1 r 2た ま に あ っ た Jr 3よ く あ っ た J ( T a b l e4 ) の程度を尋ねた。各体験の程度は, 全くなかったJ 14か な り あ っ た j の 4件 法 に よ っ て 回 答 を 求 め た 。 職場の上司や同僚からの支援 発災産後から回答 住民 Il寺まで、の職場の上司や同僚からの支援を測定するた め , T a b l e5に 示 す 1 0選 択 肢 に つ い て ι 多重@答形 式 でI T I答を求めた。 外傷後成長 η373 避難所や施設の運営 2 3, 6 支援物資の運搬・配送・搬入 1 5, 5 支援物資の仕分け 2. 4 避難所や施設の閉鎖 0 . 5 被災した住民との連絡 1 .6 被災した住民への物資の配布 3 . 8 遺体安置所での業務 2 . 1 情報入力 1 .9 通行許可証の発行・受付 0 . 9 役所内での電話対応 5 . 1 権災証明書の発行・受付 4 . 8 生活再建支援制度関連・義 ll~ 金 外傷後成長を測定するために, L i L 奇・小浜・松井 ( 2 0 1 2 ) を参考に,独自の1 0選 択 肢 1 1 1 3 . 5 支援金 E : J I 諮問連業務 住宅 ( l a b l e6 ) を作成し,多重i 回答形式で1 ) ]答を求めた。 倫理的手続き 男性女性 項目 r 特に関わった業務はな 被害判定調査 その他 特に関わった業務はなし〉 理委員会の承認を得て行われた。調査協力者には, 3 . 0 3 . 8 0 . 0 6 . 7 1 .0 2 3 . 9 1 6 . 9 0 . 3 3 . 0 瓦i 喋・家屋の撤去 本研究は,筑波大学人間系研究倫 2 0 1 4 8, 3 5 . 5 7 . 5 0 . 0 2 . 0 4 . 5 1 .0 1 .0 0 . 0 4 . 0 2 . 5 r ? l j I ,記名であり,@答を途中で中止できること。そ l a b l e4 F1 痘 男性 3 9 11 .4 71 .0 0 1 .1 5 0 . 2 9 1 61 .4 50 . 9 3( 3 9 0, 2 1 5 ) ( 6 0 5 ) 女性 2 男性 3 8 72 . 0 10 . 5 6 1 . 0 6 -0 . 3 2 住まいの被害 性 立 笠 :2 1 42 . 0 30 . 5 日4( 3 削 命 女i 3 ) 仰) 男目性: お 3 8 43 . 0 80 ω 9 8 iO1 業務に関して男性 3 9 02 . 8 60 . 9 6 家族が支えて 1 .0 4 仕事への影響 家くれた 性~Ij ( d ( ) 007 住民から感謝 さ~'lた n 平均 SD +自}ハソ一門 4 自身及び身泡 な人の被害 t 1 痘 ↑ t 7 J I J n 平均 SD t 4一6i tfio 自身の被害や業務での体験の平均値の性差の検定 F値 男性 3 8 72 . 0 50 . 6 61 .0 0 女性 2 0 72 . 0 90 . 6 6( 3 8 6, 2 0 6 ) ( 5 9 2 ) 0 . 3 3 住民の辛つら男性 3 8 82 . 7 10 . 8 61 .0 3 発い体!投を聴い た 女性 2 却0 82 . 7 3 0お ( 3 飢8 7, m 机 却 2 O ω 0 7 ) η ) ( 5 2 r 2 住民から刺匂!笠 3 8 72 . 5 40 . 9 21 .0 2 4. 4 0 * * * 哉されたり,怒 ,'' : : 1 鳴られたりし 0 63 . 0 80 . 9 8( 2 0 5, 3 8 3 ) 側 学 た 女性 2 0 82 . 1 90 . 9 1 ( 附0 7 ) 問) 女性 2 σ 〉 一 寸 "" -3 . 7 5ネネネ体{上上℃か '-J童 体 男 性 3 8 11 .2 20 . 6 32 . 0 6料 * 女性 2 0 9 3. 17 0 . 9 5( 3 8 9, 2 0 8 ) ( 5 9 7 ) μ 務のため家男性 3 9 03 . 2 60 . 9 8 1 .1 2 一2凶 ら族の 1 世 1 l 止 t げ 5 話言がで 0) きなかった 女性 2 0 73 必 0 . 9 2( 3 8 9, 2 0 6 ) ( 5 9 5 ) 3乙 え家族から業務男性 3 8 81 .3 30 . 6 2 1 .0 7 0 . 3 4 に対ーする理解 が得られず苦 0 71 .3 10 . 6 0( 3 8 7, 2 0 6 ) ( 5 9 3 ) 痛を!感じた 女性 2 2 . 8 9料 験を確認する場 │に,一緒にい た 女性 2 0 31 .0 9 0. 4 4( 3 8 0, 2 0 2 )( 5 41 .9 ) 一 業務!こ, ご遺 {本に触れた 男性 3 8 11 .1 40 . 5 34 . 1 2料 * 女~tt 3 . 5 0料 * 2 0 31 .0 30 . 2 6( 3 8 0, 2 0 2 )( 5 7 9. 1 ) 判決戸く . 0 0 1山戸く . 0 1ヲ く . 0 5 等分散でない場合には, Welchの検定を行った。 桑原裕子-高橋幸子-松井 1 9 豊‘東日本大震災で‘被災した自治体職員の外傷後成長 の 際 に な ん ら の 不 利 益 も 生 じ な い こ と Jな ど を 調 査 「 家 財 が 散 乱 し て い た が . 継 続 し て 住 め る Jの 肯 定 票表紙に明記し回答によりストレスを感じた場合 率が,男女とも 70%前 後 と 最 も 多 か っ た 。 居 住 す る に備え,専用の電話相談窓口を用意した。さらに, 家屋が「津波で流された jは,女性では 6.5%であり, 被災地の自治体職員向けの,ストレス相談窓口を案 男 性 で は 4.4%であった。居住家屋の被害状況への 内する別刷りのノ fンフレットを開封した。ただし, 回 答 を 整 理 し 「 ① 特 に 被 害 は な か っ た J群. 1 ②家 これらの窓口に調査によるストレスを訴えた相談は 財 が 散 乱 し て い た が , 継 続 し て 住 め る J{ 汗 そ の 他 の 「 津 波 で 流 さ れ た j 作j t波で流されなかったが, なかった。 1 語れが原因で住めなくなったj 住 め な く な っ た J1 を ま と め た 「 ③ 震 災 で 住 め な く な っ た jの 3 l J : Y ' と し 結 果 洋の肯定率を性別ごとに算出 ( T a b l e2 ) し た 。 3t 自身及び身近な人の被害 た結果,男女間に有意な差は見られなかった。 被災地の自治体職員自身や身近な人の被害では, 男性では I g !身 に 身 の 危 険 を 感 じ た Jが. 49.4%と 最も多く,女性では「知人や友人が亡くなった・行 1 特に被害はな 1 家財が散乱していたが,継続し 震 災 で 住 め な く な っ た Jを 3 て 住 め る j を 2点. 1 次に. 3群 の そ れ ぞ れ に つ い て . か っ た j を l点. T a b l e 方 不 明 に な っ た 」 が43.4%で最も多かった ( 点と点数化し合計得点を算出して,性差を見る検 1 )。 被 災 経 験 の 有 無 に つ い て , 性 別 に よ っ て 平 均 値 T a b l e4 ) 結果,男女!習に有意な差は 定を行った ( に差があるかどうか比較する検定 ( T a b l e1 ) を行っ 見られなかった。 た結果. 1自 身 に 身 の 危 険 を 感 じ た 」 で は 性 別 に よ る差が有意傾向(存意水 i~íH O%) であったが,他の 仕事への影響 被災地の自治体職員の仕事への影響は,男女とも 項目では有意な差は見られなかった。 1種 類 の 経 験 そ れ ぞ れ に つ い て , 経 次に,これら 1 験有 を l点,無を O点 と 点 数 化 し て 合 計 得 点 を 算 出 して,男女別に差を見る検定(以下,性差を見る検 T a b l e4 )。 そ の 結 果 , 男 女 関 に 有 意 を行った ( 「全く継続できなかった j が 50%弱と最も多く. 1 問 題 な く 継 続 で き た j は男女とも 5 %未満であった。 「問題なく継続できた j 群 「問題はあるが継続でき 一 部 だ け 継 続 で き た J群. 1 全く継続でき た J群. 1 な差は見られなかった。 T a b l e6 外傷後成長の肯定率の性差の検定(%) 住まいの被害 男性 女性 x1 直 2 被災地の自治体職員の居住する家屋への被害は 項目 T a b l e5 自分に自信がもてるように なった 6 . 3> 1 .9 5 . 8 9 * 自分がひとまわりり大きく なったような気がした 1 0 . 7> 4 . 2 48 * * 7. 精神的に強くなった 2 0 . 6 1 6. 4 6 1 .5 2 3 . 2 2 0 . 2 0 . 7 4 t司や同僚からの支援の肯定率の性差の検定(%) 男 性 女 性 X2値 項目 η388 2 0 7 (df=l) d f =1 ) N=383 N=213 ( ねぎらいの言葉をかけられた 5 3. 4 5 3. 1 0 . 0 0 気分をなこませたり, がせてくれた 2 2 . 9 21 .7 0 . 1 1 園芸h !な 出 来 事 に も 立 ち 向 かっていけると思うよう になった 2 7 . 6 2 3 . 71 .0 6 人の気持ちが理解できるよ うになった 1 3. 1 1 3. 1 0 . 0 0 4 . 81 6 . 0 4料* 1 9 . 8く 3 人のやさしさや温かさを感 じるようになった 2 4 . 5 2 9 . 6 1 .7 9 , c . 、語己してもらえた 3 3 . 2く 4 6 . 91 0 . 6 2料 不満や悩みやつらい気持ちを 受けとめてくれた 4 8 . 6く 5 5 . 9 2 . 9 2t 1 2.4く 2 2 . 71 0 . 7 4同 人との料の大切さを感じる ようになった 飲み会を開いてくれた 1 7 . 0> 6 . 81 2 . 1 8* 同 仕事をするうえでの創意・ 工夫をするようになった 1 3 . 6 9 . 4 2 . 2 6 食事をふるまってくれた 東北人であることを誇りに 思うようになった 2 0 . 1 1 6 . 9 0 . 9 1 自治体職員であることに誇 りを感じるようになった 0 . 7 0 * * 2 9 . 5 >1 7. 4 1 くつろ 感謝の言葉をかけられた 1213 ったことがあったとき,キ!~ 談にのってくれた 1 1 .1 11 .1 0 . 0 0 都合がわるいとき,仕事をか 2 0. 4 わってもらった 1 6 . 91 .0 4 1 9 . 6 1 8 . 80 . 0 5 差し入れをいただいた *料戸く . 0 0 1*ヲく . 0 1 料 戸く . 0 1ヲく . 0 5 "j'戸く.10 Z 2 0 筑波大学心理学研究 第 4 7号 な か っ た j 群の 4f 洋の肯定率を性別に ( T a b l e2 ) み会を r~奇いてもらった」経験が多く,女性では, 算出した結果,男女間に有意な差は見られなかっ 「因ったことがあったとき,相談に乗ってもらっ た。次に,それぞれの継続状況について, ,問題な たよ「心配してもらったJ. ,不満や悩みや辛い気持 く継続できた j を 1点 , ,問題はあるが継続できた j ちを受け止めてもらった jキ主!投カヲ多かった。これら を 2点 , ,一部だけ継続できた j を 3点 , ,全く継続 できなかった」を 4点と点数化して合計得点を算出 1 0選択肢の一次元性を確認するため,経験の有りを l点?!l.f,しを O点 , と点数化し,主成分分析による して,性差を見る検定を行った結果,男女間に有意 解析を行った。第一主成分の負荊量の絶対値はしづゴ T a b l e4を参照)。 な差は見られなかった ( .4以上となり,寄与率は 2 4.9% (固有値 : 2 . 4 9 ) れも 0 発災直後の業務 回答発災直後に最もかかわった業務(単一 i 1 a b l e3 ) は.女性は「避難所や施設の運営」が多く、 であった。 1 0選択)j支の α係数は 0 . 6 5であり .10選択 肢は一次元構造で、あることが確認された。この 1 0選 択肢への回答を加算し f 上司や同僚からの支援j 尺!支得点とした。 男性は「その他(土葬・仮埋葬,家資の遺体処理, 被 災 者 の 救 助 , 水 道 ・ 道 路 等 の イ ン フ ラ 復 旧 等 )J と「避 9 ! l t所や施設の運営」が多かった。 外傷後成長 震災後から I I T l 答1 1 寺(1年 4か月後)までの外傷後 0選 択 肢 ( 多 重 回 答 ) の 脅 定 率 を , 成 長 を 表 す1 業務での体験 発 災 直 後 に 最 も か か わ っ た 業 務 で の 体 験 5項目 1 a b l e6に 示 す 。 男 女 と も 「 人 と の 終 の 大 切 さ を 感 ( 1 a b l e4 ) について, ,かなりあった Jを 4点 , , よ くあった」を 3点 , ,たまにあった Jを 2点 , ,全く なかった j を 1点 と 点 数 化 し 各 項 自 の 得 点 の 平 均 女性 5 5 . 9 % )。 他 に は 「 自 治 体 i 隊員であることに誇 値を性別に比較した。その結果, ,住民から非難さ 遺体を{確認する場に,一緒にいた j体験は,有意水 2 9 . 6 % ) ,困難な出来事にも立ち向かっていけると 思うようになった J ( 1 司2 3.2%,2 0 . 2 % )なとごが高かっ た 。 T a b l e6には記l j ましていないが. ,その他 jは 3% あり. ,チE J ということを強く 7 玄識するようになっ 準 1%で.男性の平均値が女性より高かった。 た分,毎日を大切に生きるようになった」ゃ「身近 れたり,怒鳴られたりした j体験や f 業務上,ご遺 体に触れた」体験は有意水準 0 . 1%で, ,住民が,ご じるようになった」が最も多かった(男性 4 8 . 6 % . r 向2 9. 5%.1 7. 4%) 人 りを感じるようになった J( のやさしさを!惑じるようになった J(間 24.5%. r な人がそこにいてくれることがありがたいと思うよ 家族からの支え 発災直後の業務 l : j : 1の家族からの支え 3項目 ( T a b l e うになった j なと¥死を意識し大切な人が側にいる 幸せに関する内容が多かった。成長内容として「特 4 ) それぞれについて. ,かなりあった j を 4点. , よ r たまにあった Jを 2点守「全く に思いあたることはない j と回答したのは,全体の , くあった j を 3点 19%に留まった。言い換えれば,回答者の 8割は, なかった」を 1点と点数化して,性別に各項目の得 東日本大震災によって何らかの成長をしたと自覚し 点の平均値を比較した結果, ,業務に関して家放が ていた。 . 1%で, ,業務のため 支えてくれた Jは。有意水準 0 T a b l e6に 示 す 選 択 肢 の 肯 定 率 を 性 別 ご と に 算 出 に家族のほ話ができなかった」は有意水準 5%で , し比率の差の検定を行った。その結果,男性では 火性の平均値が男性よりも高かった。 「自分が I I T Iり大きくなったような気がした」と「自 治体職員であることに誇りを感じるようになった j 職場の上司や同僚からの支援 職場の上司や同僚からの支援は, ,ねぎらいの言 が 有 意 水 準 1%で. ,自分に I~j 信が持てるように 業三をかけられた」が男女ともに最も多く 53%を超え かった。女性では「人との科の大切さを感じるよう ていた ( ' l a b l e5 )。職場の上司や同僚からの支援 1 0 になった」に,男性よりも有意な傾向(有意水準 なった j が 有 意 水 準 5%で , ともに女性よりも高 選択肢 ( ' l a b l e5 ) それぞれの支援の有鮮について, 10%) が見られた。これら 1 0選択肢の一次元性を{確 性別の比率の差を見る検定を行った結果, ,1主i った 認するため,経験の有りを l点,無しを O点 , ことがあったとき,相談にのってくれた j や「飲み 数化し,主成分分析による解析を行った。第一主成 会を s F Jし3てくれた j は,有志:水準 0 . 1%で, ,心配し 分の負荷量の絶対龍はいずれも O . 4. t U 二であり,寄- てもらえた Jゃ「不満や悩みやつらい気持ちを受け 与率は 2 1 .1 % (国有値:2 . 5 4 ) であった。 1 0選択肢 と点 とめてくれた」は,有意フ1 (準 1%で男女 I I Jに差が見 の α係数は 0 . 6 3であり,一次元構造であることが確 られた。すなわち,男性で、は,上司や同僚から「飲 認された。この 1 0選 択 肢 へ の 回 答 を 加 算 し 「 震 災 桑原裕子 高檎幸子 松井 且且 . ! i ' 己 東日本大震災で被災した自治体職員の外傷後成長 2 1 「年齢 Jから「上司や i 苛 僚からの支援 Jへは, 有意 後の外傷後成長 j 尺度得点とした。 な負のパス係数が見られた。 女!主では,発災直後から調査時までの「上司や同 外傷後成長の規定因のパス解析 本研究で検証された 4要因が,被災地の自治体職 僚からの支援 Jから「震災の外傷後成長」尺度得点 員の外傷後成長をととのように規定するのかを検討す への有意な正のパス係数が見られた。また,発災直 るため,性別ごとに重回帰分析の繰り返しによるパ 後の「自身や身近な人の被害」ゃ「住まいの被害J. ス解析を行った。パス解析に 発災直後の業務で「住民から感謝された J体験から mいた変数は 3水準に は,発災直後から調査時までの「上司や同僚からの 整理された。 第 l水準は, I自身や身近な人の被害J. I 住まい の被害J.発災直後に関わった「業務での体験 j5 I 震 災 の 外 傷 後 成 長 J尺度得点に 年 齢 Jか 有意な正の間接パスが見られた。また, I 支 援 j を介して, 項自('l a b l e4を参照),発災直後の業務を行ってい ら発災直後から調査時までの「上司や i 可 探からの支 た期間中の「家族からの支え j3項目('l a b l e4を参 援 j へは,有意な負のパス係数が見られた ( F i g u r e 照)に,デモグラフィックの「年齢 Jと f 居住地 j 或 2 )。 (沿岸・内陸)j を加えた。第 2水準は発災後から調 f 寺までの J f i 技場の 査l f 上司や同僚からの支援 Jの尺度 I 震災の外傷後成長j 考 察 得 点 を 用 い た 。 第 3水準は, の尺度得点を用いた。 解析は,変数増加法の重回 帰分析によって行った。いずれも偏回帰係数の有意 本研究は, 2 0 1 1年 3月 1 1 1 ヨに発災した東日本大震 災の被災地の自治体 i 隊員の外傷後成長の実態を把握 し外傷後成長に影響する要因を探索的に検討し 水準 5 %基準で投入を打ち切った。 W t析の結果を Figure1と Figure2のパスダイアグ ラムに示す。矢印は有意なパスを示し数値は標準 た 。 その結果, 8割以上の職員が向震災によって成長 を体験していた。成長の内容は,安藤 備回帰係数を示す。 解析の結果 ( F i g u r e1 ),男性では, I 家族が支え ( 2 0 0 8 ) の他 者との関係にあたる「人との糾の大切さを感じるよ I 人のやさ てくれた j ゃ 「 上 司 や 同 僚 か ら の 支 援 j,発災直後 うになった Jが最も多かった。次いで, の業務で「住畏から感謝された J体験から「震災の しさや温かさを感じるようになった Jや「自治体職 外傷後成長 J尺度得点への有意な正のパス係数が見 員であることに誇りを感じるようになったJ. I 困難 られた。また,発災直後の業務を行っていた期間中 な出来事にも立ち向かっていけると思うようになっ に「家族の世話ができなかった j休験からは,有意 たJ. I 精神的につよくなったJ. I 東北人であること な負のパス係数がみられた。発災産後の「住まいの を誇りに思うようになった j が多かった。さらに, 住民から感謝された j 被 害 Jや,発災直後の業務で f 「自分が一回り大きくなったような気がした Jや「自 体験や発災産後の業務を行っていた期間中に「家族 分に自信がもてるようになった j などの,安藤 の世話がで、きなかった j体験からは,発災直後から ( 2 0 0 8 ) の自分自身に対ーする見方の変化にあたる変 調 査 時 ま で の 「 上 司 や 同 僚 か ら の 支 援 j を介して, 化も多く起っていた。これらの自分自身に対する見 「震災の外傷後成長 j に間接パスが見られた。また, 方の変化は,女性より男性で多く起こっていた。 外傷後成長に対しては,以下の 4種の要因の影響 が確認された。 住まいの被害 住民から感謝された 家族の世話ができな かった 家族が支えてくれた 綾災の外傷後成長 震災の外傷後成長 年齢 * . 1 2 R2=.18 太線 pく. 0 0 1 中太線 pく. 0 1総l 線 pく. 0 5 F i g u r e1 . 外傷後成長の規定問に関するパス解析 男性 到に関するパス解析 F i g u r e2 . 外傷後成長の規定 i 女性 2 2 筑波大学心理学研究 第 47 号 I J [ : 能員自身の被災体験」である。外 I自身及び身近 な人の被災 j が大きいほど, I 住まいの被害 j が大 きいほど, 1 司僚や上司からの支援 Jを経て,外傷 援が!君難な環境とたたかう力となか外傷後成長に 後成長を高めていた。被災による被害が大きいほ 的な認知である意図的思考にその性質を変えるプロ ど , }百四のソーシャルサポートを受け,そのサポー セスが影響を及ぼしており トが人に対する見方を成長させたものと推定され とで,起きた出来事を肯定的に意味づけ,そこから る 。 何か得るものがあると考えられる。被災自治体職員 第一の要因は 傷後成長との関連では,予測通り, 影響を与えていると推定される。 外傷後成長の要因を整理した宅 ( 2 0 1 0 )によれば¥ 外傷後成長にはネガテイブな認知から前向きで建設 このプロセスを経るこ I 発災直後の業務で住民から感謝 も以上の 4種類の経験を経て,東日本大震災という された体!技」である。予想通か住民から感謝され 遭遇してしまった悲惨な出来事を肯定的に意味づ た体験が多いほど,外傷後成長を高めていた。この け,外傷後成長を高めていたと考えられる。 第二の安田は, 結果は,被災消 i 坊戦員(大規模災害時などにおける 外傷後成長は,精神的健康に結びっく側面を有し 惨事ストレス対策研究会, 2 0 1 3 ) と同様であり,住 ている。そこで¥本研究の結果に基づいて,被災地 民から感謝された体験は,消防のような公安系職員 の自治体職員の精神的健康のケア対策について,提 だけでなく則被災地の自治体職員のトラウマを乗り 言したい。東 E I本大震災のような広域災害では,被 越える力となり.外傷後成長に影響を与えたと推定 災地の自治体職員も一般住民と i 可様の被災者となる される。 だけでなく,住民の福利や地域の復興を支えるとい 第三の要因は,発災直後の業務に携わっていた間 う職務を担う。組織内で支援し合う体制の構築,家 の家族からの支えである。男性においては,家族が 族からの支援を受けやすい体制作り(多忙期に家族 支えてくれた体験は外傷後成長を高め,逆に,家族 から理解を得ておくことの重要さの周知)が必要で の世話ができなかった体験は あろう。そして,われわれ一般,市民は,職員の献身 外傷後成長を低めて いた。この結果は守被災地の消防職員が家族からの 的な活動にきちんと感謝をし,励ましていきたい。 励ましを支えと感じていたという調査結果(大規模 引用文献 災害時などにおける惨事ストレス対策研究会. 2 0 1 3 ) と整合している。 ただし,この効果は男性職員にのみ見られたとい う結果と,消防職員は 9割以上が男性で、あるという 安藤清志 ( 2 0 0 8 ) 外傷後の f 成長 Jと 社 会 現 代 人 のこころのゆくえ 2ーヒューマン・インタラク 事実には,留意する必要がある。すなわち,男性の ]世 紀 ヒ ュ ー マ ン シ ョ ン の 諸 相 一 東 洋 大 学2 場合には,家族のソーシャルサポートが精神的健康 インタラクション・リサーチ・センタ- や外傷後成長を支える原動力となるが,女性職員の 場合には,家族のソーシャルサポートが有効で、ない 1 0 9 - 1 2 6 Huddleston,L .M.,Paton,D.,&Stephens,C .( 2 0 0 6 ) . 可能性が考えられる。この結果は,都内の一般家庭 Conceptualizing traumatic s t r e s si np o l i c e の夫婦の生活感情に配偶者のサポートが及ぼす影響 o f f i c e r s : Pre-employment,c r i t i c a li n c i d e n tand 1 1浦(19 9 9 ) とも整合して を検討した伊藤・池田.) o r g a n i z a t i o n a li n f l u e n c e s .1 均u m a t o l o g y,12,1 7 0 - いる。伊藤らによれば,要:からの情緒的サポートは, 1 7 7 夫の生活感情に正の影響を与えていたが,夫からの 伊 藤 裕 子 ・ 池 田 政 子 .) 1 1浦康至(19 9 9 ).既婚者の 情緒的サポートは妻の生活感情に影響を与えていな 疎外!惑に及ぼす夫婦関係と社会的活動の影響 かった。男性は,妻や家族からのソーシャルサポー トが自身の支えとなるのに比べ,女性は.夫や家族 心理学研究, 70, 1 7 2 3 河村 i 咲弥・辛 { ; J 日ミ-西田一美・立木茂雄 ( 2 0 1 1 ) からのサポートがうまく機能していない可能性があ 東日本大震災における被災自治体への応援被災 る。家族からの支え(ソーシャルサポート)のあり 地職員惨事ストレスとメンタルケアに関する研 方が,外傷後成長との関連に性差を生じさせたもの と推定される。 究地域安全学会梗概集, 29,7 5 7 8 香山リカ ( 2 0 1 2 ).誰からも評価されない一香山リ 第四の要国は,発災 i 亙後から│回答時までの「職場 ERA, 9月 カが見た被災地公務員の苦悩-A の上司や同僚からの支設 Jである。消防職員(松井 1 0E I6 1 6 3 松 井 豊・立 I W J洋介・高橋幸子 ( 2 0 0 8 ).消防職員 0 0 8 ) や警察官 (Huddlestone ta . 12 0 0 3 )と問 ほか, 2 機に,被災地の自治体職員でも精神的健康の維持に の惨事ストレス研修の試み は上司や同僚からの支援が重要であり,組織内の支 究 , 36, 1 9 2 3 筑波大学心理学研 桑原裕子-高橋幸子-松井 豊 2 3 東日本大震災で被災した自治体職員の外傷後成長 宮城県広報課 ( 2 0 1 2 ) 宮城県知事記者会見(平成 重村 敦 ・ 谷J I I 武・佐野信也・佐藤 豊 ・ 吉 野t l 3 2 4: f ] : :8月2 7日) 西国一美 ( 2 0 1 1 ) どうする?復興を支える自治体 職員の心のケア連合, 1 2, 8-9 英-藤井千代-立 j 宰賢孝・桑原達郎・立花正一 N o r r i s,E H .,Friedman,M., . ] W atson,P . ] . , &B yrno, C . M .( 2 0 0 2 a ) .6 0, 0 0 0 d i s a s t e rv i c t i m ss p e a k,p a r t 1 : An empirical review o f the empirical l i t e r a t u r e,1 9 8 1 2 0 01 . P s y c h i a t η,65,2 0 7 2 3 9 . .,Friedman,M., . J & Watson,P . ] .( 2 0 0 2 b ) . N o r r i s,EH 6 0, 000d i s a s t e rv i c t i m ss p e a k,P a r t1 1 :Summary and i m p l i c a t i o no ft h ed i s a s t e r mental h e a l t h s y c h i a t η,65,2 4 0 2 6 0 . r e s e a r c h .P P e r r i n,M.A .,D iGrande,L . , W heeler ,K . , T horpe,L . , F a r f e l,M.,& B r a c k b i ll .R .( 2 0 0 7 ) .D i f f e r e n c e si n PTSD p r e v a l e n c e and a s s o c i a t e dr i s kf a c t o r s amongW o r l dT r a d eC e n t e rd i s a s t e rr e s c u ea n d m e r i c a nJ o u r n a l0 1Psychiatry, r e c o v e r yw o r k e r s .A 164,1 3 8 5 1 3 9 4 . 労働大学出版センター ( 2 0 1 2 ) 自治労被災自治体 職 員 の 「 こ こ ろ の 健 康 j調 査 ( 中 間 報 告 抜 粋 ) 0-45 丹刊労働組合, 10, 4 労働政策{耳究・研修機構 ( 2 0 1 2 ). ト ピ ッ ク ス 5 の メ ン タ ル ヘ ル ス ー 精 神 経 誌 , 114, 1 2 6 7 - ころの健康調査」 6 ンド, 10, 3 自治労の「こ ビジネス・レーパー・トレ 1 2 7 2 宅香菜子 ( 2 0 1 0 ) 外傷後成長に関する研究ースト レス体験をきっかけとした青年の変容一風間 一 房 自治体職員の現状 やすいのか?一東日本大震災後に考える支援者 書 被災地調査 野沢総一郎 ( 2 0 1 2 ). 災 害 支 援 者 は な ぜ 傷 つ き T e d e s c h i,R . G .,&Calhoun,L .G .( 19 9 6 ) .Thep o s t traumatic s t r e s si n v e n t o r y : Measuring t h e o u r n a l0 1Traumatic p o s i t i v el e g a c yo ft r a u m a .J S t r e s s,9,455-471 . 総務省 消防J T (2013). 大 規 模 災 害 時 等 に 係 る 惨 事ストレス対策研究会(編)大規模災害時等に 係る惨事ストレス対策研究会 8 5 7 報告書, 3 Ursano,R . ] .,F u l l e r t o n,C . S " Vance,K . , & Kao,主 ( 19 9 9 ) . Posttraumatic s t r e s s disorder and i d e n t i f i c a t i o ni nd i s a s t e rw o r k e r s .American 1Psychiatη,156,353-359. J o u r n a l0 山 崎 達 枝 ・ 小 浜 !抜・松井 豊 ( 2 0 1 2 ) .2 0 1 1年 東 日本大震災看護]識のストレス反応 日本災害看 護 学 会 誌 第1 4回年次大会講演集, 1 7 4 (受稿 1 0月2 51 : 1 :受理 1 1丹2 5日)
© Copyright 2024 ExpyDoc